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3章

110 デート編③アリシアとアージェンダイルへ

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翌日翔とアリシアはアリシアの故郷アージェンダイルに来ていた。今日はアリシアのリクエストでアージェンダイルの案内をしたいそうだ。

 アージェンダイルは人界にある国で、場所は世界樹(2代目)がある森の中に建国している。世界樹の森には精霊が集まりやすく、アージェンダイルには精霊と仲がいいエルフ、ダークエルフ、妖精族などが多く住んでいる。またアージェンダイルの人々は歌や演奏が好きなことから笛やハープ、ギター、ピアノなど音楽に関する道具の研究や販売も多くなされている。

「アージェンダイルも久々だな」

「そうね、あの時は1か月ほど居たけどほぼ観光はしてなかったものね」

 翔、アリシア、ミゼル、ミーシャは以前神器『天樹弓ミーティア』を手に入れるためにこの国に来たことがある。その時は世界樹に行くために王様の許可を取ったり、邪魔をする者達を倒したりで刊行する余裕はなかった。

「今日はアリシアが案内してくれるんだったね」

「ええ、まかせて」

 とアリシアは翔の腕を取り歩き始めた。初めに連れてこられたのは楽器がたくさんある楽器屋だった。

「ここは私が昔からお世話になっている楽器屋さんなの」

 アリシアは翔に説明しながら店の中に入る。店の中は右側に様々な楽器が、左側に指揮棒や楽譜台、楽譜などの小道具が置かれていた。アリシアはそのままカウンターまで進み、エルフのおばあちゃん、おじいちゃんに話しかける。

「ジルグ、ミーラ、久しぶり」

「あらあら、姫様お久しぶりですね」

「姫様、元気でしたか」

 おじいちゃんの方がジルグ、おばあちゃんの方がミーラといいアリシアが幼少のころからのなじみの楽器屋だそうだ。2人が翔の方を見ながらアリシアに尋ねる。

「そちらの方は?」

「彼の名は翔。オカリナとハーモニカを広めたのも彼よ」

「ああ、翔様ですか。オカリナとハーモニカの時はありがとうございます。おかげで新しい楽器に触れられ久々に興奮しました」

 翔はアリシア達と旅をしていたころ、夜、楽器を弾いているアリシアと一緒に演奏するため簡単なオカリナとハーモニカを作った。ヴィジョンではなかったオカリナとハーモニカの音色を聞いたアリシアは2つの楽器に興味を持ち翔に作り方を聞きジルグとミーラに伝えたそうだ。すると瞬く間に持ち運びがしやすく、子供でも扱いやすく、吹き手により音色の質も変わることから子供から大人まで各国に新楽器として広まった。

「しかしあの泣き虫だった姫様が今では英雄の一人ですからな、驚きましたわい」

「一体どういうことですか、ジルグさん?」

「ジルグ、それは・・」

「最初姫様は私たちの店に来て泣きながら弦が切れたハープを持ってきて「このハープ治せないですか?お母様に怒られる」と言ってきたんですよ」

「あの時の姫様はかわいかったですね。ハープが直ると嬉しそうに飛び跳ねて」

 その話を聞いたアリシアは顔を赤くしていく。

「しょうがないじゃない、あの時はお母様のハープを勝手に触ってたら弦が切れちゃったのよ。あの時は子供だったから弦がすぐに張りかえられるなんて知らなくてハープが壊れたと思ったのよ。このままじゃ怒られるからどうにか秘密裏に直さなければと思ってハープを布でくるみ持ち出して街に出たの。そして楽器がたくさんある店があったから入って修理を頼んだのよ」

「まあ、ハープは治ったんですけど結局女王様にばれ怒られて、翌日女王様と共に礼を言いに来たんですよね」

「あの時は驚きましたね。身なりがよく高級なハープを持っていたのでどこかの貴族の娘さんと思っていたのですが、翌日いきなり護衛を連れた女王様と一緒にお店に来たのですから」

「その後、何かあると私たちの店に来てくれて話してくれて仲が良くなっていったんです。である日いきなり「『天樹弓ミーティア』ってどこにあるの?」ですから」

「あの時は本で『天樹弓ミーティア』の事を知ってみたくなって城の人たちやお父様、お母様に聞いたけどわからないって言われたのよ。だからジルグ達にも聞いたのよ」

「私たちも知らないと答えると姫様は情報を集め、外でも情報を集めるためにメル様に次期王座を譲り王様と女王様を説得して冒険者になりこの国を飛び出たんですよね」

「何故かわからないけどあの時は探したかったのよ。改めて考えると運命だったのね」

 ジルグ達にもわからないといわれたアリシアは国内で『天樹弓ミーティア』の集めれるだけの情報を集めた。その情報からアリシアは外に何かあると思った。そこで外で情報を集めるために準備を始めた。まずアージャンダイルの次期国王問題だ。そこでアリシアは弟でアージェンダイル第一王子のメルと相談し王位継承権を放棄した。次に外で自由に動くために冒険者として国王と女王様に認めてもらうために一流の冒険者ランクであるCランク→Aランクまであげた。

 ジルグとミーラとアリシアの昔話を話していたところに扉を開けて誰かが入ってきた。

「姉様、翔兄様、アージェンダイルに来たのなら連絡をくださいよ」

 何人かの兵を連れたこの国の次期国王メルだった。

「あら、メルじゃない。どうしたのいったい?」

「メル、久しぶり」

「翔兄様、コレクト・スター以来ですね。姉様も一体どうしたじゃないですよ、来るなら連絡位ほしかったです。兵たちからいきなり街中で姉さまと翔様を見かけたと聞いたんです。そしたらちょうど一緒にいた母上から2人を昼食に誘いなさいと言われたので向かいに来たんですよ」

「あらそうなの。じゃあちょうどいいからお城でご飯食べようかしら?翔もいい?」

「ああ、大丈夫」

「じゃあジルグ、ミーラまたね。メル行きましょ」

 こうしてジルグとミーラと別れた翔とアリシアはメルについていった。城に着くと翔達は中庭に通された。そこでは丸いテーブルに座り紅茶を飲むアージャンダイル女王マリューがいた。マリューはこちらに気づくと手を振り声を掛けてきた。

「メル、連れてきてありがとう。アリシア、翔さん久しぶりね、3人ともこちらに座りなさい」

アリシアとメルはマリューの隣に、翔はマリューの正面アリシアとメルの間に座った。

「父さんは来ないの?」

「あの人は仕事で抜けれないのよ。で今日2人ともどうしたのかしら?」

「今日はアリシアにアージェンダイルを案内してもらってるんです」

「あらそうなの。二人っきりということはデートってことね」

 と翔の答えを聞いたマリューはアリシアを見つめながらニコニコしていた。するといくつかの料理がテーブルに運ばれてきた。

「でもちょうどよかったわ。翔君が教えてくれた料理をいくつか作ってくれたの。その味見をお願いしたかったのよ?」

 翔達は料理を食べながら最近の話や料理の話をしつつマリューたちとの食事を楽しんだ。そして最後にマリューはアリシアにエールを送った。

「今日はありがとう、翔君。アリシアも頑張りなさい」


 マリューたちと昼食を楽しんだ後、アリシアのおすすめの場所に行くため森の中に入った。アリシアの案内の下時々襲ってくる魔物を排除しながら20分ほど進む。

「ここよ、翔」

 翔が案内されたのはちいさな湖だった。湖の周りでは様々な植物や花が咲いており、リスやキツネなどの小動物や精霊などが楽しそうに遊んでいた。

「なんか安心する場所だな」

「そうでしょ。この場所は精霊たちもたくさんいて魔物も立ち寄らない落ち着ける場所なの」

 アリシアは翔の手を引いて池の前にある大木のそばで寝ころんだ。そうするとフカフカのそばの様な草の感触にほのかに香る草と土のかおりに小鳥と精霊のさえずりが聞こえてくる。翔が少しまどろんでいるとアリシアが座り込み膝枕をしてくれ、歌を歌ってくれた。その歌を聞きながら翔はこののんびりした時間を楽しむのだった。
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