テンプレ通りに悪役令嬢ものを書いてみた

希臘楽園

文字の大きさ
上 下
3 / 16

【2】悪役令嬢は専属メイドを得る

しおりを挟む
状況が解ったところで、今後の成行きを考えてみる。
前世の私は王太子の婚約者という事でお高くとまっており孤立していた。そこをウィチタに突かれた。
甘やかされてボンボンの王太子の婚約者にならなくても構わないが、ウィチタの思い通りにはさせない。
王都の貴族学校に入学する4年後の春までには仲間を集め磐石なものにしておく必要がある。
前世では最終的に私を裏切った兄ウォーレンも今のところ良好な関係にある。
しかし3歳違いの兄は来年には貴族学校入学の為に王都へ行ってしまう。
王都でウィチタの毒牙にかからない様に注意しないといけない。
この領主館の臣下達は皆優秀だ。母が輿入れした際に引連れてきたエヴァンス家関係の者も多い。
前世では彼らも信頼せず我侭放題だったが、仲間は多い方が良い。懐柔策に切替える。
最初は私の豹変ぶりに戸惑っていたが、徐々に打ち解けている。
信頼出来るといったら彼女もそうだ。私の専属メイドにして恩に報いたい。
私より2歳上の彼女は、この時はまだ王都の孤児院にいるはずだ。
ウィチタの様子も気になるし、一度王都に行ってみようか?


数日後、私は王都に向う馬車の中にいる。兄ウォーレンも一緒だ。

「兄上」

仏頂面している兄に切り出す。

「同行していただいてありがとうございます」

「それは構わない。しかし、メイド一人の為に王都に赴く必要があるのか? 
しかも相手は孤児だというではないか」

もっともな言い分だ。しかし私は彼女でなければいけないのだ。
私だって父やあの親子が住む王都になんか行きたくない。
しかし、まだまだ若輩の身であるゆえ、悔しいかな父の承諾を得る必要があった。

「はい、どうしても彼女でなければならないのです」

そう答え、一言加える。

「兄上も来年には王都の貴族学校に進学なされます。あの親子、特にあの義妹には充分に注意なさいませ」


5日後、王都のワイツウェル公爵館に着いた。
父ウイリアム、継母のヴァイオレット、そして義妹のウィチタが笑顔で迎える。
継母のヴァイオレット夫人は見た感じ大らかそうだ。しかし娘のウィチタの笑顔はあざとい感じがする。
早速居間に通される。

「倒れたと聞いて心配したが、もう大丈夫なのか?」

父がまず切出す。

「はい、もう充分回復しております」

私も笑顔で答える。

「見舞いに行けなくてすまなかった」

「いえ、父上は忙しい身。仕方無い事です」

私が倒れた時、早馬が知らせに王都へ走った。
しかし翌日、私が目を覚ましたと解ると、父が見舞いに来る事は無かった。
それでも娘の見舞いに来るのが普通だろうに。このあたりが私が父の軽蔑する理由の一つだ。

「ウィンはあの後、我侭だったのがすっかり影を潜め、淑女らしい態度をとる様になったのですよ」

兄が口を挟む。

「母上が亡くなりましたから、私もいつまでも我侭ではいられませんわ」

私も淑女らしく上品な笑顔で答える。

「それは良い事だな」

父も満悦そうだ。

「ただ、最後に一つ我侭をお願いに参りました」

ここで私は本題を切り出す。孤児のメイドの件だ。


「何もわざわざ孤児をメイドにする事もないだろう」

話を聞いた父は兄と同じ事を言った。

「いえ、私も将来は王妃になるであろう身。
今から庶民を知っておきたいと思いましたの。それには最下層の孤児をと」

と答え、ちらりと傍に佇む親娘の様子を伺う。
母方の男爵位は貴族の中でも最下級だ。ましてや庶子ともなれば平民よりちょっと上くらいだ。
母親のヴァイオレット夫人は素直に感心した表情だったが、娘のウイチタは敵意を持った表情だ。
上級貴族の娘に私達の事が何も解る事は無し。単なる気まぐれが慈善気取りなのだろうと。

「まあ良いだろう。お前も同じ年頃の子が傍にいてほしいだろうからな」

父は承諾してくれた。


翌日、早速彼女が居るだろう孤児院に赴く。

「ステラですか? 少々お待ち下さい」

年端もいかぬ貴族の娘が、いきなり馬車で乗つけ「身請けしたい」と言われれば驚くだろうが、父からの紹介状を見せると、戸惑いながらも院長は目通ししてくれた。
やがてやって来た彼女はまだ12歳のはずだが充分面影があった。間違いないだろう。
何故私がここまで拘る理由は、家族までもがウィチタの術中に嵌って次々と裏切る中、投獄された私を最後まで世話してくれたのが、彼女ステラだったのだ。
前世で受けた恩を後世で返したい。その一途な思いからだ。
貴族、しかも四大公爵家に身請けされるされるとあっては孤児院にとっては大変な名誉のはずだ。
たとえ彼女が「嫌だ」と言っても、孤児院は無理やりでも身請けさせるだろう。
それでも一応訊いてみる。

「私は貴方が気に入ったの。一緒に来て私の世話をしてくれる?」

10歳の少女らしく優しく。

「は、はい。こ、こんな、わ、私ですが、よ、よろしくお願いします・・・」

はにかんだ笑顔で彼女は応じてくれた。





メイドのステラです。
メイド服のスカートがやたら短いものばかり出てくる上、たくし上げたりするので困りましたw
貴族家のメイドに相応しくないですよね。
ようやく良さそうなのが出たと思ったら、左手の指が・・・orz
もう妥協しました。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

罪人として生まれた私が女侯爵となる日

迷い人
ファンタジー
守護の民と呼ばれる一族に私は生まれた。 母は、浄化の聖女と呼ばれ、魔物と戦う屈強な戦士達を癒していた。 魔物からとれる魔石は莫大な富を生む、それでも守護の民は人々のために戦い旅をする。 私達の心は、王族よりも気高い。 そう生まれ育った私は罪人の子だった。

悪役令嬢はモブ化した

F.conoe
ファンタジー
乙女ゲーム? なにそれ食べ物? な悪役令嬢、普通にシナリオ負けして退場しました。 しかし貴族令嬢としてダメの烙印をおされた卒業パーティーで、彼女は本当の自分を取り戻す! 領地改革にいそしむ充実した日々のその裏で、乙女ゲームは着々と進行していくのである。 「……なんなのこれは。意味がわからないわ」 乙女ゲームのシナリオはこわい。 *注*誰にも前世の記憶はありません。 ざまぁが地味だと思っていましたが、オーバーキルだという意見もあるので、優しい結末を期待してる人は読まない方が良さげ。 性格悪いけど自覚がなくて自分を優しいと思っている乙女ゲームヒロインの心理描写と因果応報がメインテーマ(番外編で登場)なので、叩かれようがざまぁ改変して救う気はない。 作者の趣味100%でダンジョンが出ました。

その国が滅びたのは

志位斗 茂家波
ファンタジー
3年前、ある事件が起こるその時まで、その国は栄えていた。 だがしかし、その事件以降あっという間に落ちぶれたが、一体どういうことなのだろうか? それは、考え無しの婚約破棄によるものであったそうだ。 息抜き用婚約破棄物。全6話+オマケの予定。 作者の「帰らずの森のある騒動記」という連載作品に乗っている兄妹が登場。というか、これをそっちの乗せたほうが良いんじゃないかと思い中。 誤字脱字があるかもしれません。ないように頑張ってますが、御指摘や改良点があれば受け付けます。

魅了が解けた貴男から私へ

砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。 彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。 そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。 しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。 男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。 元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。 しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。 三話完結です。

【完結済み】王子への断罪 〜ヒロインよりも酷いんだけど!〜

BBやっこ
恋愛
悪役令嬢もので王子の立ち位置ってワンパターンだよなあ。ひねりを加えられないかな?とショートショートで書こうとしたら、短編に。他の人物目線でも投稿できたらいいかな。ハッピーエンド希望。 断罪の舞台に立った令嬢、王子とともにいる女。そんなよくありそうで、変な方向に行く話。 ※ 【完結済み】

悪役令嬢エリザベート物語

kirara
ファンタジー
私の名前はエリザベート・ノイズ 公爵令嬢である。 前世の名前は横川禮子。大学を卒業して入った企業でOLをしていたが、ある日の帰宅時に赤信号を無視してスクランブル交差点に飛び込んできた大型トラックとぶつかりそうになって。それからどうなったのだろう。気が付いた時には私は別の世界に転生していた。 ここは乙女ゲームの世界だ。そして私は悪役令嬢に生まれかわった。そのことを5歳の誕生パーティーの夜に知るのだった。 父はアフレイド・ノイズ公爵。 ノイズ公爵家の家長であり王国の重鎮。 魔法騎士団の総団長でもある。 母はマーガレット。 隣国アミルダ王国の第2王女。隣国の聖女の娘でもある。 兄の名前はリアム。  前世の記憶にある「乙女ゲーム」の中のエリザベート・ノイズは、王都学園の卒業パーティで、ウィリアム王太子殿下に真実の愛を見つけたと婚約を破棄され、身に覚えのない罪をきせられて国外に追放される。 そして、国境の手前で何者かに事故にみせかけて殺害されてしまうのだ。 王太子と婚約なんてするものか。 国外追放になどなるものか。 乙女ゲームの中では一人ぼっちだったエリザベート。 私は人生をあきらめない。 エリザベート・ノイズの二回目の人生が始まった。 ⭐️第16回 ファンタジー小説大賞参加中です。応援してくれると嬉しいです

婚約破棄されるまで結婚を待つ必要がありますか?

碧桜 汐香
恋愛
ある日異世界転生したことに気づいた悪役令嬢ルリア。 大好きな王太子サタリン様との婚約が破棄されるなんて、我慢できません。だって、わたくしの方がサタリン様のことを、ヒロインよりも幸せにして差し上げられますもの!と、息巻く。 結婚を遅める原因となっていた父を脅し……おねだりし、ヒロイン出現前に結婚を終えて仕舞えばいい。 そう思い、実行に移すことに。

悪役令嬢は乙女ゲームの強制力から逃れたい

椰子ふみの
恋愛
 私は『聖女は愛に囚われる』という乙女ゲームの世界に転生した。よりによって悪役令嬢に。断罪を避けるため、色々、頑張ってきたけど、どうもゲームの強制力が私を悪役令嬢にしようとしているみたい。  ハーモニー学園に入学しても、ヒロインや攻略対象者には近づかないぞ。  あれ、ヒロインがいない?

処理中です...