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鍛冶師と調教師ときどき勇者
リグとユラ
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飛竜の群れ。
大きな黒い雲のように最北のレグレレクィエス(王の休養)へとじわりと迫り来る。
落としても、落としても、その雲に穴すら開かず、闇を落とすべくじわりと迫った。
細長い顔に縦に伸びる長い頭を下に向け、甲高い哭き声を響かす。
羽の先に申し訳程度についている爪が、それが腕であると認識出来た。
大きく羽ばたきながら口を開く。
細かい歯が牙状になっており、食いつかれたら逃げ出すのは厳しい。
食いつかれたら最後、もがく間も無く一気に上空まで運ばれてしまう。
食いつかれる前に叩かねば、甚大な被害を負う事になりかねない。
次々に放たれる光をかいくぐり、地面に散見できる餌へと羽をたたみ一直線に舞い降りる。
地面までの距離を一瞬で無にするほどの速さを誇り、地上で待ち構える人間を恐怖に陥れるのが容易に想像出来た。
「行けー!」
ハルヲの叫びと共に放った極大の矢が、地上へと向かう飛竜の眉間を見事に捉える。
頭の一部を抉りながら吹き飛んで行く、落下の速度はそのままに3Miはある大きな体躯を地面へと叩きつけた。
「次!」
「さっすがー! こっちも」
【ブルンタウロスレギオ(鉛の雄牛)】のエッラも続く、【スミテマアルバレギオ】の弩砲より二回りほど大きな弩砲から極大の矢を放った。
やらせない。
ハルヲの青い瞳は暗い空を睨み続ける。
地上を伺う飛竜に向けて、また一矢を放っていった。
魔術師の放つ光が迫り来るリザードマンを横一閃、吹き上げていく。
それをもってしても黒い進軍は、一向に止まる気配を見せない。
弓師の放つ矢が眉間に突き刺さり、次々に崩れ落ちていく。
崩れ落ちる同胞を気にする素振りなどなく、踏みつけ、前進を続ける。
見渡す限り広がるリザードマンの数に、リグは溜め息をつく。
「ありゃあ、ちと多過ぎやしねえか」
「あのよ、あのよ、前衛はこれしかいねえのか?」
リグの隣で大楯を握るユラが味方を見渡す。
50名程が大楯を持って、リザードマンの大群を待ち構えている。
多勢に無勢、地面を覆いつくすリザードマンの数に対して圧倒的な数の不足。
それでも、リグは慌てる素振りを見せなかった。
それが強がりなのかどうなのか、ユラには計り知れない。
「まぁ、もう少しは減る。ヌシ、火吐けたろう、ちと準備してくれ」
「はぁ?」
「ほれ、急げ」
ユラはリグの言葉に首を傾げながらも詠唱を始めた。
「【炎柱】」
ユラの詠唱を横目に確認すると、リグは真っ直ぐ前を見つめ直す。
接触にはまだ相当な距離を残していた。
「ヌシの所の大将にな、罠を仕掛けておけと、こっそり言われていたんじゃ。ほれ、撃て」
ユラはリグに怪訝な表情を浮かべながらも、赤い光を放っていく。
距離があり過ぎて、ダメージを与える威力など全く期待出来ない。
赤い光は炎となり、迫るリザードマンへと向かう。
炎は大群に届く頃にはただの細い火の線となり、やがて消滅した。
「意味ねえじゃねえか。一発損したぞ」
「ああ? まぁ、見ろ」
リグの言葉を待たず、轟音と共に派手な火柱が次々に上がる。
ユラの炎がばら撒いておいた火山石に点火すると、次々に大きな火柱を上げ、迫るリザードマンを吹き飛ばしていった。
終わらない爆発にユラは耳を塞ぐ。
「これで片付くんか!?」
「ああ?! 無理じゃろ、ちょこっと減ったくらいじゃねえか」
「ああ? 聞こえねえ」
「耳外せ! ⋯⋯ああ、もういいわ」
ユラに呆れ、リグは前を向いた。
爆発が爆発を呼び、火柱が止まらない。
ありったけ撒けとは言ったが、どんだけ撒いたんじゃ?
前方は巻き上がる白煙と黒素の嵐が視界を完全に塞いでいた。
「撃ち方止めー!」
シルの号令に弓師と魔術師が沈黙をした。
一瞬の間。
煙がゆっくりと流れて行く。
前方に揺らめく、黒い影を映し出す。
チッ!
シルが軽く舌打ちをする、予想はしていたがそう甘くはない。
「撃てー!」
ゆらゆらと立ち込める地面からの熱気に進軍するリザードマンの大群が、蜃気楼の様に揺れていた。
爆発に阻まれた飛竜の黒雲が再び動き始める。
「あのよ、あのよ、あんまし減ってねえぞ」
「減ったわい。数が多すぎるんじゃ、一体どこまで続いているんじゃ⋯⋯。仕方ない、構えろ! 来るぞ! 上からも気をつけろ!」
リグの号令に盾を構える者達に、一斉に緊張が走った。
激流となって押し寄せるリザードマンが見える。
人より一回り小さいが、太い腕に太い足。
真っ黒な鰐皮が亜種を物語っていた。
鰐より短い顎からは薄汚い牙が覗き、縦長の瞳孔はギョロギョロと餌を探す。
太い短めの尻尾が地面を擦りながら、ゆっくりとこちらへ向かって来る。
大楯を体で押さえ、押し返さんと両足に力を込めた。
「うぉらぁぁぁあ!」
リグが吠える。
リザードマンの圧が襲う。
両足が、ずずっと地面を削り、ゆっくりと押されていった。
押し返す事は不可能。
少しでもこの流れを遅らすしかあるまい。
「うぎゃぁあああ」
右から左から叫びが上がる。
正面から押さえきれない流れが横から流れ込み、牙を突き立てていく。
クソ、こんなもんどうすりゃあいいんだ。
「横並び止めろ! 弧を描け! 右! もう少し下がってこっちに寄れ! 弧を描け!」
ユラが叫ぶ。
隊列が横並びから緩やかな弧を描き、横からの流入を押さえていくが徐々にその弧が小さくなっていった。
減らしても、減らしても減らないその数の多さに嫌気すらさしてくる。
「待たせた」
盾と盾の隙間から長ナイフを突き刺していく。
次々に眉間に突き刺し、屍の山を作り上げる。
「マッシュ、遅えぞ」
「すまんな」
ユラが耐え、マッシュは休む事なく手を動かした。
カズナもその長い手を上手く使い、刃を突き立てている。
前衛の隙間を縫うように戦士達が切っ先をリザードマンに向けていった。
必死に押さえ込む前衛達を嘲笑うかのように、じりじりと押し込まれ、形作る弧がさらに小さくなっていく。
「踏ん張れ!」
リグは絶え間なく鼓舞し続けた。
ガツンガツンとリザードマンの太い腕が盾を叩きつける音が響く、盾を通じて絶え間なく衝撃が体を襲う。
目の前に口を開き、牙を向けるリザードマンの感情の無い血走った目。
「ぐぅっ!」
体力の限界が近い。
押さえる力が弱まれば、その牙は容赦なく肉を抉る。
仲間の呻きがリグとユラの耳にも届いた。
ふたりに走る焦燥感。
このままでは決壊し、なだれ込まれてしまう。
分かっていても、目の前を押さえるので精一杯。
気遣う心持ちはあっても、身動き取れないもどかしさが募る。
目の前で沈んで行く縦長の瞳孔を睨み、盾を持つ手に今一度力を込めた。
その瞬間は呆気ない。
「あああああー!」
ふたりは横目で叫ぶ左方は見やった。
決壊。
盾ごと飲み込まれ、築いていた壁が脆くも崩れていく。
踏みつけられ、流れ込むリザードマンの尻尾が鞭の様にしなり、首元にその牙で食らいついた。
叫び声が止まらない、なだれ込むリザードマンの大群に戦士達も必死に抗う。
負傷した人間が次々に引きずられ、レグレクィエス(王の休養)の奥へと運び込まれる。
その数の多さにラランをはじめとする治療師達の詠唱が止まらない。
形勢は脆くも崩れた。
それでも、リグとユラを筆頭に前線を死守すべく踏ん張りを見せていった。
盾で押さえ込み、頭を叩き割っていく。
腕や頬に少なくない裂傷を被い、感情の無い瞳と対峙した。
「クソが!」
リグがくやしさを滲ませ吠える。
「おらぁああああ! 邪魔じゃ!」
ユラは自らを鼓舞し、盾で押し返していく。
決壊をゆるしてしまった代償が、入口へと迫る。
申し訳程度に囲ってある杭をなぎ倒すのは時間の問題か。
「ユラ! 上!」
マッシュの叫びに咄嗟に屈み、盾の影へと屈んだ。
ゴンと盾を打つ、何度となく激しい重み。
「くっ!」
飛竜が、ユラに目掛け降り注いだ。
地面に埋まるかと思える程の衝撃に耐える。
頭上で甲高い断末魔が聞こえた。
それと同時に迫る、リザードマンのいくつもの足音。
踏みつけられるユラの体が盾ごと沈む。
しまった。
盾が重みでずれる。
踏みつけるリザードマンの足。
法衣が破け、剝き出しになった鎧が重みで弾けた。
剝き出しとなった脇腹へ、次々と鋭い足の爪が突き刺さる、抉る。
削られた肉が、リザードマンの足爪にこびりついていた。
地面に転がるユラは激痛と熱を発する体に最後の力を振り絞る。盾を握り締め、飲み込もうと踏みつけるリザードマンの大群にひとり抗っていく。
大きな黒い雲のように最北のレグレレクィエス(王の休養)へとじわりと迫り来る。
落としても、落としても、その雲に穴すら開かず、闇を落とすべくじわりと迫った。
細長い顔に縦に伸びる長い頭を下に向け、甲高い哭き声を響かす。
羽の先に申し訳程度についている爪が、それが腕であると認識出来た。
大きく羽ばたきながら口を開く。
細かい歯が牙状になっており、食いつかれたら逃げ出すのは厳しい。
食いつかれたら最後、もがく間も無く一気に上空まで運ばれてしまう。
食いつかれる前に叩かねば、甚大な被害を負う事になりかねない。
次々に放たれる光をかいくぐり、地面に散見できる餌へと羽をたたみ一直線に舞い降りる。
地面までの距離を一瞬で無にするほどの速さを誇り、地上で待ち構える人間を恐怖に陥れるのが容易に想像出来た。
「行けー!」
ハルヲの叫びと共に放った極大の矢が、地上へと向かう飛竜の眉間を見事に捉える。
頭の一部を抉りながら吹き飛んで行く、落下の速度はそのままに3Miはある大きな体躯を地面へと叩きつけた。
「次!」
「さっすがー! こっちも」
【ブルンタウロスレギオ(鉛の雄牛)】のエッラも続く、【スミテマアルバレギオ】の弩砲より二回りほど大きな弩砲から極大の矢を放った。
やらせない。
ハルヲの青い瞳は暗い空を睨み続ける。
地上を伺う飛竜に向けて、また一矢を放っていった。
魔術師の放つ光が迫り来るリザードマンを横一閃、吹き上げていく。
それをもってしても黒い進軍は、一向に止まる気配を見せない。
弓師の放つ矢が眉間に突き刺さり、次々に崩れ落ちていく。
崩れ落ちる同胞を気にする素振りなどなく、踏みつけ、前進を続ける。
見渡す限り広がるリザードマンの数に、リグは溜め息をつく。
「ありゃあ、ちと多過ぎやしねえか」
「あのよ、あのよ、前衛はこれしかいねえのか?」
リグの隣で大楯を握るユラが味方を見渡す。
50名程が大楯を持って、リザードマンの大群を待ち構えている。
多勢に無勢、地面を覆いつくすリザードマンの数に対して圧倒的な数の不足。
それでも、リグは慌てる素振りを見せなかった。
それが強がりなのかどうなのか、ユラには計り知れない。
「まぁ、もう少しは減る。ヌシ、火吐けたろう、ちと準備してくれ」
「はぁ?」
「ほれ、急げ」
ユラはリグの言葉に首を傾げながらも詠唱を始めた。
「【炎柱】」
ユラの詠唱を横目に確認すると、リグは真っ直ぐ前を見つめ直す。
接触にはまだ相当な距離を残していた。
「ヌシの所の大将にな、罠を仕掛けておけと、こっそり言われていたんじゃ。ほれ、撃て」
ユラはリグに怪訝な表情を浮かべながらも、赤い光を放っていく。
距離があり過ぎて、ダメージを与える威力など全く期待出来ない。
赤い光は炎となり、迫るリザードマンへと向かう。
炎は大群に届く頃にはただの細い火の線となり、やがて消滅した。
「意味ねえじゃねえか。一発損したぞ」
「ああ? まぁ、見ろ」
リグの言葉を待たず、轟音と共に派手な火柱が次々に上がる。
ユラの炎がばら撒いておいた火山石に点火すると、次々に大きな火柱を上げ、迫るリザードマンを吹き飛ばしていった。
終わらない爆発にユラは耳を塞ぐ。
「これで片付くんか!?」
「ああ?! 無理じゃろ、ちょこっと減ったくらいじゃねえか」
「ああ? 聞こえねえ」
「耳外せ! ⋯⋯ああ、もういいわ」
ユラに呆れ、リグは前を向いた。
爆発が爆発を呼び、火柱が止まらない。
ありったけ撒けとは言ったが、どんだけ撒いたんじゃ?
前方は巻き上がる白煙と黒素の嵐が視界を完全に塞いでいた。
「撃ち方止めー!」
シルの号令に弓師と魔術師が沈黙をした。
一瞬の間。
煙がゆっくりと流れて行く。
前方に揺らめく、黒い影を映し出す。
チッ!
シルが軽く舌打ちをする、予想はしていたがそう甘くはない。
「撃てー!」
ゆらゆらと立ち込める地面からの熱気に進軍するリザードマンの大群が、蜃気楼の様に揺れていた。
爆発に阻まれた飛竜の黒雲が再び動き始める。
「あのよ、あのよ、あんまし減ってねえぞ」
「減ったわい。数が多すぎるんじゃ、一体どこまで続いているんじゃ⋯⋯。仕方ない、構えろ! 来るぞ! 上からも気をつけろ!」
リグの号令に盾を構える者達に、一斉に緊張が走った。
激流となって押し寄せるリザードマンが見える。
人より一回り小さいが、太い腕に太い足。
真っ黒な鰐皮が亜種を物語っていた。
鰐より短い顎からは薄汚い牙が覗き、縦長の瞳孔はギョロギョロと餌を探す。
太い短めの尻尾が地面を擦りながら、ゆっくりとこちらへ向かって来る。
大楯を体で押さえ、押し返さんと両足に力を込めた。
「うぉらぁぁぁあ!」
リグが吠える。
リザードマンの圧が襲う。
両足が、ずずっと地面を削り、ゆっくりと押されていった。
押し返す事は不可能。
少しでもこの流れを遅らすしかあるまい。
「うぎゃぁあああ」
右から左から叫びが上がる。
正面から押さえきれない流れが横から流れ込み、牙を突き立てていく。
クソ、こんなもんどうすりゃあいいんだ。
「横並び止めろ! 弧を描け! 右! もう少し下がってこっちに寄れ! 弧を描け!」
ユラが叫ぶ。
隊列が横並びから緩やかな弧を描き、横からの流入を押さえていくが徐々にその弧が小さくなっていった。
減らしても、減らしても減らないその数の多さに嫌気すらさしてくる。
「待たせた」
盾と盾の隙間から長ナイフを突き刺していく。
次々に眉間に突き刺し、屍の山を作り上げる。
「マッシュ、遅えぞ」
「すまんな」
ユラが耐え、マッシュは休む事なく手を動かした。
カズナもその長い手を上手く使い、刃を突き立てている。
前衛の隙間を縫うように戦士達が切っ先をリザードマンに向けていった。
必死に押さえ込む前衛達を嘲笑うかのように、じりじりと押し込まれ、形作る弧がさらに小さくなっていく。
「踏ん張れ!」
リグは絶え間なく鼓舞し続けた。
ガツンガツンとリザードマンの太い腕が盾を叩きつける音が響く、盾を通じて絶え間なく衝撃が体を襲う。
目の前に口を開き、牙を向けるリザードマンの感情の無い血走った目。
「ぐぅっ!」
体力の限界が近い。
押さえる力が弱まれば、その牙は容赦なく肉を抉る。
仲間の呻きがリグとユラの耳にも届いた。
ふたりに走る焦燥感。
このままでは決壊し、なだれ込まれてしまう。
分かっていても、目の前を押さえるので精一杯。
気遣う心持ちはあっても、身動き取れないもどかしさが募る。
目の前で沈んで行く縦長の瞳孔を睨み、盾を持つ手に今一度力を込めた。
その瞬間は呆気ない。
「あああああー!」
ふたりは横目で叫ぶ左方は見やった。
決壊。
盾ごと飲み込まれ、築いていた壁が脆くも崩れていく。
踏みつけられ、流れ込むリザードマンの尻尾が鞭の様にしなり、首元にその牙で食らいついた。
叫び声が止まらない、なだれ込むリザードマンの大群に戦士達も必死に抗う。
負傷した人間が次々に引きずられ、レグレクィエス(王の休養)の奥へと運び込まれる。
その数の多さにラランをはじめとする治療師達の詠唱が止まらない。
形勢は脆くも崩れた。
それでも、リグとユラを筆頭に前線を死守すべく踏ん張りを見せていった。
盾で押さえ込み、頭を叩き割っていく。
腕や頬に少なくない裂傷を被い、感情の無い瞳と対峙した。
「クソが!」
リグがくやしさを滲ませ吠える。
「おらぁああああ! 邪魔じゃ!」
ユラは自らを鼓舞し、盾で押し返していく。
決壊をゆるしてしまった代償が、入口へと迫る。
申し訳程度に囲ってある杭をなぎ倒すのは時間の問題か。
「ユラ! 上!」
マッシュの叫びに咄嗟に屈み、盾の影へと屈んだ。
ゴンと盾を打つ、何度となく激しい重み。
「くっ!」
飛竜が、ユラに目掛け降り注いだ。
地面に埋まるかと思える程の衝撃に耐える。
頭上で甲高い断末魔が聞こえた。
それと同時に迫る、リザードマンのいくつもの足音。
踏みつけられるユラの体が盾ごと沈む。
しまった。
盾が重みでずれる。
踏みつけるリザードマンの足。
法衣が破け、剝き出しになった鎧が重みで弾けた。
剝き出しとなった脇腹へ、次々と鋭い足の爪が突き刺さる、抉る。
削られた肉が、リザードマンの足爪にこびりついていた。
地面に転がるユラは激痛と熱を発する体に最後の力を振り絞る。盾を握り締め、飲み込もうと踏みつけるリザードマンの大群にひとり抗っていく。
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