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レギオ会議(ミーティング)
レギオ会議(ミーティング)
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重厚なカーペットの敷かれた威厳さえ感じる廊下を通り、静かに両開きの扉が開く。キルロは通された部屋の天井をすぐに見上げた。
「こらぁ、すげぇ」
さして広くもない会議室の天井にびっしり描かれている勇者の戦いの図。
良く知る伝説が色鮮やかに描かれている。
キルロは間抜けた顔でしばらく見入っていた。
豪華を通り越して荘厳なイメージさえ漂うこの部屋でひとりポツリと隅に腰掛ける。
落ち着かない。
豪奢な椅子に腰かけ、豪華なテーブルに手を置くも、指先はそわそわと落ち着きは無かった。
冷たいテーブルの感触が手の平から伝わる。
早かったかな?
目の前に置かれたお茶をひと口すすり、頬杖をついていった。
扉が開き、線の細い猫人と小柄な犬人が入って来る。
ふたりとも妙齢の女性という感じで、猫人は灰色の毛が印象的、犬人の方は小柄でクリっとした目が特徴的だ。
顔見知りなのか、会話を弾ませながら会議室へと現れる。
その姿にキルロが軽く一礼すると、見下すように一瞥するだけだった。
感じわっるぅ、そして居心地わっるぅ。
「あれ? キルロ、なんでそんな隅っこ座っているのさ。もっと奥に座らないとダメダメ」
「オット!」
知った顔が現れて、ほっとした。
いつものにこやかなオットに救われる。
オットと親し気に話す姿を、猫と犬は品定めでもするかのようにキルロを見つめた。
「足の具合はどうだ?」
「いいよ、ものすごくいい。自分の足とは言わないけど不自由は感じないよ」
オットが満面の笑みを見せる。
その言葉が聞けて良かった、【蟻の巣】で別れたあと数日後には双尾蠍の甲殻を入手し、キルロの店に現れたあの早さにはびっくりした。
キルロはオットに手を引かれ奥の席へと移動していく、その様子も猫と犬はじっと見つめている。
「なぁ、オット。あそこのふたり、すげぇ怖いんだけどなんで?」
キルロは席につくとオットの耳元で囁いた。
オットは、はす向かいに座るふたりを一瞥してキルロに向かい直す。
「灰色の頭をした猫人は【セルウスファンレギオ(鹿の牙)】団長のレミア・クス、小柄な犬人は【ソフィアレイナレギオ(知恵の女王)】団長ライーネ・ボアソン。ふたりとも長男アントワーヌの直属だけどサブ的なポジション、二軍って感じかな。密かにアルフェンの直属を狙っていたんじゃない? まだ来てないけどアステルスの直属で同じようにサブ的ポジション、【ルプスコナレギオ(狼の王冠)】って所の狼人の女団長も狙っていたと思うよ。あのふたりほど露骨じゃないと思うけど、君たちに対するやっかみはあるのかもね」
オットはさも愉快そうに話すが、こっちは全然愉快じゃない。
やっぱり会議なんて誰かに押し付ければ良かったと心底思う。
時間が迫り、続々と入室して来た。
先ほど話に上がった狼人の女、青く輝く髪が印象的な年齢不詳の女エルフは【ノクスニンファレギオ(夜の妖精)】、縮れた頭に良く日に焼けた顔のドワは【ブルンタウロスレギオ(鉛の雄牛)】だ。
オットはみんなと挨拶を交わしていく、キルロはその横でチョコンと一礼だけして固まった笑顔を見せていた。
オットがいてくれて助かった。
エルフとドワーフは先ほどのふたりとは違い、興味深そうにキルロの事をチラ見してはボソボソと話している、エルフとドワなのに仲悪くないのね。
やっぱり落ち着かない。
狼人は隅っこに座り腕と足を組み、背もたれに体を預けてじっとしていた。
猫と犬みたいな剣呑な雰囲気はなく、ひとり前を見つめ続けている。
「なあ、オット、どこまで話す?」
「いいとこ八割ってとこかな、アッシモが知っていであろう事柄は話して構わないと思うよ」
キルロの囁きにオットも囁き返した。
オットの言葉からこの空間に全幅の信頼を置いている訳ではないのが分かる。
【ノクスニンファレギオ】、【ブルンタウロスレギオ】はシルとリグの所だ、【イリスアーラレギオ(虹の翼)】はミルバ、信頼出来そうな気もするし、あまりここでコソコソとするのも良くない。サブ組に関していえば絡んだ事がないので未知数。
オットの言う通り、アッシモ知っている事実のみ周知しよう。
「もう、お揃いだね」
雰囲気のあるヒューマンの男性が入ってきた。
勇者と言われたら、迷わず頷いてしまうかも知れないオーラを放つ。
大柄でいながら、整った顔立ちが武骨な感じを薄めている。
紹介されなくても分かる。
【イリスアーラレギオ】団長のウォルコット・スライス。
さすが最大派閥の団長、威厳があるな。
あ! 今の最大はウチだった、なんかバツ悪い。
「やあ、ウォルコット! とうとう一位から引きずり下ろされたね」
オットが満面の笑顔で挨拶を交わした。
⋯⋯その挨拶はないと思うぞ。
「そういや、そうだった。うん? そこの兄さんがウチを引きずり下ろした張本人じゃないのか?」
「いやぁ⋯⋯、ハハハ、どうも⋯⋯」
「ミルバから聞いた話と随分違うな? こんなに大人しいのか?」
「慣れない所で緊張しているんだって」
「なんだ、なんだ、もっとドンと構えていけよ」
ウォルコットが笑顔でキルロの肩をはたく。
苦い笑いを返すのが精一杯、歴戦の兵が勢ぞろいした。
「お! もうみんなお揃いだね。ちょっと早いけど始めよう」
栗色の巻き毛をきっちりと後ろへ流す。
大きな目にがっちりとした体躯は随分と雰囲気が違うが、間違いないアルフェンの兄、アステルス・ミシュロクロイン。
理知的なイメージの長男、優男的な細身の弟、三兄弟で見事にイメージがばらけたな。
「君が【スミテマアルバレギオ】団長、キルロ・ヴィトーロインだね。初めまして、アステルス・ミシュロクロインです。アルフェンが世話になっているね」
笑顔で手を差し出した、この嘘のない笑顔がアルフェンと兄弟だと分かる。
アステルスはそのまま奥へと進み、議長席へ腰を下ろした。
「さてと、もう見て分かるかと思うけど【スミテマアルバレギオ】がアルフェンの直属パーティーとしてすでに動いて貰っている。その活躍ぶりはこっちにも届いているよ。リグのパーティーなんて口を開けば君達の事ばかりだからね。入れ替わりではないけど【アウルカウケウスレギオ(金の靴)】は解体した。この件はまたあとでゆっくり話し合おう。解体の件知らない人はいるかい? ⋯⋯大丈夫だね。現状、最北は相変わらず厳しい状況が続いていて、いつ助っ人が必要になるか分からない状況なので、準備だけはお願いする」
アステルスはここまで一気に話した。
ミルバ達は相変わらず厳しい中を頑張っているのか、相変わらず大変だ。
アステルスの言葉を受け、ウォルコットが手を上げた。
「追加ってわけじゃないが、ウチと【ブルンタウロスレギオ】、【スミテマアルバレギオ】で討伐にあたった件は、未だ全容が明らかに出来ていない。今、ここにいる面子で現場にいたのはキルロ、あんただけだ。実際あれは人為的に起こされたものか?」
キルロはいきなり振られて面喰らう。
確かに現場は副団長しかいなかった。
キルロは諦めたかのように口を開いていく。
「現場にいた人間の総意だ。あれは人為的に起こされた厄災で間違いない」
キルロの言葉にサブ組のふたりは少しざわついた。最北の件は詳しく知らないのかな?
まぁ、あえて言うのもなんだし、その辺りは他の人達にまかそう。
「ちょっといいかしら。【アウルカウケウスレギオ】が反勇者だったという報告は受けておりますが、彼らは具体的に何をしたのかしら?」
【ノクスニンファレギオ】のメイレルが穏やかな口調で手を上げた。
みんなの視線がキルロに集中する。
え?! またオレ?
「コホン。あいつらが何を目標にしていたかは調査中です。具体的にねぇ⋯⋯魔具の略奪と無効化。略奪時におけるパーティーへの襲撃。稀少種への虐殺行為。改良したカコの実での依存と洗脳。実の販売及び廃人化。それにともなう人体実験、多分これでもまだ一部じゃないか」
「ライーネ。君は随分とアッシモに可愛がられていたよね。なんか聞いたりしていないのかな?」
キルロに続き、オットが小柄な犬人へと問いかけた。
優しい口調の裏側にトゲトゲしいオーラが見え隠れしている。
明らかに疑われていると分かるその口調にライーネが睨みを利かす。
一触即発の空気が会議室を包む、オットは全く気にする素振りも見せずに笑みを浮かべていた。
ライーネは溜め息をつき、宙を仰いだ。
「私だってバカじゃないのですよ。その質問が来る事は予測済みです。確かに彼からはいろいろ教えて貰ったのは事実です。しかし彼が悪事を働いていた事は微塵も知りませんでした。そうだとしか言いようがありませんわ」
「だよね。ごめん、ごめん」
オットはライーネに笑顔を見せた。
明らかに怪しいからシロ? だからこそのクロ? 分からん。
下手に突っ込むと邪魔になりそうなので黙っておこう。
「稀少種ってなんじゃ? なぜ狙う?」
フィンが腕を組みながら、眉間に皺を寄せていた。
一同の視線が再びキルロに向いた、またオレかよと頭の中で頭を抱える。
「兎人と小人族。ただ小人族に関しては、はっきりした証拠がないので関わっていたかどうかはまだ断言出来ない」
「ホントにおるのか?」
「ヴィトリアの隅にアルバって自治領があるから行ってみろ。普通に歩いている。あ! 兎人ならウチのパーティーにいるぞ」
こんなやり取りが続くのか、キルロは溜め息まじりに答える。
「あ、それとなんで襲ったかって? 兎人の昔から伝わる術を盗み、独占する為だ。幻の種族がこの世から消えた所で誰も気が付かない。盗んだという証拠すらな」
「術とはなんじゃ?」
「人を酔わす術。モンスターをテイムして拠点を守らせる術。それともうひとつ、モンスターを増やす術だ」
会議室がざわつく、にわかに信じられないキルロの言葉にオット以外全員が厳しい表情を浮かべる。
話を聞いているオットは、ざわつく姿を愉快そうに見つめていた。
「こらぁ、すげぇ」
さして広くもない会議室の天井にびっしり描かれている勇者の戦いの図。
良く知る伝説が色鮮やかに描かれている。
キルロは間抜けた顔でしばらく見入っていた。
豪華を通り越して荘厳なイメージさえ漂うこの部屋でひとりポツリと隅に腰掛ける。
落ち着かない。
豪奢な椅子に腰かけ、豪華なテーブルに手を置くも、指先はそわそわと落ち着きは無かった。
冷たいテーブルの感触が手の平から伝わる。
早かったかな?
目の前に置かれたお茶をひと口すすり、頬杖をついていった。
扉が開き、線の細い猫人と小柄な犬人が入って来る。
ふたりとも妙齢の女性という感じで、猫人は灰色の毛が印象的、犬人の方は小柄でクリっとした目が特徴的だ。
顔見知りなのか、会話を弾ませながら会議室へと現れる。
その姿にキルロが軽く一礼すると、見下すように一瞥するだけだった。
感じわっるぅ、そして居心地わっるぅ。
「あれ? キルロ、なんでそんな隅っこ座っているのさ。もっと奥に座らないとダメダメ」
「オット!」
知った顔が現れて、ほっとした。
いつものにこやかなオットに救われる。
オットと親し気に話す姿を、猫と犬は品定めでもするかのようにキルロを見つめた。
「足の具合はどうだ?」
「いいよ、ものすごくいい。自分の足とは言わないけど不自由は感じないよ」
オットが満面の笑みを見せる。
その言葉が聞けて良かった、【蟻の巣】で別れたあと数日後には双尾蠍の甲殻を入手し、キルロの店に現れたあの早さにはびっくりした。
キルロはオットに手を引かれ奥の席へと移動していく、その様子も猫と犬はじっと見つめている。
「なぁ、オット。あそこのふたり、すげぇ怖いんだけどなんで?」
キルロは席につくとオットの耳元で囁いた。
オットは、はす向かいに座るふたりを一瞥してキルロに向かい直す。
「灰色の頭をした猫人は【セルウスファンレギオ(鹿の牙)】団長のレミア・クス、小柄な犬人は【ソフィアレイナレギオ(知恵の女王)】団長ライーネ・ボアソン。ふたりとも長男アントワーヌの直属だけどサブ的なポジション、二軍って感じかな。密かにアルフェンの直属を狙っていたんじゃない? まだ来てないけどアステルスの直属で同じようにサブ的ポジション、【ルプスコナレギオ(狼の王冠)】って所の狼人の女団長も狙っていたと思うよ。あのふたりほど露骨じゃないと思うけど、君たちに対するやっかみはあるのかもね」
オットはさも愉快そうに話すが、こっちは全然愉快じゃない。
やっぱり会議なんて誰かに押し付ければ良かったと心底思う。
時間が迫り、続々と入室して来た。
先ほど話に上がった狼人の女、青く輝く髪が印象的な年齢不詳の女エルフは【ノクスニンファレギオ(夜の妖精)】、縮れた頭に良く日に焼けた顔のドワは【ブルンタウロスレギオ(鉛の雄牛)】だ。
オットはみんなと挨拶を交わしていく、キルロはその横でチョコンと一礼だけして固まった笑顔を見せていた。
オットがいてくれて助かった。
エルフとドワーフは先ほどのふたりとは違い、興味深そうにキルロの事をチラ見してはボソボソと話している、エルフとドワなのに仲悪くないのね。
やっぱり落ち着かない。
狼人は隅っこに座り腕と足を組み、背もたれに体を預けてじっとしていた。
猫と犬みたいな剣呑な雰囲気はなく、ひとり前を見つめ続けている。
「なあ、オット、どこまで話す?」
「いいとこ八割ってとこかな、アッシモが知っていであろう事柄は話して構わないと思うよ」
キルロの囁きにオットも囁き返した。
オットの言葉からこの空間に全幅の信頼を置いている訳ではないのが分かる。
【ノクスニンファレギオ】、【ブルンタウロスレギオ】はシルとリグの所だ、【イリスアーラレギオ(虹の翼)】はミルバ、信頼出来そうな気もするし、あまりここでコソコソとするのも良くない。サブ組に関していえば絡んだ事がないので未知数。
オットの言う通り、アッシモ知っている事実のみ周知しよう。
「もう、お揃いだね」
雰囲気のあるヒューマンの男性が入ってきた。
勇者と言われたら、迷わず頷いてしまうかも知れないオーラを放つ。
大柄でいながら、整った顔立ちが武骨な感じを薄めている。
紹介されなくても分かる。
【イリスアーラレギオ】団長のウォルコット・スライス。
さすが最大派閥の団長、威厳があるな。
あ! 今の最大はウチだった、なんかバツ悪い。
「やあ、ウォルコット! とうとう一位から引きずり下ろされたね」
オットが満面の笑顔で挨拶を交わした。
⋯⋯その挨拶はないと思うぞ。
「そういや、そうだった。うん? そこの兄さんがウチを引きずり下ろした張本人じゃないのか?」
「いやぁ⋯⋯、ハハハ、どうも⋯⋯」
「ミルバから聞いた話と随分違うな? こんなに大人しいのか?」
「慣れない所で緊張しているんだって」
「なんだ、なんだ、もっとドンと構えていけよ」
ウォルコットが笑顔でキルロの肩をはたく。
苦い笑いを返すのが精一杯、歴戦の兵が勢ぞろいした。
「お! もうみんなお揃いだね。ちょっと早いけど始めよう」
栗色の巻き毛をきっちりと後ろへ流す。
大きな目にがっちりとした体躯は随分と雰囲気が違うが、間違いないアルフェンの兄、アステルス・ミシュロクロイン。
理知的なイメージの長男、優男的な細身の弟、三兄弟で見事にイメージがばらけたな。
「君が【スミテマアルバレギオ】団長、キルロ・ヴィトーロインだね。初めまして、アステルス・ミシュロクロインです。アルフェンが世話になっているね」
笑顔で手を差し出した、この嘘のない笑顔がアルフェンと兄弟だと分かる。
アステルスはそのまま奥へと進み、議長席へ腰を下ろした。
「さてと、もう見て分かるかと思うけど【スミテマアルバレギオ】がアルフェンの直属パーティーとしてすでに動いて貰っている。その活躍ぶりはこっちにも届いているよ。リグのパーティーなんて口を開けば君達の事ばかりだからね。入れ替わりではないけど【アウルカウケウスレギオ(金の靴)】は解体した。この件はまたあとでゆっくり話し合おう。解体の件知らない人はいるかい? ⋯⋯大丈夫だね。現状、最北は相変わらず厳しい状況が続いていて、いつ助っ人が必要になるか分からない状況なので、準備だけはお願いする」
アステルスはここまで一気に話した。
ミルバ達は相変わらず厳しい中を頑張っているのか、相変わらず大変だ。
アステルスの言葉を受け、ウォルコットが手を上げた。
「追加ってわけじゃないが、ウチと【ブルンタウロスレギオ】、【スミテマアルバレギオ】で討伐にあたった件は、未だ全容が明らかに出来ていない。今、ここにいる面子で現場にいたのはキルロ、あんただけだ。実際あれは人為的に起こされたものか?」
キルロはいきなり振られて面喰らう。
確かに現場は副団長しかいなかった。
キルロは諦めたかのように口を開いていく。
「現場にいた人間の総意だ。あれは人為的に起こされた厄災で間違いない」
キルロの言葉にサブ組のふたりは少しざわついた。最北の件は詳しく知らないのかな?
まぁ、あえて言うのもなんだし、その辺りは他の人達にまかそう。
「ちょっといいかしら。【アウルカウケウスレギオ】が反勇者だったという報告は受けておりますが、彼らは具体的に何をしたのかしら?」
【ノクスニンファレギオ】のメイレルが穏やかな口調で手を上げた。
みんなの視線がキルロに集中する。
え?! またオレ?
「コホン。あいつらが何を目標にしていたかは調査中です。具体的にねぇ⋯⋯魔具の略奪と無効化。略奪時におけるパーティーへの襲撃。稀少種への虐殺行為。改良したカコの実での依存と洗脳。実の販売及び廃人化。それにともなう人体実験、多分これでもまだ一部じゃないか」
「ライーネ。君は随分とアッシモに可愛がられていたよね。なんか聞いたりしていないのかな?」
キルロに続き、オットが小柄な犬人へと問いかけた。
優しい口調の裏側にトゲトゲしいオーラが見え隠れしている。
明らかに疑われていると分かるその口調にライーネが睨みを利かす。
一触即発の空気が会議室を包む、オットは全く気にする素振りも見せずに笑みを浮かべていた。
ライーネは溜め息をつき、宙を仰いだ。
「私だってバカじゃないのですよ。その質問が来る事は予測済みです。確かに彼からはいろいろ教えて貰ったのは事実です。しかし彼が悪事を働いていた事は微塵も知りませんでした。そうだとしか言いようがありませんわ」
「だよね。ごめん、ごめん」
オットはライーネに笑顔を見せた。
明らかに怪しいからシロ? だからこそのクロ? 分からん。
下手に突っ込むと邪魔になりそうなので黙っておこう。
「稀少種ってなんじゃ? なぜ狙う?」
フィンが腕を組みながら、眉間に皺を寄せていた。
一同の視線が再びキルロに向いた、またオレかよと頭の中で頭を抱える。
「兎人と小人族。ただ小人族に関しては、はっきりした証拠がないので関わっていたかどうかはまだ断言出来ない」
「ホントにおるのか?」
「ヴィトリアの隅にアルバって自治領があるから行ってみろ。普通に歩いている。あ! 兎人ならウチのパーティーにいるぞ」
こんなやり取りが続くのか、キルロは溜め息まじりに答える。
「あ、それとなんで襲ったかって? 兎人の昔から伝わる術を盗み、独占する為だ。幻の種族がこの世から消えた所で誰も気が付かない。盗んだという証拠すらな」
「術とはなんじゃ?」
「人を酔わす術。モンスターをテイムして拠点を守らせる術。それともうひとつ、モンスターを増やす術だ」
会議室がざわつく、にわかに信じられないキルロの言葉にオット以外全員が厳しい表情を浮かべる。
話を聞いているオットは、ざわつく姿を愉快そうに見つめていた。
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