テンプレ通りに悪役令嬢ものを書いてみた Ⅱ

希臘楽園

文字の大きさ
上 下
2 / 6

【1】やっぱり聖女になっちゃった

しおりを挟む
「お父さん、もし私が聖女だったら、約束守ってくれるよね?」

「ああ、しかし、うちは王族でも貴族でもないぞ。そんな事無いと思うけどなぁ・・・」

「だから万が一よ!」

私は念を押す。

「あ~分かった分かった」

パン屋を営む父は、うんざりした様に答える。


この国では5歳になると魔法能力の検査を受けさせられる。
5歳となった私はこの日を迎えた。
聖女でなければ平民として平穏に暮らせるのだけど・・・

「はい、メリッサ、次は君の番だよ」

呼ばれて私は水晶球に手を翳す。
途端に水晶球は光輝く。

「こりゃ驚いた! 君は光魔法の使い手。聖女だよ!」

あーーーー! やっぱりクソゲーの通りになっちゃった!

**********

「お父さん! 早く早く!」

私は父を急かして馬車をとばす。
目指すはブラックバーン男爵領とハンドレページ公爵領の領境だ。
私は両親と共に今まで住んでいたバラックバーン男爵領からハンドレページ公爵領に逃げ込もうとしているのだ。

私が聖女だと分かってしまった以上、ブラックバーン男爵は私を養女として迎え入れようとするだろう。
王家に対して有利な手駒として。
だったら、より権威のあるハンドレページ公爵領に逃げ込んで保護してもらおうという算段だ。
あの悪役令嬢であるグロリア・ハンドレページの居る領地だ。

**********

領境が見えてきた。
当然そこには検問所があって兵士も駐屯しているのだけど。

パン職人の父は領境を越えてハンドレページ公爵領までパンを売りに行っている。
その為、通行手形も持っている。

「今日は家族も一緒かい?」

顔馴染みらしい兵士が訊いてくる。

「ああ、大規模なバザーがあってね。今日は女房や娘にも手伝ってもらおうと思って連れてきた」

「そうかい。まあがんばれよ」

領境をブラックバーン男爵の追っ手が来る前に通過する事が出来た。

**********

公爵領に入ると以前より取引のあった商人の家に厄介になる。
その商人は公爵領館に物品を納めているので、その紹介で後日、公爵殿下と謁見する事が出来た。
一介の平民風情が王家並みの天上人である公爵殿下に謁見するなんて、普通はありえないし、だいたい公爵ともなれば王都に居るもんだよね。
そこはゲームの世界ならではの御都合主義に助けられた。

「私は先日の検査で聖女に認定されました。
ですが、そうなりますとブラックバーン男爵家は私を養女と迎え入れようとするでしょう。
それを嫌ってこちらに逃げてきました」

「5歳との事だが、物言い一つとっても随分と賢そうだな。さすが聖女というべきか」

公爵殿下は感心している。
こちとら外見は5歳の少女でも中身は20ん歳なんだ。年季が違う。

「公爵様、どうか私たち家族を保護していただけないでしょうか?」

私は懇願する。

「あい分かった。
お父さんはパン職人という事だったな。だったら厨房でこの館のパンを焼いてもらおう。
お母さんには館の家事を手伝ってもらおう。
君にはそうだな? 賢そうだから娘のグロリアの友達となってくれ」

うわっ 悪役令嬢グロリアの友達にさせられちゃったよ。
それのしても随分ともの解りの良い公爵殿下だ。このあたりも御都合主義なのかな?
ともかくも私たちは館の敷地内にある小さいながらも一軒家を与えられ、そこに住む事となった。

ちなみに「ブラックバーン男爵が私たちを取返しに来ませんか?」と訊いたら、
「あの男爵にはいろいろ援助しているから大丈夫」との事。


こうして新天地での生活が始まった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

テンプレ通りじゃないかもしれないけれど悪役令嬢ものを書いてみた

希臘楽園
ファンタジー
思いついた構想を軽く書いてみました。 悪役令嬢がライバルとなる娘たちを事前に潰してしまう話です。 キャラの名前は第1作・第2作から転用しました。 メモ書き的な粗い内容ですが、良かったら読んでみて下さい。

【完結】悪役令嬢が可愛すぎる!!

佐倉穂波
ファンタジー
 ある日、自分が恋愛小説のヒロインに転生していることに気がついたアイラ。  学園に入学すると、悪役令嬢であるはずのプリシラが、小説とは全く違う性格をしており、「もしかして、同姓同名の子が居るのでは?」と思ったアイラだったが…….。 三話完結。 ヒロインが悪役令嬢を「可愛い!」と萌えているだけの物語。 2023.10.15 プリシラ視点投稿。

イジメられっ子は悪役令嬢( ; ; )イジメっ子はヒロイン∑(゚Д゚)じゃあ仕方がないっ!性格が悪くても(⌒▽⌒)

音無砂月
ファンタジー
公爵令嬢として生まれたレイラ・カーティスには前世の記憶がある。 それは自分がとある人物を中心にイジメられていた暗黒時代。 加えて生まれ変わった世界は従妹が好きだった乙女ゲームと同じ世界。 しかも自分は悪役令嬢で前世で私をイジメていた女はヒロインとして生まれ変わっていた。 そりゃないよ、神様。・°°・(>_<)・°°・。 *内容の中に顔文字や絵文字が入っているので苦手な方はご遠慮ください。 尚、その件に関する苦情は一切受け付けませんので予めご了承ください。

元ゲーマーのオタクが悪役令嬢? ごめん、そのゲーム全然知らない。とりま異世界ライフは普通に楽しめそうなので、設定無視して自分らしく生きます

みなみ抄花
ファンタジー
前世で死んだ自分は、どうやらやったこともないゲームの悪役令嬢に転生させられたようです。 女子力皆無の私が令嬢なんてそもそもが無理だから、設定無視して自分らしく生きますね。 勝手に転生させたどっかの神さま、ヒロインいじめとか勇者とか物語の盛り上げ役とかほんっと心底どうでも良いんで、そんなことよりチート能力もっとよこしてください。

乙女ゲームの敵役の妹兼悪役令嬢に転生したので、今日もお兄様に媚を売ります。

下菊みこと
恋愛
自分だけ生き残ろうとしてた割にフラグクラッシャーになる子のお話。 小説家になろう様でも投稿しています。

悪役令嬢に転生したので、剣を執って戦い抜く

秋鷺 照
ファンタジー
 断罪イベント(?)のあった夜、シャルロッテは前世の記憶を取り戻し、自分が乙女ゲームの悪役令嬢だと知った。  ゲームシナリオは絶賛進行中。自分の死まで残り約1か月。  シャルロッテは1つの結論を出す。それすなわち、「私が強くなれば良い」。  目指すのは、誰も死なないハッピーエンド。そのために、剣を執って戦い抜く。 ※なろうにも投稿しています

転生ヒロインは乙女ゲームを始めなかった。

よもぎ
ファンタジー
転生ヒロインがマトモな感性してる世界と、シナリオの強制力がある世界を混ぜたらどうなるの?という疑問への自分なりのアンサーです。転生ヒロインに近い視点でお話が進みます。激しい山場はございません。

悪役令嬢の矜持〜世界が望む悪役令嬢を演じればよろしいのですわね〜

白雲八鈴
ファンタジー
「貴様との婚約は破棄だ!」 はい、なんだか予想通りの婚約破棄をいただきました。ありきたりですわ。もう少し頭を使えばよろしいのに。 ですが、なんと世界の強制力とは恐ろしいものなのでしょう。 いいでしょう!世界が望むならば、悪役令嬢という者を演じて見せましょう。 さて、悪役令嬢とはどういう者なのでしょうか? *作者の目が節穴のため誤字脱字は存在します。 *n番煎じの悪役令嬢物です。軽い感じで読んでいただければと思います。 *小説家になろう様でも投稿しております。

処理中です...