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【3】悪役令嬢は従姉妹に会う
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王都に来て数日。折角だから母の実家エヴァンス公爵家にも寄っていこうと思う。
元々戦略結婚だった私の両親だが、父が妾を囲った事に腹を立て疎遠となっていた。
母の死で更に加速するだろう。
領主館にはエヴァンス家関係の出身者も多く、全く交流が途絶える事は無いだろうが。
現当主のイザード様は母の兄にあたる。私にとっては伯父になる。
兄イーノット、妹イングリッドの二人の子供がいる。このあたりは私たち兄妹と同じだ。
特に妹のイングリッドは私と同い歳だから、貴族学校に入学した際には是非友達になってもらいたい。
私がエヴァンス家に行ってくるといったら、当然ながら父は良い顔をしなかった。
しかし渋々ながら送り出してくれた。
ステラも連れていく。館においたままだと、あのウィチタに何をされるか不安だからだ。
両家の関係がこんなだから、どうなるかと思ったら杞憂だった。熱烈歓迎されたのだ。
イングリッドにおいては「ウィンディーネ様ぁぁーーー!」と抱きつかれた。ステラは呆然としていた。
「イライザが死んでしまうとはなぁ・・・ウィンディーネもさぞかし無念だったろう。
倒れたと聞いていたが、もう大丈夫なのか?」
「はい、この通り全く健常です」
どうやらこちらにも私が倒れたという知らせは入っていた様だ。
「しかし、早くもこんな立派な淑女になって・・・イライザの教育の賜物だな。
それに較べてこのイングリッドときたら、魔道器作りに没頭してばかりで・・・」
「お父様! 私は誰でも魔法が扱える様に魔道器を作っているのです!」
イングリッドが憤慨する。
「それで今日は何の用かね?」
「せっかく王都に来たのですから挨拶に伺おうと思って。母の葬式の時も失礼致しましたし・・・」
母が亡くなった時、一家で弔問に来ていただいたのだが、両家の関係があの通りなので、早々と帰られたのだ。そして本題を切出す。
「実は私の魔法力をもう一度測ってもらいたいのです」
エヴァンス公爵家は魔法に長けた一族だ。
現当主のイザード様は魔法士団の団長だし、イーノット様も相当の力を持つといわれている。
母も当然魔法は使えたし、その娘の私も魔法は使える。
それは前世も同じだが、生まれ変わった現世では、もっと力に溢れている様に感じるのだ。
それを精密に測ってもらおうとするのがエヴァンス家訪問の目的だ。
イザード様は「ほう・・・」と頷き、イングリッドに測定用の水晶球を持って来る様に命じる。
「この水晶球はね、私が改良して細かく測定出来る様にしたんだよ!
属性だって色で解る様になっているんだから!」
イングリッドは途端に饒舌になって解説を始める。魔道器狂いの所以だろう。
持って来てもらった水晶球に慎重に抱える様に手を翳す。
途端に水晶球が眩しく光り出す。
その様子にイザード様もイングリッドも、そして私自身も驚く。
「す、凄いよ! この魔法量! しかも四属性とも揃ってる!」
水晶球の反応を読み取ったイングリッドが嬉々として叫ぶ。
「ほう、これは凄いな。我が魔法士団に是非とも欲しい逸材だ」
イザード様も呟く。
「風属性が中でも優れているみたい。何ていったって名前からしてウィンディーネだからね!」
イングリッドは自分の事みたいに喜んでいる。
魔法属性は、火・水・風・土の四種類。それに光属性と禁呪となっている闇属性がある。
一般的な四属性魔法に関しても、四属性全てを持っているのは稀だそうだ。母も二属性程度だったと思う。
「ところで、イングリッド様はどれくらい魔法量をお持ちなの?」
ふと訊いてみる。
すると、今まで嬉々としていたイングリッドが途端に慌てだす。
「わ、私は良いんだよ! 解っているんだから!」
茶目っ気を出した私は無理やりイングリッドの手を水晶球に翳す。
しかし、水晶球は鈍くしか光らない。
「私は魔法量が少ないんだよ・・・エヴァンス公爵家令嬢なのにね・・・」
イングリッドはしんみり呟く。
なるほど、このコンプレックスが魔道器作りに走らせるのか。
「ついでだからさ、あなたの連れてきたメイドにも測ってもらおうよ!」
平民では魔法量が無い者が多い。有っても微量だ。平民なら優位に立てると踏んで言うのだろう。
「そうね。測ってもらいましょう」
私の傍に侍っているステラを促す。
ステラは「わ、私なんかがですか?」と、おどおどしながら手を翳す。
途端に光り出す水晶球。しかもその色は私の時とは違う。
「え? え? 光属性? 信じられない!」
反応を読み取ったイングリッドが、私が、イザード様が、そしてステラ本人が驚くばかりだった。
「孤児院では、この能力を使った事があるの?」
「仲間の傷を治した程度です。私、こんな能力があるのが怖くて・・・」
私はとんでもない能力者をメイドとして得てしまった事になる。
しかし、思い返せば前世も獄中の私を知らずに癒してくれていたのかもしれない。
光属性魔法は、治癒や浄化、結界展開といった後方支援に長けた魔法だ。
能力者は女性に限られ、能力が優れた者は聖女として崇められる。
他の属性魔法と違って突然変異的に発現するので、貴族だから優位という訳では無い。
聖女の中には平民出身の者も多くいる。
又、後天的に発現する場合もある為、生まれてすぐに行われる魔法能力検査にも引掛からない事もある。
もっとも彼女は孤児だったので、この検査すら受けてない可能性もあるが。
実は四大公爵の一つシェフィールド公爵家(南公)は、この光属性魔法能力者で成立っている。
国中から聖女とされる者を選び出し、その中で最も能力が高い者が公爵・大神官として君臨する。
光属性魔法は遺伝によって発現する訳では無い。したがって現公爵と次期公爵補の間には血縁関係は無い。
こういう状況なので、公爵家の一つとして列せられてはいるが、他の三公爵家とは違って王室とは距離を置き、関与する事は少ない。
「ウィンディーネ、どうする? 彼女をシェフィールド公爵家に差出すか?」
イザード様が静かに訊く。
私も彼女に問いかける。
「ステラ、私は貴方を専属メイドとして貰い受けたわ。
でも貴方が聖女として働きたいと思うのなら、私はそれでも構わない。貴方が思うままにして」
しばらく重い空気が流れる。やがてステラが口を開く。
「私はウィンディーネ様に拾われました。私はウィンディーネ様に仕えたいと思います」
それを聞いた私は溜息を一つ突き、
「わかりました。それではステラが聖女である事は、ここに居る者だけの秘密とします」
主人公ウィンディーネの親友となるイングリッド・エヴァンス公爵令嬢です。
イングリッドの綴りは普通"Ingrid"なのですが、ここでは他に合わせてます。
いかにも貴族令嬢なウィンディーネに較べると、彼女は庶民的というかフレンドリーな感じですが、これについては終盤で明かされる事になります。乞う御期待!
AIイラストではエヴァンス家の青毛に、魔道器オタクとしてエンジニアらしく眼鏡っ娘に三つ編みの出立ちとしてみましたが、三つ編みが揃わなかったり妙に幼くなってしまったりと、4人程出したキャラ中最難関でした。やっぱり指が変ですが、もういいや・・・
元々戦略結婚だった私の両親だが、父が妾を囲った事に腹を立て疎遠となっていた。
母の死で更に加速するだろう。
領主館にはエヴァンス家関係の出身者も多く、全く交流が途絶える事は無いだろうが。
現当主のイザード様は母の兄にあたる。私にとっては伯父になる。
兄イーノット、妹イングリッドの二人の子供がいる。このあたりは私たち兄妹と同じだ。
特に妹のイングリッドは私と同い歳だから、貴族学校に入学した際には是非友達になってもらいたい。
私がエヴァンス家に行ってくるといったら、当然ながら父は良い顔をしなかった。
しかし渋々ながら送り出してくれた。
ステラも連れていく。館においたままだと、あのウィチタに何をされるか不安だからだ。
両家の関係がこんなだから、どうなるかと思ったら杞憂だった。熱烈歓迎されたのだ。
イングリッドにおいては「ウィンディーネ様ぁぁーーー!」と抱きつかれた。ステラは呆然としていた。
「イライザが死んでしまうとはなぁ・・・ウィンディーネもさぞかし無念だったろう。
倒れたと聞いていたが、もう大丈夫なのか?」
「はい、この通り全く健常です」
どうやらこちらにも私が倒れたという知らせは入っていた様だ。
「しかし、早くもこんな立派な淑女になって・・・イライザの教育の賜物だな。
それに較べてこのイングリッドときたら、魔道器作りに没頭してばかりで・・・」
「お父様! 私は誰でも魔法が扱える様に魔道器を作っているのです!」
イングリッドが憤慨する。
「それで今日は何の用かね?」
「せっかく王都に来たのですから挨拶に伺おうと思って。母の葬式の時も失礼致しましたし・・・」
母が亡くなった時、一家で弔問に来ていただいたのだが、両家の関係があの通りなので、早々と帰られたのだ。そして本題を切出す。
「実は私の魔法力をもう一度測ってもらいたいのです」
エヴァンス公爵家は魔法に長けた一族だ。
現当主のイザード様は魔法士団の団長だし、イーノット様も相当の力を持つといわれている。
母も当然魔法は使えたし、その娘の私も魔法は使える。
それは前世も同じだが、生まれ変わった現世では、もっと力に溢れている様に感じるのだ。
それを精密に測ってもらおうとするのがエヴァンス家訪問の目的だ。
イザード様は「ほう・・・」と頷き、イングリッドに測定用の水晶球を持って来る様に命じる。
「この水晶球はね、私が改良して細かく測定出来る様にしたんだよ!
属性だって色で解る様になっているんだから!」
イングリッドは途端に饒舌になって解説を始める。魔道器狂いの所以だろう。
持って来てもらった水晶球に慎重に抱える様に手を翳す。
途端に水晶球が眩しく光り出す。
その様子にイザード様もイングリッドも、そして私自身も驚く。
「す、凄いよ! この魔法量! しかも四属性とも揃ってる!」
水晶球の反応を読み取ったイングリッドが嬉々として叫ぶ。
「ほう、これは凄いな。我が魔法士団に是非とも欲しい逸材だ」
イザード様も呟く。
「風属性が中でも優れているみたい。何ていったって名前からしてウィンディーネだからね!」
イングリッドは自分の事みたいに喜んでいる。
魔法属性は、火・水・風・土の四種類。それに光属性と禁呪となっている闇属性がある。
一般的な四属性魔法に関しても、四属性全てを持っているのは稀だそうだ。母も二属性程度だったと思う。
「ところで、イングリッド様はどれくらい魔法量をお持ちなの?」
ふと訊いてみる。
すると、今まで嬉々としていたイングリッドが途端に慌てだす。
「わ、私は良いんだよ! 解っているんだから!」
茶目っ気を出した私は無理やりイングリッドの手を水晶球に翳す。
しかし、水晶球は鈍くしか光らない。
「私は魔法量が少ないんだよ・・・エヴァンス公爵家令嬢なのにね・・・」
イングリッドはしんみり呟く。
なるほど、このコンプレックスが魔道器作りに走らせるのか。
「ついでだからさ、あなたの連れてきたメイドにも測ってもらおうよ!」
平民では魔法量が無い者が多い。有っても微量だ。平民なら優位に立てると踏んで言うのだろう。
「そうね。測ってもらいましょう」
私の傍に侍っているステラを促す。
ステラは「わ、私なんかがですか?」と、おどおどしながら手を翳す。
途端に光り出す水晶球。しかもその色は私の時とは違う。
「え? え? 光属性? 信じられない!」
反応を読み取ったイングリッドが、私が、イザード様が、そしてステラ本人が驚くばかりだった。
「孤児院では、この能力を使った事があるの?」
「仲間の傷を治した程度です。私、こんな能力があるのが怖くて・・・」
私はとんでもない能力者をメイドとして得てしまった事になる。
しかし、思い返せば前世も獄中の私を知らずに癒してくれていたのかもしれない。
光属性魔法は、治癒や浄化、結界展開といった後方支援に長けた魔法だ。
能力者は女性に限られ、能力が優れた者は聖女として崇められる。
他の属性魔法と違って突然変異的に発現するので、貴族だから優位という訳では無い。
聖女の中には平民出身の者も多くいる。
又、後天的に発現する場合もある為、生まれてすぐに行われる魔法能力検査にも引掛からない事もある。
もっとも彼女は孤児だったので、この検査すら受けてない可能性もあるが。
実は四大公爵の一つシェフィールド公爵家(南公)は、この光属性魔法能力者で成立っている。
国中から聖女とされる者を選び出し、その中で最も能力が高い者が公爵・大神官として君臨する。
光属性魔法は遺伝によって発現する訳では無い。したがって現公爵と次期公爵補の間には血縁関係は無い。
こういう状況なので、公爵家の一つとして列せられてはいるが、他の三公爵家とは違って王室とは距離を置き、関与する事は少ない。
「ウィンディーネ、どうする? 彼女をシェフィールド公爵家に差出すか?」
イザード様が静かに訊く。
私も彼女に問いかける。
「ステラ、私は貴方を専属メイドとして貰い受けたわ。
でも貴方が聖女として働きたいと思うのなら、私はそれでも構わない。貴方が思うままにして」
しばらく重い空気が流れる。やがてステラが口を開く。
「私はウィンディーネ様に拾われました。私はウィンディーネ様に仕えたいと思います」
それを聞いた私は溜息を一つ突き、
「わかりました。それではステラが聖女である事は、ここに居る者だけの秘密とします」
主人公ウィンディーネの親友となるイングリッド・エヴァンス公爵令嬢です。
イングリッドの綴りは普通"Ingrid"なのですが、ここでは他に合わせてます。
いかにも貴族令嬢なウィンディーネに較べると、彼女は庶民的というかフレンドリーな感じですが、これについては終盤で明かされる事になります。乞う御期待!
AIイラストではエヴァンス家の青毛に、魔道器オタクとしてエンジニアらしく眼鏡っ娘に三つ編みの出立ちとしてみましたが、三つ編みが揃わなかったり妙に幼くなってしまったりと、4人程出したキャラ中最難関でした。やっぱり指が変ですが、もういいや・・・
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