テンプレ通りに悪役令嬢ものを書いてみた

希臘楽園

文字の大きさ
上 下
10 / 16

【9】悪役令嬢は見舞いに行く

しおりを挟む
それからもウィチタが仕掛けてきて、私が返り討ちにする事が続いた。
彼女は下級貴族や新興貴族の子女からの受けが良い。
ノルベルト殿下にも盛んに接近をかけているらしい。


そんな中、マーヴィン殿下の母君であるマリア妃殿下がやまいに倒れたと聞いて見舞いに行く。
兄のウォーレンと共に。
丁度、イングリッドに頼んでおいた護符も出来たので、何点か持って。
療養生活をされている郊外の離宮を訪ねると、マーヴィン殿下とイーノック様が出迎えてくれた。
マリア妃がわずらわれたやまいが亡くなった母と同じものだと知って戦慄が走る。
しかし、幸い快方に向われているとの事で安心した。

「貴方の母親は気の毒だったね」

殿下は心底残念そうに言う。

「まだその頃は治療法が確立していなかったのだ」

「いえ、母と同じやまいに倒れる者がいなくなるのであれば本望です」

聞けば殿下はこのやまいを重要視していて、早くから治療方法を研究していたらしい。
それが今回実を結んだという訳だ。


その後、庭園の東屋あずまやに集う。
人払いをする物々しい雰囲気だったので、私もステラにお願いして結界を張ってもらう。
その様子を見た殿下たちは驚いて、

「ウィンディーネ、貴方の専属メイドは凄いな。もしかして聖女か?」

私はその問いに答えず、口元に人差指を添えて「しー」のポーズをする。
ステラが聖女である事は秘密なのに、何だかどんどんバラしている気がする。


準備が整うと、今まで凛々しかった殿下は途端にニコニコ顔となり、

「ウィンディーネ、会いたかったよ。私はどれだけこの日が来るのを待ちわびていたか・・・」

私はその甘い言葉に絶句してしまう。

「殿下は弟君のノルベルト殿下とお前の婚約発表会で、お前に一目惚れしてしまったんだ」

兄のウォーレンは苦々しく言う。

「以来、ウィンディーネ嬢に会わせろとかされて、我々はたまったものではない」

イーノック様も同調する。

「それは大変光栄な事です。ですが私は・・・」

私自身、あんなボンボン育ちのノルベルト殿下より聡明なマーヴィン殿下の方が余程良い。

「ノルベルトの婚約者だと言いたいんだろ? たしかにそれが足枷あしかせになっている」

「それで我々は一計を案じた」

「ウィン、お前はノルベルト殿下に嫌われろ!」

まるで合唱でもするかの様に次々に発せられる言葉に唖然とし、終いには兄から「殿下に嫌われろ!」だ。
どういうつもりなのだろう?

「いや、別にかしこまる事は無い。お前は今まで通り完璧な淑女を続けていてくれれば良い。
その内にノルベルト殿下はストレスが溜まって、お前との婚約を破棄されるだろう」

「そこをすかさずマーヴィン殿下と新たに婚約という訳」

私もマーヴィン殿下との婚約は願ったり適ったりだ。
しかし、婚約破棄で空白となったノルベルト殿下の婚約者の座をウィチタにさらわれるのだけは何としてでも阻止したい。私は3人にその事を話したが、同時に思い出した事がある。
持ってきた護符を3人に配りながら、ウィチタが闇属性魔法を使っている可能性がある事を話した。
それを証拠とすればウィチタを蹴落とす事が出来るのではないか?

「なるほど。僕もイングリッドと協力して何か考えてみるよ」

イーノック様も賛同してくれた。


帰ってくると不機嫌そうな顔をしたノルベルト殿下が待っていた。
傍にはウィチタもニヤニヤしながら侍っている。

「私に無断で兄上に会いに行ったみたいだな」

「マーヴィン殿下の母君であるマリア妃殿下が御病気になられたので、お見舞いに行って来ただけですわ。
そんな事までいちいち殿下におうかがいを立てなくてはなりませんの?」

「い、いや、そうではないが・・・」

なるほど、ウィチタあたりから私が見舞いに行く情報が伝わったらしい。
そして私が悪巧みをしているとでも吹込まれたのだろう。
たしかに悪巧みはしましたけどね・・・

「もしかしてヤキモチを妬かれましたか? 王になる方がそんなに狭量では困りますわ。
あ、そうそう、殿下にもこれをお渡ししておきますわ。かない為のお守りですの」

「殿下・・・」

ノルベルト殿下は他と同類に扱われるのが不満のようだ。

「あら、お気に召しませんか?
それでしたら、殿下用に特別強力なのを用意させていただきますけど」

「いや、これでいい・・・」

私は護符をウィチタにも見せびらかす様にして殿下にわたす。
彼女は「余計な事をするな!」と言いたげに私を睨む。


怒れ怒れ!怒って馬脚を露わせ!
私は心の中で叫ぶ。






マーヴィン殿下です。
髪の色を決めておらず、ノルベルト殿下がネルソン家の黒系なので、その兄貴なのだからとライトグレーとしてみましたが、考えてみたら腹違いなので、そこに拘らなくても良かったのですね。
ライトグレーではワイツウェル家の銀色と同色っぽいし。
その後、髪色を変えて何点か出してみましたが、結局これが一番凛々しい感じだったので採用しました。
襟元が何か変ですが、気にしないで下さい。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

魅了が解けた貴男から私へ

砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。 彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。 そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。 しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。 男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。 元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。 しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。 三話完結です。

婚約破棄されるまで結婚を待つ必要がありますか?

碧桜 汐香
恋愛
ある日異世界転生したことに気づいた悪役令嬢ルリア。 大好きな王太子サタリン様との婚約が破棄されるなんて、我慢できません。だって、わたくしの方がサタリン様のことを、ヒロインよりも幸せにして差し上げられますもの!と、息巻く。 結婚を遅める原因となっていた父を脅し……おねだりし、ヒロイン出現前に結婚を終えて仕舞えばいい。 そう思い、実行に移すことに。

悪役令嬢は乙女ゲームの強制力から逃れたい

椰子ふみの
恋愛
 私は『聖女は愛に囚われる』という乙女ゲームの世界に転生した。よりによって悪役令嬢に。断罪を避けるため、色々、頑張ってきたけど、どうもゲームの強制力が私を悪役令嬢にしようとしているみたい。  ハーモニー学園に入学しても、ヒロインや攻略対象者には近づかないぞ。  あれ、ヒロインがいない?

悪役令嬢は天然

西楓
恋愛
死んだと思ったら乙女ゲームの悪役令嬢に転生⁉︎転生したがゲームの存在を知らず天然に振る舞う悪役令嬢に対し、ゲームだと知っているヒロインは…

【完結】悪役令嬢が可愛すぎる!!

佐倉穂波
ファンタジー
 ある日、自分が恋愛小説のヒロインに転生していることに気がついたアイラ。  学園に入学すると、悪役令嬢であるはずのプリシラが、小説とは全く違う性格をしており、「もしかして、同姓同名の子が居るのでは?」と思ったアイラだったが…….。 三話完結。 ヒロインが悪役令嬢を「可愛い!」と萌えているだけの物語。 2023.10.15 プリシラ視点投稿。

アホ王子が王宮の中心で婚約破棄を叫ぶ! ~もう取り消しできませんよ?断罪させて頂きます!!

アキヨシ
ファンタジー
貴族学院の卒業パーティが開かれた王宮の大広間に、今、第二王子の大声が響いた。 「マリアージェ・レネ=リズボーン! 性悪なおまえとの婚約をこの場で破棄する!」 王子の傍らには小動物系の可愛らしい男爵令嬢が纏わりついていた。……なんてテンプレ。 背後に控える愚か者どもと合わせて『四馬鹿次男ズwithビッチ』が、意気揚々と筆頭公爵家令嬢たるわたしを断罪するという。 受け立ってやろうじゃない。すべては予定調和の茶番劇。断罪返しだ! そしてこの舞台裏では、王位簒奪を企てた派閥の粛清の嵐が吹き荒れていた! すべての真相を知ったと思ったら……えっ、お兄様、なんでそんなに近いかな!? ※設定はゆるいです。暖かい目でお読みください。 ※主人公の心の声は罵詈雑言、口が悪いです。気分を害した方は申し訳ありませんがブラウザバックで。 ※小説家になろう・カクヨム様にも投稿しています。

悪役令嬢は高らかに笑う

結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
婚約者に愛想を尽かされる為、これから私は悪役令嬢を演じます 『オーホッホッホッ!私はこの度、婚約者と彼に思いを寄せるヒロインの為に今から悪役令嬢を演じようと思います。どうかしら?この耳障りな笑い方・・・。きっと誰からも嫌われるでしょう?』 私には15歳の時に決まった素敵な婚約者がいる。必ずこの人と結婚して幸せになるのだと信じていた。彼には仲の良い素敵な幼馴染の女性がいたけれども、そんな事は私と彼に取っては何の関係も無いと思っていた。だけど、そんなある日の事。素敵な女性を目指す為、恋愛小説を読んでいた私は1冊の本に出合って気付いてしまった。何、これ・・・この小説の展開・・まるで今の自分の立ち位置にそっくりなんですけど?!私は2人に取って単なる邪魔者の存在なの?!だから私は決意した。小説通りに悪役令嬢を演じ、婚約者に嫌われて2人の恋を実らせてあげようと—。 ※「カクヨム」にも掲載しています

ど天然で超ドジなドアマットヒロインが斜め上の行動をしまくった結果

ファンタジー
アリスはルシヨン伯爵家の長女で両親から愛されて育った。しかし両親が事故で亡くなり叔父一家がルシヨン伯爵家にやって来た。叔父デュドネ、義叔母ジスレーヌ、義妹ユゲットから使用人のように扱われるようになったアリス。しかし彼女は何かと斜め上の行動をするので、逆に叔父達の方が疲れ切ってしまうのである。そしてその結果は……? 小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。 表紙に素敵なFAいただきました! ありがとうございます!

処理中です...