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遅かれ早かれ(side美夜飛)
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しおりを挟むそこはまだうっすら血の味がして、鼻腔に充満する鉄の匂いと、自分の精液の雄くささに嫌悪感で呻くが、苦痛と疲弊で脱力しきった身体は、いうことを聞かない。
「ふっ、ん……ッんぅ、は……ぁ、」
口内は甘ったるい鉄の唾液に溢れ、頭の中までぐちゅぐちゅとかき混ぜられている気分になる。
髪を梳く兼嗣の長い指が、汗ばんだ頭皮をくすぐる。
大きな手のひらは耳まで塞がり、轟々と卑猥な音が頭の中で反響した。
ぬめる唇が卑猥に擦れ合う。
下からも、兼嗣の巨大な存在を感じる。
楽なほうの口付けに陶酔していくのを頭の片隅で感じ、このままだと飲まれると思い、兼嗣の舌を自分のそれで押し返す。と、必然的に自ら舌を絡ませるようになってしまって。
「……っん……ッ!」
びく、と、唐突に兼嗣の背中が戦慄いた。
伸ばした手は行き場を失い、押しやる力はないが引き寄せるわけにもいかず、結局肩に添えるだけ。
Tシャツ越しに筋肉の躍動と湿った熱が手のひらに伝わって、口のナカもぬるぬると熱い。
兼嗣の興奮した何とも言えない雄の匂いが、鼻腔から脳髄まで、入りこんでくる。
のぼせた俺は、じゅうっと兼嗣の舌を吸ってしまった。
「っんぅ……!」
やつが低く呻き、びくっと腰が断続的に跳ねる。
同時に自分のナカで硬い剛直がピクピク痙攣するのを感じとって、体内にじわりと熱いのが広がった。
……え、うそ、まさか……、今ので……?
驚いて口を離すと、兼嗣は愕然とした可哀想なくらい真っ赤な顔で、こちらを唖然と見ていて。
「……かね、つぐ」
「……うぁ……ッ、み、ちゃ、ごめ……ッ」
「っ!」
口端から涎を垂らし、瞼のふちにたっぷりと涙を浮かばせて。
蒸気を感じるほど茹だった兼嗣の、縋るような申し訳ないような表情、狼狽える仕草に、ぶわっと羞恥が俺にまで飛び火した。
今にも泣き出しそうな弱々しい顔が、昔の、子どもの頃のこいつと重なって、そんな相手に今は組み敷かれている背徳感が、苦痛でしかない、はずなのに。
「、ぁ……っ、?」
兼嗣の、積もりに積もった劣情が。
本当に俺を好きなんだって感情が、ぜんぶ、俺のナカに入ってくる。
そう思った瞬間から、何故か身体は切なく疼きだし、腰の奥が、ナカが、兼嗣のカタチをぴったりと捉え、存在を実感して。
突如として、ぞくぞくと快美な波が押しよせてきた。
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