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手紙・・・?の様な、何か
しおりを挟むレポート用紙のような紙が、無造作に見えて、何故か丁寧に折られている様にも思える、小さく8つ折りされた、その中には。
貴女が気になるんです。
名前も、何処の誰かも知らないのに、ずっとずっと気になって。
朝の短い時間に会える、それだけの事で嬉しくて残念な気持ちを感じるのが。とても不思議で。
あの時、不意にスマホから顔を上げた貴女が僕を見たと、どきどきして、つい何かを期待して。その視線が僕を僅かに外して窓の外に向けられていたと気付いた、がっかりは本当に酷いものでした。
・・・毎日が不思議で仕方ない気分で。週に2、3回しか会えないのが悔しくて。
・・・貴女が、気になるんです。
取り留めもない誰かの気持ちが、少し癖のある文字で綴られていた。
これは、誰の想いだろうか・・・これは、何で私の手にあって、私が読んでしまったのだろう。
12月がもうすぐの11月も終わりそうな日に、そんなメモを自分のポケットから発見した。
何のメモだったかと、折られたそれを迷わず開いて読んでしまったのが、いけなかったのだろうか。
ーー・・・これは一体何だろう?質の悪いイタズラ?・・・ーー
誰のもの?これは、誰に宛てられたもの?
気づかないうちに、なぜ私のポケットに入れられた?
・・・私宛て・・・?
気になるって、何かな、どういう意味?何だろう?何これ?
・・・混乱する上っ面とは逆に、本当はどこかで思い当たってる。
あの子かな、と。朝の通勤電車の中の、あの学生服の彼なのでは、と。
その視線に気づいたのは、いつだっただろうか。
学生服に大きなリュックと、手には単語帳に赤い暗記シート。
どこにでもいる、沢山居る学生さんと同じその子。
乗る車両と場所が同じだけ。何の特徴もない私と、学生のあの子。
その彼の視線が近くを彷徨い、時に視線がぶつかる。その子が待つ駅のホームに着いた、電車の窓越しに。スマホから顔を上げた瞬間に、今どこの辺りかと窓の外を見る時に。
私だって、すぐ横にいる人が頭や顔を動かせば、何となくそちらを見てしまう事があるから、“ん?”って気がついても何も思わなかった。
それでも、こんな時にあの彼を思い浮かべている私は、“何も思わなかった”わけではなかったんだ。
電車に乗る前には無かった、私の物ではないそれは、私の隣に立っていた、あの子の手から送り出されたのだろうか。
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