『Wonderful Mystery Marvel Island』

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67 裁縫士カオリと鍛冶士ガイウス

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「ここね。カオリ、居る?」
「ええ、入ってきていいわよ」

 部屋の中から返事が聞こえたので僕たちが中に入ると髪の毛は緑、頭に2つのお団子、そして赤いチャイナ服を着た女性がお茶を飲みながら座っていた。よく見ると体には透明な鱗の様なものがあり、おそらく竜人だろう。ちょいな服にはいくつかポケットがつけられており、その中には待ち針やボタンなどが見え隠れしていた。

「いらっしょい、マリー、あと初めて見る人達ね・・・うん?人型の従魔?」
「それは今から説明するわ。あとあなたに依頼があるのよ。まず彼はケン、今回の依頼主である素材でケン君の従魔であるヒミコちゃん、シズクちゃん、響ちゃんの服を作ってほしいの」
「へぇ~、やっぱり従魔だったの?種族を聞いてもいい?」
「精霊よ」
「ぶふっ!せ、精霊!人型の精霊がいたの!」

 女性は飲んでいたお茶を吐き出しそうになりながらマリーさんにきいてくる。マリーさんは事前に許可していたヒミコたちの話を女性に伝えた。女性は話を聞いた後、改めて挨拶をする。

 「初めまして、私はカオリよ。『裁縫見習い』としていろんな服を作ってるわ。あなたの依頼だけど受けるわ。ちょうど他の依頼が今ないからすぐに取りかかるわ。後値段だけど素材持ち込みよね。持って来た素材によっては料金が変化するの。何を持って来たの?」

 カオリの質問を横で聞いていたマリーさんはニヤリと笑い今後の展開を見守っている。僕は【マジックバック】の収納空間から『ミルキーフライの上質な糸玉』を取り出しカオリさんに渡した。カオリさんは受け取るとすぐに目を見開き『ミルキーフライの上質な糸玉』を凝視し始める。

「これって上質な糸玉じゃない!それもランク4!どこで手に入れたの!」

カオリさんは『ミルキーフライの上質な糸玉』を手に持ちながら、僕に詰め寄ってくる。マリーさんは僕とカオリさんの間に入り話を続ける。

「カオリ落ち着いて。現状その『ミルキーフライの上質な糸玉』を入手できるのはケン君だけよ。ちなみにそれはケン君が友好関係を結んでいるミルキーフライ達からもらっている物だから定期的に入手できるみたい」
「そうなの?だったら今度何個か売って頂戴。ああ、それとは関係なく服はタダで作るわ。いえ、作らせて頂戴。ただ、戦闘の事も考えると何かの魔物の皮も欲しいところね?でも巷に流通しているのはランク1~2程度だからこの糸には負けるわね」
「あ、それなら大丈夫です」
「え、大丈夫って一体どういう事?」
「まだ何かあるの、ケン君?」
「その前にマリーさん、優秀な鍛冶職人を紹介してくれませんか?武器も頼みたいので」
「いいわよ。少し待ってて」

 そう言い残しマリーさんはカオリさんの部屋から出ていった。カオリさんはとりあえずヒミコ達から話を聞きながら服のイメージを固めていく。そして5分後

「お待たせ、連れてきたわよ」

 マリーさんは一人の男性を引っ張りながら部屋に入ってきた。その男性は茶色いあごひげを生やし、鍛冶用の作業着を着たドワーフの男性だった。

「優秀な鍛冶職人を連れてきたわよ。彼はガイウス、【鍛冶見習い】のジョブ持ちでカオリと同じ別のゲームでのフレンドよ。ガイウス、彼がケン君、その隣にいるのが彼の従魔のヒミコちゃん、シズクちゃん、ヒビキちゃんよ」
「お主がマリーの話していたケンか。儂の名はガイウス、ガイウスと呼んでくれ。鍛冶士をしている。何か面白い素材があるといっていたが・・!」

 ガイウスは僕達を見た後、机の上に置いてあった『ミルキーフライの上質な糸玉』が目に入るとそちらに駆けていき『ミルキーフライの上質な糸玉』を手に取る。

「なんじゃこれは!初めて見るぞ上質な糸玉なぞ。それもランク4!これはケンが持って来たのか?」
「ふっふっふ、それだけじゃないわよ。ガイウスそれにカオリ。ケンはとても重要なことも教えてくれたわ」

 マリーさんは『ミルキーフライの上質な糸玉』だけじゃなく【素材鑑定】のスキルについて話し始めた。カオリとガイウスはその話を聞くと急いで商業ギルドの受付に行くために部屋を出ていった。
 マリーさんが机の上に【素材鑑定】の見本として、僕が先ほど売った『大毒蜘蛛の刺突脚』を載せた。そして1分後、カオリさんとガイウスは室内に帰ってきて机の上の『大毒蜘蛛の刺突脚』を【鑑定】する。

「まさか【素材鑑定】にこんな効果があるなんて知らなかったわ」
「ああ、このスキルがあれば素材を扱うための適正レベルが分かるのう。だがこれで納得がいった」

 何が納得がいったのかガイウスに聞くと、素材によっては耐久度が十分あるのにハンマーを振り下ろした瞬間消滅してしまった素材や加工はできるが武器や防具にならない素材があったらしい。これは前半は元々鍛冶の素材にならないアイテムで後半はスキルの適正レベルが足りなかったせいだろう。

 「マリー、この『大毒蜘蛛の刺突脚』売ってくれ。これを素材にすれば毒属性が付与された武器が作れるんじゃないかのう」
「うーん、何か工夫がいるかもしれませんよ」
「どういう事じゃ?」

 僕がガイウスの考えに疑問を挟むとガイウスが何故か聞いて来た。僕は『大毒蜘蛛のナイフ』を取り出すとガイウスに見せる。マリーさんとカオリさんも一緒にウインドウ画面を確認する。

「ケン、お主、鍛冶もするのか?」
「はい、少し。専門職には負けますけど」
「いや、なかなかいい出来だと思うぞ。それに『大毒蜘蛛の刺突脚』を素材にすると威力が低いナイフでこの攻撃力か・・・他の武器にしたらどうなるんじゃろうの、ふっふっふ。だが毒は付与されなかったか?やはり何か工夫がいりそうじゃな」
「でもケン君、『大毒蜘蛛の刺突脚』どうやって加工したの?この時ってジョブスキル取ってなかったでしょ?」
「ジョブスキルが何かわからないが加工のからくりはわかったぞ。ケンは『大毒蜘蛛の装備シリーズ』を着て加工してたんだろう」

 ガイウスにうなずくと僕は机の上に『大毒蜘蛛の装備シリーズ』を置く。ガイウス達はそれぞ手に取りながら確認していく。

「これも悪くないの。ちなみにこれが儂が作った『大毒蜘蛛のブーツ』じゃ」

ガイウスが渡してくれた『大毒蜘蛛のブーツ』を見せてもらうと、僕が作った物より耐久力、防御力も高かった。さすが専門職。

 大体の説明が終わったあと、僕は机の上に先ほどのカオリさんの話していた『ミルキーフライの上質な糸玉』に負けない素材、そう僕が扱えない『ガイア・レイア・バロゥフの大牙』『ガイア・レイア・バロゥフの剛皮』『ガイア・レイア・バロゥフの大骨』『ガイア・レイア・バロゥフの武装石』『ハウル・フォレスト・ベアーの毛皮』『ハウル・フォレスト・ベアーの剛爪』『ハウル・フォレスト・ベアーの風剛爪』を置いた。その素材を見た3人は【鑑定】した後数秒動きを止め、こちらに近づいてくる。そして

「「「一人であのボス猪と熊倒したの?」」」
「え?あ、はい。猪はヒミコと一緒に、熊はヒミコ、シズク、ヒビキと一緒にですが」
「いえ、それでもすご過ぎよ。だってアップデートが始まっていくつもの6人フルパーティーが挑んだけど勝てたパーティーは居なかったのよ。それなのに2又は4人でクリアするなんて。よかったら倒し方教えてもらえる?あ、情報量は払うから」

 僕は3人に倒した方法を説明すると3人は感心したように何度もうなずいていた。

「これは検証の必要があるわね。でもすごい情報よ。情報料は5万払うわ。うふふふふ、この情報は売れるわよ」
「ガイウス、カオリさん、これで武器と防具又は服を作ってほしいんだけど扱える」
「ああ、大丈夫じゃ。むしろこちらからお願いしたい、もちろん今回の素材で作る武器は無料でいい。加工技術についても鍛冶士になったことでクリアしておる」
「私も大丈夫よ。こんなすごい素材見せられたんだからやる気は満々よ」
「儂もじゃ。さて何を作ろうか?」
「僕は武器にナイフ、大槌、弓、ガントレットを使ってあと他には刀も使ってみたいんですけど、ガイウスは刀は作れる?」
「おう、大丈夫じゃ。儂には鍛冶士の他に刀鍛冶見習いのジョブもあるからな」
 
 少し聞いてみると【刀鍛冶見習い】は職業【鍛冶士】を持ち【刀の心得】を持っていると起こるジョブクエスト【刀鍛冶見習いへの挑戦】をクリアすると就ける職業だそうだ。

「じゃあお願いします。あとヒミコにも刀を1本、シズクは魔法使いなんで魔法の威力が上がる杖なんかあったらいいですね」
「うーん、弓と魔法の威力が上がる杖は専門外じゃな。それ以外は大丈夫じゃぞ」
「あ、そういえばガントレッドはハウル・フォレスト・ベアーのソロ報酬があるからいいか」
「「「見せて」」」
 僕は『風咆熊のガントレット』とあとついでに『大地猪の腕輪』を見せることになった。
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