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【1】悪役令嬢は目覚める
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うっすら目を開ける。
途端に辺りが騒がしくなる。
「お嬢様がお目覚めになったわ!」
「直ぐにウォーレン様をお呼びして!」
どうしたのだろう? 此処は監獄ではないのか? 私は死んだのではないのか?
更に目を開ける。
私に映るのは心配そうなメイドの顔。そして駆け込んできた兄ウォーレンの顔。
「心配したぞ! 母上に続いてお前までどうかなってしまったら、私は狂うところだったぞ!」
私は生き返ったらしい。
どう見回しても私が生まれ育ったワイツェル公爵領の館だ。
その館の居間で私は兄ウォーレンに向って切出す。
「兄上」
「どうした?」
「今日は何日ですか?」
唐突な質問に兄は一瞬怪訝そうな顔をしたが答えてくれた。
「ミッドガルド暦842年蒼の月15日だ」
その年だと私は10歳の少女だ。
先程、起き出してメイドに髪を解いてもらいながら鏡に映る自分の姿に驚いたものだ。
私が獄中死したのが18歳の時だから8歳も若返り生き返った事になる。
しかも前世と同じワイツウェル公爵令嬢ウィンディーネとして。
更に訊いてみる。
「母上は亡くなったのですよね?」
「ああ、一月前にな」
兄は「何をいまさら」といった表情で答える。
「父上は王都ですか?」
「そうだ」
「あの親子も一緒ですか?」
「そうだ!」
先程より強く怒りを交えて兄は答える。
どうやら私が10歳になるまでの経緯は前世と同じらしい。
父はワイツウェル公爵ウイリアム。4大公爵家の一つで「西公」と呼ばれている。
母はイライザ。
同じく4大公爵家であるエヴァンス家(こちらは「東公」と呼ばれている)出身だったが、一ヶ月前他界した。
母は自分にも他人にも厳しい人だった。
戦略結婚だった両親の夫婦仲は冷めたものであった。
宰相である父は忙しい事を理由に王都に篭りっきりで、母は母で領主館を出る事は無かった。
私たち兄妹は母の元、領主館で育った。
一方、王都の父はビクター男爵家のヴァイオレットを妾として囲い、娘ウィチタをもうけた。
この異母妹によって私は王太子の婚約者の座を奪われ、獄中で無残な死を迎える事になる。
生き返った今世はウィチタの野望を阻止し、二度と同じ伝手を踏まないようにしないといけない。
主人公のウィンディーネ・ワイツウェル公爵令嬢です。
悪役令嬢といったら金髪縦ロールがデフォでしょうが、登場人物紹介にもある通り銀髪です。
縦ロールにはしましたが、あまりグリグリwにはなりませんでした。
ちょっと悲壮感のあるキャラなので仏頂面にしてみました。
登場時の10歳にしては卓越した考えを持っていると思われるかもしれませんが、前世の記憶があるという事で。
それからこれは登場する貴族令嬢全てに言えることなのですが、貴族といったらミドルネームがいくつも付いた長ったらしい本名となるところですが、名前に拘りを持って付けているので、そこは勘弁して下さい。
途端に辺りが騒がしくなる。
「お嬢様がお目覚めになったわ!」
「直ぐにウォーレン様をお呼びして!」
どうしたのだろう? 此処は監獄ではないのか? 私は死んだのではないのか?
更に目を開ける。
私に映るのは心配そうなメイドの顔。そして駆け込んできた兄ウォーレンの顔。
「心配したぞ! 母上に続いてお前までどうかなってしまったら、私は狂うところだったぞ!」
私は生き返ったらしい。
どう見回しても私が生まれ育ったワイツェル公爵領の館だ。
その館の居間で私は兄ウォーレンに向って切出す。
「兄上」
「どうした?」
「今日は何日ですか?」
唐突な質問に兄は一瞬怪訝そうな顔をしたが答えてくれた。
「ミッドガルド暦842年蒼の月15日だ」
その年だと私は10歳の少女だ。
先程、起き出してメイドに髪を解いてもらいながら鏡に映る自分の姿に驚いたものだ。
私が獄中死したのが18歳の時だから8歳も若返り生き返った事になる。
しかも前世と同じワイツウェル公爵令嬢ウィンディーネとして。
更に訊いてみる。
「母上は亡くなったのですよね?」
「ああ、一月前にな」
兄は「何をいまさら」といった表情で答える。
「父上は王都ですか?」
「そうだ」
「あの親子も一緒ですか?」
「そうだ!」
先程より強く怒りを交えて兄は答える。
どうやら私が10歳になるまでの経緯は前世と同じらしい。
父はワイツウェル公爵ウイリアム。4大公爵家の一つで「西公」と呼ばれている。
母はイライザ。
同じく4大公爵家であるエヴァンス家(こちらは「東公」と呼ばれている)出身だったが、一ヶ月前他界した。
母は自分にも他人にも厳しい人だった。
戦略結婚だった両親の夫婦仲は冷めたものであった。
宰相である父は忙しい事を理由に王都に篭りっきりで、母は母で領主館を出る事は無かった。
私たち兄妹は母の元、領主館で育った。
一方、王都の父はビクター男爵家のヴァイオレットを妾として囲い、娘ウィチタをもうけた。
この異母妹によって私は王太子の婚約者の座を奪われ、獄中で無残な死を迎える事になる。
生き返った今世はウィチタの野望を阻止し、二度と同じ伝手を踏まないようにしないといけない。
主人公のウィンディーネ・ワイツウェル公爵令嬢です。
悪役令嬢といったら金髪縦ロールがデフォでしょうが、登場人物紹介にもある通り銀髪です。
縦ロールにはしましたが、あまりグリグリwにはなりませんでした。
ちょっと悲壮感のあるキャラなので仏頂面にしてみました。
登場時の10歳にしては卓越した考えを持っていると思われるかもしれませんが、前世の記憶があるという事で。
それからこれは登場する貴族令嬢全てに言えることなのですが、貴族といったらミドルネームがいくつも付いた長ったらしい本名となるところですが、名前に拘りを持って付けているので、そこは勘弁して下さい。
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