恋のヤンキー闇日記

あらき奏多

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遅かれ早かれ(side美夜飛)

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「……ん……み、ちゃん……」

 気だるくいやらしい空気に浸るように、兼嗣が俺に擦りよってくる。

 指先で自分の腹に触れると、サラサラしたローションでも浴びたみたいにぬるついている。
 潤滑剤だったら、まだよかったのに。

 だけどこれは、紛れもなく俺自身が垂れ流したカウパーと精液で。
 気持ちよくなって、感じて漏らした証拠だった。

 自分の意思に反して、淫欲に溺れた身体を目の当たりにし、今になって羞恥心が総動員で襲ってくる。

 何してんだ、俺は。
 しがみついて、喘いで。あれだけ嫌だって、のたまったくせに、口ばっかりで。

「……っ、離れろ、はなせ……っ、触んな!」

 頬に触れた兼嗣の手を弾く。

……恥ずかしかった。自分が。

 とてつもなく浅ましい生き物になったみたいで、そんな俺を、こんな熱のこもった視線で見つめてくるのも耐えられなかった。

「っも、いやだ……、後ろ、抜いて……っ、抜けよぉ……っ!」

 張りついた喉は、悲痛に濁った音をだす。

 こんな中途半端な気持ちのまま、無責任にこんなこと、したくなかった。

 感じたくなんて、なかった。
 兼嗣を、受け入れられてしまった。
 壊れるのなんて簡単だった。
 おれが、無力だったばっかりに。
 たったひとりの幼なじみを、親友を失った。
 
 色んな感情がせめぎ合い、まだナカに入ったままのをはやく抜いてほしくて、腕で口許を覆ったまま顔を背ける。

 隠微に濡れそぼった、情事の痕跡丸出しの、真っ赤に汗ばんだ肉体を直視できない。

 自分で引き抜くなんてことも、恐ろしくてできそうにない。

 動いたらいくらでも熱くなる気がして、そんな自分が信じられなくて、怖かった。

「……みーちゃん、おれ……」



「──……っはあー、最悪っ! 充電器忘れるとかほんっとツイてないよなー!」

「!!!」


…………は?!

 自分たちの声しかないはずの空間に、唐突に入り口のドアが開く振動と、聞き覚えのある声が盛大に響いた。

 びくぅっ!とふたり同時に身体が張りつめる。


──声の主は、兼嗣と同室の、花岡だ。


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