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北へ
勇気ある者
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襲撃と襲来。
たて続いたレグレクィエス(王の休養)の疲弊は散々たるものだった。
悲しみからの回復が道半ばで頓挫すると誰もが再び俯き、嘆きはさらにさらに深まる。
キルロとエーシャはヒールを落とし続け、合流したハルヲも休む暇なく動き回った。
何かを思い詰める余裕もなく、バタバタと目の前の事をこなして行く。
今はそれが良かった、余計な事を考えなくて済む。
ドルチェナ達【ルプスコナレギオ(狼の王冠)】も例外ではなく、積まれた木材に腰を下ろし、所在なく動く人々を見つめていた。
ドルチェナは涙をグッと堪え、ロクも目に涙を溜め、宙を仰ぐ。
マッシュがドルチェナの肩をポンと叩き、作業に戻った。
中央に集められる動かぬ人達が、また増えていく。
悲しみと悔恨、そして行き場のない思いがここにまた積み上がっていった。
黙々と淡々と自分達の役割を果たすべく、ライーネ達【ソフィアレイナレギオ(知恵の女王)】が、アッシモの残した文献や書物を睨んでいた。
【蟻の巣】にこもり何日が過ぎたのだろうか。
さすがにこうも陽光を浴びないと感覚がおかしくなってくる。
一度、間を置くべきか、オットはライーネ達を見つめ逡巡を繰り返す。
【セルウスファンレギオ(鹿の牙)】団長、レミアの悲報は結果的にライーネの集中を上げる結果となったが、根の詰め方危うさも感じていた。
時間ばかり過ぎていく焦燥感、必死に視線を落としているライーネ達を煽る事は出来ない。
手詰まり感さえ漂い始め、オットの表情は優れない。
一冊の文献を片手に、ペンを走らすライーネの手が唐突に止まった。
小首を傾げ、何度となく文献とメモを照らし合わせると、オットの方へと歩み寄る。
メモを片手に、未だに首を傾げていた。
「ちょっと宜しいかしら」
「もちろん。何か見つけたのかい?」
オットの言葉にライーネは渋い表情を見せる。
まるで自分の出した答えに納得が言っていないようだった。
「あの伝承についてなのですけど⋯⋯」
「ああ、言い伝えのやつね。何か分かったの?」
「白い種を運んだのは勇者ではないようですの」
「うん? 勇気ある者じゃなかったっけ? え? じゃあ誰が運んだの?」
「そこまでは⋯⋯」
勇者じゃない? つまりあの話⋯⋯勇気ある者は勇者じゃない?
まぁ、でも所詮、言い伝えだ。
いや、でもまるで勇者であるようにカモフラージュしているようにも取れる。
じゃあ、いったい誰?
「ライーネ、なぜ勇者じゃないって考えたの?」
「考えたというか、読み解けたある一文に『勇者は勇気ある者の道を切り開く⋯⋯』と読み取れる一文がありましたの。これって勇者は勇気ある者ではないと示していませんか?」
「確かに。勇者は勇気ある者の道を開拓する者⋯⋯か。他にはなんか読み取れたものはないのかい」
「正直、短い文章にすらたどり着けていないのです。申し訳ありませんわ」
「謝る必要なんてないよ。文章はって事は何かしら単語程度なら読み取れた?」
「それもあまり、『小さき者』とか、『聖』、あとは『救済』とか出て来ていますわ。ただ文章になっていないので何とも⋯⋯」
「なるほどね。ライーネ、一度外に出てリセットしよう。君もだけど僕も煮詰まりそうだ」
オットはライーネに笑顔で提案すると、ライーネは困った笑みを返した。
真実に辿り着くまで止まれないって感じだね。
勇気ある者と小さき者ね⋯⋯、単純に考えると小人族かな。でも何かを抽象的に表現しているというのも大いに有り得る。
勇気ある者と小さき者が同一って事だって考えられる。
さすがに考察しようにも、材料が足りないね。
聖⋯⋯、救済⋯⋯。
漠然とし過ぎて、想像すら付かない。
しかし、なんで勇者が勇気ある者として言い伝えたのだろう?
一般的に知れ渡るとマズイとか?
でも、たかが伝承、お伽噺の延長線上だ。
何もない可能性も、往々にしてありえる。
オットの思考が行ったり来たりと同じ所で堂々巡りしていた。
「全く持って難儀だね」
誰に言うでもなく呟いた。
開けたうす暗い殺風景な空間にカイナがたどり着いた。
アッシモがチラリと一瞥し、セルバは感情の薄い視線をカイナに向ける。
カイナは剣呑な雰囲気で薄汚れた服に、煤けた顔でテーブルに腰を下ろした。
「なんか食べ物と飲み物を」
カイナの開口一番の言葉にセルバが目で合図すると、エルフがひとり奥へと消えて行った。
カイナは疲れ切った体を椅子に預け、目を閉じる。
その姿にセルバが口を開いた。
「シルの失敗は痛いね」
「悪運が強いのよ、あの女」
それだけ言うと水を一気に飲み干す。
空になったカップを差し出し、おかわりを要求するとひとつ溜め息をつく。
「根回しも仕掛けも完璧だった。なのにアイツは救われ、助かった。【スミテマアルバレギオ】。邪魔さえ入らなければ完遂だったものを⋯⋯」
カイナは唇を噛み、悔しさを噛み殺した。
セルバはその様子を相変わらず感情薄く眺めている。
予定通りに進まなかった事に悔しさの欠片すら見せない。
「アイツら(スミテマアルバレギオ)は、厄介だ。オレ達も結局、引っ掻き回されたんだからな。どれだけアイツらに邪魔されたか」
セルバとは対照的に、アッシモは静かながらも言葉には怒気がこもっていた。
セルバはアッシモの言葉に嘆息する。
「アッシモ、君の方は大丈夫なのかい? かなりやられたようだが、出来ないならすぐ消えて貰って構わない」
「はっはぁ、てめえらだけじゃ成し遂げるなんて無理だ。人の事よりてめぇの心配していろ、細工は流々仕上げを御覧じろってな。今だってヤツら焦っているぜ。時期に絶望に沈む、見ていろよ」
「まぁ、その言葉を信じよう。こっちはいつでも行ける。カイナ、あなたも手伝いなさい」
カイナが黙って頷いた。
アッシモは顎に手をやり不敵な笑みを浮かべる。
「いつ仕掛けるつもりなんだ?」
「全員が揃ってからでしょう。近々って感じではないでしょうか」
アッシモはセルバに軽く手を上げて了承の意を告げると、クックやセロと共に奥の洞口へと消えて行った。
「あんなに大きな口を叩かせて良いので?」
「構いませんよ。実際仕掛けは彼らが担っていますから、終わるまでですよ。理想の世界までもう一息です」
感情の薄い男が冷たい笑みを浮かべた。
馬車から外を覗いた。
西から北へ駆け抜ける。
蓄えている顎髭を撫でながら、いつもと違う違和感を覚えた。
「なあ、何かおかしくないか?」
【ブルンタウロスレギオ(鉛の雄牛)】副団長、リグが馬車内で寛ぐ団員に呼び掛けた。
手綱を握るナワサが、辺りを見渡し、首を傾げる。
「そうか?」
「ヌシは感が鈍いからダメじゃ。コクー、なんかおかしくないか?」
「えー」
コクーは面倒そうにリグにならい外を覗いた。
キョロキョロと辺りを見渡し、耳をそばだて、匂いを嗅いだ。
犬人の鼻と耳でも異変は感じない。
コクーの動きが突然止まる。
ただ、目に映るものに異変を感じた。
忙しなく視線を動かし、感じとろうと必死になる。
「あ!」
「のう、何か変じゃろ」
「ああ⋯⋯。黒素が濃い⋯⋯」
コクーは茫然とリグを見つめた。
目に見える程の違和感。
北に向かっているのだ、濃くなって当たり前。
だが、精浄しているのに違和感を覚える程濃いのは、やはりおかしい。
「エッラ、この辺で一番近い魔具はどこじゃ?」
「ちょっと待て⋯⋯、ここから東に少しズレた所だな」
「少しなら、構わん。ちょっと寄り道じゃ。ナワサ、東に行け」
「行けって、道なんかねえよ」
「ああん? エッラ何とかしろ」
「なるわけねえだろう。ナワサ、あと2Mkくらい進んで止めろ、そこから歩く」
「しょうがねえなぁ」
ナワサは手綱を握り直し、狭い道を進む。
確かにコクーの言ったとおりだ、黒素が黒い霧のように馬車を包み始める。
「この辺りだ」
エッラの指示で馬車を停めるとリグが馬車を飛び降りた。
「おい! 誰もついてこんのか!」
「ほら呼ばれているぞ」
「どうぞどうぞ」
「ほら、行ってやれよ」
一同が馬車の中で譲り合っていた。
その姿にリグが吠える。
「エッラ、コクー、来い! 全く」
『ええー』
やる気のない返事のふたりを引き連れ、森の奥へと入る。
効率を考え、そこまで奥には進まない所。
エッラが地図と照らし合わせ、地図と森を交互に睨んだ。
エッラが足を止め、小首を傾げた。
「おかしい。この辺りにあるはずなんだが」
埋まっているはずの魔具が見当たらない。
三人は周辺をくまなく探す。
ない。
リグは直感的な嫌悪を感じた。
「おい、ここ⋯⋯」
コクーの指さす地面を見やると、わずかながらに人の手が加わった跡が見て取れた。
リグが急いで掘り返したが、そこから何も出ては来ない。
誰かが抜いた。
いや、誰かじゃない、反勇者のヤツらだ。
「急ぐぞ!」
リグは北へ急ぐ。
何かを狙っている、そう感じずにはいられなかった。
たて続いたレグレクィエス(王の休養)の疲弊は散々たるものだった。
悲しみからの回復が道半ばで頓挫すると誰もが再び俯き、嘆きはさらにさらに深まる。
キルロとエーシャはヒールを落とし続け、合流したハルヲも休む暇なく動き回った。
何かを思い詰める余裕もなく、バタバタと目の前の事をこなして行く。
今はそれが良かった、余計な事を考えなくて済む。
ドルチェナ達【ルプスコナレギオ(狼の王冠)】も例外ではなく、積まれた木材に腰を下ろし、所在なく動く人々を見つめていた。
ドルチェナは涙をグッと堪え、ロクも目に涙を溜め、宙を仰ぐ。
マッシュがドルチェナの肩をポンと叩き、作業に戻った。
中央に集められる動かぬ人達が、また増えていく。
悲しみと悔恨、そして行き場のない思いがここにまた積み上がっていった。
黙々と淡々と自分達の役割を果たすべく、ライーネ達【ソフィアレイナレギオ(知恵の女王)】が、アッシモの残した文献や書物を睨んでいた。
【蟻の巣】にこもり何日が過ぎたのだろうか。
さすがにこうも陽光を浴びないと感覚がおかしくなってくる。
一度、間を置くべきか、オットはライーネ達を見つめ逡巡を繰り返す。
【セルウスファンレギオ(鹿の牙)】団長、レミアの悲報は結果的にライーネの集中を上げる結果となったが、根の詰め方危うさも感じていた。
時間ばかり過ぎていく焦燥感、必死に視線を落としているライーネ達を煽る事は出来ない。
手詰まり感さえ漂い始め、オットの表情は優れない。
一冊の文献を片手に、ペンを走らすライーネの手が唐突に止まった。
小首を傾げ、何度となく文献とメモを照らし合わせると、オットの方へと歩み寄る。
メモを片手に、未だに首を傾げていた。
「ちょっと宜しいかしら」
「もちろん。何か見つけたのかい?」
オットの言葉にライーネは渋い表情を見せる。
まるで自分の出した答えに納得が言っていないようだった。
「あの伝承についてなのですけど⋯⋯」
「ああ、言い伝えのやつね。何か分かったの?」
「白い種を運んだのは勇者ではないようですの」
「うん? 勇気ある者じゃなかったっけ? え? じゃあ誰が運んだの?」
「そこまでは⋯⋯」
勇者じゃない? つまりあの話⋯⋯勇気ある者は勇者じゃない?
まぁ、でも所詮、言い伝えだ。
いや、でもまるで勇者であるようにカモフラージュしているようにも取れる。
じゃあ、いったい誰?
「ライーネ、なぜ勇者じゃないって考えたの?」
「考えたというか、読み解けたある一文に『勇者は勇気ある者の道を切り開く⋯⋯』と読み取れる一文がありましたの。これって勇者は勇気ある者ではないと示していませんか?」
「確かに。勇者は勇気ある者の道を開拓する者⋯⋯か。他にはなんか読み取れたものはないのかい」
「正直、短い文章にすらたどり着けていないのです。申し訳ありませんわ」
「謝る必要なんてないよ。文章はって事は何かしら単語程度なら読み取れた?」
「それもあまり、『小さき者』とか、『聖』、あとは『救済』とか出て来ていますわ。ただ文章になっていないので何とも⋯⋯」
「なるほどね。ライーネ、一度外に出てリセットしよう。君もだけど僕も煮詰まりそうだ」
オットはライーネに笑顔で提案すると、ライーネは困った笑みを返した。
真実に辿り着くまで止まれないって感じだね。
勇気ある者と小さき者ね⋯⋯、単純に考えると小人族かな。でも何かを抽象的に表現しているというのも大いに有り得る。
勇気ある者と小さき者が同一って事だって考えられる。
さすがに考察しようにも、材料が足りないね。
聖⋯⋯、救済⋯⋯。
漠然とし過ぎて、想像すら付かない。
しかし、なんで勇者が勇気ある者として言い伝えたのだろう?
一般的に知れ渡るとマズイとか?
でも、たかが伝承、お伽噺の延長線上だ。
何もない可能性も、往々にしてありえる。
オットの思考が行ったり来たりと同じ所で堂々巡りしていた。
「全く持って難儀だね」
誰に言うでもなく呟いた。
開けたうす暗い殺風景な空間にカイナがたどり着いた。
アッシモがチラリと一瞥し、セルバは感情の薄い視線をカイナに向ける。
カイナは剣呑な雰囲気で薄汚れた服に、煤けた顔でテーブルに腰を下ろした。
「なんか食べ物と飲み物を」
カイナの開口一番の言葉にセルバが目で合図すると、エルフがひとり奥へと消えて行った。
カイナは疲れ切った体を椅子に預け、目を閉じる。
その姿にセルバが口を開いた。
「シルの失敗は痛いね」
「悪運が強いのよ、あの女」
それだけ言うと水を一気に飲み干す。
空になったカップを差し出し、おかわりを要求するとひとつ溜め息をつく。
「根回しも仕掛けも完璧だった。なのにアイツは救われ、助かった。【スミテマアルバレギオ】。邪魔さえ入らなければ完遂だったものを⋯⋯」
カイナは唇を噛み、悔しさを噛み殺した。
セルバはその様子を相変わらず感情薄く眺めている。
予定通りに進まなかった事に悔しさの欠片すら見せない。
「アイツら(スミテマアルバレギオ)は、厄介だ。オレ達も結局、引っ掻き回されたんだからな。どれだけアイツらに邪魔されたか」
セルバとは対照的に、アッシモは静かながらも言葉には怒気がこもっていた。
セルバはアッシモの言葉に嘆息する。
「アッシモ、君の方は大丈夫なのかい? かなりやられたようだが、出来ないならすぐ消えて貰って構わない」
「はっはぁ、てめえらだけじゃ成し遂げるなんて無理だ。人の事よりてめぇの心配していろ、細工は流々仕上げを御覧じろってな。今だってヤツら焦っているぜ。時期に絶望に沈む、見ていろよ」
「まぁ、その言葉を信じよう。こっちはいつでも行ける。カイナ、あなたも手伝いなさい」
カイナが黙って頷いた。
アッシモは顎に手をやり不敵な笑みを浮かべる。
「いつ仕掛けるつもりなんだ?」
「全員が揃ってからでしょう。近々って感じではないでしょうか」
アッシモはセルバに軽く手を上げて了承の意を告げると、クックやセロと共に奥の洞口へと消えて行った。
「あんなに大きな口を叩かせて良いので?」
「構いませんよ。実際仕掛けは彼らが担っていますから、終わるまでですよ。理想の世界までもう一息です」
感情の薄い男が冷たい笑みを浮かべた。
馬車から外を覗いた。
西から北へ駆け抜ける。
蓄えている顎髭を撫でながら、いつもと違う違和感を覚えた。
「なあ、何かおかしくないか?」
【ブルンタウロスレギオ(鉛の雄牛)】副団長、リグが馬車内で寛ぐ団員に呼び掛けた。
手綱を握るナワサが、辺りを見渡し、首を傾げる。
「そうか?」
「ヌシは感が鈍いからダメじゃ。コクー、なんかおかしくないか?」
「えー」
コクーは面倒そうにリグにならい外を覗いた。
キョロキョロと辺りを見渡し、耳をそばだて、匂いを嗅いだ。
犬人の鼻と耳でも異変は感じない。
コクーの動きが突然止まる。
ただ、目に映るものに異変を感じた。
忙しなく視線を動かし、感じとろうと必死になる。
「あ!」
「のう、何か変じゃろ」
「ああ⋯⋯。黒素が濃い⋯⋯」
コクーは茫然とリグを見つめた。
目に見える程の違和感。
北に向かっているのだ、濃くなって当たり前。
だが、精浄しているのに違和感を覚える程濃いのは、やはりおかしい。
「エッラ、この辺で一番近い魔具はどこじゃ?」
「ちょっと待て⋯⋯、ここから東に少しズレた所だな」
「少しなら、構わん。ちょっと寄り道じゃ。ナワサ、東に行け」
「行けって、道なんかねえよ」
「ああん? エッラ何とかしろ」
「なるわけねえだろう。ナワサ、あと2Mkくらい進んで止めろ、そこから歩く」
「しょうがねえなぁ」
ナワサは手綱を握り直し、狭い道を進む。
確かにコクーの言ったとおりだ、黒素が黒い霧のように馬車を包み始める。
「この辺りだ」
エッラの指示で馬車を停めるとリグが馬車を飛び降りた。
「おい! 誰もついてこんのか!」
「ほら呼ばれているぞ」
「どうぞどうぞ」
「ほら、行ってやれよ」
一同が馬車の中で譲り合っていた。
その姿にリグが吠える。
「エッラ、コクー、来い! 全く」
『ええー』
やる気のない返事のふたりを引き連れ、森の奥へと入る。
効率を考え、そこまで奥には進まない所。
エッラが地図と照らし合わせ、地図と森を交互に睨んだ。
エッラが足を止め、小首を傾げた。
「おかしい。この辺りにあるはずなんだが」
埋まっているはずの魔具が見当たらない。
三人は周辺をくまなく探す。
ない。
リグは直感的な嫌悪を感じた。
「おい、ここ⋯⋯」
コクーの指さす地面を見やると、わずかながらに人の手が加わった跡が見て取れた。
リグが急いで掘り返したが、そこから何も出ては来ない。
誰かが抜いた。
いや、誰かじゃない、反勇者のヤツらだ。
「急ぐぞ!」
リグは北へ急ぐ。
何かを狙っている、そう感じずにはいられなかった。
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