15 / 107
遅かれ早かれ(side美夜飛)
遅かれ早かれ
しおりを挟む兼嗣を避けてから一週間が経とうとしている。
その間俺はなんの行動も答えも出せていなかった。
そろそろ“忙しい”とか“タイミングが合わなくて”なんて言い訳では誤魔化しきれないのは、自分が一番よく分かっている。
「美夜飛ー、メシ行くべ」
「……あぁ」
はあー……。盛大にため息をして、見ていたスマホをスウェットの尻ポケットに突っ込み、同室の男──廣瀬(ひろせ)と寮内の食堂に向かった。
大体いつも決まった時間にみんな来るせいで、食堂のフロアは人でごった返していた。
しかし食堂と言っても自分で食べるものを選べるわけじゃない。
工業系の専門学校で食べ盛りの男ばかりだからか、栄養バランスの考えられた献立が日替わりで決まっていて、どちらかと言えば給食に近い。白ご飯と汁物はセルフだ。
朝は出ないから各々ご自由にって感じで、昼は校舎にも食堂や売店があるのでそこで済ませることが大半。
後ろのやつにぶつからないよう、おかずの乗ったトレイを持って廣瀬と空いていた席に座る。
今日の晩飯は大量のでかい唐揚げと卵焼きとグリーンサラダ。具沢山の豚汁。
ついでに唐揚げはおかわり自由だった。
「腹へったー。唐揚げ久しぶり」
「お前いつも結構食うよな」
「そうか? あの授業やってたら飯食わねーともたねぇだろ。美夜飛は差激しいんだよ。食うときと全然食わねぇときの差が」
「今日は好きなのばっかだから食うよ」
「サラダもな」
「えー……。お前のそういうとこオカンくさくてやだ……」
何だと?と廣瀬は般若みたいに顔をしかめたが、すぐに行儀よく両手を合わせて箸を持った。
それを見て、俺も同じようにしてから唐揚げを頬張る。
以前は兼嗣と晩飯を食べることが多かった。
兼嗣は俺の好き嫌いに口出ししないし、あいつはいつも好きなものを最後にとっておくから、そういう癖のある食べ方をするのはむしろ兼嗣のほうだったりする。
今は逆に俺のほうが突っ込まれるのが新鮮だった。
5
お気に入りに追加
281
あなたにおすすめの小説
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜
きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員
Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。
そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。
初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。
甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。
第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。
※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり)
※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り
初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。
身体検査
RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、
選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。
普通の男の子がヤンデレや変態に愛されるだけの短編集、はじめました。
山田ハメ太郎
BL
タイトル通りです。
お話ごとに章分けしており、ひとつの章が大体1万文字以下のショート詰め合わせです。
サクッと読めますので、お好きなお話からどうぞ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる