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受難の前兆(side美夜飛)
02
しおりを挟む不審に思って手探りでゴソゴソと漁ると、その固くて角ばったやつが、枕の下ってより、シーツの下にあることに気づいた。
その時むずりと芽生えたのは、イタズラ心。
こいつはいつもエロ本の類いを全力で隠してくる。
だからこれはたぶん、しまうのを忘れていたんだろう。
黙っていれば分からないと思い、しめた顔で俺は四隅がゴムで止めてあるシーツの下に手を突っ込んだ。
ちょうど枕の下あたりの位置──、冊子のような本みたいなものに指先が触れる。
一体こいつが普段どんなネタで抜いているのか、純粋に不純な好奇心がわいて、からかってやろうと引っ張り出してみると、それはなんの抵抗もなくするりと出てきた。
普通の雑誌よりは小さくて、単行本より大きい。が、それにしても随分と薄っぺらい。
でも表紙を見ると明らかなエロ漫画だ。左上には“R18”のロゴがある。
巨乳でいかにもな萌え系イラストの小麦肌ギャルが、全身にあやしい白濁をかぶって、嬉しそうなアヘ顔で惜しげもなくを胸さらし、肉感的な両足を開脚させている。
一応水着のような面積の小さい布で最低限のところだけ隠されているが、溢れんばかりのでっかい乳は丸出し。
こんなんリアルであるわけねーだろ。
くっきりとした日焼け跡は、そういうフェチでもあんのか?しかもパイパンて。
まあもともと、あいつがこういうアニメのキャラを好きなのは知っていたが、まさかズリネタにまでしていたとは。
今さら引きはしないが、エロゲだけでなく本まであるとは思わなかった。
やっぱ現実の女に興味ないんかなあ、とはちょっと思った。
本を手にして、俺はまた仰向けに脚を組んで寝転び、薄いそれをパラパラとめくる。
過激で誇張しまくったヤリまくりイキまくりの漫画を流し見ながら、ふと、ハッと我にかえる。
ひょっとしなくてもこれ、今、俺が寝てるこの布団で、毎回オナってんの……?
同室の人間がいるから機会は限られるだろうが、その思考に行きついてしまったせいで、もうなんか一気にぞわわっとムズ痒くなって。
子どもの頃からの幼なじみだからこそ感じてしまった妙な生々しさと気恥ずかしさに、思わず言ってしまった。
「お前、いつもこれで、ここで抜いてんの?」
「えー、なにー?」
穏やかで間延びした、いつもの調子の声が聞こえる。
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