5 / 5
眠らない国
第5話 妖精狩りと魔女
しおりを挟む
「妖精狩りは、この森よりも南に位置する人間の国からくる者たちです」
ポルカは、憎々しげに言葉を紡ぐ。
ゆっくりと、冷静を装いながらも、その言葉の節々からは妖精狩りへの恨みがあふれ出していた。
「私たち妖精族は、もうだいぶ長いこと、この森で暮らしております。できる限り人間にはみつかぬよう暮らしてきたのですが……」
彼は、近くに落ちていた枝を手に取ると、濡れた土に簡単な絵を描きながら説明する。
「ある時、冒険者がやってきて、私たちの存在を知ってしまい。それを外の国に伝えてしまったのです」
ルカは、ポルカが土に描く線画を興味深そうに眺めながら、彼の話をうんうんと頷きながら聞いていた。
「それからの事です」と、一区切りおいて「妖精狩りはこの森に、何度もやってきました」
「彼らは私たち妖精族を捕まえて、国に持ち帰り売りさばくのです。人間からしたら、私たちはとても珍しい種族らしく、相当な高値で取引されると聞きました」
クラリスは、少しだけ首をかしげて「その話は、どなたからお聞きになったのですか?」と質問を投げかける。
「魔女様です」
ポルカは一言そういうと、すぐに言葉をつづけた。
「ルカ様が訪れるよりももっと前に、他の魔女様もこの森を訪れてくださいました。彼女も、旅をしているとおっしゃっていまして、この森にとある魔法をかけてくださったのです」
クラリスは大して驚く様子はなかったが、ルカは元々まるっこい目をさらに丸くした。
「え!だれ!?」
「ルカ様、話の腰を折るのは褒められませんよ」
「あ、そうだよね。ええと、ごめん」
そんなやり取りを聞いていたポルカは、少し微笑みを浮かべて「そんな、お気になさらないでください」と言う。
「“幻影の魔女、ファルム”と名乗ってらっしゃいました。彼女が、この森に私たちの国を隠してくださり、妖精族以外から国を知覚できないようにしてくださったのです」
それから続けて「森の上空からも見つからなくするため、森を飛び越えることができないような魔法もかけてくださいました」
「なるほど、だから私たちも、森が永遠に続くように感じたわけですね。私がスキャンを上空から森にかけても、何も見えなかったのも、きっとその影響でしょうか」
クラリスが、手を顎に当てて思い返すようにそういった。
「恐らくそうなのでしょう。申し訳ありません」と、ポルカは頭を下げる。
「ファルムかぁ……。聞いたことない人だけど、いい人なんだね!」
「はい、とても親切なやさしい方でした。彼女のような魔女様が、女神になられるのだと思います」
ポルカはそう言ったあと「いえ、決して私のアリステラ様への信仰が揺るぐというわけではなく……」と自身への言い訳を口にする。
「だそうですよ、ルカ様。ルカ様も、女神になるために旅をされてるのですから、学ぶことがありますね」
「わたしは別に!女神になりたいってわけじゃなくって!」
クラリスが挑発するように言うと、ルカはすぐにそれに反応した。
「魔女は、神格を得ると女神となる。ルカ様のお母さまが女神になったように、ルカ様もその道に進もうとなさっているのだと思っていましたけれど」
「何度も言ってるけど!わたしは!お母さまが“美しい世界を救いたい”だなんて言ってわたしを残して天上に行っちゃったから!お母さまが言う美しい世界ってのを見てやろうと思って旅に出てるわけで!」
声を荒げて反論するルカを面白がるようにして、クラリスは続ける。
「でも、さっき自分でおっしゃってましたよ『そうよね、じゃないと修行の旅の意味がないもの』って。これが修行の旅だって自覚している証拠じゃ――」
「クラリス!調子に乗りすぎ!」
「おっと、これは失礼しました」
と、クラリスがスッと冷静な面持ちに戻り「ポルカ様も、大変お見苦しい姿をお見せしてしましました。申し訳ありません」とポルカにも頭を下げる。
「いえいえそんな、将来女神様になられる方のお話ですから、とてもありがたいです。それでは、話を戻しますね」
ポルカはそういうと、さらに話をつづけた。
「妖精狩りは、私たちを長らく見つけ出すことができなくなりました。ファルム様のおかげでしばらくは、安全な時間が流れていきます。」
少し間を置き「しかし」と、彼は語調を強くして「妖精狩りは戻ってきたのです」
「彼らは、この森に火をつけました。火であぶりだせば、私たち妖精族が森から逃げ出してくるだろうと考えたのでしょう」
ポルカはその言葉を口にした後、悔しそうに唇をかみしめて。
「それで、このありさまになってしまった。というわけです。」
ポルカは、憎々しげに言葉を紡ぐ。
ゆっくりと、冷静を装いながらも、その言葉の節々からは妖精狩りへの恨みがあふれ出していた。
「私たち妖精族は、もうだいぶ長いこと、この森で暮らしております。できる限り人間にはみつかぬよう暮らしてきたのですが……」
彼は、近くに落ちていた枝を手に取ると、濡れた土に簡単な絵を描きながら説明する。
「ある時、冒険者がやってきて、私たちの存在を知ってしまい。それを外の国に伝えてしまったのです」
ルカは、ポルカが土に描く線画を興味深そうに眺めながら、彼の話をうんうんと頷きながら聞いていた。
「それからの事です」と、一区切りおいて「妖精狩りはこの森に、何度もやってきました」
「彼らは私たち妖精族を捕まえて、国に持ち帰り売りさばくのです。人間からしたら、私たちはとても珍しい種族らしく、相当な高値で取引されると聞きました」
クラリスは、少しだけ首をかしげて「その話は、どなたからお聞きになったのですか?」と質問を投げかける。
「魔女様です」
ポルカは一言そういうと、すぐに言葉をつづけた。
「ルカ様が訪れるよりももっと前に、他の魔女様もこの森を訪れてくださいました。彼女も、旅をしているとおっしゃっていまして、この森にとある魔法をかけてくださったのです」
クラリスは大して驚く様子はなかったが、ルカは元々まるっこい目をさらに丸くした。
「え!だれ!?」
「ルカ様、話の腰を折るのは褒められませんよ」
「あ、そうだよね。ええと、ごめん」
そんなやり取りを聞いていたポルカは、少し微笑みを浮かべて「そんな、お気になさらないでください」と言う。
「“幻影の魔女、ファルム”と名乗ってらっしゃいました。彼女が、この森に私たちの国を隠してくださり、妖精族以外から国を知覚できないようにしてくださったのです」
それから続けて「森の上空からも見つからなくするため、森を飛び越えることができないような魔法もかけてくださいました」
「なるほど、だから私たちも、森が永遠に続くように感じたわけですね。私がスキャンを上空から森にかけても、何も見えなかったのも、きっとその影響でしょうか」
クラリスが、手を顎に当てて思い返すようにそういった。
「恐らくそうなのでしょう。申し訳ありません」と、ポルカは頭を下げる。
「ファルムかぁ……。聞いたことない人だけど、いい人なんだね!」
「はい、とても親切なやさしい方でした。彼女のような魔女様が、女神になられるのだと思います」
ポルカはそう言ったあと「いえ、決して私のアリステラ様への信仰が揺るぐというわけではなく……」と自身への言い訳を口にする。
「だそうですよ、ルカ様。ルカ様も、女神になるために旅をされてるのですから、学ぶことがありますね」
「わたしは別に!女神になりたいってわけじゃなくって!」
クラリスが挑発するように言うと、ルカはすぐにそれに反応した。
「魔女は、神格を得ると女神となる。ルカ様のお母さまが女神になったように、ルカ様もその道に進もうとなさっているのだと思っていましたけれど」
「何度も言ってるけど!わたしは!お母さまが“美しい世界を救いたい”だなんて言ってわたしを残して天上に行っちゃったから!お母さまが言う美しい世界ってのを見てやろうと思って旅に出てるわけで!」
声を荒げて反論するルカを面白がるようにして、クラリスは続ける。
「でも、さっき自分でおっしゃってましたよ『そうよね、じゃないと修行の旅の意味がないもの』って。これが修行の旅だって自覚している証拠じゃ――」
「クラリス!調子に乗りすぎ!」
「おっと、これは失礼しました」
と、クラリスがスッと冷静な面持ちに戻り「ポルカ様も、大変お見苦しい姿をお見せしてしましました。申し訳ありません」とポルカにも頭を下げる。
「いえいえそんな、将来女神様になられる方のお話ですから、とてもありがたいです。それでは、話を戻しますね」
ポルカはそういうと、さらに話をつづけた。
「妖精狩りは、私たちを長らく見つけ出すことができなくなりました。ファルム様のおかげでしばらくは、安全な時間が流れていきます。」
少し間を置き「しかし」と、彼は語調を強くして「妖精狩りは戻ってきたのです」
「彼らは、この森に火をつけました。火であぶりだせば、私たち妖精族が森から逃げ出してくるだろうと考えたのでしょう」
ポルカはその言葉を口にした後、悔しそうに唇をかみしめて。
「それで、このありさまになってしまった。というわけです。」
0
お気に入りに追加
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます
綾月百花
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。
転移先は勇者と呼ばれた男のもとだった。
桜花龍炎舞
ファンタジー
人魔戦争。
それは魔人と人族の戦争。
その規模は計り知れず、2年の時を経て終戦。
勝敗は人族に旗が上がったものの、人族にも魔人にも深い心の傷を残した。
それを良しとせず立ち上がったのは魔王を打ち果たした勇者である。
勇者は終戦後、すぐに国を建国。
そして見事、平和協定条約を結びつけ、法をつくる事で世界を平和へと導いた。
それから25年後。
1人の子供が異世界に降り立つ。
絶対に間違えないから
mahiro
恋愛
あれは事故だった。
けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。
だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。
何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。
どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。
私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。
魅了が解けた貴男から私へ
砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。
彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。
そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。
しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。
男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。
元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。
しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。
三話完結です。
女性として見れない私は、もう不要な様です〜俺の事は忘れて幸せになって欲しい。と言われたのでそうする事にした結果〜
流雲青人
恋愛
子爵令嬢のプレセアは目の前に広がる光景に静かに涙を零した。
偶然にも居合わせてしまったのだ。
学園の裏庭で、婚約者がプレセアの友人へと告白している場面に。
そして後日、婚約者に呼び出され告げられた。
「君を女性として見ることが出来ない」
幼馴染であり、共に過ごして来た時間はとても長い。
その中でどうやら彼はプレセアを友人以上として見れなくなってしまったらしい。
「俺の事は忘れて幸せになって欲しい。君は幸せになるべき人だから」
大切な二人だからこそ、清く身を引いて、大好きな人と友人の恋を応援したい。
そう思っている筈なのに、恋心がその気持ちを邪魔してきて...。
※
ゆるふわ設定です。
完結しました。
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる