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みつどもえ。

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「え、なんで竜児までつれてきたの!?」
「いやぁ~、俺もそんな気はなかったんだけどさぁ。連絡したら連れてけってうるさくて…」
「いや、だからその前に連絡すな!」
やっぱりコイツまた売りやがったな!
「タカ子の部屋に害虫が上がり込んだと聞いて僕が黙って見過ごすとでも?」
おぉ、涼しい顔で主任を害虫呼ばわりした。
いいぞ、もっとやれ。
「なんだか聞きしに勝る勢いだねぇ。モテモテじゃない、及川君」
「害虫呼ばわりはスルーですか、そうですか」
少しでもダメージを与えてやれたかと思ったのだが、残念です。
「だってさぁ、見当違いな罵倒をされても何も感じないでしょ」
俺、君に下心なんてないもん。
「ケロッと言わないでください。……とりあえず、お互い自己紹介しますか?」
狭い部屋の中で、男が3人女子が一人。
なんだこの状況は。
「ケンちゃんまずは座ってください。…勝手にリプ○ン開けない!」
「タカ子って昔から大体同じような場所に同じもの隠すよな。超わかりやすい」
「ペアのカップや男物の衣類…なんかはないようですね。まぁ当然ですが」
「竜児は何故しれっとした顔でクローゼット開けてんの!?ってか下着を盗むんじゃない!」
「タカ子の分際で黒のレースなんて生意気です」
だから没収しました、という変態に向かって飲み終わりのおしるこ缶を思い切り投げつけたが、あっさり逃げられた挙句パンツを隠された。
――あれは、しま○らで勇気をふり絞ってかった勝負下着っ!
「こらこら、及川くんと愉快な仲間たち。少しはお客さんに対する配慮はないのかな?面白いからこのままここで見てても構わないけど…」
はっ。
「だから自己紹介からだって言ったじゃん…!」
「初めに脱線したのはタカ子だろ?俺は自分で飲む茶を入れただけだし」
「そうそう、僕のことは気にせず話を進めてください」
「言いながら新しい獲物を物色しようとすな!プロの下着泥棒か!」
うっうっ。
我が幼馴染ながらなんてフリーダムな人々。
「主任、何とかしてください」
「え、そこで俺に振るの?」
「他に誰がいると?」
「……うん、まぁいいけどさ…」
及川くんだからねぇ、という謎の言葉を残し、ひとつ咳払いをする主任。
「じゃあ、まずは俺から。俺は…」
「相原和也、36歳独身、出身は○○県。こっちへは両親の離婚で中学生の頃に……」
それまで平然とした顔で下着をあさっていた男の口から突然飛び出した己の経歴。
よくぞそこまでという位調べ上げられたそれに、当の本人も呆れ顔だ。
「――――そして現在に至る。ここまででなにか異論がありますか?」
「…むしろ、この短期間にどうやって調べたのか教えてくれる?」
「異論がなければ結構です」
「情報収集能力にはちょっとは定評があるんだよね~俺」
しれっと無視をする竜児に、自らの犯行を暴露するケンちゃん。
「もしかして、今回の依頼をする前から調べられてた?」
「すんません、主任……」
可能性があるとしたら、恐らく私のせいだ。
「もしかして俺、恋敵ライバルか何かと勘違いされてるとか…」
「その誤解は解けましたが、あなたのご友人とやらにタカ子を斡旋しようとするのは感心できませんね」
「あぁ、そっちか…」
「ごめんね~お客さん。コイツ昔からタカ子相手だと般若のごとく嫉妬深いのよ。俺も昔からチクチクねちねち色々と……」
「賢治」
「はいはい、黙りますよ~」
喜々として愚痴っていた賢治が、竜児の一言であっさりお口にチャックをする。
あまりにはっきりとした上下関係だがこれは仕方ない。なにしろ竜児は賢治にとって一番の得意先だ。
「しかしこっちの情報が筒抜けでそっちのがまったく不明ってのも面白くないな?」
「ご謙遜を。そちらも調べたんでしょう?僕たちの事を」
「え?」
その言葉に、びっくりして主任を二度見する。
「バレてたか…」
「専門家を舐めてもらっては困ります」
ペロッと舌を出す主任。
いつの間に……。
「まさか、ケンちゃんに依頼するって言ったのも…」
「調べた上で、優秀な事はよくわかったからね。まぁお互い様ってことにしておいて欲しいな」
「相打ちといったところですか」
何事もなかったかのように和解ムードになっているが、何なんだこいつらは。
「私の知らないところで…」
「安心なさい、全て君のためです」
「害虫駆除は竜児のお得意だもんな~」
あれ、もしや知らぬ間に寄り付く男がすべて排除されていたのでは?
「だから勝負下着を出す機会が…!」
「いやいや、ほとんどいなかったから。あいつが勝手に害虫と思い込んでるだけでほぼ無害だから」
「せめて夢が見たかった!」
「諦めろって。現実ならすぐそこにあるぞ」
指差すのは腹黒笑顔の竜児。
「近すぎて嫌」
「失礼な」
賢治が高瀬の肩を叩き、一言。
「妥協は大事だぞ、タカ子」
「真顔で言わないで!」
夢がなくなるからっ!!
「及川くん及川くん、手近が嫌なら谷崎という手も……」
「あれは心のオカンです」
「それどういう評価?」
つまるところは安全パイだ。
そんなことないと思うけどなぁと主任が首をかしげるが、これまでのことがあるだけに真実味はない。
「でも意外とあいつも及川くんのことは気に入ってると思うんだけど」
可愛がられてるじゃないかと言われれば確かにそれはそうかもしれないが。
「それ、きっと幼児扱いされてるだけです」
「ペットよりはマシじゃない?」
「お犬様と同レベル!?」
でも私はオカンを信じます。
オカンはきっと、出来の悪い娘でも見捨てはしないと!
「タカ子タカ子、般若が降臨するから其の辺に……」
「心狭いね、君ら」
「俺って平和主義だからさぁ。余計な波風は立てたくないのよ」
「波風ねぇ…」
「現在私の心は暴風ハロー注意報が出ておりますが」
「タカ子、ハローではありません、波浪です」
それくらい知ってるわい。

「ま、ふざけんのもこれくらいにしてお互い情報交換と行こうや。
……主任サンが俺に依頼したがってんのは、お友達の室井社長の件だろ?」

にやりと笑った賢治に、主任の目がすっと細められた。

「―――――どこまで調べた?」
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