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遅かれ早かれ(side美夜飛)
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しおりを挟む「……っ、!」
「──っは、はぁ……ふ……んっ、は……、」
沈黙した室内に、自分の息遣いが聞こえてうるさい。
窒息ぎみで、苦しくて肺いっぱいに酸素を吸いこむと、泣いているときのように嗚咽が漏れた。
動揺しているのが丸分かりだ。
恥ずかしいから抑えたいのに、唾を飲み込むと余計に、呼吸が弱々しく震えた。
噛んだ自分の唇がぬるついているのが気持ち悪い。
汗だくで、恐怖に怯える小動物みたいな自分に反吐が出る。
それでも、やっと離した兼嗣を牽制するために睨みつけた。
「……っ、ふ……ぅ」
「……本気で抵抗しないの、なんで?」
「は……っ、してんだろうが……っ抵抗!」
ぐ、と肩に置いた足先に力を込める。
ゴツゴツした骨の硬さと血の通った筋肉の弾力が足の裏に伝わる。
兼嗣の肩は思った以上にしっかりと逞しくて、また知らなくていいことを思い知らされる。
腕力で敵わなかったから足にしたけど、これでだめなら本当に後がない状況だ。
中断させられたのが不満なのか、兼嗣は憮然としたどこか冷たい表情で見下ろす。
「というより、挑発じゃないかな」
「っんの、やろ……!」
俺ばっかり必死で、翻弄されて、それがとてつもなくムカつく。
苛立って、肘で上体を支えた体勢で、さらに強く蹴り倒そうとした──なのに。
「人間ってさ、起きてるときのほうが軽いんだね」
「っやめ、!」
物凄い勢いで両足を引っ掴まれて、膝を開いたまま、ずるるっと問答無用で兼嗣のほうへ引き摺られる。
なす術もなく身体ごとずり下がり、下半身同士が密着して。
そのまま腰が浮いたのをいいことに、やつは俺のジャージを脱がせにかかってきた。
「っおい、まじ……ッおま、笑えねーってえ……!」
これには焦って、全力で拒む。
ウエストがゴムのジャージは、引っ張るだけで尻の谷間が露になり、双丘が間抜けに外気に触れる。
脚をバタつかせたりして無我夢中で暴れるが、無理やり身につけるよりも、脱がすほうが遥かに簡単そうだった。
「うぁ……っ!」
海老の殻でも剥くように、ずるりと下着ごとジャージが抜かれる。
「これで、むやみに部屋から出られないよね」
「……ってめぇ、」
攻防戦はあっけなく兼嗣に軍配があがり、俺は下半身丸出しで唇を噛んだ。
太ももがスースーして、心細さに拍車をかける。
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