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~Colors~ (シーン4~6)
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シーン4
スタジオ内 昼間 レッスン中
スタジオ内では演技のレッスンが行われている
荏原は長テーブルにパイプ椅子に座っている
レッスン生達はその前に座り、二人の生徒が出てきてシーン稽古している
拓真の番になる
相手は今どきのチャラそうな気の強そうな鈴木
拓真の事を見下しているよう
荏原に対し
鈴木「この人本当にやれんすか?」
ムッとした表情をするレッスン生の中の玲奈
荏原はその表情に気づいたが
荏原「出来るからやりなよ。」
鈴木「違う人と組みたかったなぁー。」
荏原「じゃあ、背中合わせになって…いきます…よーい」
一つ大きく手を叩く荏原
スタートの合図だ
※このレッスンシーンではメソッドアクティクティングの中のマイズナーテクニックであるレペティションの練習をしている
しばらく二人でレペティションのトレーニングをしている
普段のちゃらんぽらんな様子はなく、鋭い目付きでそれを見ている荏原
レペティションの間、やはり拓真は相手の目を見られないでいる
返す言葉もしどろもどろ
すると突然鈴木がトレーニングを中断する
鈴木「先生…やってられないですよ、この人とは。」
荏原「誰が勝手にストップして良いって言った?」
鈴木「でも、この人…」
荏原「現場ではな、監督以外シーンをストップさせる権限はないんだよ。何勝手な判断で役者がストップさせてんの?」
鈴木「……。」
荏原「いつも言ってるけど、そのシーンでその演技が良いか悪いかを決めるのは映像なら監督、舞台なら演出家だ。」
拓真はいつもと同じように宙を見つめ、表情も変わらないがどこか仕草がぎこちない
鈴木はそれでも不貞腐れた態度を止めない
鈴木「でも、彼はこっちちゃんと見ないじゃないですか?それでどうやってレペティションするんですか?」
荏原「レペティション、レペティションって覚えたての言葉を自慢げに話す子供じゃあるまいし…オレはね日常会話における相手との交流感や会話感をシーンに持ち込みなさいっていう意味でレペティションしなさいって言ってんの。わかる?」
鈴木「はい。」
荏原「お前は日常会話において電話したりしないの?その時は相手の表情見れてんの?見れない時はどうしてんの?」
鈴木「聞いてます。」
荏原「だろ?相手の声色やトーン、色々聞いて感じてレペティションしてんだよ。」
鈴木「……。」
荏原「拓ちゃんは確かにお前を見れてないかもしれないよ。けど、聞いてちゃんとお前から受け取っているよ。影響されて、起きた感情をセリフに乗っけてるよ?気づかない?」
鈴木は俯いているが、素直な態度ではない
荏原「オレは相手を見ろって。相手の話を聞けってしつこく言ってるよ。そこで生まれてきた感情をセリフに乗せなさいって。お前が拓ちゃん見ててどう思ったかはわからない。でも思ったならそれをそのまま相手に返してやれよ。嫌味ったらしく中断しないで。見る、聞く、それが演技の全てだよ。」
鈴木「はいっ…。」
荏原「拓ちゃん緊張した?」
頷く拓真
荏原「慣れてくるから大丈夫だよ。レペティション出来てたよ。」
少し嬉しそうにする拓真
拓真「あ、あ、ありがとうございます…。」
時計を見る荏原
荏原「じゃあ、時間なんで今日のレッスンはここまでにします!お疲れ様でした!」
生徒達「お疲れ様でしたー!」
後ろを振り向きやれやれという表情をする荏原
シーン5
レッスン同日 レッスン場内 ロッカー兼控え室
室内には奥に玲奈、真ん中辺りに鈴木、手前のロッカーに拓真の順で帰り支度をしている
鈴木は皆に聞こえるように独り言の嫌味を言う
鈴木「あーあ、今日は誰かさんと組まされるし、そのせいで先生にも怒られるし、ついてねぇなぁ。」
玲奈「やめなよ。」
拓真はその雰囲気を敏感に察し、急いで出ていこうとするが焦りでなかなかシャツのボタンが閉められない
鈴木「辞めればいいのになぁ。この前はちゃんとセリフも覚えてこないし、超迷惑だよ、マジで…ねぇ、拓ちゃーん誰のこと言ってるかわかる?拓ちゃんでも嫌味はわかるの?」
玲奈「お前、いい加減にしろよ!」
玲奈はハーフのような可愛らしい外見からは想像も出来ないようなヤンキー口調
玲奈「拓ちゃんが何か悪いことしたかよ?」
鈴木「今日だってオレに迷惑かかったろ!」
玲奈「お前が未熟なんだろ?先生の話を聞いてなかったのかよ?」
鈴木「依怙贔屓なんじゃねぇの?弱いものの味方して自分に酔ってんだよ、先生も。」
玲奈「…私は文字が読めねぇんだよ…文字が読めねぇから台本見てもセリフ覚えられねぇんだよ…学校でもずっとバカ扱いされたよ…けどなオーディションの時に先生に言われたんだよ…読んでセリフ覚えられないなら聞いて覚えれば良いって…海外にはそういう中でも有名になった役者がいっぱいいるって…大変かもしれない…けど諦めるなって……あのさ、お前と私で何が違う?」
鈴木「…違わねぇよ…」
玲奈「じゃあ私と拓ちゃんとで何が違う?」
鈴木「……」
玲奈「言えよ…私は拓ちゃんと何も変わらねぇよ…言えよ、言ってみろよ…お前と拓ちゃんとで何が違うって言うんだよ!」
鈴木の胸ぐらにつかみかかる玲奈
拓真「止めて下さい…あぁ、ボクのせいだ…あぁ
いつもみんなを怒らせちゃう…」
拓真は落ち着きがなくなり、その場で足踏みを繰り返したりシャツの裾を叩いたりする
玲奈「違うよ、拓ちゃん、拓ちゃんのせいじゃないよ。」
拓真「わかるんだ…ボクがバカなせいで…母さんと父さんも…あぁ、ボクが悪いんだ…みんな黄色くなってる…黄色とオレンジ、黄色、オレンジ、黄色…あぁ」
ロッカーを開けっ放しで控え室を飛び出していく拓真
荷物は置きっぱなし
玲奈「拓ちゃん!」
鈴木「ほっとけよ!」
玲奈「みんなと同じに出来なきゃ夢を目指しちゃいけねぇのかよ!」
シーン6
同時刻 レッスン場
長テーブルで書類を書いている荏原
バーンという音と共に控え室から出ていく拓真の後ろ姿を見た荏原
荏原「何かあったのか?」
歩いて控え室に行く荏原
控え室の中では玲奈が鈴木の胸ぐらを掴んでいる
荏原「どうした?拓ちゃん走って行ったぞ?」
玲奈「拓ちゃんが…飛び出して行っちゃった…」
荏原「これ拓ちゃんの荷物じゃん…ちょっと行ってくる!」
拓真の荷物を手に持ち外にかけて行く荏原
玲奈「私も行く!」
鈴木を突き飛ばし、荏原の後を追いかける玲奈
スタジオ内 昼間 レッスン中
スタジオ内では演技のレッスンが行われている
荏原は長テーブルにパイプ椅子に座っている
レッスン生達はその前に座り、二人の生徒が出てきてシーン稽古している
拓真の番になる
相手は今どきのチャラそうな気の強そうな鈴木
拓真の事を見下しているよう
荏原に対し
鈴木「この人本当にやれんすか?」
ムッとした表情をするレッスン生の中の玲奈
荏原はその表情に気づいたが
荏原「出来るからやりなよ。」
鈴木「違う人と組みたかったなぁー。」
荏原「じゃあ、背中合わせになって…いきます…よーい」
一つ大きく手を叩く荏原
スタートの合図だ
※このレッスンシーンではメソッドアクティクティングの中のマイズナーテクニックであるレペティションの練習をしている
しばらく二人でレペティションのトレーニングをしている
普段のちゃらんぽらんな様子はなく、鋭い目付きでそれを見ている荏原
レペティションの間、やはり拓真は相手の目を見られないでいる
返す言葉もしどろもどろ
すると突然鈴木がトレーニングを中断する
鈴木「先生…やってられないですよ、この人とは。」
荏原「誰が勝手にストップして良いって言った?」
鈴木「でも、この人…」
荏原「現場ではな、監督以外シーンをストップさせる権限はないんだよ。何勝手な判断で役者がストップさせてんの?」
鈴木「……。」
荏原「いつも言ってるけど、そのシーンでその演技が良いか悪いかを決めるのは映像なら監督、舞台なら演出家だ。」
拓真はいつもと同じように宙を見つめ、表情も変わらないがどこか仕草がぎこちない
鈴木はそれでも不貞腐れた態度を止めない
鈴木「でも、彼はこっちちゃんと見ないじゃないですか?それでどうやってレペティションするんですか?」
荏原「レペティション、レペティションって覚えたての言葉を自慢げに話す子供じゃあるまいし…オレはね日常会話における相手との交流感や会話感をシーンに持ち込みなさいっていう意味でレペティションしなさいって言ってんの。わかる?」
鈴木「はい。」
荏原「お前は日常会話において電話したりしないの?その時は相手の表情見れてんの?見れない時はどうしてんの?」
鈴木「聞いてます。」
荏原「だろ?相手の声色やトーン、色々聞いて感じてレペティションしてんだよ。」
鈴木「……。」
荏原「拓ちゃんは確かにお前を見れてないかもしれないよ。けど、聞いてちゃんとお前から受け取っているよ。影響されて、起きた感情をセリフに乗っけてるよ?気づかない?」
鈴木は俯いているが、素直な態度ではない
荏原「オレは相手を見ろって。相手の話を聞けってしつこく言ってるよ。そこで生まれてきた感情をセリフに乗せなさいって。お前が拓ちゃん見ててどう思ったかはわからない。でも思ったならそれをそのまま相手に返してやれよ。嫌味ったらしく中断しないで。見る、聞く、それが演技の全てだよ。」
鈴木「はいっ…。」
荏原「拓ちゃん緊張した?」
頷く拓真
荏原「慣れてくるから大丈夫だよ。レペティション出来てたよ。」
少し嬉しそうにする拓真
拓真「あ、あ、ありがとうございます…。」
時計を見る荏原
荏原「じゃあ、時間なんで今日のレッスンはここまでにします!お疲れ様でした!」
生徒達「お疲れ様でしたー!」
後ろを振り向きやれやれという表情をする荏原
シーン5
レッスン同日 レッスン場内 ロッカー兼控え室
室内には奥に玲奈、真ん中辺りに鈴木、手前のロッカーに拓真の順で帰り支度をしている
鈴木は皆に聞こえるように独り言の嫌味を言う
鈴木「あーあ、今日は誰かさんと組まされるし、そのせいで先生にも怒られるし、ついてねぇなぁ。」
玲奈「やめなよ。」
拓真はその雰囲気を敏感に察し、急いで出ていこうとするが焦りでなかなかシャツのボタンが閉められない
鈴木「辞めればいいのになぁ。この前はちゃんとセリフも覚えてこないし、超迷惑だよ、マジで…ねぇ、拓ちゃーん誰のこと言ってるかわかる?拓ちゃんでも嫌味はわかるの?」
玲奈「お前、いい加減にしろよ!」
玲奈はハーフのような可愛らしい外見からは想像も出来ないようなヤンキー口調
玲奈「拓ちゃんが何か悪いことしたかよ?」
鈴木「今日だってオレに迷惑かかったろ!」
玲奈「お前が未熟なんだろ?先生の話を聞いてなかったのかよ?」
鈴木「依怙贔屓なんじゃねぇの?弱いものの味方して自分に酔ってんだよ、先生も。」
玲奈「…私は文字が読めねぇんだよ…文字が読めねぇから台本見てもセリフ覚えられねぇんだよ…学校でもずっとバカ扱いされたよ…けどなオーディションの時に先生に言われたんだよ…読んでセリフ覚えられないなら聞いて覚えれば良いって…海外にはそういう中でも有名になった役者がいっぱいいるって…大変かもしれない…けど諦めるなって……あのさ、お前と私で何が違う?」
鈴木「…違わねぇよ…」
玲奈「じゃあ私と拓ちゃんとで何が違う?」
鈴木「……」
玲奈「言えよ…私は拓ちゃんと何も変わらねぇよ…言えよ、言ってみろよ…お前と拓ちゃんとで何が違うって言うんだよ!」
鈴木の胸ぐらにつかみかかる玲奈
拓真「止めて下さい…あぁ、ボクのせいだ…あぁ
いつもみんなを怒らせちゃう…」
拓真は落ち着きがなくなり、その場で足踏みを繰り返したりシャツの裾を叩いたりする
玲奈「違うよ、拓ちゃん、拓ちゃんのせいじゃないよ。」
拓真「わかるんだ…ボクがバカなせいで…母さんと父さんも…あぁ、ボクが悪いんだ…みんな黄色くなってる…黄色とオレンジ、黄色、オレンジ、黄色…あぁ」
ロッカーを開けっ放しで控え室を飛び出していく拓真
荷物は置きっぱなし
玲奈「拓ちゃん!」
鈴木「ほっとけよ!」
玲奈「みんなと同じに出来なきゃ夢を目指しちゃいけねぇのかよ!」
シーン6
同時刻 レッスン場
長テーブルで書類を書いている荏原
バーンという音と共に控え室から出ていく拓真の後ろ姿を見た荏原
荏原「何かあったのか?」
歩いて控え室に行く荏原
控え室の中では玲奈が鈴木の胸ぐらを掴んでいる
荏原「どうした?拓ちゃん走って行ったぞ?」
玲奈「拓ちゃんが…飛び出して行っちゃった…」
荏原「これ拓ちゃんの荷物じゃん…ちょっと行ってくる!」
拓真の荷物を手に持ち外にかけて行く荏原
玲奈「私も行く!」
鈴木を突き飛ばし、荏原の後を追いかける玲奈
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