上 下
150 / 169
番外 ※ 時間軸はランダムです。結婚後の話もあります。

花を愛でる 3 ※

しおりを挟む



「っ・・・なんて綺麗・・・」


大切にそっとラグの上のクッションに横たえた伊織が、感に堪えないと云わんばかりの表情で呟いた。
今の伊織の視界は、咲き誇る満開の花で埋め尽くされているのだろう。彼が喜んでくれるのなら、それは私にとっても喜びなのだ。

「ん・・・どうした?」

花を愛でている筈の伊織の手が、そっと伸ばされて私の頬を撫でて髪をすくように添えられ、彼の漆黒の瞳はじっと花ではなく・・・私を見つめている。

「あんまり綺麗で・・・どうしよう。俺の旦那さまが・・・尊い・・・」

「・・・??伊織・・?」

・・・ふむ、伊織は時折可笑しな事を云うのだ・・・今はそれ程に酔ってはいないのだが。
少し、時間をおいて休ませるべきだろうか。

水分を摂らせた方が良いと判断し、伊織に覆い被さった躰を少し持ち上げた瞬間だ。
伊織の腕が私の首にしがみつくように廻され、ぐっと引き寄せられた。

抱き付いた伊織をそのままに、起き上がる事など容易いが、どこか必死な様子の彼の好きなようにされてみようと思った。

しかし、彼の言動にそれすら直ぐに霧散してしまったが。




「やだやだ、離れちゃ・・だめっ・・・ぎゅってして、キス・・・したい・・・っんぅ・・」

「ーーっ!伊織っ・・・」

ーーー無論・・・当然絶対に私も離れたくない、伊織から離れるなど考えられぬ地獄だ。私は、いつでも伊織をこの腕に抱いていたい、ずっと“ぎゅって”していたい。口付けは・・・勿論何時でも直ぐにしたいに決まっているーーー

・・・何と可愛らしい事をしてくれるのだ、私の伊織は。
その言葉が、私に無防備に預けられる躰が、私をどれ程に煽るのか、分かっているのかいないのか。

しがみつく様に抱き付く伊織を己に取り込むかの様に抱き締め、口付けをねだる唇を深く塞ぐ。

「ふ・・ぅんっ・・・んっ・・んんっ・・」

「・・・っ!!・・っ・・」

いつも・・・深い口付けは私が彼を味わい、彼に私を味わわせるのだが・・・今は真逆だ。
私の口内に彼の甘い舌が差し入れられ、懸命に私の舌を絡めては唇を甘く食む。

可愛らしい伊織の、大胆な口付けに、その甘さと快楽に脳がくらりと揺れる様だった。
・・・愛する伊織伴侶にこれ程に求められ、何もせずにいるなど、私には不可能だ。


伊織のしたい様に、と思っていたのだが。
彼の私を求める言葉と口付けに、私が私こそどれ程に伊織を求め欲しているのかを、未だ伝えきれてはいない気がして。

それならば。

この美しい花と光景と共に、生涯伊織の記憶に残る様に。

この場で、私を・・・私の想いを、伊織に彼の中に刻み付けるのだ。




「あっ・・・あんっ・・んんっっ~~!」

薄桃色に染まる肌に、同じ色彩の花弁がそっと舞い落ちる。
私の伊織に、その肌に触れるモノは何であろうと赦せぬと。そして、私の方が彼を美しく彩れると私の印キスマークを刻めば、そこに舞う花弁が彼をより艶やかに彩る様に、また嫉妬してしまう。
私は伊織に関しては、花弁にすら嫉妬してしまうのだ・・・我ながら、どれ程に狭量なのだと思うが。

上気し紅く染まる頬と、更に紅く色付く唇は、何度口付けても甘く愛おしく。溢れる程に沸き上がる欲求のままに、熱く締まり絡み付くナカを強く揺すり上げ、彼の良い処を愛せば、甘い嬌声と白い蜜が放たれる。
なだらかな腹に散る、快楽の証を辿る指先が、その下に伊織を求め昂る自身の存在を見つける。健気に私の全てを受け入れるそこを、上から掌で愛おしめば、また可愛らしい声が上がる事を、私はつい先日知ったのだが。

「ひぁ・・っ!・・ぁあっ・・やぁ、んっ・・・あっ、あっ・・・あぁっっ!」

蕩ける様に熱く絡み付くナカが、愛撫に反応して甘く締まり吸い付く様にうねっては、私を懊悩させる。伊織がもたらす、あまりの快楽に奥歯を噛み締め、持っていかれぬ様に踏み留まる。
もっと、この時間をゆるりと楽しみたいのだ。一度達してしまえば、私は加減など出来る余裕すら失ってしまうだろう。今そうなっては・・・
 
「ぁ・・っん・・いるふぁ・・ん・・」

「ん・・どうしたのだ?」

少し舌足らずな、私を呼ぶ愛しい声に、刹那に其方へと意識が移る。

「あぁ・・・」

その愛らしさに、言葉を紡ぐ事が出来ない。
潤みけぶる漆黒の瞳が、私を見つめていた。朱く染まる目元は艶やかで、うっとりとした瞳が可憐に映る。この美しい貌には、平静で居られるようになる事など、生涯無いであろうな。


「ふふっ・・・やっぱり、きれい」

「ん・・・?」

そっと私の頬に触れる、いつもよりも熱い手が頬を髪を、私の唇を撫でる。

「花の中のいるふぁん・・・きれいで、てんし?んん・・・男神みたい・・」

・・・花をその肌に纏い、ふわりと甘い笑みを浮かべる伊織こそが、綺麗で天使の様だと云うのに。

「ん?・・・何を云うのかと思えば。私は神などではない・・・それではそなたと共に居られぬではないか。・・・それに、綺麗で可愛らしい天使はここにいるではないか」

紅い頬に、漆黒の髪に、紅く色付く唇に触れて。それでは到底足らずに、口付けを落とせば、私の天使伊織がふにゃりと幸せそうに微笑む。
その微笑みで、私に幸福を、そして愛情と欲情を抱かせる、愛おしい伊織天使

「・・・いや、天使であっては困る・・・伊織は私だけの、私の伴侶愛しい人だ。天に還られては、私は正気では・・・いられない」

本当に天使であったなら、堕天させてでも私の傍に、腕の中に閉じ込めるだろう。

誰にも渡さぬと、思わず腕の中の伊織を強く抱き締める。
その途端、彼の躰がびくりと震え甘い声が溢れ、熱いナカがうねり絡み付いた。

「きゃぁ・・・っん・・ナカっ・・・ぐりって・・・や、ぁ・・・っ!」

「くっ・・・ぅ・・」

伊織のナカに自身に与えられる甘い快楽に、今すぐにでも吐き出してしまいたい己が、どうにか押し留めていた快楽の極まりに急激に押し上げられる。

どうやら抱き締めた為に態勢が変わった時、伊織の弱い処前立腺を強く可愛がってしまっていた様だ。
引き込まれる様に、猛りきった切っ先が最奥に咥え込まれ、甘く食まれてしまえば、もう私は我慢など出来る筈も無く。

「伊織っ・・!くっ・・このまま・・赦せ」

「っあぁ!ぁっ、いるふぁ・・ん・・すき・・っ・・」

伊織を愛する為に生じる肌の交わる音と、淫らに響く水音と、艶やかに濡れる私を呼ぶ声に。


「伊織・・・愛している。生涯、離れないと・・・どうか・・・ずっと傍に」

「んっ・・うんっ・いる、から、ずっと・・っっあ・・んんーーっ!」

重なる唇から、直接もたらされる“是”の返答に、そのまま深く口付けを交わしたまま、愛情を欲望を私の全てを彼に注ぎ、互いに極めた。





「んっ・・・イルファン、くすぐったいってば・・あ、キスは、止めないで・・?」

「くくっ・・・ああ、すまない。どうにも可愛くて、な・・・私とて、口付けは止めたくはないな」


愛交の火照りの色濃く残る、くたりと力の入らぬ様子の伊織を抱き締めて穏やかな口付けを交わすのは、至福と云っても過言ではない時間だ。
今だ艶やかな色気を纏う伊織に触れずにいるなど、出来よう筈が無く。
触れれば敏感に反応する肌を、可能な限りそっと優しく愛でていたのだが。“くすぐったい”と、可愛らしく訴えられてしまっては、この両腕は抱き締める役目に徹するしかないのだ。
正直、少々残念ではあるが、愛する伊織の願いは全力で叶えるのが“すぱだり”の甲斐性であるのだ、うむ。
勿論、“キスは止めないで”と云う、素晴らしい願いも全力で叶える。無論、私の願いと合致する上、この上ない至福だ。


伊織の満ち足りた、幸せだと云わんばかりの貌
を見つめて、私も同じような表情をしているのだろうと思いながら、ふわりと舞い落ちる薄桃色の花弁が目に映る。

「・・・この花たちには、イルファンの気持ちが一杯に込められているんだって思うと、俺はすっごく嬉しいんだ。俺の願いを、想いを大切にしてくれてありがとう。俺、イルファンに会えて、本当に幸せだ・・・大好きで、えっと、その・・・愛してる、からっ・・・」

「伊織・・・私こそ喜びと多くの幸福を、そなたから貰っているのだ。愛している、私の伊織」

薄桃色に落ち着いていた頬を、紅色に染めながら懸命に想いと愛を伝えてくれる伊織に。
掛け替えの無い、何にも変える事など出来はしない存在に、心からの感謝と愛を伝える。
この想いは、形や色を変える事があろうとも、私が有る限り決して変わる事も消える事も、無いのだ。


だからーーー


この時に。
毎年、共に有る限り。この時期この花を伊織と共に愛で・・・私の想いを伝え続けると、決めたのだ。




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

遅くなりましたっ!
出来ました~_(^^;)ゞ


しおりを挟む
感想 18

あなたにおすすめの小説

総受けルート確定のBLゲーの主人公に転生してしまったんだけど、ここからソロエンドを迎えるにはどうすればいい?

寺一(テライチ)
BL
──妹よ。にいちゃんは、これから五人の男に抱かれるかもしれません。 ユズイはシスコン気味なことを除けばごくふつうの男子高校生。 ある日、熱をだした妹にかわって彼女が予約したゲームを店まで取りにいくことに。 その帰り道、ユズイは階段から足を踏みはずして命を落としてしまう。 そこに現れた女神さまは「あなたはこんなにはやく死ぬはずではなかった、お詫びに好きな条件で転生させてあげます」と言う。 それに「チート転生がしてみたい」と答えるユズイ。 女神さまは喜んで願いを叶えてくれた……ただしBLゲーの世界で。 BLゲーでのチート。それはとにかく攻略対象の好感度がバグレベルで上がっていくということ。 このままではなにもしなくても総受けルートが確定してしまう! 男にモテても仕方ないとユズイはソロエンドを目指すが、チートを望んだ代償は大きくて……!? 溺愛&執着されまくりの学園ラブコメです。

君のことなんてもう知らない

ぽぽ
BL
早乙女琥珀は幼馴染の佐伯慶也に毎日のように告白しては振られてしまう。 告白をOKする素振りも見せず、軽く琥珀をあしらう慶也に憤りを覚えていた。 だがある日、琥珀は記憶喪失になってしまい、慶也の記憶を失ってしまう。 今まで自分のことをあしらってきた慶也のことを忘れて、他の人と恋を始めようとするが… 「お前なんて知らないから」

社畜だけど異世界では推し騎士の伴侶になってます⁈

めがねあざらし
BL
気がつくと、そこはゲーム『クレセント・ナイツ』の世界だった。 しかも俺は、推しキャラ・レイ=エヴァンスの“伴侶”になっていて……⁈ 記憶喪失の俺に課されたのは、彼と共に“世界を救う鍵”として戦う使命。 しかし、レイとの誓いに隠された真実や、迫りくる敵の陰謀が俺たちを追い詰める――。 異世界で見つけた愛〜推し騎士との奇跡の絆! 推しとの距離が近すぎる、命懸けの異世界ラブファンタジー、ここに開幕!

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

転生悪役令息、雌落ち回避で溺愛地獄!?義兄がラスボスです!

めがねあざらし
BL
人気BLゲーム『ノエル』の悪役令息リアムに転生した俺。 ゲームの中では「雌落ちエンド」しか用意されていない絶望的な未来が待っている。 兄の過剰な溺愛をかわしながらフラグを回避しようと奮闘する俺だが、いつしか兄の目に奇妙な影が──。 義兄の溺愛が執着へと変わり、ついには「ラスボス化」!? このままじゃゲームオーバー確定!?俺は義兄を救い、ハッピーエンドを迎えられるのか……。 ※タイトル変更(2024/11/27)

転生したけど赤ちゃんの頃から運命に囲われてて鬱陶しい

翡翠飾
BL
普通に高校生として学校に通っていたはずだが、気が付いたら雨の中道端で動けなくなっていた。寒くて死にかけていたら、通りかかった馬車から降りてきた12歳くらいの美少年に拾われ、何やら大きい屋敷に連れていかれる。 それから温かいご飯食べさせてもらったり、お風呂に入れてもらったり、柔らかいベッドで寝かせてもらったり、撫でてもらったり、ボールとかもらったり、それを投げてもらったり───ん? 「え、俺何か、犬になってない?」 豹獣人の番大好き大公子(12)×ポメラニアン獣人転生者(1)の話。 ※どんどん年齢は上がっていきます。 ※設定が多く感じたのでオメガバースを無くしました。

腐男子(攻め)主人公の息子に転生した様なので夢の推しカプをサポートしたいと思います

たむたむみったむ
BL
前世腐男子だった記憶を持つライル(5歳)前世でハマっていた漫画の(攻め)主人公の息子に転生したのをいい事に、自分の推しカプ (攻め)主人公レイナード×悪役令息リュシアンを実現させるべく奔走する毎日。リュシアンの美しさに自分を見失ない(受け)主人公リヒトの優しさに胸を痛めながらもポンコツライルの脳筋レイナード誘導作戦は成功するのだろうか? そしてライルの知らないところでばかり起こる熱い展開を、いつか目にする事が……できればいいな。 ほのぼのまったり進行です。 他サイトにも投稿しておりますが、こちら改めて書き直した物になります。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

処理中です...