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番外 ※時間軸はランダムです
ディーノさんの一人称 ※
しおりを挟む俺はつい最近、というか今さっき気がついた。
ディーノさんが“俺”って言ってたんだ。
大したことじゃなくないよ?!だって俺、6年間は一緒に居るけど初めて聞いたから。
ディーノさんの一人称はいつでも“私”だ。仕事の時もプライベートの時も・・・その、俺と恋人関係になってからも、ずっとだ。
いつでも冷静で落ち着いていて、彼が焦ったり取り乱すなんて見た事がない。言葉を乱す事も無ければ、なんなら表情だっていつでもクールで・・・イオリは“鉄面皮”なんて言ってるくらいだ。
そんな彼の一人称の変化って・・・なんか凄く驚いた。
えっと、その、ディーノさんが“俺”って言ったのって、セックス中の・・・ディーノさんが俺のナカで射精す直前の時だったんだ。
熱の隠る雪空色の瞳とシャープなラインの頬から顎に伝った汗、少しだけ開かれた唇がなんとも色っぽくて・・・その唇から。
ディーノさんとこういうコトをするようになって、まだ片手で足りる位しかない。
初めての時は本当にいろいろいっぱいいっぱいで。
優しく緩められて熱でけぶった雪空の色の瞳と、甘やかされて優しく大事に・・・された記憶しかない。俺の大好きな低めのバリトンも、優しく俺に“サヴィン、大丈夫か?”囁いてくれていたのは覚えているけど・・・それ以外の内容までは分からない。
なんか勿体無いコトをしたし悔しいな・・・ディーノさんとの事で記憶にない事があるなんて。
俺は絶頂かされて射精かされた快楽で熱くぼやける頭でそんなコトを考えていると、不意に掠れた低めのバリトンが耳元で囁く。
「・・・他事に気を取られるとは、手加減しすぎたか?随分と余裕だな、サヴィン・・それならもう少しペースを上げても大丈夫だな・・」
「・・・えっ?!手加減っ・・これ以上はまだムリですっ!余裕なんてドコにっ・・・んぅっ・・!」
余裕あんて有るわけナイし!俺はディーノさんの事しか考えていませんっ!
俺の抗議は途中で彼の唇に吸い取られてしまう。
続きを心の中で抗議しても、ディーノさんには聞こえない。
躰も頭の中も、まだ強い快楽の残滓が強く残る中、激しいキスでクラクラする頭で何とかディーノさんに誤解である事を伝えようと足掻くが、唇から口内も深く貪られてそれも儘ならない。
やっと解放された唇に、ちゅっと優しくキスを落とす彼をぼやける視界に捉える。
「・・・っ!(ディーノさんが可愛いっ?!)」
鉄壁の鉄面皮が・・・いつもは優しく目元を緩めるか、セクシーで色っぽい表情で俺をめろめろにするディーノさんが。
・・・むっとしたような、拗ねたような表情で俺を見ていた。
あまりの超レアな彼に、ただ見つめているだけの俺に低いバリトンが聞こえる。
「・・・私とのベッドで考え事など・・・もっと淫らに乱して俺以外の事など欠片も思い出せない様にしてしまいたくなるな・・」
「・・・あっ!今っ・・・」
やっぱり“俺”って言ってた!俺の反応にディーノさんが“ん?”と片眉を上げて(これもレアだ!)可愛い表情を消してしまう。
ああっ!勿体無い!もっと見ていたかったのに~・・・
「あぁ・・・可愛かったのに・・・」
「・・・?・・さっきから何だ?可愛いとは・・?」
俺の反応がよほど不可解なのか、先ほどの苛立ちを消したディーノさんが俺を見る。
「ディーノさん今、“俺”って言ってました。俺、ディーノさんの一人称が“私”じゃないのを初めて聞いたから・・・」
「・・っ?!・・・そうか。では、可愛いとは」
「ディーノさんの表情が、その・・可愛いと・・・」
「・・・そうか・・・」
俺の返答に、ちょっと脱力したように上体を立たせていた腕から力を抜き、俺の上に覆い被さるように倒れ込むと、ぎゅうっと抱き込まれる。
「・・・余裕の無いのは私の方か・・・基本、私の中では“俺”なのでな。完璧に使い分けられていたと自負していたのだが・・・表情にまで余裕がないとは・・・迂闊で未熟だな」
そうなのか、ディーノさんの内心の一人称は“俺”なんだ。
初めて知ったディーノさん情報に浮かれた俺は、うっかりしていた。本当に迂闊なのは俺だ。
「ディーノさん、今も“俺”って言っていましたけど、ディーノさんが射精く直前の、すごくセクシーな表情で“俺”って言ってるのを聞いた時もビックリして・・・つい考え事を。ディーノさんが、うっかり“俺”って言っちゃう位に俺とのセックスに夢中になってくれているなら、俺・・・すごく嬉しいです」
「・・・そうか、その時も・・・か。まあ・・・」
そう言うディーノさんの雪空が、稲妻が走ったようにぎらりと光った。その瞬間、俺は自分の迂闊さにやっと気がついた。
「俺はお前とベッドに居る時は、少しの余裕も持ち合わせてはいないからな。そんな情けない俺が嬉しいのなら、存分に喜ばせてやるぞ?」
「えっ?・・・あっ?!・・・ちょっ、待って下さっ・・・んぁっ!・・あぁっ!」
まだ俺のナカに、硬さを残したままで挿入ていたディーノさんが、グリッと奥を押し上げる。
その一瞬で、ぐんと大きく反り返り太く張り出したトコロで、俺の弱い前立腺をごりごりと引っ掻かれた。
「・・・っひんっ!・・んぁぁぁっ!!」
「・・・っう・・!・・すごい締め付けだな・・?・・・このまま、ナカがしゃぶりついて淫らに可愛らしく乱れきるまで・・・俺が夢中にさせてやろう・・・」
ーーーディーノさんの宣言通り、ぐちゃぐちゃに乱れきるまで愛されまくった俺は、その記憶を失う事なく無事に朝を迎えた。
ディーノさんに関する大切な情報と記憶は守られたけど・・・俺の躰は昨夜の彼の熱情を受けて起き上がれない程に気怠く・・・その記憶は同時に俺の赤面どころか憤死しそうにエロ恥ずかしい記憶でもあり・・・
ものすごく機嫌の良さげな彼の表情が見たいのにシーツに籠るしかない俺と、その俺にシーツの上からキスと抱擁をしまくるディーノさん。微かに“くくっ”と笑う、レアな声まで聞こえるんだ。
ディーノさんの笑顔を見逃すなんて、そんな惜しい事できるか?・・・いや、絶対に出来ない。
でも・・・赤面と憤死モノの恥ずかしさを我慢してシーツから目だけを覗かせるのは、もう少し後でだ!
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