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鍛冶師と調教師と白蛇
鍛冶師と猫ときどき調教師
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作業の合間の中休み。
小さな中庭で日中ぼっこしているキノを開け放った窓辺から眺めていた。
中心街からは外れているとはいえ雑多な生活音が混じり合い静かに耳を掠める。
“平和だな”
キノと出会った当初はバタついていたが今やすっかり落ち着いた。
習性が所々やや不明だが些細な事だ、多分。
窓辺に腰掛けて淹れたお茶をすする。
『おじさーん』
子供の声が聞こえてきた。
声の方に目をやると猫人の目鼻立ちがはっきりした将来美人になりそうな女の子が手を振っている。
肩まである銀髪が汚れなのか少しくすんで見えるが耳がピコピコ動き興味津々なのが隠し切れていない。
柵越しに佇んでいる姿から視線を逸らす。
ここにおじさんはいない。
「ゴーグルのおじさーん」
“むぅ”
「お兄さん!」
と窓辺から返事をする。おじさんではない。
しっかり否定しておくうら若き19歳だ。
「お兄さん、この子と遊んでもいい?」
とキノを指差した。
「叩いたり、いじめたりしなかったらいいぞ」
「しないよー」
笑顔で答えると中庭に入りキノの隣で優しく撫ではじめた。
「怖くないのか?」
「怖くないよ。この子は大人しくていい子だもん」
その様子を眺めながらゆるく思考を巡らす。
“キャット……でもハーフぽいな”ヒューマン街にいるって事はハーフか。
「この子名前はなんていうの?」
「キノ」
「キノ~、いい子だね~」
呼びかけて嬉しそうに何度も呼びかけている。
「嬢ちゃん名前は?」
「エレナ、エレナ・イルヴァン」
いくつくらいかな?
10才くらいかな?
その割りにはしっかりしてるな。
着てるものはちょっとボロいが。
「エレナ学校は?」
「行ってない」
「じゃあ友達は?」
首を何度か横に振った。
“そっか”と相づちだけ打っておく。
エレナとキノで今度は追いかけっこしてキャッキャッしていた。
楽しそうなのでしばらくは放っておこう。
背もたれに体重をかけ人心地つく。
しばらくもしないうちにエレナがへたり込んでしまった。
顔色も芳しくない。
「どうした? 大丈夫か? 顔色も良くないぞ」
近くまで行って声を掛ける。
近くで見ると顔は少し煤けていて、正直少し臭う。
「大丈夫。ちょっと疲れちゃった」
「少し休むか。キノおいで、エレナも中入んな」
テーブルに腰掛けさせカップに入れたミルクをエレナに手渡す。
「これ、飲んでもいいの……かな?」
「ミルクくらいで遠慮なんかすんな飲め」
エレナはカップに入ったミルクをしばらく眺め躊躇していたが口をつけると一気に飲み欲した。
“美味しい……”と空になったカップを握りしめつぶやいた。
「もしかして腹が減ってるのか? なんか食うか? 簡単なものならあるぞ」
首を横にブンブンと振る。
「お父さんが“ほどこし”は受けるなって」
ヒューマン街にいるって事は父親がヒューマンで母親がキャットピープルかな?。
「その親父さんはどうしてるんだ?」
「うーん、月の日から仕事でクエスト? 行ってる」
「月の日って昨日か?」
また首をブンブンと振った。
一週間以上前か。
「じゃあ、お袋さんが一緒にこっちで住んでるのか?」
また首をブンブンと振る。
「お母さんは知らない……」
握りしめたコップを見つめながら呟いた。
ということは一週間以上こんな小さい子供が一人で暮らしてるのか。
「生活費はどうしてる?」
「お父さんが置いてってくれる。50ミルドあったけど今はこれだけ……」
ポケットからジャラっと出した。
残金2ミルド。
一週間で50ミルドって、2日がいいとこだ。
「いつ帰ってくるんだ?」
「うーん、わかんない」
笑顔で返したきた。
この生活が彼女の中での普通なのだ。
しかし2ミルドじゃ何も買えない。
“ポン”とワザとらしく手を打つ。
「エレナはキノともう友達だよな」
とにこやかに問い掛けた。
エレナの表情が一気に明るくなり“うん”と力強く頷く。
「じゃあ、友達のエレナにお願いがあるんだ。聞いてくれるか?」
「なぁに? 聞くよー」
いい子だと頭をグシャとなでる。
ボサボサの頭はクシャクシャの形になりそのままだ。
「キノはさ、人が食べるのを見せないと食べないんだよ。キノにこれは食べれるんだよって教えてやってくれないか?」
エレナは状況がイマイチ飲み込めていない様子だったがお構いなしに続ける。
「キノおいで。エレナが見本見せてくれるってよ」
ニヤリとしながらエレナに視線を送るとキノもそれを見てエレナを見つめた。
テーブルの上にパンとフルーツと干し肉、簡単なスープを並べた。
「エレナ、キノに見本を見せてやってくれ」
キョトンとしながらテーブルの上やキルロの顔、キノをせわしなく見回す。
「エレナ、友達の為だぞ」
と優しく説いた。
“い、いただきます”と言うと一心不乱に食べついたがキノに気がつき食べるスピードを落とすと、フルーツやら干し肉を自分が食べるのを見せてちゃんとキノに分け与えた。
「エレナは生き物好きか?」
「うん、怖いのは嫌いだけど」
「そうか……そういえばエレナいくつだ?」
「14」
“え!”今度成人じゃないか。
随分と幼く見える。
慢性的な栄養不足か?
たわいもない会話を続けながら考えを巡らせる。
こんな子達を全部救う所かエレナでさえ救うなんてきっとおこがましい。
救ってあげたい気持ちとそんなでしゃばったマネをすべきか。
思考が同じ所でグルグルと空回りを起こす。
“あっ”
“そうか”
“友達の為だ”
自分の言った言葉が自分に返ってきた。
不遇な子の為じゃない。
キノの友達の為だ。
なんだ単純な事じゃないかと笑顔で二人を見つめた。
「あ!おじ……お兄さん、お名前教えて」
今、おじさんって言ってなかったか。
苦い顔を向けるとエレナが照れ笑いした。
「キルロだ。宜しくな!」
“フン”と笑いながら答えた。
小さな中庭で日中ぼっこしているキノを開け放った窓辺から眺めていた。
中心街からは外れているとはいえ雑多な生活音が混じり合い静かに耳を掠める。
“平和だな”
キノと出会った当初はバタついていたが今やすっかり落ち着いた。
習性が所々やや不明だが些細な事だ、多分。
窓辺に腰掛けて淹れたお茶をすする。
『おじさーん』
子供の声が聞こえてきた。
声の方に目をやると猫人の目鼻立ちがはっきりした将来美人になりそうな女の子が手を振っている。
肩まである銀髪が汚れなのか少しくすんで見えるが耳がピコピコ動き興味津々なのが隠し切れていない。
柵越しに佇んでいる姿から視線を逸らす。
ここにおじさんはいない。
「ゴーグルのおじさーん」
“むぅ”
「お兄さん!」
と窓辺から返事をする。おじさんではない。
しっかり否定しておくうら若き19歳だ。
「お兄さん、この子と遊んでもいい?」
とキノを指差した。
「叩いたり、いじめたりしなかったらいいぞ」
「しないよー」
笑顔で答えると中庭に入りキノの隣で優しく撫ではじめた。
「怖くないのか?」
「怖くないよ。この子は大人しくていい子だもん」
その様子を眺めながらゆるく思考を巡らす。
“キャット……でもハーフぽいな”ヒューマン街にいるって事はハーフか。
「この子名前はなんていうの?」
「キノ」
「キノ~、いい子だね~」
呼びかけて嬉しそうに何度も呼びかけている。
「嬢ちゃん名前は?」
「エレナ、エレナ・イルヴァン」
いくつくらいかな?
10才くらいかな?
その割りにはしっかりしてるな。
着てるものはちょっとボロいが。
「エレナ学校は?」
「行ってない」
「じゃあ友達は?」
首を何度か横に振った。
“そっか”と相づちだけ打っておく。
エレナとキノで今度は追いかけっこしてキャッキャッしていた。
楽しそうなのでしばらくは放っておこう。
背もたれに体重をかけ人心地つく。
しばらくもしないうちにエレナがへたり込んでしまった。
顔色も芳しくない。
「どうした? 大丈夫か? 顔色も良くないぞ」
近くまで行って声を掛ける。
近くで見ると顔は少し煤けていて、正直少し臭う。
「大丈夫。ちょっと疲れちゃった」
「少し休むか。キノおいで、エレナも中入んな」
テーブルに腰掛けさせカップに入れたミルクをエレナに手渡す。
「これ、飲んでもいいの……かな?」
「ミルクくらいで遠慮なんかすんな飲め」
エレナはカップに入ったミルクをしばらく眺め躊躇していたが口をつけると一気に飲み欲した。
“美味しい……”と空になったカップを握りしめつぶやいた。
「もしかして腹が減ってるのか? なんか食うか? 簡単なものならあるぞ」
首を横にブンブンと振る。
「お父さんが“ほどこし”は受けるなって」
ヒューマン街にいるって事は父親がヒューマンで母親がキャットピープルかな?。
「その親父さんはどうしてるんだ?」
「うーん、月の日から仕事でクエスト? 行ってる」
「月の日って昨日か?」
また首をブンブンと振った。
一週間以上前か。
「じゃあ、お袋さんが一緒にこっちで住んでるのか?」
また首をブンブンと振る。
「お母さんは知らない……」
握りしめたコップを見つめながら呟いた。
ということは一週間以上こんな小さい子供が一人で暮らしてるのか。
「生活費はどうしてる?」
「お父さんが置いてってくれる。50ミルドあったけど今はこれだけ……」
ポケットからジャラっと出した。
残金2ミルド。
一週間で50ミルドって、2日がいいとこだ。
「いつ帰ってくるんだ?」
「うーん、わかんない」
笑顔で返したきた。
この生活が彼女の中での普通なのだ。
しかし2ミルドじゃ何も買えない。
“ポン”とワザとらしく手を打つ。
「エレナはキノともう友達だよな」
とにこやかに問い掛けた。
エレナの表情が一気に明るくなり“うん”と力強く頷く。
「じゃあ、友達のエレナにお願いがあるんだ。聞いてくれるか?」
「なぁに? 聞くよー」
いい子だと頭をグシャとなでる。
ボサボサの頭はクシャクシャの形になりそのままだ。
「キノはさ、人が食べるのを見せないと食べないんだよ。キノにこれは食べれるんだよって教えてやってくれないか?」
エレナは状況がイマイチ飲み込めていない様子だったがお構いなしに続ける。
「キノおいで。エレナが見本見せてくれるってよ」
ニヤリとしながらエレナに視線を送るとキノもそれを見てエレナを見つめた。
テーブルの上にパンとフルーツと干し肉、簡単なスープを並べた。
「エレナ、キノに見本を見せてやってくれ」
キョトンとしながらテーブルの上やキルロの顔、キノをせわしなく見回す。
「エレナ、友達の為だぞ」
と優しく説いた。
“い、いただきます”と言うと一心不乱に食べついたがキノに気がつき食べるスピードを落とすと、フルーツやら干し肉を自分が食べるのを見せてちゃんとキノに分け与えた。
「エレナは生き物好きか?」
「うん、怖いのは嫌いだけど」
「そうか……そういえばエレナいくつだ?」
「14」
“え!”今度成人じゃないか。
随分と幼く見える。
慢性的な栄養不足か?
たわいもない会話を続けながら考えを巡らせる。
こんな子達を全部救う所かエレナでさえ救うなんてきっとおこがましい。
救ってあげたい気持ちとそんなでしゃばったマネをすべきか。
思考が同じ所でグルグルと空回りを起こす。
“あっ”
“そうか”
“友達の為だ”
自分の言った言葉が自分に返ってきた。
不遇な子の為じゃない。
キノの友達の為だ。
なんだ単純な事じゃないかと笑顔で二人を見つめた。
「あ!おじ……お兄さん、お名前教えて」
今、おじさんって言ってなかったか。
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