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2章

84 翔の化学実験室3~スポンジ,洗剤、ゴムボール

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「できたー」



 その翔の歓声はリビングでゆったりしていた真保達にも届いた。今日は特に用事もなく全員集合している。



「どうしたのかしら」



「ヒノクニ大陸から戻ってきてからずっと工房に籠ってたものね」



「おそらくカガクヤクヒンの新作ができたんじゃないの」



 聖、アリシア、レオナの言う通り翔はヒノクニ大陸から戻ってきたら工房にこもって何かの研究をし始めた。真保達は翔がこの状態になれば一段落するまで終わらないのは知っていたから工房前に料理を差し入れするなどのサポートしていた。その状態が続き今日で3日目。



 真保達が少し待つとリビングの扉が開けられて翔が入ってきた。



「みんなサポートありがとう。おかげでいろいろできたよ」



 翔がお礼を皆に言うとユーナが翔に早速何を作ったのか聞いた。するとまず翔は黄色い四角い物体を取り出した。



「まずはこれ。スポンジ」



「何これ?フニフニ柔らかいし軽いわね」



「本当だ、触感が面白い」



「これは何に使うの」



 アリシア達ヴィジョン組がスポンジを触りながら感想を言いつつ使用法を聞いた。すると翔は真保、聖にスポンジをわたすと3人はキッチンに向かった。アリシア達もついていくと真保、聖は洗面台でスポンジに石鹸を数度こすりつけ、軽く水をつけたのちスポンジを揉むとスポンジから泡があふれ出した。



「何これ真保お姉ちゃん、聖お姉ちゃん。白いモクモクがたくさん」



 その不思議な光景にユーナはめいいっぱい喜んでいる。それを見ながら真保と聖は汚れたお皿を手に取りかるくスポンジで擦るとお皿の汚れはきれいに落ちた。



 その光景を見ていたヴィジョン組は驚いて目を見張った。



「なにこれ?あの汚れが少し擦っただけでなくなっちゃった。どういう事?」



 彼女らが驚くのもしょうがない。ヴィジョンではお皿洗いは固体の石鹸に動物の固い毛などを糸でまとめたタワシを擦り付け少し泡立たせて、お皿にゴシゴシと擦りつけて汚れを落としていた。ただこの方法では皿が割れたりすり減ったりしてすぐ使えなくなってしまった。また頑固な汚れでは石鹸を溶かした水に数時間漬けて洗うなどの手間がかかった。



「何故スポンジで汚れがこんなに落ちるかを説明する前に汚れの取り除き方を説明しなくちゃわからないよ」



 と言い翔は汚れが落ちるメカニズムについて簡単に話し始めた。汚れには2種類あって水で簡単に落ちる汚れと落ちない汚れ。水で簡単に落ちる汚れは水が触れると汚れの成分が水に混ざり一緒に流れ落ちることで汚れは消える。しかしお皿や服について水などでも洗い流せない汚れは油が含まれている。この油は水と混ざらない性質があり油が含まれた汚れは水だけでは落ちない。



 そこで登場するのが石鹸である石鹸の成分が油を囲むと油の水と交わらない成分が消えて、普通に水で洗い落とすことができる。そして泡をたくさん作るには石鹸の成分と空気がたくさん交わればいい。



「ここでスポンジの構造の説明。スポンジは以前作った液体のプラスチックの中に熱で溶ける小さい球状の物質をたくさん加える。そして熱か圧力を加えながら作ると小さい穴が開いたプラスチックができる。この時柔らかく作ったのがスポンジ。でこんな風に作ると中にたくさんの空気が含まれるようになる」



 翔は空中に水球を生み出しスポンジを入れ揉むと水球中にい異彩泡が生じた。



「でこのスポンジで石鹸をこすり揉むとたくさん泡ができるってわけ。あとタワシとスポンジにはもう一つ違いがあって泡がお皿に当たる面積。タワシよりスポンジの方が柔らかくて形が変わり易くて汚れに触れる面積が大きくなるんだ」



 翔の説明に納得しつつアリシアはあることに気づいて。



「翔、これってお風呂でも使えるんじゃない?体を洗うとき」



「アリシア、正解」



 と翔は先ほどより大きくて少し硬いスポンジを取り出した。それを全員に渡して説明を続ける。



「それは身体を洗う用のスポンジ。体を洗うように少し硬く作ってるんだ。まあここからはそれぞれの肌質にも関係しているから微調整が必要だけど。でさらに作ったのがこれ」



 翔は3つの白い液体の入った瓶を取り出した。それを見た真保と聖は目を見張りすぐに手に取って液体を触りったり、においをかぎ始めた。



 そのあまりの豹変ぶりにヴィジョン組は驚いている。



「一体どうしたの?真保、聖~」



 ミーシャが尋ねるが真保と聖は一生懸命液体を観察したのち、翔に近づき質問というより命令している。



「ねえ、翔。これってたくさん作れるのよね。というか作りなさい」



「ええ、お願いしますわ。じゃないとウフフフ」



「そうよ、翔が化学薬品作ってる時にすぐ思いつかなくちゃいけなかったわ」



「ええ、私たちが欲しくて欲しくてたまらなかった」



「「シャンプーを」」



 そう。真保と聖は欲していたシャンプーを。ヴィジョンでは体を洗うときはタオルに石鹸だった。それも石鹸は地球みたいな肌に優しいとか髪にやさしいとかではなく、とりあえず汚れが落ちればいい効力が強い物だった。そのため髪や肌のダメージがひどく2人は魔法を使いどうにか現状維持を務めてきた。そこへまだ改良の余地があるが圧倒的に石鹸より髪へのダメージが低いシャンプーの登場である。2人が喜ばないわけがない。



「シャンプーて何?このどろっとした液体?」



 とレオナが白い液体の入った瓶を触りながら聞いて来た。翔は説明を続ける。



「簡単に説明すると今、レオナが持ってるのは洗剤。石鹸を液体にした物って思ってくれたらいいよ。少し手につけて擦ってみて」



 レオナが翔の指示通りにしてみると簡単に泡がたった。



「へぇ、すごい!こんなにすぐに泡がたつなんて。石鹸より便利かも」



「まあ確かに。でも石鹸よりは手間暇がかかるから値段は高くなるんだ。でお皿や服の汚れを落とせるほどの効果のある洗剤を使って体や髪を洗うと肌や髪にダメージをくらうんだ。で体を洗う用にひとまず調整したのが真保達が持ってるシャンプーってわけ。で、このシャンプーも人によって肌や髪の性質は違うから様々な調整が必要なんだ」



 と説明し終わると美にかかわることなためユーナ以外の女性陣はシャンプーに群がりいろいろ試していた。



「すごいね。お姉ちゃんたち」



「ああ。やっぱり女性は美に対する執着がすごい」



「それはそうよ。どの世界でもそれは一緒」



 ユーナと翔が話していると後ろからネロ、ティーナ含む翔が知り合ったヴィジョンの女性の神々が現れていた。



「えっ?みんななぜここに?」



「決まってるじゃない。私たちも女性だから使い心地を確かめに来たの」



 と翔が驚いているうちに彼女らは真保達と合流して使い心地を確かめていた。



「とユーナにはこれ上げる」



 あちらの事はほっといて翔は今回作った最後の商品をユーナに渡した。



「ん!何この丸いのは!握ると形が変わるけど離すとボールに戻る」



「それはゴムボールっていう遊び道具。こっちに投げてきて!」



 と翔がユーナに言うとユーナは振りかぶって投げてきた。たまに翔達の投擲の練習を見ているのでなかなかの投球フォームである。



「で次に俺が投げ返す」



 翔もユーナがとりやすいように軽く投げた。ユーナはボールをキャッチし投げ返す。しばし二人はその投げ合いを楽しんだ。その間真保とネロ達はシャンプーの改善点を話し合っていた。
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