恋のヤンキー闇日記

あらき奏多

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遅かれ早かれ(side美夜飛)

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 その行動に驚いて廣瀬を見上げると、やつはさっきまでの穏やかな顔とは全く違う、底冷えするような無表情で兼嗣をまっすぐ見ていた。

「美夜飛、お前は休んでろ」

「……え、」

「遠山さ、美夜飛がなんでぶっ倒れたか知ってる?」

「っ!」

 廣瀬がゆっくりと、庇うように俺の前に立つ。

 声は落ち着いていていつもの低く安定した調子だが、まとう空気に言い訳も有無も言わせない明らかな威圧感がある。

 声をかけようにも、広い背中から沸々と怒りが伝わり、口を噤む。

 廣瀬の台詞に、ぴくりと兼嗣が反応する。
 廣瀬は兼嗣を刺すような視線で見ているのに、兼嗣は直視できないのか、逃れるように目を逸らす。

 猛省して謝罪するために来たというよりは、説教に納得はいかないが、黙ってやり過ごす子どもみたいだと思った。

「どこ見てんだ。こっち見ろよ。なあ、遠山」

「……」

「風邪でもなく39度近く熱あるんだけど、こいつ。俺の実家の弟妹たちも、小さい頃は急に高熱だしたこと何回かあったけどよ。こいつはもういい歳だし、そこまでヤワじゃねえ。……あのさ、何したらこうなんの?」

 俺、そんなに熱あんのか。それはしんどいわけだ。
 怒っている理由が真っ当かつ原因が自分なだけに、息が詰まりそうなくらい居心地の悪さを感じた。

 兼嗣は一瞬、驚いたようにちらりと俺を一瞥したが、廣瀬の引き締まった面持ちに下手に何も言えないみたいだった。

 部屋はシンと静まり返り、耳鳴りがするほどの静寂に包まれる。


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