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3章

107 翔の化学実験室5 マジプラボトルとケース

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 続いて翔が収納空間のカバンから取り出し、フウマと所員の人たちに渡した。渡したのは2つの不思議な形をした入れ物だった。

 1つ目は全体は結晶のように透明で、50cmぐらいの円柱状の形に上部5cmぐらいから少しづつ狭まり最上部には一口大の丸い口が付いていた。
 その口には青い色のふたが付いており、ふたを取り外すとふたの部分と円柱状の細くなった部分には溝が入っていて、その溝が合わさることにより外れない仕組みになっていた。
 軽く触ってみると円柱状の方の部分は厚みが薄く固いが形が変わりやすく直に元に戻るが、円柱状の口の部分とふたの部分は厚みが厚く頑丈だった。

 2つ目は透明な箱のようなものでふたは緑色で取り外しができる。ふたは固く、箱の方は厚みが薄く形が崩れないぐらいに柔らかった。

「これもマジプラ製品の一つで円柱状の方は液体を入れて持ち運ぶ水筒の様なものでマジプラボトル、箱の方は食べ物などを入れて持ち運びする入れ物でマジプラケースっていいます」

 翔がバンバンタートルから取り出した成分で作り出したポリバンマジレン(魔力で強化されたスチレンのような高分子)によりマジプラ製品がメルトホルン国内に広まった。

 現在様々な錬金術師が試行錯誤を繰り返し地球の高分子の様なものを生み出しいくつか製品化していった。この製品の総称をマジックプラスチック縮めてマジプラ製品と呼んでいる。

 現在メルトホルン国内に広まっているマジプラ製品はお皿や箸、お弁当箱、商品ケースなどである。

 お皿や箸などの食器は落としても割れにくく、劣化しにくいことから食堂やご家庭で重宝され爆発的に広まった。

 お弁当箱については以前は銅や鉄などの金属製で熱を吸収する性質から冷たいお弁当を食べていたが、マジプラに火と水の魔石を練り込むことにより内部には熱を逃がさない保温性の高いマジプラを、外側には熱を逃がしやすい保温性の低いマジプラの2層構造により温かいお弁当が食べれるようになった。

 商品ケースについては以前は厚紙や藁を編み込んだもの、金属製の箱を使用していた。

 しかし厚紙や藁を編み込んだものは軽く持ち運びはしやすいが燃えやすく濡れやすいため耐久力に問題があった。

 金属製の箱の場合耐久力には問題はなかったが数を運ぶと重くなり持ち運びが大変だった。また暑い場所では熱がこもりやすく形が変形してケースが空かなくなってしまうことがあった。

 しかしマジプラ製の場合熱に対する耐性もあり丈夫で軽いため商品ケースにはうってつけの素材のため、商人たちはこぞって購入した。

 翔が持ち込んだ製品は今まで作られたマジプラ製品とは方向性が違っていた。今までは粘土や木で作られていた製品をマジプラ製に変えたもので形はあまり変わらなかった。しかし翔が持ち込んだ製品はある程度頑丈でより軽量化し持ち運びをしやすくなっている。

 さらにふたがあることにより持ち運びができることも利点の一つとなる。これまでもマジプラ製でふたつきの商品は売られていたが隙間が多く液体などは持ち運びしにくくなった。しかし翔が持ち込んだ製品はふたを閉めると密閉され液体がこぼれないため、水などの液体やシチューなどの液体状の料理の持ち運びも容易となった。

「作り方ですがこのような器具を使います」

 翔は大型器具を取り出した。この器具はいくつかの金型が使われていた。

「まずこの器に調整した液体状のマジプラを注ぎます。すると作りたい形を半分に割った金型に一定量注がれます。マジプラを注がれた金型は次の工程に移ります。次の工程ではマジプラを注がれた金型の上から特定の形をした金型をはめマジプラの厚さを調整し固められます。そして固められたマジプラを2つ合わせて熱を加え1つにします。最後に余分な部分は風の魔石から出る風で取り除き完成です」

「「おおおお」」

「すごい」

「こんな風にできるのか」

 研究者たちはそれぞれ感想を言い合う。そしてフウマは翔に質問する。

「翔殿、この器具もガルズ殿が?」

「はい、そうです」

「そうですか・・・。よし、みんな、さっき言ったように今日は翔殿は夕方までいてくれる。その間にがんばって素材の特定までするよ」


 2週間後、メルトホルン国内のコレクト・スター内商店:星降る夜の前にテーブルとのぼりが立てられた。そののぼりには『本日15時より新商品実演販売します』と書かれていた。そして15時テーブルには翔とアシスタント役の真保が立っており、周りにはたくさんのお客さんがいた。

「さてお集りの皆さん、本日は星降る夜の新商品実演販売にお集まりいただきありがとうございます。コレクト・スターの支配人天魔翔です」

「アシスタントの源真保です」

「本日紹介するのはこちら。ラップとマジプラボトル、マジプラケースです。まずはラップから紹介します」

「そのラップとは何?箱にしか見えないけど?あ、その中に食べ物でも入っているの?」

「残念ながら食べ物じゃないんだ。この箱の中にはこんな風に巻物みたいに透明な紙みたいのが巻かれているんだ」

 と翔は真保とお客さんに箱の中身を見せた。

「巻物見たいということは文字を書くものなのラップって?」

「いや、ラップていうのは例えばこういう液体が入ったコップとかにふたをする時に使うんだ」

 翔は水の入ったコップにラップでふたをしてみせた。それを見た真保は気づいたことを翔に聞いた。

「でもそれなら布とかでもいいんじゃない?ねえ皆さん」

 真保の問いかけにお客はうなずく。

「ところがどっこい、そのコップをタライの上で傾けてみてよ?」

 翔の指示通り真保がタライの上でラップで蓋をしたコップを傾けるとあら不思議ふたは外れず水はこぼれなかった。

「うそ!水が全くこぼれていないし隙間から漏れてもいないわ」

「すごいでしょ。このラップを使えばシチューとか煮物を運ぶときこぼれるのに注意しなくていいんだ。後ある程度の耐熱性もあるからお湯程度の暑さなら破けないよ。あとこんな使い方もあるんだ」

 翔はカバンからいくつかの小さいおにぎりを取り出した。

「これは1時間前に作ってラップで巻いたおにぎり、ラップを外して食べてみてよ?みなさんもぞうぞ」

 翔の言うままおにぎりを食べるとお客は驚いた。本来なら外で一時間も放置していたら表面が固まって堅くなっているのに、ラップでくるんだおにぎりは表面が柔らかくおいしかった。

「どう、すごいでしょ。このラップには水分を飛ばさず留める保湿性があるんだ。あと食べ物を布でくるんでいるようなものだから汚れからも守ってくれる」

「「おおおおお」」

「じゃあ続いてマジプラボトルとマジプラケース。と言っても紹介することはほぼなくてこっちのマジプラボトルは液体を入れる、マジプラケースはなんでも入れる入れ物なんだ」

「じゃあ、なんで新商品なの?」

「それは持ってみたらわかると思うよ?みなさんもぞうぞ」

 翔の促すまま真保とお客さんはボトルとケースをもってみた。それらは普通の者より圧倒的に軽かった。

「どう、すごい軽いでしょ。これなら持ち運びの邪魔にならないよね」

「でも丈夫さは大丈夫なの?こんなに薄かったらすぐ壊れそう」

「それは大丈夫」

 翔は水が入ったマジプラボトルを軽く上に投げ地面に落とした。マジプラボトルは表面に傷がついたが穴が空いたり中の水が漏れたりはしなかった。

「ある程度の高さから落ちても中の水は壊れないようになってるよ。と言っても限度はあるけどね。とまあ今回の新商品発砲はここまでです。これらの商品は現在カウンター近くに、明日からは特設コーナーに置いときます。数は十分あるので慌てず買ってください」

翔のその発言で客は急いでカウンターへ向かった。
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