テンプレ通りに悪役令嬢ものを書いてみた

希臘楽園

文字の大きさ
上 下
14 / 16

【閑話】東雲あづま

しおりを挟む
私の名前は 東雲しののめあづま。
あ、これは前の世界での名前で、今の世界では イングリッド・エヴァンス公爵令嬢 だ。

まず、東雲あづまだった前世での話しをしよう。
私は「日本」という国に生まれた。
昔から機械弄りが好きだった私は高等専門学校に進学し、ロボコンにも出場した事もある。
卒業後は電気機器メーカーに入社し、設計・試作部署に配属となった。
ところがとんだブラック企業で、就業は連日深夜にまで及んだ。
ハタチはとうに過ぎたが婚活なんて出来やしない。
その日もやっとの思いで帰宅すると、いきなり目の前が真っ暗になって、そのまま意識が遠のいた。
今になって思うと過労死したのだと思う。

再び目を開けた時には、イングリッド・エヴァンス公爵令嬢として生を受けていた。
まだ赤ん坊だったので状況を把握するのに時間がかかったが、今の世界はゲームやラノベでおなじみの剣と魔法のある世界。俗にいうファンタジー世界だった!
つまり私は、あの「異世界転生」をしてしまったのだ!
その割には神様が出てきてチート能力を授けてくれる事も無かったし、召喚士が「ようこそ勇者よ」と言ってくれる事も無かった。もっとも、僅かな恩賞だけで王様から「魔王を倒しに行け!」なんて言われたりしたら、それこそブラックだよね。いきなりの公爵令嬢で正解だったのかもしれない。

魔物も出るには出るらしいが、いたって平和。
公爵家で裕福だし、イケメンの兄さんをはじめ家族仲は良好。良い事づくめ。
更に私を感激させたのが、この世界の魔道器だ。
エネルギー源に電気ではなく魔力を使うのだが、それ以外は前世の電気製品とよく似ているのだ。
これには前世での知識が役に立つ。
以来、私は魔道器作りに没頭した。スケジュールに追われる事も無く好きに出来る。天国だ。
前世の家族の事も気掛かりといえば気掛かりだけど、今のこの世界を満喫しようと思っている。


ウィンディーネ・ワイツウェルに初めて会ったのは、彼女の母親、私にとっては叔母に当たるイライザ様の亡くなった時だ。我侭娘だと噂されていたのだが、その後エヴァンス家を訪ねて来た時にはすっかりお嬢様になっていて驚いた。ま、私が公爵令嬢としてはガサツなのは、前世の記憶を引きずっているからか、この世界のお嬢様教育に身が入らないのもあるのだろう。
その時に専属メイドとなる娘の居場所を的確に把握していたのも驚いたけど、それから接する機会が多くなるにつれて、まるでこの先の事が解っているのではないか?と思える行動が見受けられた。
この世界がゲームやラノベにあって、彼女はそれを知っている私と同じ異世界転生者なのではないか?
そう思えてならなかった。
しかしその後、彼女は自分の人生を巻戻して転生した事がうすうす解ってきた。

彼女はウィチタという義妹を嫌っている。
おそらく前世で因縁深いものがあったのだろう。
たしかに嫌な感じの娘である。
そこで私はウィンディーネに協力する事にした。従姉妹として。更にはタイプは違うが同じ転生者として。

ウィチタをどんどん追詰めていく様はゾクゾクしたよ。
最後に私が闇魔法を使っている証拠として挙げたのは、カメラ型魔道器によるものなんだ。
ウィンディーネがウィチタを怒らせ瘴気が発生している様子を私が隠れて撮影していたんだ。


それから、ニコル様にプロポーズして見事に自爆したのは大ショックだった。
「自分も女だから」と言われたのもあるけれど、そんなありふれたオチにまんまと引っ掛かる私自身が情けなかったよ。



イングリッドの独白ページです。
執筆中に「魔道器オタクだったら異世界転生者にしたら面白いんじゃないか?」と思い立ち、そうしました。
彼女の台詞には「ハイビジョン」「ヤバい」「魔王化」といった現代日本の言葉を含ませ、異世界転生者である事を匂わせています。もちろん前世名の「東雲あずま」も方角の東を捩ったものです。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

魅了が解けた貴男から私へ

砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。 彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。 そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。 しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。 男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。 元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。 しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。 三話完結です。

婚約破棄されるまで結婚を待つ必要がありますか?

碧桜 汐香
恋愛
ある日異世界転生したことに気づいた悪役令嬢ルリア。 大好きな王太子サタリン様との婚約が破棄されるなんて、我慢できません。だって、わたくしの方がサタリン様のことを、ヒロインよりも幸せにして差し上げられますもの!と、息巻く。 結婚を遅める原因となっていた父を脅し……おねだりし、ヒロイン出現前に結婚を終えて仕舞えばいい。 そう思い、実行に移すことに。

悪役令嬢は乙女ゲームの強制力から逃れたい

椰子ふみの
恋愛
 私は『聖女は愛に囚われる』という乙女ゲームの世界に転生した。よりによって悪役令嬢に。断罪を避けるため、色々、頑張ってきたけど、どうもゲームの強制力が私を悪役令嬢にしようとしているみたい。  ハーモニー学園に入学しても、ヒロインや攻略対象者には近づかないぞ。  あれ、ヒロインがいない?

悪役令嬢は天然

西楓
恋愛
死んだと思ったら乙女ゲームの悪役令嬢に転生⁉︎転生したがゲームの存在を知らず天然に振る舞う悪役令嬢に対し、ゲームだと知っているヒロインは…

【完結】悪役令嬢が可愛すぎる!!

佐倉穂波
ファンタジー
 ある日、自分が恋愛小説のヒロインに転生していることに気がついたアイラ。  学園に入学すると、悪役令嬢であるはずのプリシラが、小説とは全く違う性格をしており、「もしかして、同姓同名の子が居るのでは?」と思ったアイラだったが…….。 三話完結。 ヒロインが悪役令嬢を「可愛い!」と萌えているだけの物語。 2023.10.15 プリシラ視点投稿。

アホ王子が王宮の中心で婚約破棄を叫ぶ! ~もう取り消しできませんよ?断罪させて頂きます!!

アキヨシ
ファンタジー
貴族学院の卒業パーティが開かれた王宮の大広間に、今、第二王子の大声が響いた。 「マリアージェ・レネ=リズボーン! 性悪なおまえとの婚約をこの場で破棄する!」 王子の傍らには小動物系の可愛らしい男爵令嬢が纏わりついていた。……なんてテンプレ。 背後に控える愚か者どもと合わせて『四馬鹿次男ズwithビッチ』が、意気揚々と筆頭公爵家令嬢たるわたしを断罪するという。 受け立ってやろうじゃない。すべては予定調和の茶番劇。断罪返しだ! そしてこの舞台裏では、王位簒奪を企てた派閥の粛清の嵐が吹き荒れていた! すべての真相を知ったと思ったら……えっ、お兄様、なんでそんなに近いかな!? ※設定はゆるいです。暖かい目でお読みください。 ※主人公の心の声は罵詈雑言、口が悪いです。気分を害した方は申し訳ありませんがブラウザバックで。 ※小説家になろう・カクヨム様にも投稿しています。

悪役令嬢は高らかに笑う

結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
婚約者に愛想を尽かされる為、これから私は悪役令嬢を演じます 『オーホッホッホッ!私はこの度、婚約者と彼に思いを寄せるヒロインの為に今から悪役令嬢を演じようと思います。どうかしら?この耳障りな笑い方・・・。きっと誰からも嫌われるでしょう?』 私には15歳の時に決まった素敵な婚約者がいる。必ずこの人と結婚して幸せになるのだと信じていた。彼には仲の良い素敵な幼馴染の女性がいたけれども、そんな事は私と彼に取っては何の関係も無いと思っていた。だけど、そんなある日の事。素敵な女性を目指す為、恋愛小説を読んでいた私は1冊の本に出合って気付いてしまった。何、これ・・・この小説の展開・・まるで今の自分の立ち位置にそっくりなんですけど?!私は2人に取って単なる邪魔者の存在なの?!だから私は決意した。小説通りに悪役令嬢を演じ、婚約者に嫌われて2人の恋を実らせてあげようと—。 ※「カクヨム」にも掲載しています

ど天然で超ドジなドアマットヒロインが斜め上の行動をしまくった結果

ファンタジー
アリスはルシヨン伯爵家の長女で両親から愛されて育った。しかし両親が事故で亡くなり叔父一家がルシヨン伯爵家にやって来た。叔父デュドネ、義叔母ジスレーヌ、義妹ユゲットから使用人のように扱われるようになったアリス。しかし彼女は何かと斜め上の行動をするので、逆に叔父達の方が疲れ切ってしまうのである。そしてその結果は……? 小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。 表紙に素敵なFAいただきました! ありがとうございます!

処理中です...