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オルン
邂逅
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ハルヲがアックスピークをジッと見上げる。
「もう一羽がいない」
ハルヲの言葉に改めて見上げてみる。鶏冠のないアックスピークの姿が確かに見当たらない。
そもそもさっきのヤツではないのか?
「さっきのヤツなのか?」
「十中八九、間違いないわね」
ハルヲは意を決し近づいていくと、距離を置くかのように離れて行くが逃げては行かない。
少しずつ近づくと崖の所まで逃げて行った。
どうして?
逃げ出さないのが不思議だ。
ハルヲはアックスピークの行動に疑問を感じながらも崖へと近づく。
アックスピークは崖の先端で佇む。まるでここに来てくれと言わんばかりに。
ハルヲは首を傾げつつ、何気なく崖の下を見下ろした。
!!
「キルロ! プロトン!」
ハルヲが焦った様子で、キルロとプロトンに声を掛けた。
ハルヲは崖下から視線は外さない。
逼迫した呼び声にキルロとプロトンは、ハルヲに向かって駆け出す。
ハルヲはすぐにプロトンのバックパックをあさり始め、キルロは崖下を覗き込んだ。
キルロの目に滑落したとおぼしき、アックスピークの姿が目に映る。
岩の上で力なく横たわり、ピクリともしない。
呆然となるキルロを横目にハルヲが着々と降下の準備を始めると、スルスルとロープをつたい崖下を目指した。
「アンタも来て」
ハルヲの切実な声に黙って頷くと、倒れているアックスピークの元へ急いだ。
息はあるが血溜まりが出来る程のひどい出血が見えた。
キルロは急いでヒールをかける。
《レフェクト・サナティオ・トゥルボ》
ゆっくりと吸い込まれていく光球を横目に、ハルヲは点滴の準備を始める。
針から垂れる薬液を確認すると背中の脈へと針を差し込み、点滴を手に側に立った。
崖の上から心配そうにキノやマッシュ達が覗き込み、行く末を見守っている。
呼吸に力強さが戻りゆっくりと目を開く。山は越えた。
「もう大丈夫よ」
ハルオが傍らから優しく声を掛けた。
光球は全て吸い込まれた、これで傷は大丈夫。
キルロがハルヲの持っている点滴を受け取るとハルヲは座り込み優しく撫でながら様子を伺う。
これで大丈夫だ、体力が戻れば元気になるはず。
ハルヲが顔を上げ“ふぅ”と安堵の溜め息を漏らすと、その様子を上から見つめていた一同も安堵に包まれた。
点滴が終わるとアックスピークは、ゆっくり立ち上がろうと体をもたげ始めた。胴の部分に優しく手を掛け、ハルヲがそれを手伝う。
立ち上がると羽をバサッとひとつ羽ばたかせ“クエッ”と小さく鳴いた。
ハルヲとキルロが笑顔を交わし、崖の上から覗いている皆に親指を立てて見せる。
布に包みロープで引っ張り上げていく。
上で佇んでいたアックスピークが寄ってくると、“クエッ”と鳴き合い安堵している姿が見られた。
「良かったね、アンタ達」
ハルヲが二羽を撫で無事を一緒に喜びあう、周りの皆もほっこりと暖かい気分になり緩やかな空気に包まれた。
「いいのか?」
「なんとなく気分じゃないから今回は止めておく」
キルロがテイムをしないハルヲに言葉を掛けた。
チャンスだと思ったのだが、これに乗じてテイムするのは嫌なようだ。
「じゃあね、アンタ達元気でね。もう落ちちゃダメよ」
ハルヲがアックスピークの首に手を添えて言葉を掛ける。
アックスピークは嫌がる素振りも見せず、頭をハルヲに預けた。
アックスピーク達に手を振りながら再出発する。低い木々に囲まれ始めると道の雪も減り気温も上がってきた。
「ねえねえ」
キノがまたキルロの袖を引っ張り、後ろを指差す。
指さす方に振り返り、ニヤリとハルヲに笑みを向けた。
「ハルヲ!」
ハルヲが振り向くと、目を見開き驚愕の表情を浮かべる。
「行ってやれよ」
マッシュが肩をすくめながらウインクする。
皆が笑顔でハルヲを見つめる。少しもじもじと、体を揺らしていたが弾かれたように体を起こした。
「ちょっと行ってくる!」
ハルヲは少し離れたアックスピークへと駆け出す。
小さいハルヲが大きな二羽を優しく抱きかかえる様が見てとれた。
「なんとかの恩返しみたいだな」
「だな」
キルロとマッシュがその光景に視線を送りながら笑いあった。
「テイムする所、初めて見ましたです」
「私もです」
フェインの囁きにネインも頷く。
初めて見る光景に感動し、誰もが黙って見入っていた。
しばらくするとハルヲがアックスピークを引き連れて戻って来た。
「いちばーん」
キノが鶏冠のついたアックスピークの背に飛び乗ると、イヤがる素振りもなくパーティーと共にゆっくりと歩を進めた。
鳥上でキノが満面の笑みを浮かべ、満足そうに鼻歌を奏でている。
午後の高い陽射しの下、パーティーは無事にミドラスへ帰還した。
いつもの通りにハルヲンテイムへ直行する。
「え、え?? うおおああああ!! これホンモノ??!!」
馬車から出て来たアックスピークを見たアウロのテンションが、おかしな事になっているというか若干涙ぐんでいる。
他のスタッフも“うそー”などと感嘆の声を上げ物珍しそうに眺めていた。
「今日から仲間よ、皆宜しくね」
「ハルさん凄すぎますよ、見られただけでもラッキーなのに」
「そうそう、本の中でしかお目にかかれない仔よね」
皆がまじまじと眺めながら口々にハルの功績を称える。
“たまたまだから止めて”とハルヲはクエストの片付けへと逃げた。
『お疲れ様!』
片付け終わったスミテマアルバは後日また集合という事で、各々家路に着いた。
「さてと」
もうひと仕事とハルヲは自分に気合いを入れ直す。
テイムモンスターの登録、なによりアックスピークの居住区を作らなければ、アウロと手分けして文献を漁り最適解を熟慮する。
敷地は十分にある、いい環境を作ってあげたい。
「あれ? そういえばエレナは?」
エレナにも見せて上げたかったのに見当たらないことに気がついた。
ハルヲはアウロに問いかける。
「それが2、3日姿を見せてないのです。体調悪いのかな? 誕生日も近いのに」
「エレナの誕生日っていつ?」
「明後日ですよ」
なんとなくハルヲの心がざわつく。せっかくの成人だ、皆でお祝いしてやりたい。しかし、その姿がない。
明日辺りは来るかな? 明日来なかったら家に行ってみよう。
もしかしたらキルロのとこに顔を出しているかもしれない。
ただそれは、希望的観測にしか過ぎないと感じていた。
「もう一羽がいない」
ハルヲの言葉に改めて見上げてみる。鶏冠のないアックスピークの姿が確かに見当たらない。
そもそもさっきのヤツではないのか?
「さっきのヤツなのか?」
「十中八九、間違いないわね」
ハルヲは意を決し近づいていくと、距離を置くかのように離れて行くが逃げては行かない。
少しずつ近づくと崖の所まで逃げて行った。
どうして?
逃げ出さないのが不思議だ。
ハルヲはアックスピークの行動に疑問を感じながらも崖へと近づく。
アックスピークは崖の先端で佇む。まるでここに来てくれと言わんばかりに。
ハルヲは首を傾げつつ、何気なく崖の下を見下ろした。
!!
「キルロ! プロトン!」
ハルヲが焦った様子で、キルロとプロトンに声を掛けた。
ハルヲは崖下から視線は外さない。
逼迫した呼び声にキルロとプロトンは、ハルヲに向かって駆け出す。
ハルヲはすぐにプロトンのバックパックをあさり始め、キルロは崖下を覗き込んだ。
キルロの目に滑落したとおぼしき、アックスピークの姿が目に映る。
岩の上で力なく横たわり、ピクリともしない。
呆然となるキルロを横目にハルヲが着々と降下の準備を始めると、スルスルとロープをつたい崖下を目指した。
「アンタも来て」
ハルヲの切実な声に黙って頷くと、倒れているアックスピークの元へ急いだ。
息はあるが血溜まりが出来る程のひどい出血が見えた。
キルロは急いでヒールをかける。
《レフェクト・サナティオ・トゥルボ》
ゆっくりと吸い込まれていく光球を横目に、ハルヲは点滴の準備を始める。
針から垂れる薬液を確認すると背中の脈へと針を差し込み、点滴を手に側に立った。
崖の上から心配そうにキノやマッシュ達が覗き込み、行く末を見守っている。
呼吸に力強さが戻りゆっくりと目を開く。山は越えた。
「もう大丈夫よ」
ハルオが傍らから優しく声を掛けた。
光球は全て吸い込まれた、これで傷は大丈夫。
キルロがハルヲの持っている点滴を受け取るとハルヲは座り込み優しく撫でながら様子を伺う。
これで大丈夫だ、体力が戻れば元気になるはず。
ハルヲが顔を上げ“ふぅ”と安堵の溜め息を漏らすと、その様子を上から見つめていた一同も安堵に包まれた。
点滴が終わるとアックスピークは、ゆっくり立ち上がろうと体をもたげ始めた。胴の部分に優しく手を掛け、ハルヲがそれを手伝う。
立ち上がると羽をバサッとひとつ羽ばたかせ“クエッ”と小さく鳴いた。
ハルヲとキルロが笑顔を交わし、崖の上から覗いている皆に親指を立てて見せる。
布に包みロープで引っ張り上げていく。
上で佇んでいたアックスピークが寄ってくると、“クエッ”と鳴き合い安堵している姿が見られた。
「良かったね、アンタ達」
ハルヲが二羽を撫で無事を一緒に喜びあう、周りの皆もほっこりと暖かい気分になり緩やかな空気に包まれた。
「いいのか?」
「なんとなく気分じゃないから今回は止めておく」
キルロがテイムをしないハルヲに言葉を掛けた。
チャンスだと思ったのだが、これに乗じてテイムするのは嫌なようだ。
「じゃあね、アンタ達元気でね。もう落ちちゃダメよ」
ハルヲがアックスピークの首に手を添えて言葉を掛ける。
アックスピークは嫌がる素振りも見せず、頭をハルヲに預けた。
アックスピーク達に手を振りながら再出発する。低い木々に囲まれ始めると道の雪も減り気温も上がってきた。
「ねえねえ」
キノがまたキルロの袖を引っ張り、後ろを指差す。
指さす方に振り返り、ニヤリとハルヲに笑みを向けた。
「ハルヲ!」
ハルヲが振り向くと、目を見開き驚愕の表情を浮かべる。
「行ってやれよ」
マッシュが肩をすくめながらウインクする。
皆が笑顔でハルヲを見つめる。少しもじもじと、体を揺らしていたが弾かれたように体を起こした。
「ちょっと行ってくる!」
ハルヲは少し離れたアックスピークへと駆け出す。
小さいハルヲが大きな二羽を優しく抱きかかえる様が見てとれた。
「なんとかの恩返しみたいだな」
「だな」
キルロとマッシュがその光景に視線を送りながら笑いあった。
「テイムする所、初めて見ましたです」
「私もです」
フェインの囁きにネインも頷く。
初めて見る光景に感動し、誰もが黙って見入っていた。
しばらくするとハルヲがアックスピークを引き連れて戻って来た。
「いちばーん」
キノが鶏冠のついたアックスピークの背に飛び乗ると、イヤがる素振りもなくパーティーと共にゆっくりと歩を進めた。
鳥上でキノが満面の笑みを浮かべ、満足そうに鼻歌を奏でている。
午後の高い陽射しの下、パーティーは無事にミドラスへ帰還した。
いつもの通りにハルヲンテイムへ直行する。
「え、え?? うおおああああ!! これホンモノ??!!」
馬車から出て来たアックスピークを見たアウロのテンションが、おかしな事になっているというか若干涙ぐんでいる。
他のスタッフも“うそー”などと感嘆の声を上げ物珍しそうに眺めていた。
「今日から仲間よ、皆宜しくね」
「ハルさん凄すぎますよ、見られただけでもラッキーなのに」
「そうそう、本の中でしかお目にかかれない仔よね」
皆がまじまじと眺めながら口々にハルの功績を称える。
“たまたまだから止めて”とハルヲはクエストの片付けへと逃げた。
『お疲れ様!』
片付け終わったスミテマアルバは後日また集合という事で、各々家路に着いた。
「さてと」
もうひと仕事とハルヲは自分に気合いを入れ直す。
テイムモンスターの登録、なによりアックスピークの居住区を作らなければ、アウロと手分けして文献を漁り最適解を熟慮する。
敷地は十分にある、いい環境を作ってあげたい。
「あれ? そういえばエレナは?」
エレナにも見せて上げたかったのに見当たらないことに気がついた。
ハルヲはアウロに問いかける。
「それが2、3日姿を見せてないのです。体調悪いのかな? 誕生日も近いのに」
「エレナの誕生日っていつ?」
「明後日ですよ」
なんとなくハルヲの心がざわつく。せっかくの成人だ、皆でお祝いしてやりたい。しかし、その姿がない。
明日辺りは来るかな? 明日来なかったら家に行ってみよう。
もしかしたらキルロのとこに顔を出しているかもしれない。
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