テンプレ通りに悪役令嬢ものを書いてみた

希臘楽園

文字の大きさ
上 下
12 / 16

【10】悪役令嬢は断罪される

しおりを挟む
秋になり感謝祭のパーティーが開かれた。
一段高い壇上に陣取ったノルベルト殿下は、こう宣言する。

「私はここにいるウィンディーネ・ワイツェル嬢との婚約を破棄する!」

告げられた私は 「遂に来たか・・・」 と複雑な思いの中、「わかりました」とだけ言い、相手を睨み返す。
勝ち誇った表情のノルベルト殿下。
寄り添うウイチタも同様に勝ち誇った表情で私を見下す。
しかし、このままでは終わらせない。反撃はこれからだ。

「それならば私がウィンディーネ嬢を婚約者として迎え入れる。
ノルベルト、お前は今、彼女との婚約を破棄したのだから構わないよな?」

すかさず歩み出たマーヴィン殿下は私に手を差出して述べられる。

「ウィンディーネ、私は貴方を婚約者としたい。受入れてくれるだろうか?」

私も殿下の手を取り、「謹んでお受けいたします」と淑女らしい振舞いで了承する。

この行為に揚げ足を取られる格好となったノルベルト殿下は慌てる。
ウィチタはそれでも王太子の婚約者の座を射止めた分があると思ったのだろう。
まだ王太子の婚約者になるという分がある為か、「ちっ」と舌打ちするだけの悔しい表情に留まる。
そうよ。まだまだよ。これからが本番。私たちは貴方を叩きのめすのだから。

「わ、私はウィンディーネ嬢に代わって、か、彼女、ウィチタ・ワイツウェル嬢と・・・」

動転したノルベルト殿下に第二の矢が放たれる。

「殿下、ウィチタ嬢は婚約者として相応しくないと思います。
彼女は禁呪となっている闇属性魔法を使っていると思われます」

「はーい、これが彼女が闇魔法を使っている証拠画像だよ! 彼女の身体から瘴気が出ているでしょ!」

今度はソフイア嬢とイングリッドが進み出て、ウィチタを攻め立てる。
予期せぬ展開の連続にウィチタが闇属性魔法を使っていると知り、ノルベルト殿下は意気消沈。
余裕の表情を見せていたウィチタが一転、鬼の形相となり叫ぶ。

「畜生!畜生!畜生!
この似非えせ聖女も魔道器狂いも、みんなしてこの女とグルになって私を悪者扱いしやがって!」

「お止しなさい。聖女を、シェフィールド公爵家を愚弄する事は王家と同じ不敬罪になりますよ」

殿下の後ろに侍っていたニコル様が彼女を嗜める。
それでも彼女は呪文の様に愚弄続ける。

「許せない!許せない!許せない!許せない!許せない!
殿下に魅惑の魔法を掛けて懐柔させようと思えば、護符を作って妨害してくるし!
どこまで私の邪魔をするの! 王太子の婚約者は私以外はありえないのに!」

「あ~自分から魅惑の魔法を使っている事をバラしちゃったよ」

イングリッドがあざ笑っている。案外ウィチタも単純だったのね。
と、その時だ。
怒りと共に瘴気はどんどん大きくなり、彼女を包み込み、更にこちらに迫ってくる。

「ヤバいよ!ウィチタが魔王化しようとしているよ!」

魔王化? イングリッドが何を言っているのか解らないけど、危ない状況にある事はたしかだ。


「みんな退避だ!」

マーヴィン殿下やウォーレン兄様は生徒たちに非難を呼び掛け、
ニコル様は剣を構えながらノルベルト殿下を守りつつ後退、
ソフィア様は錫杖を振い浄化を試み
イーノック様と私は魔法でソフィア様の援護をする。

集中攻撃で魔法を浴びせた方が早いと思うが、ウィチタを殺す訳にはいかない。その加減が難しい。
イングリッドは「凄い瘴気濃度だ!」と叫ぶばかりで、ちっとも助けてくれない。
ソフィア様が浄化に躍起になっているが、勢いが激しく一向に収まりそうにない。

「ソフィア様! 私も!」

「ありがとう! 助かります!」

ステラが加勢に入った事でようやく瘴気も小さくなっていき、やがて終息した。
そこにはウィチタがぐったりと横たわっていた。





ソフィア嬢です。
彼女は唯一「透き通る様な金髪で青眼」と容姿が記されています(第6話参照)
ですからその容姿に合う様に出してみました。
神官服にしたのですが、ややもすると本当にシスターになってしまう為、適度にくだけた感じで。

最大の見せ場である断罪シーンが案外簡単に終わってしまいました。
文章の構成力の無さを痛感しました。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

魅了が解けた貴男から私へ

砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。 彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。 そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。 しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。 男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。 元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。 しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。 三話完結です。

婚約破棄されるまで結婚を待つ必要がありますか?

碧桜 汐香
恋愛
ある日異世界転生したことに気づいた悪役令嬢ルリア。 大好きな王太子サタリン様との婚約が破棄されるなんて、我慢できません。だって、わたくしの方がサタリン様のことを、ヒロインよりも幸せにして差し上げられますもの!と、息巻く。 結婚を遅める原因となっていた父を脅し……おねだりし、ヒロイン出現前に結婚を終えて仕舞えばいい。 そう思い、実行に移すことに。

悪役令嬢は乙女ゲームの強制力から逃れたい

椰子ふみの
恋愛
 私は『聖女は愛に囚われる』という乙女ゲームの世界に転生した。よりによって悪役令嬢に。断罪を避けるため、色々、頑張ってきたけど、どうもゲームの強制力が私を悪役令嬢にしようとしているみたい。  ハーモニー学園に入学しても、ヒロインや攻略対象者には近づかないぞ。  あれ、ヒロインがいない?

悪役令嬢は天然

西楓
恋愛
死んだと思ったら乙女ゲームの悪役令嬢に転生⁉︎転生したがゲームの存在を知らず天然に振る舞う悪役令嬢に対し、ゲームだと知っているヒロインは…

【完結】悪役令嬢が可愛すぎる!!

佐倉穂波
ファンタジー
 ある日、自分が恋愛小説のヒロインに転生していることに気がついたアイラ。  学園に入学すると、悪役令嬢であるはずのプリシラが、小説とは全く違う性格をしており、「もしかして、同姓同名の子が居るのでは?」と思ったアイラだったが…….。 三話完結。 ヒロインが悪役令嬢を「可愛い!」と萌えているだけの物語。 2023.10.15 プリシラ視点投稿。

アホ王子が王宮の中心で婚約破棄を叫ぶ! ~もう取り消しできませんよ?断罪させて頂きます!!

アキヨシ
ファンタジー
貴族学院の卒業パーティが開かれた王宮の大広間に、今、第二王子の大声が響いた。 「マリアージェ・レネ=リズボーン! 性悪なおまえとの婚約をこの場で破棄する!」 王子の傍らには小動物系の可愛らしい男爵令嬢が纏わりついていた。……なんてテンプレ。 背後に控える愚か者どもと合わせて『四馬鹿次男ズwithビッチ』が、意気揚々と筆頭公爵家令嬢たるわたしを断罪するという。 受け立ってやろうじゃない。すべては予定調和の茶番劇。断罪返しだ! そしてこの舞台裏では、王位簒奪を企てた派閥の粛清の嵐が吹き荒れていた! すべての真相を知ったと思ったら……えっ、お兄様、なんでそんなに近いかな!? ※設定はゆるいです。暖かい目でお読みください。 ※主人公の心の声は罵詈雑言、口が悪いです。気分を害した方は申し訳ありませんがブラウザバックで。 ※小説家になろう・カクヨム様にも投稿しています。

悪役令嬢は高らかに笑う

結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
婚約者に愛想を尽かされる為、これから私は悪役令嬢を演じます 『オーホッホッホッ!私はこの度、婚約者と彼に思いを寄せるヒロインの為に今から悪役令嬢を演じようと思います。どうかしら?この耳障りな笑い方・・・。きっと誰からも嫌われるでしょう?』 私には15歳の時に決まった素敵な婚約者がいる。必ずこの人と結婚して幸せになるのだと信じていた。彼には仲の良い素敵な幼馴染の女性がいたけれども、そんな事は私と彼に取っては何の関係も無いと思っていた。だけど、そんなある日の事。素敵な女性を目指す為、恋愛小説を読んでいた私は1冊の本に出合って気付いてしまった。何、これ・・・この小説の展開・・まるで今の自分の立ち位置にそっくりなんですけど?!私は2人に取って単なる邪魔者の存在なの?!だから私は決意した。小説通りに悪役令嬢を演じ、婚約者に嫌われて2人の恋を実らせてあげようと—。 ※「カクヨム」にも掲載しています

ど天然で超ドジなドアマットヒロインが斜め上の行動をしまくった結果

ファンタジー
アリスはルシヨン伯爵家の長女で両親から愛されて育った。しかし両親が事故で亡くなり叔父一家がルシヨン伯爵家にやって来た。叔父デュドネ、義叔母ジスレーヌ、義妹ユゲットから使用人のように扱われるようになったアリス。しかし彼女は何かと斜め上の行動をするので、逆に叔父達の方が疲れ切ってしまうのである。そしてその結果は……? 小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。 表紙に素敵なFAいただきました! ありがとうございます!

処理中です...