恋のヤンキー闇日記

あらき奏多

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遅かれ早かれ(side美夜飛)

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 兼嗣が前のめりになり、耳の横に手をついた。ミシ、とベッドが軋む音がする。

 覆い被さるように身体が近づき、呼吸が止まる。
 視界がボヤけるほど至近距離に顔が来たところで、兼嗣は犬みたいに鼻先を擦り合わせ、優しく囁いた。

 唇に吐息がかかって、動けなくなる。

「何か、言うことはある?」

「……お前、俺で勃つの?」

「ふは……、自分で確認しなよ」

 一瞬、兼嗣が本当に笑った気配がして、気を取られた俺の防御力が下がった。

 その隙を、あっという間もなく唇で塞がれる。

「っん、ぅ……っ!」

……まじか。まじか、こいつ。
 本気で俺にキスしやがった。

 遊びとか悪ふざけとか、そんなんじゃない。

 重なった唇からぬるりと入ってくる舌は、もはや兼嗣ではない別の生き物みたいだった。

「っ、んんぅ……!!」

 悪寒がぞわぞわと背骨を駆け抜け、顔から胸までぶわりと毛穴が開く。

 拒絶。驚愕。悲嘆。
 激しい感情に、自分でも追いつけなくて身震いする。
 兼嗣の腕を両手で掴み身体を捩るが、びくともしない。

「ッや、め……っ、ンむ……!」

 腕を突っ張って思いっきり胸を押し返すけど、それでもやつは離れない。

 いつの間に、こんな……。
 こいつ、ここまで力、強かったっけ。

 飼い犬に手を噛まれる──どころか、生きたまま食い殺される気分だった。


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