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ブライダルハネムーン
ブライダルハネムーン 閑話 1
しおりを挟む「ふっ・・ふっ・・ふっ・・っっ!・・っはぁ・・・っ!」
今は午前8時だ。早朝鍛錬と云うには遅い時間だが・・・伊織との蜜月の最中なのでな。伊織と愛し合い睦み合う“篭り”の時期の今、時間が定まらない事態は致し方ないのだ。
私が庭園で剣を持ち、型を初手から最上手・・奥義までを通して演武する。
本宮の奥の宮では、鍛錬の相手を勤める武官が居らぬから、自身の鍛錬を深める時としている。
本来的であれば、篭り中に奥の宮の最奥から・・・伴侶の傍から離れるなど有り得ぬのだが、私は伊織を守ると誓ったのだ。
私が惰弱では誓いを果たせないのだから、鍛錬を怠る事は出来ない。
・・・今、私の愛する大切な、可愛い伊織は、寝室のベッドで一人眠っている。無防備で愛らしい寝顔を見ると、彼を一人ベッドに残して行くなど・・・身を切られるように辛く、切なくなる。
だが、鍛錬を怠るわけにもいかぬし、奥の宮は安全な場所だ。寝室からさほど離れぬ。
それに、伊織がベッドから降りれば直ぐに分かる様にもしてある。急げば30秒も掛からずに、伊織の傍に戻ることが出来るのだ。
・・・それにしても僅かな時間、僅かな距離を伊織から離れただけであるのに。何故これ程に心が乱れるのか。
演武中は集中力を高めているから、何も想わず何も感じない。しかし、終えてしまえばこの心も躰も・・伊織を求めてしまう。
私は呼吸を整え、素振りへと移行する。煩悩を振り切り、思考しながら行うのであれば、素振りが適しているからな。
・・・蜜月なのだ。私が庭園に来る時は伊織を連れ、四阿のベッドに寝かせるか。
ここは、四方は防壁と同等の強度の奥の宮内に置かれている、そして上を見れば硝子越しに空を見ることが出来る。
当然、特殊な素材で造られた強化硝子であり、それが幾重にも張られて、上空からは此方を見ることは出来ない仕様になっている。
プライバシーも、安全面も守られた場所だ。
なせなら奥の宮はその全てが、時処に縛られる事無く愛し合う・・・褥なのだ。
この庭園も、その一部。勿論、ここで事に至っても・・・ふむ、そうか。そうであったな。
恥ずかしがり屋の伊織は、私室内でしか愛させてくれず、愛を交わさない。
まあ、時に執務室の奥のプライベートスペースで・・・致すが。あれは私専用の個室だからな。
とにかく私の愛を受け、それは可愛らしく・・恥じらいながら私を愛してくれるのは、私か伊織の個人空間のみ。
それ以外の場所では口付けさえも、なかなか許してくれぬのだ。
日本人は慎ましくシャイな国民性だと聞くし、伊織を見ればそれは真実であると実感する。
・・・そんな伊織を、この開放的な場所で日の光の中、抱いてみたいなど・・・非道だろうか。
蜜月の奥の宮でしか出来ないのだ。初めてに戸惑い恥じらい、乱れる伊織・・・ぐっ、っ・・・想像すら危険な程だ。・・・想像だけで、これ程に滾るとは・・・堪らぬ・・!
・・・そろそろ戻るか。汗を軽くシャワーで流し、早くベッドで眠る可愛い伊織を抱き締めたい。
私は庭園を後にしながら、シャワーブースへ足を向ける。
ふむ・・・日の光も良いが、月光と星の瞬きを浴びる伊織も・・・美しいだろう。
どちらか選択するなど不可能だ。ああ、どちらの伊織もこの目で、この躰で感じ味わいたい。
それにしても素振りの最中であっても、伊織の事が頭から離れぬ。煩悩を振り切る修錬であっても・・・私が未熟であるから、か。
しかし、今朝の素振りはかなりの精度であった事は、周囲の修錬痕を見れば明らかだ。
・・・そうか!伊織への想いは愛情であるから、煩悩では無い。愛は崇高な物であるから、修錬の集中力も高まったのだな。
型稽古や手合わせでは無心であるべきだが、素振り中は・・・うむ。
私が蜜月の楽しみ方(不埒なコトではないぞ?ここはそういう場所なのだからな?うむ)や明日からねか修錬について、イロイロと考えを巡らせている頃。
メイドや従者の控え室では、私が奥の宮でも鍛錬を怠らぬ事に対して、皆が“蜜月中でも己を律する殿下”と称賛していたとか。
・・・すまぬな。
身体を鍛える事には己を律しているが、心身共に伊織への欲望を全く律しておらぬ。辛うじて、伊織の可愛らしさや艶やかな色香と淫らな色香に、暴走・暴発だけはするまいと己を律している程度だ。
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ハネムーン中、鍛錬と煩悩を両立するイルファンです(笑)
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