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【閑話】東雲あづま
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私の名前は 東雲あづま。
あ、これは前の世界での名前で、今の世界では イングリッド・エヴァンス公爵令嬢 だ。
まず、東雲あづまだった前世での話しをしよう。
私は「日本」という国に生まれた。
昔から機械弄りが好きだった私は高等専門学校に進学し、ロボコンにも出場した事もある。
卒業後は電気機器メーカーに入社し、設計・試作部署に配属となった。
ところがとんだブラック企業で、就業は連日深夜にまで及んだ。
ハタチはとうに過ぎたが婚活なんて出来やしない。
その日もやっとの思いで帰宅すると、いきなり目の前が真っ暗になって、そのまま意識が遠のいた。
今になって思うと過労死したのだと思う。
再び目を開けた時には、イングリッド・エヴァンス公爵令嬢として生を受けていた。
まだ赤ん坊だったので状況を把握するのに時間がかかったが、今の世界はゲームやラノベでおなじみの剣と魔法のある世界。俗にいうファンタジー世界だった!
つまり私は、あの「異世界転生」をしてしまったのだ!
その割には神様が出てきてチート能力を授けてくれる事も無かったし、召喚士が「ようこそ勇者よ」と言ってくれる事も無かった。もっとも、僅かな恩賞だけで王様から「魔王を倒しに行け!」なんて言われたりしたら、それこそブラックだよね。いきなりの公爵令嬢で正解だったのかもしれない。
魔物も出るには出るらしいが、いたって平和。
公爵家で裕福だし、イケメンの兄さんをはじめ家族仲は良好。良い事づくめ。
更に私を感激させたのが、この世界の魔道器だ。
エネルギー源に電気ではなく魔力を使うのだが、それ以外は前世の電気製品とよく似ているのだ。
これには前世での知識が役に立つ。
以来、私は魔道器作りに没頭した。スケジュールに追われる事も無く好きに出来る。天国だ。
前世の家族の事も気掛かりといえば気掛かりだけど、今のこの世界を満喫しようと思っている。
ウィンディーネ・ワイツウェルに初めて会ったのは、彼女の母親、私にとっては叔母に当たるイライザ様の亡くなった時だ。我侭娘だと噂されていたのだが、その後エヴァンス家を訪ねて来た時にはすっかりお嬢様になっていて驚いた。ま、私が公爵令嬢としてはガサツなのは、前世の記憶を引きずっているからか、この世界のお嬢様教育に身が入らないのもあるのだろう。
その時に専属メイドとなる娘の居場所を的確に把握していたのも驚いたけど、それから接する機会が多くなるにつれて、まるでこの先の事が解っているのではないか?と思える行動が見受けられた。
この世界がゲームやラノベにあって、彼女はそれを知っている私と同じ異世界転生者なのではないか?
そう思えてならなかった。
しかしその後、彼女は自分の人生を巻戻して転生した事がうすうす解ってきた。
彼女はウィチタという義妹を嫌っている。
おそらく前世で因縁深いものがあったのだろう。
たしかに嫌な感じの娘である。
そこで私はウィンディーネに協力する事にした。従姉妹として。更にはタイプは違うが同じ転生者として。
ウィチタをどんどん追詰めていく様はゾクゾクしたよ。
最後に私が闇魔法を使っている証拠として挙げたのは、カメラ型魔道器によるものなんだ。
ウィンディーネがウィチタを怒らせ瘴気が発生している様子を私が隠れて撮影していたんだ。
それから、ニコル様にプロポーズして見事に自爆したのは大ショックだった。
「自分も女だから」と言われたのもあるけれど、そんなありふれたオチにまんまと引っ掛かる私自身が情けなかったよ。
イングリッドの独白ページです。
執筆中に「魔道器オタクだったら異世界転生者にしたら面白いんじゃないか?」と思い立ち、そうしました。
彼女の台詞には「ハイビジョン」「ヤバい」「魔王化」といった現代日本の言葉を含ませ、異世界転生者である事を匂わせています。もちろん前世名の「東雲あずま」も方角の東を捩ったものです。
あ、これは前の世界での名前で、今の世界では イングリッド・エヴァンス公爵令嬢 だ。
まず、東雲あづまだった前世での話しをしよう。
私は「日本」という国に生まれた。
昔から機械弄りが好きだった私は高等専門学校に進学し、ロボコンにも出場した事もある。
卒業後は電気機器メーカーに入社し、設計・試作部署に配属となった。
ところがとんだブラック企業で、就業は連日深夜にまで及んだ。
ハタチはとうに過ぎたが婚活なんて出来やしない。
その日もやっとの思いで帰宅すると、いきなり目の前が真っ暗になって、そのまま意識が遠のいた。
今になって思うと過労死したのだと思う。
再び目を開けた時には、イングリッド・エヴァンス公爵令嬢として生を受けていた。
まだ赤ん坊だったので状況を把握するのに時間がかかったが、今の世界はゲームやラノベでおなじみの剣と魔法のある世界。俗にいうファンタジー世界だった!
つまり私は、あの「異世界転生」をしてしまったのだ!
その割には神様が出てきてチート能力を授けてくれる事も無かったし、召喚士が「ようこそ勇者よ」と言ってくれる事も無かった。もっとも、僅かな恩賞だけで王様から「魔王を倒しに行け!」なんて言われたりしたら、それこそブラックだよね。いきなりの公爵令嬢で正解だったのかもしれない。
魔物も出るには出るらしいが、いたって平和。
公爵家で裕福だし、イケメンの兄さんをはじめ家族仲は良好。良い事づくめ。
更に私を感激させたのが、この世界の魔道器だ。
エネルギー源に電気ではなく魔力を使うのだが、それ以外は前世の電気製品とよく似ているのだ。
これには前世での知識が役に立つ。
以来、私は魔道器作りに没頭した。スケジュールに追われる事も無く好きに出来る。天国だ。
前世の家族の事も気掛かりといえば気掛かりだけど、今のこの世界を満喫しようと思っている。
ウィンディーネ・ワイツウェルに初めて会ったのは、彼女の母親、私にとっては叔母に当たるイライザ様の亡くなった時だ。我侭娘だと噂されていたのだが、その後エヴァンス家を訪ねて来た時にはすっかりお嬢様になっていて驚いた。ま、私が公爵令嬢としてはガサツなのは、前世の記憶を引きずっているからか、この世界のお嬢様教育に身が入らないのもあるのだろう。
その時に専属メイドとなる娘の居場所を的確に把握していたのも驚いたけど、それから接する機会が多くなるにつれて、まるでこの先の事が解っているのではないか?と思える行動が見受けられた。
この世界がゲームやラノベにあって、彼女はそれを知っている私と同じ異世界転生者なのではないか?
そう思えてならなかった。
しかしその後、彼女は自分の人生を巻戻して転生した事がうすうす解ってきた。
彼女はウィチタという義妹を嫌っている。
おそらく前世で因縁深いものがあったのだろう。
たしかに嫌な感じの娘である。
そこで私はウィンディーネに協力する事にした。従姉妹として。更にはタイプは違うが同じ転生者として。
ウィチタをどんどん追詰めていく様はゾクゾクしたよ。
最後に私が闇魔法を使っている証拠として挙げたのは、カメラ型魔道器によるものなんだ。
ウィンディーネがウィチタを怒らせ瘴気が発生している様子を私が隠れて撮影していたんだ。
それから、ニコル様にプロポーズして見事に自爆したのは大ショックだった。
「自分も女だから」と言われたのもあるけれど、そんなありふれたオチにまんまと引っ掛かる私自身が情けなかったよ。
イングリッドの独白ページです。
執筆中に「魔道器オタクだったら異世界転生者にしたら面白いんじゃないか?」と思い立ち、そうしました。
彼女の台詞には「ハイビジョン」「ヤバい」「魔王化」といった現代日本の言葉を含ませ、異世界転生者である事を匂わせています。もちろん前世名の「東雲あずま」も方角の東を捩ったものです。
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