恋のヤンキー闇日記

あらき奏多

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猫をかぶった犬のホンネ(side兼嗣)

02

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──しばらくしたとき、裕太が唐突に口を開く。


「そういや今日、お前の“みーちゃん”体調悪かったん?」

「えっ、そうなの?」

「え、それはお前のほうが知ってるだろ。俺が見たとき顔面蒼白って感じだったからさ。違うんだったらいいよ、気にしないで」

「……」

 そう言って再びテレビに夢中になる。
 それはたぶん、彼にとっては何気ない台詞だったんだろう。

 鍵をかけ忘れた机の引き出しと、一番上に置かれた日記。
 みーちゃんに興味ないはずの彼が、気にかかるくらい青ざめた様子。

 そのときのことを、俺は知らないはずなのに容易に想像できた。

 些細だけど無視できない証拠が揃って、走らせていたボールペンがぴたりと止まり、椅子に背中をあずけて天を仰ぐ。

 ぱさ、とタオルが頭から落ちた。

「見ちゃったんだね……」

「……え、ごめん、なに? なんか言った?」

「ううん。ひとりごと」

 観ていたバラエティー番組の笑い声が途絶えて、音のボリュームが大きくなる。CMに入ったらしい。

 彼は若干きょとんとして立ち上がると、何も言わずに自分の棚からタオルや下着を取り出して。

「……そ。じゃ、俺もちょっと風呂いってくるわ。時間やばいし。テレビ、つけとく?」

「うーん……。消して大丈夫だよ」

「あい、わかった」

 言って、彼はテレビの電源をオフにしたあと、ついでに俺が落としたタオルを椅子の背もたれに掛けてくれた。

 ひとりになった部屋で、吐いたため息が大きく聞こえる。


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