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case of チェルシー
25.駆け引き上手か下手なのか
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「ひどい顔~」
睡眠不足という単語とは縁遠い精霊が、ケタケタと笑いながら寝不足の私の顔の周りを飛びまわっている。
「誰のせいよ」
ジロリと睨みつけるも、フューリーは全く気にしてない。
やっと寝付いたのが明け方だったので、寝過ごしてしまった。
おかげでお姉さまに朝の挨拶も、学園に行くのに見送るのも間に合わなかった。
不覚。
しかも、しっかりわたしの分のお弁当は用意されていた。後でお礼を言わないと。
「わぁ、今日もおいしそう!」
「あげないわよ」
お弁当箱をのぞき込んできたフューリーから、わざと遠ざけた。
フューリーが絶望したような顔をした。
わたしの性格の悪さを舐めるな。
『カレー! !肉じゃがぁ!!』
「うるさいから叫ばないでくれる?」
お姉さまが侯爵邸に拉致られた。
さすがに音声だけでは心配だったのでフューリーを派遣したが、余計な音声まで飛ばしてきた。今日のお弁当の仕返しか。しかし、精霊って特に食べ物を食べなくても大丈夫なはずなのに、なんでフューリーはこんなに食べ物に執着するのだろう。
――ついつい餌付けしてしまった、わたしのせい?
ザグデン公爵夫人の噂は、わたしも聞いたことがあった。
しかしいかんせん、わたしが生まれた頃に亡くなった、遠国出身の稀有な佳人。なくなってからかなり時間も経っており、彼女に関してあまり情報を集めなかったのは今にして悔やまれる。
日本と中国、そしてアジアが混じったような文化を持つ遠国を知ったのはその時で、そのおかげで我が家の食のグレードがアップしたのは間違いない。
お姉さまも動揺していたが、わたしも驚いたのがザグデン公爵夫人が書いたというレシピ本の存在だ。文字が日本語だった。
「遠国の文字って、もともと日本語なのかしら?」
『違うよ。ここの奥様もまた、転生者だったんじゃないかなぁ』
「なんですって?そういうことは、早く言ってよ!」
『え、だって、聞かれなかったから』
「この世界に、わたしたち以外の転生者はまだいる?」
『今のところはいないね』
ああ、ほんと融通が利かない。
余計なことはしない、ともいえるのかもしれないが、フューリーは「言われたこと」しかしない。
それが精霊なのだから仕方ないとはいえ、なんとももどかしいところだ。
「今後は、転生者らしき疑いの人がいた場合、速やかに報告を」
『はぁい』
その他、情報に漏れがないようにいくつか項目を付け加え、フューリーに命じた。
「あ、おべんとうばこのうた」
本人は気づいていないようだけど、『妹』は料理中に歌う癖があった。
その癖は今も変わってないようで、気分が乗ったのか鍋をかき混ぜながら口ずさんでいた。
それは懐かしい、童謡。
『かあさんと同じ、歌……』
耳に微かに届いたのは、どうやらリーファイ様の声だ。
転生者であった公爵夫人も歌っていたのだろう。
視覚共有しているフューリーの目を通して、リーファイ様が両手を伸ばしてお姉さまの背後から、その腰に手を回そうとしていた。
させるかぁ!!
フューリーに邪魔を命じる前に、料理人の声が彼の動きを止めた。
お姉さまにも不審そうに尋ねられ、やっと正気に戻ったようだ。自分の無意識の行動に驚いているようだが、彼もバカではないのだろう。
やっと自分の気持ちに気付いたか。
しかし、お姉さま、あなたが残念か?!
第三者的視点で見れば「ユー、くっついちゃいなよ!!」的展開に、こちらの方が顔を覆ってゴロゴロ悶えたいくらいだ。
あの場にいたら、わたしだってほかの人と一緒にニヤニヤ見守りたかった!!
その後、順調に料理を作りまくったお姉さまはメイドさんに連れられてった。
彼女たちに磨き抜かれ、化粧を施された上にドレスアップまでされたお姉さまは、間違いなく美人だった。公爵家の食堂に表れたお姉さまを見て、リーファイ様はほおを赤らめ、呆然としてた。
先ほど己の恋心を自覚したばかりの年頃男子。
だがしかし、着飾った女性を前にしてお世辞の一つも言えないとは情けない。世の男性全てに美人と褒められても、結局のところ、好きな人に可愛いと思われなきゃ意味がないというのに。
さすがお姉さま!
完・全・勝・利!!
睡眠不足という単語とは縁遠い精霊が、ケタケタと笑いながら寝不足の私の顔の周りを飛びまわっている。
「誰のせいよ」
ジロリと睨みつけるも、フューリーは全く気にしてない。
やっと寝付いたのが明け方だったので、寝過ごしてしまった。
おかげでお姉さまに朝の挨拶も、学園に行くのに見送るのも間に合わなかった。
不覚。
しかも、しっかりわたしの分のお弁当は用意されていた。後でお礼を言わないと。
「わぁ、今日もおいしそう!」
「あげないわよ」
お弁当箱をのぞき込んできたフューリーから、わざと遠ざけた。
フューリーが絶望したような顔をした。
わたしの性格の悪さを舐めるな。
『カレー! !肉じゃがぁ!!』
「うるさいから叫ばないでくれる?」
お姉さまが侯爵邸に拉致られた。
さすがに音声だけでは心配だったのでフューリーを派遣したが、余計な音声まで飛ばしてきた。今日のお弁当の仕返しか。しかし、精霊って特に食べ物を食べなくても大丈夫なはずなのに、なんでフューリーはこんなに食べ物に執着するのだろう。
――ついつい餌付けしてしまった、わたしのせい?
ザグデン公爵夫人の噂は、わたしも聞いたことがあった。
しかしいかんせん、わたしが生まれた頃に亡くなった、遠国出身の稀有な佳人。なくなってからかなり時間も経っており、彼女に関してあまり情報を集めなかったのは今にして悔やまれる。
日本と中国、そしてアジアが混じったような文化を持つ遠国を知ったのはその時で、そのおかげで我が家の食のグレードがアップしたのは間違いない。
お姉さまも動揺していたが、わたしも驚いたのがザグデン公爵夫人が書いたというレシピ本の存在だ。文字が日本語だった。
「遠国の文字って、もともと日本語なのかしら?」
『違うよ。ここの奥様もまた、転生者だったんじゃないかなぁ』
「なんですって?そういうことは、早く言ってよ!」
『え、だって、聞かれなかったから』
「この世界に、わたしたち以外の転生者はまだいる?」
『今のところはいないね』
ああ、ほんと融通が利かない。
余計なことはしない、ともいえるのかもしれないが、フューリーは「言われたこと」しかしない。
それが精霊なのだから仕方ないとはいえ、なんとももどかしいところだ。
「今後は、転生者らしき疑いの人がいた場合、速やかに報告を」
『はぁい』
その他、情報に漏れがないようにいくつか項目を付け加え、フューリーに命じた。
「あ、おべんとうばこのうた」
本人は気づいていないようだけど、『妹』は料理中に歌う癖があった。
その癖は今も変わってないようで、気分が乗ったのか鍋をかき混ぜながら口ずさんでいた。
それは懐かしい、童謡。
『かあさんと同じ、歌……』
耳に微かに届いたのは、どうやらリーファイ様の声だ。
転生者であった公爵夫人も歌っていたのだろう。
視覚共有しているフューリーの目を通して、リーファイ様が両手を伸ばしてお姉さまの背後から、その腰に手を回そうとしていた。
させるかぁ!!
フューリーに邪魔を命じる前に、料理人の声が彼の動きを止めた。
お姉さまにも不審そうに尋ねられ、やっと正気に戻ったようだ。自分の無意識の行動に驚いているようだが、彼もバカではないのだろう。
やっと自分の気持ちに気付いたか。
しかし、お姉さま、あなたが残念か?!
第三者的視点で見れば「ユー、くっついちゃいなよ!!」的展開に、こちらの方が顔を覆ってゴロゴロ悶えたいくらいだ。
あの場にいたら、わたしだってほかの人と一緒にニヤニヤ見守りたかった!!
その後、順調に料理を作りまくったお姉さまはメイドさんに連れられてった。
彼女たちに磨き抜かれ、化粧を施された上にドレスアップまでされたお姉さまは、間違いなく美人だった。公爵家の食堂に表れたお姉さまを見て、リーファイ様はほおを赤らめ、呆然としてた。
先ほど己の恋心を自覚したばかりの年頃男子。
だがしかし、着飾った女性を前にしてお世辞の一つも言えないとは情けない。世の男性全てに美人と褒められても、結局のところ、好きな人に可愛いと思われなきゃ意味がないというのに。
さすがお姉さま!
完・全・勝・利!!
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