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【4】悪役令嬢は専属メイドを鍛えてもらう
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収穫の多かった王都訪問を終え、帰途に着く。
兄のウォーレンは兄なりに貴族学校入学を来年に控え、いろいろ情報を仕入れていたみたいだ。
第1王子のマーヴィン殿下にも会ったそうだ。聡明な方だと褒めていた。
私も第2王子で王太子のノルベルト殿下よりもマーヴィン殿下と婚約したい。
しかし、それは王太子の婚約者の筆頭に挙がっている私には無理な話だ。
第一、私が婚約者を下りたら、ウィチタが横から掻っ攫う可能性もあるので、それだけは阻止したい。
ちなみにステラは馬車内の私たちと同席する訳にはいかず、露天の御者席に座ってもらっている。
見たところ身分が近い御者とは楽しく話しているみたいで安心する。
これが聖女だと判ってしまうと、扱いも変わってくるのだけどね。
領主館に戻ると、ステラをメイド長のエヴァンジェリンに引渡す。
孤児だと聞いてエヴァンジェリンは怪訝そうな顔をしたが、とにかく彼女を私の専属メイドとして教育してもらわないといけない。
下級貴族のメイドならまだしも、上級貴族、更には王家に仕えるメイドとなると多くは貴族令嬢で、上位の主の元に自分の娘を花嫁修業と称して差出す事もある。要は御機嫌取りだ。
しかも気立ての良い娘だと主に寵愛されて、正妻とはいかないまでも妾に納まる事もある。
現王ヘンリー殿下の側妃であるマリア妃がこの例で、生まれたマーヴィン殿下は第1王子でありながら庶子となる為、王太子には正妃ナターシャ妃との間に生まれた第2王子ノルベルト殿下がなっている。
ヘンリー殿下は男性継承者がいなかった王家が傍流から担ぎ上げた王で、婿的立場で発言力は弱い。
正妃ナターシャ妃は代々軍の要職を搬出してきた四大公爵家の一つネルソン公爵家(北公)出身らしく厳しい性格をしている。
私の父ウィリアムもそうだが、厳しい妻を娶ると優しい女性の元へ走ってしまうのは困ったものだ。
しかも私と義妹のウィチタとは半年程しか違わない同い歳とくる。
もっとも継母のエイプリル夫人はメイドではなかったはずだが。
とにかく、全くの素人であるステラをメイドに仕立てるのは大変だと思うが、亡き母の片腕として私を躾けてくれた手腕に期待する。
ちなみにエヴァンジェリンはエヴァンス家傍流のイーズリー伯爵家出身のれっきとした令嬢である。
数ヶ月が過ぎた。
ステラもエヴァンジェリンの厳しい指導の元、だんだんサマになってきた。
エヴァンジェリンにして「飲み込みは早い」と言わしめる程だから相当努力しているのだろう。
彼女によってメイド団は統制がとれており、平民のステラを苛める者もいない。
息抜きにステラも連れて領都に繰出す。
ステラを引取る時に「平民の生活を知る為」と大口を叩いた以上、知っておく必要がある。
平民の食べ物を口にしながら歩き廻る。
ステラは何事も珍しそうで目がキラキラさせている。
孤児であった彼女は平民の食べ物であってもロクに口に出来なかったのかもしれない。
変装はしているが、年端もいかない女の子がウロウロしていれば誘拐される危険がある。
公爵家の騎士たちが群集に紛れて目を光らせていると思う。
もっとも下手なチンピラだったら、私の魔法で撃退出来る自信はあるが、騒ぎになっては大変だ。
またある時はお忍びで村を荒らす魔物退治に出掛けてみる。
今回は騎士の護衛無しでステラと二人っきりだ。
王都に行って私の魔法量はかなり有る事が解ったが、どれくらい威力があるのかははっきりしない。
それを試したいものの、館の敷地内でやると大騒ぎになるので出来ない。
そこで誰にも見られない郊外でとなる。
万一怪我を負ってもステラが助けてくれるだろうし。過信は出来ないが。
しばらく待ち伏せしていると、ワイルドボアがやって来た。
とりあえず一番得意な風の魔法を試してみる。
「ウィンドカッター!」
ブーメラン状となった風が何本も高速でワイルドボア目掛けて飛んでいく。そして八つ裂きにする。
何ともグロい退治の仕方だが、その威力に驚いた。
公爵令嬢の地位を追われる立場になったら、冒険者ギルドにでも入ろうか?
これだったら、ウィチタ相手にも制裁を加えられるのではないか? そんな事も。
魔物相手ならともかく、人物相手にはさすがに無理だろうが。
「浄化・・・」
ステラが呟く様に唱えると、私が魔法で切り裂いたワイルドボアの死骸は、光の粒となって空中に消え去っていった。
メイド長のエヴァンジェリンです。
今回は割とどうでも良い話で、エヴァンジェリン自身もモブキャラなので、挿絵はどうしようか?と思いましたが、無いのも寂しいので作ってみました。
しかし、ステラよりメイドとしてはずっと先輩であるはずなのに、最初はステラと同輩かもっと幼い感じになってしまい、いろいろ構文を弄ってみましたが駄目で、髪型をボブカットにしてようやく見れるものとなりました。
髪色はエヴァンズ家傍流として青色(ただし淡い)としました。
凛々しくしたいので、やっぱり無表情。
ウィンディーネに続いてワイツウェル家はむっつりばかり。ウォーレン兄さんはニッコリさせようw
ところで彼女、母イライザの片腕という設定になってます。
20歳くらいで結婚し二人の子をもうけて亡くなったとすると、イライザの享年は30代前半から半ば。
その片腕だとすると、イライザより若くても20代後半。アラサーですね。とっくに婚期逃してます。
兄のウォーレンは兄なりに貴族学校入学を来年に控え、いろいろ情報を仕入れていたみたいだ。
第1王子のマーヴィン殿下にも会ったそうだ。聡明な方だと褒めていた。
私も第2王子で王太子のノルベルト殿下よりもマーヴィン殿下と婚約したい。
しかし、それは王太子の婚約者の筆頭に挙がっている私には無理な話だ。
第一、私が婚約者を下りたら、ウィチタが横から掻っ攫う可能性もあるので、それだけは阻止したい。
ちなみにステラは馬車内の私たちと同席する訳にはいかず、露天の御者席に座ってもらっている。
見たところ身分が近い御者とは楽しく話しているみたいで安心する。
これが聖女だと判ってしまうと、扱いも変わってくるのだけどね。
領主館に戻ると、ステラをメイド長のエヴァンジェリンに引渡す。
孤児だと聞いてエヴァンジェリンは怪訝そうな顔をしたが、とにかく彼女を私の専属メイドとして教育してもらわないといけない。
下級貴族のメイドならまだしも、上級貴族、更には王家に仕えるメイドとなると多くは貴族令嬢で、上位の主の元に自分の娘を花嫁修業と称して差出す事もある。要は御機嫌取りだ。
しかも気立ての良い娘だと主に寵愛されて、正妻とはいかないまでも妾に納まる事もある。
現王ヘンリー殿下の側妃であるマリア妃がこの例で、生まれたマーヴィン殿下は第1王子でありながら庶子となる為、王太子には正妃ナターシャ妃との間に生まれた第2王子ノルベルト殿下がなっている。
ヘンリー殿下は男性継承者がいなかった王家が傍流から担ぎ上げた王で、婿的立場で発言力は弱い。
正妃ナターシャ妃は代々軍の要職を搬出してきた四大公爵家の一つネルソン公爵家(北公)出身らしく厳しい性格をしている。
私の父ウィリアムもそうだが、厳しい妻を娶ると優しい女性の元へ走ってしまうのは困ったものだ。
しかも私と義妹のウィチタとは半年程しか違わない同い歳とくる。
もっとも継母のエイプリル夫人はメイドではなかったはずだが。
とにかく、全くの素人であるステラをメイドに仕立てるのは大変だと思うが、亡き母の片腕として私を躾けてくれた手腕に期待する。
ちなみにエヴァンジェリンはエヴァンス家傍流のイーズリー伯爵家出身のれっきとした令嬢である。
数ヶ月が過ぎた。
ステラもエヴァンジェリンの厳しい指導の元、だんだんサマになってきた。
エヴァンジェリンにして「飲み込みは早い」と言わしめる程だから相当努力しているのだろう。
彼女によってメイド団は統制がとれており、平民のステラを苛める者もいない。
息抜きにステラも連れて領都に繰出す。
ステラを引取る時に「平民の生活を知る為」と大口を叩いた以上、知っておく必要がある。
平民の食べ物を口にしながら歩き廻る。
ステラは何事も珍しそうで目がキラキラさせている。
孤児であった彼女は平民の食べ物であってもロクに口に出来なかったのかもしれない。
変装はしているが、年端もいかない女の子がウロウロしていれば誘拐される危険がある。
公爵家の騎士たちが群集に紛れて目を光らせていると思う。
もっとも下手なチンピラだったら、私の魔法で撃退出来る自信はあるが、騒ぎになっては大変だ。
またある時はお忍びで村を荒らす魔物退治に出掛けてみる。
今回は騎士の護衛無しでステラと二人っきりだ。
王都に行って私の魔法量はかなり有る事が解ったが、どれくらい威力があるのかははっきりしない。
それを試したいものの、館の敷地内でやると大騒ぎになるので出来ない。
そこで誰にも見られない郊外でとなる。
万一怪我を負ってもステラが助けてくれるだろうし。過信は出来ないが。
しばらく待ち伏せしていると、ワイルドボアがやって来た。
とりあえず一番得意な風の魔法を試してみる。
「ウィンドカッター!」
ブーメラン状となった風が何本も高速でワイルドボア目掛けて飛んでいく。そして八つ裂きにする。
何ともグロい退治の仕方だが、その威力に驚いた。
公爵令嬢の地位を追われる立場になったら、冒険者ギルドにでも入ろうか?
これだったら、ウィチタ相手にも制裁を加えられるのではないか? そんな事も。
魔物相手ならともかく、人物相手にはさすがに無理だろうが。
「浄化・・・」
ステラが呟く様に唱えると、私が魔法で切り裂いたワイルドボアの死骸は、光の粒となって空中に消え去っていった。
メイド長のエヴァンジェリンです。
今回は割とどうでも良い話で、エヴァンジェリン自身もモブキャラなので、挿絵はどうしようか?と思いましたが、無いのも寂しいので作ってみました。
しかし、ステラよりメイドとしてはずっと先輩であるはずなのに、最初はステラと同輩かもっと幼い感じになってしまい、いろいろ構文を弄ってみましたが駄目で、髪型をボブカットにしてようやく見れるものとなりました。
髪色はエヴァンズ家傍流として青色(ただし淡い)としました。
凛々しくしたいので、やっぱり無表情。
ウィンディーネに続いてワイツウェル家はむっつりばかり。ウォーレン兄さんはニッコリさせようw
ところで彼女、母イライザの片腕という設定になってます。
20歳くらいで結婚し二人の子をもうけて亡くなったとすると、イライザの享年は30代前半から半ば。
その片腕だとすると、イライザより若くても20代後半。アラサーですね。とっくに婚期逃してます。
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