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番外 ※ 時間軸はランダムです。結婚後の話もあります。
花を愛でる 3 ※
しおりを挟む「っ・・・なんて綺麗・・・」
大切にそっとラグの上のクッションに横たえた伊織が、感に堪えないと云わんばかりの表情で呟いた。
今の伊織の視界は、咲き誇る満開の花で埋め尽くされているのだろう。彼が喜んでくれるのなら、それは私にとっても喜びなのだ。
「ん・・・どうした?」
花を愛でている筈の伊織の手が、そっと伸ばされて私の頬を撫でて髪をすくように添えられ、彼の漆黒の瞳はじっと花ではなく・・・私を見つめている。
「あんまり綺麗で・・・どうしよう。俺の旦那さまが・・・尊い・・・」
「・・・??伊織・・?」
・・・ふむ、伊織は時折可笑しな事を云うのだ・・・今はそれ程に酔ってはいないのだが。
少し、時間をおいて休ませるべきだろうか。
水分を摂らせた方が良いと判断し、伊織に覆い被さった躰を少し持ち上げた瞬間だ。
伊織の腕が私の首にしがみつくように廻され、ぐっと引き寄せられた。
抱き付いた伊織をそのままに、起き上がる事など容易いが、どこか必死な様子の彼の好きなようにされてみようと思った。
しかし、彼の言動にそれすら直ぐに霧散してしまったが。
「やだやだ、離れちゃ・・だめっ・・・ぎゅってして、キス・・・したい・・・っんぅ・・」
「ーーっ!伊織っ・・・」
ーーー無論・・・当然絶対に私も離れたくない、伊織から離れるなど考えられぬ地獄だ。私は、いつでも伊織をこの腕に抱いていたい、ずっと“ぎゅって”していたい。口付けは・・・勿論何時でも直ぐにしたいに決まっているーーー
・・・何と可愛らしい事をしてくれるのだ、私の伊織は。
その言葉が、私に無防備に預けられる躰が、私をどれ程に煽るのか、分かっているのかいないのか。
しがみつく様に抱き付く伊織を己に取り込むかの様に抱き締め、口付けをねだる唇を深く塞ぐ。
「ふ・・ぅんっ・・・んっ・・んんっ・・」
「・・・っ!!・・っ・・」
いつも・・・深い口付けは私が彼を味わい、彼に私を味わわせるのだが・・・今は真逆だ。
私の口内に彼の甘い舌が差し入れられ、懸命に私の舌を絡めては唇を甘く食む。
可愛らしい伊織の、大胆な口付けに、その甘さと快楽に脳がくらりと揺れる様だった。
・・・愛する伊織にこれ程に求められ、何もせずにいるなど、私には不可能だ。
伊織のしたい様に、と思っていたのだが。
彼の私を求める言葉と口付けに、私が私こそどれ程に伊織を求め欲しているのかを、未だ伝えきれてはいない気がして。
それならば。
この美しい花と光景と共に、生涯伊織の中に残る様に。
この場で、私を・・・私の想いを、伊織に彼の中に刻み付けるのだ。
「あっ・・・あんっ・・んんっっ~~!」
薄桃色に染まる肌に、同じ色彩の花弁がそっと舞い落ちる。
私の伊織に、その肌に触れるモノは何であろうと赦せぬと。そして、私の方が彼を美しく彩れると私の印を刻めば、そこに舞う花弁が彼をより艶やかに彩る様に、また嫉妬してしまう。
私は伊織に関しては、花弁にすら嫉妬してしまうのだ・・・我ながら、どれ程に狭量なのだと思うが。
上気し紅く染まる頬と、更に紅く色付く唇は、何度口付けても甘く愛おしく。溢れる程に沸き上がる欲求のままに、熱く締まり絡み付くナカを強く揺すり上げ、彼の良い処を愛せば、甘い嬌声と白い蜜が放たれる。
なだらかな腹に散る、快楽の証を辿る指先が、その下に伊織を求め昂る自身の存在を見つける。健気に私の全てを受け入れるそこを、上から掌で愛おしめば、また可愛らしい声が上がる事を、私はつい先日知ったのだが。
「ひぁ・・っ!・・ぁあっ・・やぁ、んっ・・・あっ、あっ・・・あぁっっ!」
蕩ける様に熱く絡み付くナカが、愛撫に反応して甘く締まり吸い付く様にうねっては、私を懊悩させる。伊織がもたらす、あまりの快楽に奥歯を噛み締め、持っていかれぬ様に踏み留まる。
もっと、この時間をゆるりと楽しみたいのだ。一度達してしまえば、私は加減など出来る余裕すら失ってしまうだろう。今そうなっては・・・
「ぁ・・っん・・いるふぁ・・ん・・」
「ん・・どうしたのだ?」
少し舌足らずな、私を呼ぶ愛しい声に、刹那に其方へと意識が移る。
「あぁ・・・」
その愛らしさに、言葉を紡ぐ事が出来ない。
潤みけぶる漆黒の瞳が、私を見つめていた。朱く染まる目元は艶やかで、うっとりとした瞳が可憐に映る。この美しい貌には、平静で居られるようになる事など、生涯無いであろうな。
「ふふっ・・・やっぱり、きれい」
「ん・・・?」
そっと私の頬に触れる、いつもよりも熱い手が頬を髪を、私の唇を撫でる。
「花の中のいるふぁん・・・きれいで、てんし?んん・・・男神みたい・・」
・・・花をその肌に纏い、ふわりと甘い笑みを浮かべる伊織こそが、綺麗で天使の様だと云うのに。
「ん?・・・何を云うのかと思えば。私は神などではない・・・それではそなたと共に居られぬではないか。・・・それに、綺麗で可愛らしい天使はここにいるではないか」
紅い頬に、漆黒の髪に、紅く色付く唇に触れて。それでは到底足らずに、口付けを落とせば、私の天使がふにゃりと幸せそうに微笑む。
その微笑みで、私に幸福を、そして愛情と欲情を抱かせる、愛おしい伊織。
「・・・いや、天使であっては困る・・・伊織は私だけの、私の伴侶だ。天に還られては、私は正気では・・・いられない」
本当に天使であったなら、堕天させてでも私の傍に、腕の中に閉じ込めるだろう。
誰にも渡さぬと、思わず腕の中の伊織を強く抱き締める。
その途端、彼の躰がびくりと震え甘い声が溢れ、熱いナカがうねり絡み付いた。
「きゃぁ・・・っん・・ナカっ・・・ぐりって・・・や、ぁ・・・っ!」
「くっ・・・ぅ・・」
伊織のナカに自身に与えられる甘い快楽に、今すぐにでも吐き出してしまいたい己が、どうにか押し留めていた快楽の極まりに急激に押し上げられる。
どうやら抱き締めた為に態勢が変わった時、伊織の弱い処を強く可愛がってしまっていた様だ。
引き込まれる様に、猛りきった切っ先が最奥に咥え込まれ、甘く食まれてしまえば、もう私は我慢など出来る筈も無く。
「伊織っ・・!くっ・・このまま・・赦せ」
「っあぁ!ぁっ、いるふぁ・・ん・・すき・・っ・・」
伊織を愛する為に生じる肌の交わる音と、淫らに響く水音と、艶やかに濡れる私を呼ぶ声に。
「伊織・・・愛している。生涯、離れないと・・・どうか・・・ずっと傍に」
「んっ・・うんっ・いる、から、ずっと・・っっあ・・んんーーっ!」
重なる唇から、直接もたらされる“是”の返答に、そのまま深く口付けを交わしたまま、愛情を欲望を私の全てを彼に注ぎ、互いに極めた。
「んっ・・・イルファン、くすぐったいってば・・あ、キスは、止めないで・・?」
「くくっ・・・ああ、すまない。どうにも可愛くて、な・・・私とて、口付けは止めたくはないな」
愛交の火照りの色濃く残る、くたりと力の入らぬ様子の伊織を抱き締めて穏やかな口付けを交わすのは、至福と云っても過言ではない時間だ。
今だ艶やかな色気を纏う伊織に触れずにいるなど、出来よう筈が無く。
触れれば敏感に反応する肌を、可能な限りそっと優しく愛でていたのだが。“くすぐったい”と、可愛らしく訴えられてしまっては、この両腕は抱き締める役目に徹するしかないのだ。
正直、少々残念ではあるが、愛する伊織の願いは全力で叶えるのが“すぱだり”の甲斐性であるのだ、うむ。
勿論、“キスは止めないで”と云う、素晴らしい願いも全力で叶える。無論、私の願いと合致する上、この上ない至福だ。
伊織の満ち足りた、幸せだと云わんばかりの貌
を見つめて、私も同じような表情をしているのだろうと思いながら、ふわりと舞い落ちる薄桃色の花弁が目に映る。
「・・・この花たちには、イルファンの気持ちが一杯に込められているんだって思うと、俺はすっごく嬉しいんだ。俺の願いを、想いを大切にしてくれてありがとう。俺、イルファンに会えて、本当に幸せだ・・・大好きで、えっと、その・・・愛してる、からっ・・・」
「伊織・・・私こそ喜びと多くの幸福を、そなたから貰っているのだ。愛している、私の伊織」
薄桃色に落ち着いていた頬を、紅色に染めながら懸命に想いと愛を伝えてくれる伊織に。
掛け替えの無い、何にも変える事など出来はしない存在に、心からの感謝と愛を伝える。
この想いは、形や色を変える事があろうとも、私が有る限り決して変わる事も消える事も、無いのだ。
だからーーー
この時に。
毎年、共に有る限り。この時期この花を伊織と共に愛で・・・私の想いを伝え続けると、決めたのだ。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
遅くなりましたっ!
出来ました~_(^^;)ゞ
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