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友達(キノ)
友達(キノ)
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「エレナー!」
わ、私??
その女の子の髪は白銀に輝き、光に反射してキラキラと輝いていました。かわいいといいう形容詞より美しいという形容詞がぴったりな切れ長の目。瞳は金色の輝きを見せ、抜けるように白い肌はまるで純白のオーラを纏っているかのごとく不思議な雰囲気の女の子。
そんな厳かな姿とは裏腹に、元気いっぱいのやんちゃな姿に自然と笑みがこぼれてしまいます。
「あなたがキルロさんの言っていた女の子? お人形さんみたい。綺麗ねぇ」
「キノだよー」
え?
何を言っているの? この子?
可愛く不貞腐れている女の子をまじまじと見つめてしまいます。
キノ? うん? 頭の中がぐるんぐるんしていきます。
キルロさんも難しい顔をして女の子の言葉に唸っているだけでした。いえ、キルロさんだけではありません。キノと言い張る女の子を目の前にして、みんなが困った顔をしていました。
それはそうですよね。キノは白くてにょろにょろしているのですから、手も足も、まして話したりとか有り得ないわけですよ。常識に乏しい私でもそれは分かります。
みんなが困惑すればするほど、女の子はますます膨れていき、可愛く怒って見せました。
「もう! ハルヲと大変だったのにー! なんで、なんでー! キラキラした所でキルロ、見つけてあげたでしょう、もう!」
可愛く怒る姿に思わず笑ってしまいましたが、ハルさんだけは顔を強張らせていました。女の子の言葉を聞いた途端です、急にハルさん雰囲気が真剣なものへと変わりました。
「ちょっと来て」
ハルさんが女の子を部屋の隅へと連れて行き、何か話し込み始めます。ハルさんは少し驚いたりして、難しい顔を見せながら女の子と話し込んでいました。
「なぁ、アウロ。蛇人っているのか?」
「いるのかも知れないし、いないのかも知れない」
「ああ、要するにわかんねえって事か」
アウロさんの答えにキルロさんが嘆息します。
蛇人? 確かに聞いた事ありませんね。キノがそうかも知れないって事でしょうか?
「キノね。この子。そう考えないと辻褄が合わない⋯⋯」
『⋯⋯ぇ』
席に戻って来たハルさんの言葉にみんな絶句してしまいました。みんな一斉に言葉を失います。
私もびっくりですが、みなさんと違い知識が乏しいので、みなさんより驚きは少ないです。
それになぜかこの子がキノと言われて、思うより素直に受け入れている自分もいます。
ただ、みなさんの様子を見る限り常識では有り得ない事だと物凄く伝わって来ました。ひとしきり首を傾げ、難しい顔でこの状況を飲み込もうと必死に見えます。
「この間の【吹き溜まり】での出来事をこの子は知っているのよ。というか覚えている。それこそ、その場に一緒にいなければ、知らないであろう事までね。まいったわ」
ハルさんは苦笑いで肩をすくめました。みんなの視線が女の子⋯⋯キノに向きます。
「キノ⋯⋯なのか?」
キルロさんの恐る恐るの言葉に、キノがむくれます。
「もう、さっきからそう言っているでしょう!」
決定的なハルさんの言葉が、有り得ない状況を肯定します。
みんなはさらに固まってしまいました。この状況をどう捉えればいいのか、いえ、捉える事はやはり難しいようです。
有り得ない事が起きている?
分かろうと思っても分からない。
みんなの顔からそれがありありと伝わって来ました。
私はみんなの顔を見回しながら、その様子が面白くなっちゃいました。だって、こんなにみんなをびっくりさせるなんて何だかキノらしい。私はひとりで顔をほころばせます、そしてまたみんなの驚いた顔を見回していました。
パン!
ハルさんが突然、手を鳴らしました。固まっていたみんなの視線がハルさんに向いていきます。
「この子に起こった事はくれぐれも口外しないように。いい? どう考えてもこんな事が知れ渡ったら面倒事にしかならないからね。門外不出よ、分かった?」
ハルさんの言葉に全員が黙って頷きます。この状況を無理にでも飲み込むと、みんなの顔つきは一気に厳しいものへと変わりました。
まったく人騒がせな子なんだから。
私は何だかひとり、事の重大さを感じていなかったのかも知れません。いえ、それほど重要だと思わなかったのかも。蛇だろうと人だろうとキノはキノで、私にとって最初の友達に変わりはないのですから。
キノの首筋についていたナンバリングを解除布で消していきます。ナンバリングされていた文字がインクのように布に吸い込まれていく様はとても不思議な光景でした。イヤがるキノをキルロさんがなだめ、鼻のピアスを外していきます。人がつけていたらイジメだと思われちゃいますものね。
穏やかなはずの一日が怒涛の一日に変わりました。皆さんも何だかお疲れの様子です。
「あ! キルロ3万ミルドね」
「⋯⋯へ? ち、治療代?」
「バカね、あんた。そんなもの貰うわけないでしょう。調教の解除料よ。実費だけなんだから、ありがたいと思いなさい。そして、崇めなさい」
「崇めるか! ⋯⋯つか、払うしかない?」
「ない」
きっぱりと言い切るハルさんにキルロさんは盛大に肩を落としています。
そんないつものやり取りをみんなで見つめているうちに、キノの衝撃は薄らいでいました。
まったく、本当に人騒がせな子なんだから。
わ、私??
その女の子の髪は白銀に輝き、光に反射してキラキラと輝いていました。かわいいといいう形容詞より美しいという形容詞がぴったりな切れ長の目。瞳は金色の輝きを見せ、抜けるように白い肌はまるで純白のオーラを纏っているかのごとく不思議な雰囲気の女の子。
そんな厳かな姿とは裏腹に、元気いっぱいのやんちゃな姿に自然と笑みがこぼれてしまいます。
「あなたがキルロさんの言っていた女の子? お人形さんみたい。綺麗ねぇ」
「キノだよー」
え?
何を言っているの? この子?
可愛く不貞腐れている女の子をまじまじと見つめてしまいます。
キノ? うん? 頭の中がぐるんぐるんしていきます。
キルロさんも難しい顔をして女の子の言葉に唸っているだけでした。いえ、キルロさんだけではありません。キノと言い張る女の子を目の前にして、みんなが困った顔をしていました。
それはそうですよね。キノは白くてにょろにょろしているのですから、手も足も、まして話したりとか有り得ないわけですよ。常識に乏しい私でもそれは分かります。
みんなが困惑すればするほど、女の子はますます膨れていき、可愛く怒って見せました。
「もう! ハルヲと大変だったのにー! なんで、なんでー! キラキラした所でキルロ、見つけてあげたでしょう、もう!」
可愛く怒る姿に思わず笑ってしまいましたが、ハルさんだけは顔を強張らせていました。女の子の言葉を聞いた途端です、急にハルさん雰囲気が真剣なものへと変わりました。
「ちょっと来て」
ハルさんが女の子を部屋の隅へと連れて行き、何か話し込み始めます。ハルさんは少し驚いたりして、難しい顔を見せながら女の子と話し込んでいました。
「なぁ、アウロ。蛇人っているのか?」
「いるのかも知れないし、いないのかも知れない」
「ああ、要するにわかんねえって事か」
アウロさんの答えにキルロさんが嘆息します。
蛇人? 確かに聞いた事ありませんね。キノがそうかも知れないって事でしょうか?
「キノね。この子。そう考えないと辻褄が合わない⋯⋯」
『⋯⋯ぇ』
席に戻って来たハルさんの言葉にみんな絶句してしまいました。みんな一斉に言葉を失います。
私もびっくりですが、みなさんと違い知識が乏しいので、みなさんより驚きは少ないです。
それになぜかこの子がキノと言われて、思うより素直に受け入れている自分もいます。
ただ、みなさんの様子を見る限り常識では有り得ない事だと物凄く伝わって来ました。ひとしきり首を傾げ、難しい顔でこの状況を飲み込もうと必死に見えます。
「この間の【吹き溜まり】での出来事をこの子は知っているのよ。というか覚えている。それこそ、その場に一緒にいなければ、知らないであろう事までね。まいったわ」
ハルさんは苦笑いで肩をすくめました。みんなの視線が女の子⋯⋯キノに向きます。
「キノ⋯⋯なのか?」
キルロさんの恐る恐るの言葉に、キノがむくれます。
「もう、さっきからそう言っているでしょう!」
決定的なハルさんの言葉が、有り得ない状況を肯定します。
みんなはさらに固まってしまいました。この状況をどう捉えればいいのか、いえ、捉える事はやはり難しいようです。
有り得ない事が起きている?
分かろうと思っても分からない。
みんなの顔からそれがありありと伝わって来ました。
私はみんなの顔を見回しながら、その様子が面白くなっちゃいました。だって、こんなにみんなをびっくりさせるなんて何だかキノらしい。私はひとりで顔をほころばせます、そしてまたみんなの驚いた顔を見回していました。
パン!
ハルさんが突然、手を鳴らしました。固まっていたみんなの視線がハルさんに向いていきます。
「この子に起こった事はくれぐれも口外しないように。いい? どう考えてもこんな事が知れ渡ったら面倒事にしかならないからね。門外不出よ、分かった?」
ハルさんの言葉に全員が黙って頷きます。この状況を無理にでも飲み込むと、みんなの顔つきは一気に厳しいものへと変わりました。
まったく人騒がせな子なんだから。
私は何だかひとり、事の重大さを感じていなかったのかも知れません。いえ、それほど重要だと思わなかったのかも。蛇だろうと人だろうとキノはキノで、私にとって最初の友達に変わりはないのですから。
キノの首筋についていたナンバリングを解除布で消していきます。ナンバリングされていた文字がインクのように布に吸い込まれていく様はとても不思議な光景でした。イヤがるキノをキルロさんがなだめ、鼻のピアスを外していきます。人がつけていたらイジメだと思われちゃいますものね。
穏やかなはずの一日が怒涛の一日に変わりました。皆さんも何だかお疲れの様子です。
「あ! キルロ3万ミルドね」
「⋯⋯へ? ち、治療代?」
「バカね、あんた。そんなもの貰うわけないでしょう。調教の解除料よ。実費だけなんだから、ありがたいと思いなさい。そして、崇めなさい」
「崇めるか! ⋯⋯つか、払うしかない?」
「ない」
きっぱりと言い切るハルさんにキルロさんは盛大に肩を落としています。
そんないつものやり取りをみんなで見つめているうちに、キノの衝撃は薄らいでいました。
まったく、本当に人騒がせな子なんだから。
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