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忠犬が狂犬になった理由(side美夜飛)
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しおりを挟む兼嗣の懐疑的な声と目線に、このタイミングで真っ赤になるのはおかしいだろう、ととっさにうつ向いて顔を隠したが、間に合わなかった。
「……何それ、そんなにあいつがいいの?」
「……はっ?」
なんで、そう捉えるんだ。お前の目は節穴か。
ずっとそばにいたくせに。
幼少期から小学校も中学も高校も、一緒に成長して、何年も近くで見ていたくせに。
俺の気持ちなんて露知らず、兼嗣の顔がほの暗く淀み、陰鬱にかげる。
深い悲しみと劣等感で静かに燃える、不安げな双眸。
その目には、見覚えがありすぎた。
一週間前の、あの日の夜が想起され、強烈な危機感が警鐘を鳴らした。
また暴走されたら、あれの二の舞になってしまう。
そう身構えたのと同時、思っていたのとはむしろ逆に、肩を突き飛ばされて。
「──っぐ、!」
後ろにあったデスクチェアにガンッと勢いよく腰がぶつかる。
その衝撃で机の端にあったノートやペンケースが落ち、たくさんの音を立てて中身がフローリングに散らばった。
キャスター付きの椅子の背もたれを掴み、邪魔だし危ないから後ろ手に避難させる。
油断していて盛大によろけたが、勉強机がストッパーになって転倒は免れた。
「っ危ねぇな……」
声に怒気が混ざる。
正直、痛みよりも、驚きのほうが強かった。
そもそも尻もちをつくほどの威力もなかったけれど、あの時でさえ、無茶はされたが、乱暴にはされなかったのに。
はっきりと反抗──というか、手加減丸出しの、力を見せつけるような態度をとられたのは初めてだった。
「……っ、」
少なからずショックを受け、そのうえ兼嗣の怫然とした重々しい雰囲気に気圧され、警戒心から体勢が低くなっていた。
背後には、パソコンや教科書やノートの並ぶ頑丈な机がある。
ロフトベッド下のスペースは天井が低く、立ち上がることさえままならない。
逃げ場のない、身動きもとりづらいそんな狭いところにいるのはマズイと思った瞬間には、もう。
兼嗣の身体で、さらに狭い奥へと追いやられて。
「っ、こっち来んな……っ!」
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