154 / 263
終焉と始まり
蠢動
しおりを挟む
虫の音が響き渡るだけで森は静かさを湛える。
馬車の荷台であぐらをかき、ひたすらに時間が流れるのだけを待っている。
地面で足を投げ出し座っているユラが大きな欠伸をした。
「ふあぁわぁわぁ~、ヒマだのう」
「ま、順調ってことだ」
ユラは涙を拭い欠伸をかみ殺す。視線を動かしても見えるのは、そびえ立つ高い木ばかりだ。
「獣人はええのう。夜でも見えて」
「ドワーフだって、パワーがあって手先が器用でいいじゃないか」
「でも、やっぱりエルフがええのう。羨ましいのう」
「ネインはドワーフに憧れていたじゃないか。無い物ねだりだ」
「ネインか……、ありゃあ変わりもんだ……」
おまえもだよ、と言おうとしたが寂しげに遠くを見つめる瞳が見えたので止めておいた。
静かな夜だ。
万事上手くいっているのか。
気に病むだけで何も出来ないのもなかなか辛いな。
「マッシュよう」
ユラが小声で呼ぶと目配せしてきた。
「何か気配がするんだが見えるか? あの辺チラチラ明るくねえか?」
「人だな。何かを探しているみたいだ」
遠くの方で点にもみたない光が森の中を動いている。
ふたりは顔を見合わせ、緊張の度合いを上げた。
「摂取、報告したいと申す者がいますがどうされますか?」
ロブは黙ったまま首を縦に振る。
顔面を蒼くする犬人がロブの前に跪いた。
後ろめたさを感じているのか俯いたまま顔をあげようとはしない。
その様子にロブは嘆息する。
「どうしたというのですか、いきなり跪いたりして。顔を上げて下さい」
「あ⋯⋯⋯、いえ⋯⋯⋯」
口ごもる犬人の肩に手を置いた。
「面を上げなさい、時間が惜しいのですよ」
「申し訳ありませんでした!」
体をこわばらせ犬人はさらに頭を下げ震えだした。
「何ですかいきなり? 何かあったのですか?」
諭すようにロブは語りかける。その静けさが逆に犬人を震えさせた。
「ま、街中で出口へ向かうおかしな馬車を見かけました。ご報告が遅れて申し訳ありません」
「おかしな馬車?」
「は、はい。パンの粉を積んだ連結馬車です。荷物の割には大きな馬車でしたが、荷を確認し、行商登録証も確認しました。現場ではおかしな所はなかったもので⋯⋯こんな事になるまでご報告が遅くなってしまいました」
ふむ。
些細なことでも報告させたのは正解だった。
行商登録証? それがもし偽造だとしたら?
そいつらはブックスの仲間と見て良さそうだ、大きな馬車⋯⋯⋯小人族を運ぶ為か?
そう考えるとオーカからそうは離れられないはず。
「良く話してくれました。とても重要な報告ですね」
「はっ! では⋯⋯⋯」
「ただし、あまりにも遅かったですね。いただけないなあ」
目を細めると犬人を睨んだ。
蔑むその瞳に睨まれ、ロブの顔を直視出来ない。
「まあ、過ぎたことは仕方ない。あなたは私と一緒に来なさい」
パチン!
と指を鳴らすと黒ずくめの獣人がどこからともなく現れる。
「出口近辺を徹底的に洗いなさい。怪しい馬車が止まっているはずです。必ず見つけ出しなさい」
黒ずくめは一礼して去っていった。
「私たちも行きましょう。あなたもここで名誉挽回のチャンスをあたえます。しっかりと働くように失敗は許されません」
「は、はい!」
犬人も踵を返し飛ぶように駆けていった。
雑音の元はそこにあるのか。
ロブの双眸が醜く弓なりになると下卑た口元から笑みがこぼれる。
これで終わりだ、雑音を消して、美しい調和を取り戻そう。
小人族の生き残りがいたとしても、そこで待ち伏せればいいだけ。余計な手間が省けたというもの。
「セロたちは残って猫の行方をしっかりと追って下さい。必ず見つけるように」
それだけ言い残し、ロブは足早にその場をあとにした。
「カズナ! 小人族たちを外に出すな! 外にいるやつらはどこでもいい中に押し込め!」
タントとカズナが森の中を駆け抜けていく。
タントの言葉にうなずくとカズナは兎人らしく一段スピードを上げて、居留地へと疾走する。
武装集団は緩慢な動きでダラダラと居留地へと侵入してきた。
何かを探すわけでもなく、求めるだけでもなく、ただただ練り歩いている。
マッシュが言っていたやつらか。
思考が停止した気持ちの悪い集団。
動きは鈍いがパワーはあるって言っていたよな。
更地となった地面をゆるりゆるりと歩いている。
「早く入レ! 敵が来タ! 死ぬゾ!」
少ない言葉で次々に残存している小屋へ押し込んでいく。考えている余裕はない。
振り向くと集団は敷地の中へと侵入していた、急げ。
月明かりにぼんやりと浮かび上がり、それは蠢く。
意思を持たぬその歩みの先に湾曲したククリ刀の刃が月明かりを吸い込む。
ずるずるとひきずる足は遅い。
集団は立ち並んだまま奥へとただただ進む、まるで立ちはだかるタントの存在などないかのようだ。
ククリ刀を構え低い姿勢から突っ込んでいくと、先頭を行く猫人の腕斬り落とした。
ドサっと重みを感じる音と共に剣を握ったままの腕が地面へと落ちていく。
ククリ刀を一振りし、べったりとついた血糊を吹き飛ばすと、隣にいた狼人の首も跳ねた。
意思をなき者は、血溜まりに沈む首など気にも止めない。
ただただ、闇に蠢く。
ただただ、定まらぬ視線で蠢く。
寒気すら覚えるその静けさに、タントは一度距離を置いた。
こいつらの気持ちの悪さは何?
奥にいた猫人がゆっくりと駆け出すと、他のものたちも駆け出した。
何? こんどは何?
経験したことのない光景にタントの思考が停滞する。
体も思考も止まり駆け出す集団をただただ見つめてしまった。
「タント!」
耳の奥へと届くカズナの叫びで我に返った。
壁を叩き、ドア叩き、窓を叩き、容赦のない攻撃が小屋にむけられ、小人族《ホビット》たちをあぶり出そうとしている。
カズナは小屋にへばりつく獣人をひとりまたひとりと剝がしていく。
片腕を落としても、鼻を曲げても、片目が潰れようとも小人族たちをあぶり出さんと叩き続ける。
小屋から悲鳴が飛ぶ。
その方へとタントは疾走する。
扉を破壊され、そこにのそりと意思なき猫が蠢く。
目的を見つけた。
小さき者は屠り、地に返す。
目標を見つけた。そこで肩を寄せ合いおびえる者たち。
声を発することもなく気持ちの悪い笑みをこぼすだけだ。
目標にむけて剣を振りかざす。
ゴツっと天井を叩く。
余りの狭さに何度やっても天井を叩くだけだった。
少しばかりの混乱を生んだが、すぐに振りかざすのをあきらめ肩を寄せ合う震えている小さき者を、串刺しにするべく剣を後ろへと引いた。
双眸は嬉しさから弓なりとなり、小さき者へ絶望の呼び水となる。
涙を流し震えることしか出来ない小さな自分を呪う。
目をつむりその時を待った。
ドサっという音だけ聞こえたが、その時はやって来ない。
「ごめん、遅くなった」
ククリ刀を赤く染めるタントが狭そうに体を縮こませ笑顔を見せると、すぐに出口から飛び出して行った。
助かった安堵と共に何も出来なかった自分たちがひどく小さい物に感じる。
怯え、抱き合うことしか出来なかった⋯⋯仕方のないこと。
そう思っても胸に突っかかる何かが、チクチクと小さき者たちを苛ませた。
「きゃあああ!!」
壁にひびが入る。
小屋に覆いかぶさる意思なき犬を蹴り飛ばす。
壊され半開きになった扉から意思なき狼が顔をのぞかせる。
恐怖と絶望が小さき者へと覆いかぶさっていく。
ここでもまたガタガタと震え、恐怖に身を委ね、頭を抱えることしか出来ない。
扉に出来た隙間からのぞく濁りきった瞳からは、何の意思も感じられず、ただただ恐怖だけが無言で押し寄せてきた。
半開きとなった扉に体を滑り込ませようと意思なき狼は体をよじる。
隙間から腕をいれ足をよじ入れ強引に体を押し込んだ。
手に握られたナイフは廊下に置かれた燭台の小さな炎を反射させる。
メキっと扉の音が軋むたびに小さき者たちは絶望の色を濃くしていく。
泣き叫ぶことも出来ずただひたすらに涙を流し祈る。
バギっ!!
大きな破裂音を鳴らし狼が廊下へ倒れ込んできた。
小さき者たちは目を見開きその姿を見つめることしか出来ない。
自分たちの吐息が浅く繰り返されるのがわかる。
叫びたい衝動だけはグッと抑える。
お願い、誰か。
破壊された扉から兎が閃光のごとく飛び込むと素早い動きで狼の上へと被さり動きを封じた。
すかさず後頭部へ短い刃を突き立てる。
ピクリとも動かなくなる狼を一瞥すると静かに刃を抜く。
刃の跡からは血が溢れ出し狭い廊下を真っ赤に染め上げる。
狭い家に生臭い鉄の臭いが充満すると、体中が震えだし胃の中のものをすべて吐き出した。
終わった安堵と共に見たことのない光景と、感じたことのない感情が一気に襲い小さき者たちの心を激しく揺さぶる。
「もうしばらくの辛抱ダ。頑張レ」
兎のエールに頷き、短くも優しい言葉に希望を抱く。
小さき者たちは心を落ち着かせようとギュッと手を取り合い希望へと心を繋いだ。
馬車の荷台であぐらをかき、ひたすらに時間が流れるのだけを待っている。
地面で足を投げ出し座っているユラが大きな欠伸をした。
「ふあぁわぁわぁ~、ヒマだのう」
「ま、順調ってことだ」
ユラは涙を拭い欠伸をかみ殺す。視線を動かしても見えるのは、そびえ立つ高い木ばかりだ。
「獣人はええのう。夜でも見えて」
「ドワーフだって、パワーがあって手先が器用でいいじゃないか」
「でも、やっぱりエルフがええのう。羨ましいのう」
「ネインはドワーフに憧れていたじゃないか。無い物ねだりだ」
「ネインか……、ありゃあ変わりもんだ……」
おまえもだよ、と言おうとしたが寂しげに遠くを見つめる瞳が見えたので止めておいた。
静かな夜だ。
万事上手くいっているのか。
気に病むだけで何も出来ないのもなかなか辛いな。
「マッシュよう」
ユラが小声で呼ぶと目配せしてきた。
「何か気配がするんだが見えるか? あの辺チラチラ明るくねえか?」
「人だな。何かを探しているみたいだ」
遠くの方で点にもみたない光が森の中を動いている。
ふたりは顔を見合わせ、緊張の度合いを上げた。
「摂取、報告したいと申す者がいますがどうされますか?」
ロブは黙ったまま首を縦に振る。
顔面を蒼くする犬人がロブの前に跪いた。
後ろめたさを感じているのか俯いたまま顔をあげようとはしない。
その様子にロブは嘆息する。
「どうしたというのですか、いきなり跪いたりして。顔を上げて下さい」
「あ⋯⋯⋯、いえ⋯⋯⋯」
口ごもる犬人の肩に手を置いた。
「面を上げなさい、時間が惜しいのですよ」
「申し訳ありませんでした!」
体をこわばらせ犬人はさらに頭を下げ震えだした。
「何ですかいきなり? 何かあったのですか?」
諭すようにロブは語りかける。その静けさが逆に犬人を震えさせた。
「ま、街中で出口へ向かうおかしな馬車を見かけました。ご報告が遅れて申し訳ありません」
「おかしな馬車?」
「は、はい。パンの粉を積んだ連結馬車です。荷物の割には大きな馬車でしたが、荷を確認し、行商登録証も確認しました。現場ではおかしな所はなかったもので⋯⋯こんな事になるまでご報告が遅くなってしまいました」
ふむ。
些細なことでも報告させたのは正解だった。
行商登録証? それがもし偽造だとしたら?
そいつらはブックスの仲間と見て良さそうだ、大きな馬車⋯⋯⋯小人族を運ぶ為か?
そう考えるとオーカからそうは離れられないはず。
「良く話してくれました。とても重要な報告ですね」
「はっ! では⋯⋯⋯」
「ただし、あまりにも遅かったですね。いただけないなあ」
目を細めると犬人を睨んだ。
蔑むその瞳に睨まれ、ロブの顔を直視出来ない。
「まあ、過ぎたことは仕方ない。あなたは私と一緒に来なさい」
パチン!
と指を鳴らすと黒ずくめの獣人がどこからともなく現れる。
「出口近辺を徹底的に洗いなさい。怪しい馬車が止まっているはずです。必ず見つけ出しなさい」
黒ずくめは一礼して去っていった。
「私たちも行きましょう。あなたもここで名誉挽回のチャンスをあたえます。しっかりと働くように失敗は許されません」
「は、はい!」
犬人も踵を返し飛ぶように駆けていった。
雑音の元はそこにあるのか。
ロブの双眸が醜く弓なりになると下卑た口元から笑みがこぼれる。
これで終わりだ、雑音を消して、美しい調和を取り戻そう。
小人族の生き残りがいたとしても、そこで待ち伏せればいいだけ。余計な手間が省けたというもの。
「セロたちは残って猫の行方をしっかりと追って下さい。必ず見つけるように」
それだけ言い残し、ロブは足早にその場をあとにした。
「カズナ! 小人族たちを外に出すな! 外にいるやつらはどこでもいい中に押し込め!」
タントとカズナが森の中を駆け抜けていく。
タントの言葉にうなずくとカズナは兎人らしく一段スピードを上げて、居留地へと疾走する。
武装集団は緩慢な動きでダラダラと居留地へと侵入してきた。
何かを探すわけでもなく、求めるだけでもなく、ただただ練り歩いている。
マッシュが言っていたやつらか。
思考が停止した気持ちの悪い集団。
動きは鈍いがパワーはあるって言っていたよな。
更地となった地面をゆるりゆるりと歩いている。
「早く入レ! 敵が来タ! 死ぬゾ!」
少ない言葉で次々に残存している小屋へ押し込んでいく。考えている余裕はない。
振り向くと集団は敷地の中へと侵入していた、急げ。
月明かりにぼんやりと浮かび上がり、それは蠢く。
意思を持たぬその歩みの先に湾曲したククリ刀の刃が月明かりを吸い込む。
ずるずるとひきずる足は遅い。
集団は立ち並んだまま奥へとただただ進む、まるで立ちはだかるタントの存在などないかのようだ。
ククリ刀を構え低い姿勢から突っ込んでいくと、先頭を行く猫人の腕斬り落とした。
ドサっと重みを感じる音と共に剣を握ったままの腕が地面へと落ちていく。
ククリ刀を一振りし、べったりとついた血糊を吹き飛ばすと、隣にいた狼人の首も跳ねた。
意思をなき者は、血溜まりに沈む首など気にも止めない。
ただただ、闇に蠢く。
ただただ、定まらぬ視線で蠢く。
寒気すら覚えるその静けさに、タントは一度距離を置いた。
こいつらの気持ちの悪さは何?
奥にいた猫人がゆっくりと駆け出すと、他のものたちも駆け出した。
何? こんどは何?
経験したことのない光景にタントの思考が停滞する。
体も思考も止まり駆け出す集団をただただ見つめてしまった。
「タント!」
耳の奥へと届くカズナの叫びで我に返った。
壁を叩き、ドア叩き、窓を叩き、容赦のない攻撃が小屋にむけられ、小人族《ホビット》たちをあぶり出そうとしている。
カズナは小屋にへばりつく獣人をひとりまたひとりと剝がしていく。
片腕を落としても、鼻を曲げても、片目が潰れようとも小人族たちをあぶり出さんと叩き続ける。
小屋から悲鳴が飛ぶ。
その方へとタントは疾走する。
扉を破壊され、そこにのそりと意思なき猫が蠢く。
目的を見つけた。
小さき者は屠り、地に返す。
目標を見つけた。そこで肩を寄せ合いおびえる者たち。
声を発することもなく気持ちの悪い笑みをこぼすだけだ。
目標にむけて剣を振りかざす。
ゴツっと天井を叩く。
余りの狭さに何度やっても天井を叩くだけだった。
少しばかりの混乱を生んだが、すぐに振りかざすのをあきらめ肩を寄せ合う震えている小さき者を、串刺しにするべく剣を後ろへと引いた。
双眸は嬉しさから弓なりとなり、小さき者へ絶望の呼び水となる。
涙を流し震えることしか出来ない小さな自分を呪う。
目をつむりその時を待った。
ドサっという音だけ聞こえたが、その時はやって来ない。
「ごめん、遅くなった」
ククリ刀を赤く染めるタントが狭そうに体を縮こませ笑顔を見せると、すぐに出口から飛び出して行った。
助かった安堵と共に何も出来なかった自分たちがひどく小さい物に感じる。
怯え、抱き合うことしか出来なかった⋯⋯仕方のないこと。
そう思っても胸に突っかかる何かが、チクチクと小さき者たちを苛ませた。
「きゃあああ!!」
壁にひびが入る。
小屋に覆いかぶさる意思なき犬を蹴り飛ばす。
壊され半開きになった扉から意思なき狼が顔をのぞかせる。
恐怖と絶望が小さき者へと覆いかぶさっていく。
ここでもまたガタガタと震え、恐怖に身を委ね、頭を抱えることしか出来ない。
扉に出来た隙間からのぞく濁りきった瞳からは、何の意思も感じられず、ただただ恐怖だけが無言で押し寄せてきた。
半開きとなった扉に体を滑り込ませようと意思なき狼は体をよじる。
隙間から腕をいれ足をよじ入れ強引に体を押し込んだ。
手に握られたナイフは廊下に置かれた燭台の小さな炎を反射させる。
メキっと扉の音が軋むたびに小さき者たちは絶望の色を濃くしていく。
泣き叫ぶことも出来ずただひたすらに涙を流し祈る。
バギっ!!
大きな破裂音を鳴らし狼が廊下へ倒れ込んできた。
小さき者たちは目を見開きその姿を見つめることしか出来ない。
自分たちの吐息が浅く繰り返されるのがわかる。
叫びたい衝動だけはグッと抑える。
お願い、誰か。
破壊された扉から兎が閃光のごとく飛び込むと素早い動きで狼の上へと被さり動きを封じた。
すかさず後頭部へ短い刃を突き立てる。
ピクリとも動かなくなる狼を一瞥すると静かに刃を抜く。
刃の跡からは血が溢れ出し狭い廊下を真っ赤に染め上げる。
狭い家に生臭い鉄の臭いが充満すると、体中が震えだし胃の中のものをすべて吐き出した。
終わった安堵と共に見たことのない光景と、感じたことのない感情が一気に襲い小さき者たちの心を激しく揺さぶる。
「もうしばらくの辛抱ダ。頑張レ」
兎のエールに頷き、短くも優しい言葉に希望を抱く。
小さき者たちは心を落ち着かせようとギュッと手を取り合い希望へと心を繋いだ。
0
お気に入りに追加
59
あなたにおすすめの小説
本当の仲間ではないと勇者パーティから追放されたので、銀髪ケモミミ美少女と異世界でスローライフします。
なつめ猫
ファンタジー
田中一馬は、40歳のIT会社の社員として働いていた。
しかし、異世界ガルドランドに魔王を倒す勇者として召喚されてしまい容姿が17歳まで若返ってしまう。
探しにきた兵士に連れられ王城で、同郷の人間とパーティを組むことになる。
だが【勇者】の称号を持っていなかった一馬は、お荷物扱いにされてしまう。
――ただアイテムボックスのスキルを持っていた事もあり勇者パーティの荷物持ちでパーティに参加することになるが……。
Sランク冒険者となった事で、田中一馬は仲間に殺されかける。
Sランク冒険者に与えられるアイテムボックスの袋。
それを手に入れるまで田中一馬は利用されていたのだった。
失意の内に意識を失った一馬の脳裏に
――チュートリアルが完了しました。
と、いうシステムメッセージが流れる。
それは、田中一馬が40歳まで独身のまま人生の半分を注ぎこんで鍛え上げたアルドガルド・オンラインの最強セーブデータを手に入れた瞬間であった!
「きみは強いからひとりでも平気だよね」と婚約破棄された令嬢、本当に強かったのでモンスターを倒して生きています
猫屋ちゃき
恋愛
侯爵令嬢イリメルは、ある日婚約者であるエーリクに「きみは強いからひとりでも平気だよね?」と婚約破棄される。彼は、平民のレーナとの真実の愛に目覚めてしまったのだという。
ショックを受けたイリメルは、強さとは何かについて考えた。そして悩んだ末、己の強さを確かめるためにモンスター討伐の旅に出ることにした。
旅の最中、イリメルはディータという剣士の青年と出会う。
彼の助けによってピンチを脱したことで、共に冒険をすることになるのだが、強さを求めるためのイリメルの旅は、やがて国家の、世界の存亡を賭けた問題へと直結していくのだった。
婚約破棄から始まる(?)パワー系令嬢の冒険と恋の物語。
見捨てられた万能者は、やがてどん底から成り上がる
グリゴリ
ファンタジー
『旧タイトル』万能者、Sランクパーティーを追放されて、職業が進化したので、新たな仲間と共に無双する。
『見捨てられた万能者は、やがてどん底から成り上がる』【書籍化決定!!】書籍版とWEB版では設定が少し異なっていますがどちらも楽しめる作品となっています。どうぞ書籍版とWEB版どちらもよろしくお願いします。
2023年7月18日『見捨てられた万能者は、やがてどん底から成り上がる2』発売しました。
主人公のクロードは、勇者パーティー候補のSランクパーティー『銀狼の牙』を器用貧乏な職業の万能者で弱く役に立たないという理由で、追放されてしまう。しかしその後、クロードの職業である万能者が進化して、強くなった。そして、新たな仲間や従魔と無双の旅を始める。クロードと仲間達は、様々な問題や苦難を乗り越えて、英雄へと成り上がって行く。※2021年12月25日HOTランキング1位、2021年12月26日ハイファンタジーランキング1位頂きました。お読み頂き有難う御座います。
【完結】神様と呼ばれた医師の異世界転生物語 ~胸を張って彼女と再会するために自分磨きの旅へ!~
川原源明
ファンタジー
秋津直人、85歳。
50年前に彼女の進藤茜を亡くして以来ずっと独身を貫いてきた。彼の傍らには彼女がなくなった日に出会った白い小さな子犬?の、ちび助がいた。
嘗ては、救命救急センターや外科で医師として活動し、多くの命を救って来た直人、人々に神様と呼ばれるようになっていたが、定年を迎えると同時に山を買いプライベートキャンプ場をつくり余生はほとんどここで過ごしていた。
彼女がなくなって50年目の命日の夜ちび助とキャンプを楽しんでいると意識が遠のき、気づけば辺りが真っ白な空間にいた。
白い空間では、創造神を名乗るネアという女性と、今までずっとそばに居たちび助が人の子の姿で土下座していた。ちび助の不注意で茜君が命を落とし、謝罪の意味を込めて、創造神ネアの創る世界に、茜君がすでに転移していることを教えてくれた。そして自分もその世界に転生させてもらえることになった。
胸を張って彼女と再会できるようにと、彼女が降り立つより30年前に転生するように創造神ネアに願った。
そして転生した直人は、新しい家庭でナットという名前を与えられ、ネア様と、阿修羅様から貰った加護と学生時代からやっていた格闘技や、仕事にしていた医術、そして趣味の物作りやサバイバル技術を活かし冒険者兼医師として旅にでるのであった。
まずは最強の称号を得よう!
地球では神様と呼ばれた医師の異世界転生物語
※元ヤンナース異世界生活 ヒロイン茜ちゃんの彼氏編
※医療現場の恋物語 馴れ初め編
S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります
内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品]
冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた!
物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。
職人ギルドから追放された美少女ソフィア。
逃亡中の魔法使いノエル。
騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。
彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。
カクヨムにて完結済み。
( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )
間違い転生!!〜神様の加護をたくさん貰っても それでものんびり自由に生きたい〜
舞桜
ファンタジー
「初めまして!私の名前は 沙樹崎 咲子 35歳 自営業 独身です‼︎よろしくお願いします‼︎」
突然 神様の手違いにより死亡扱いになってしまったオタクアラサー女子、
手違いのお詫びにと色々な加護とチートスキルを貰って異世界に転生することに、
だが転生した先でまたもや神様の手違いが‼︎
神々から貰った加護とスキルで“転生チート無双“
瞳は希少なオッドアイで顔は超絶美人、でも性格は・・・
転生したオタクアラサー女子は意外と物知りで有能?
だが、死亡する原因には不可解な点が…
数々の事件が巻き起こる中、神様に貰った加護と前世での知識で乗り越えて、
神々と家族からの溺愛され前世での心の傷を癒していくハートフルなストーリー?
様々な思惑と神様達のやらかしで異世界ライフを楽しく過ごす主人公、
目指すは“のんびり自由な冒険者ライフ‼︎“
そんな主人公は無自覚に色々やらかすお茶目さん♪
*神様達は間違いをちょいちょいやらかします。これから咲子はどうなるのか?のんびりできるといいね!(希望的観測っw)
*投稿周期は基本的には不定期です、3日に1度を目安にやりたいと思いますので生暖かく見守って下さい
*この作品は“小説家になろう“にも掲載しています
子爵家の長男ですが魔法適性が皆無だったので孤児院に預けられました。変化魔法があれば魔法適性なんて無くても無問題!
八神
ファンタジー
主人公『リデック・ゼルハイト』は子爵家の長男として産まれたが、検査によって『魔法適性が一切無い』と判明したため父親である当主の判断で孤児院に預けられた。
『魔法適性』とは読んで字のごとく魔法を扱う適性である。
魔力を持つ人間には差はあれど基本的にみんな生まれつき様々な属性の魔法適性が備わっている。
しかし例外というのはどの世界にも存在し、魔力を持つ人間の中にもごく稀に魔法適性が全くない状態で産まれてくる人も…
そんな主人公、リデックが5歳になったある日…ふと前世の記憶を思い出し、魔法適性に関係の無い変化魔法に目をつける。
しかしその魔法は『魔物に変身する』というもので人々からはあまり好意的に思われていない魔法だった。
…はたして主人公の運命やいかに…
クラス転移して授かった外れスキルの『無能』が理由で召喚国から奈落ダンジョンへ追放されたが、実は無能は最強のチートスキルでした
コレゼン
ファンタジー
小日向 悠(コヒナタ ユウ)は、クラスメイトと一緒に異世界召喚に巻き込まれる。
クラスメイトの幾人かは勇者に剣聖、賢者に聖女というレアスキルを授かるが一方、ユウが授かったのはなんと外れスキルの無能だった。
召喚国の責任者の女性は、役立たずで戦力外のユウを奈落というダンジョンへゴミとして廃棄処分すると告げる。
理不尽に奈落へと追放したクラスメイトと召喚者たちに対して、ユウは復讐を誓う。
ユウは奈落で無能というスキルが実は『すべてを無にする』、最強のチートスキルだということを知り、奈落の規格外の魔物たちを無能によって倒し、規格外の強さを身につけていく。
これは、理不尽に追放された青年が最強のチートスキルを手に入れて、復讐を果たし、世界と己を救う物語である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる