11 / 290
情報が命です。
しおりを挟む
「…及川くん、こんなところで何をしている?」
「…え、聞くとこそこですか」
シラを切り通そうと思ったものの、どこか見当違いな部長の言葉につい突っ込んでしまった。
「?その姿のことか?」
「普通そうだと思いますけど」
というか一番に気になるところだと思うのだが、そうでもないらしい。
「君のそれは幽体離脱か?」
「まぁ、そんなところで…」
あっさりとカンパされ、素直に返事をする。
そこでようやくほっとしたように部長が吐息を吐いた。
「よかった…。てっきり今日の帰りに君が事故にでもあって亡くなったのかと……」
っておい。
「勝手に殺さないでくださいよっ!」
「そんな姿で現れる君が悪いんだろう…。まったく、焦ったじゃないか…」
「あれで焦ってたんですね…」
姿のことまで気が回らなかった、というのがどうやら正解らしい。
案の定、今更になってそちらが気になったらしい。
「ところで、何だ、君のその姿は」
「…あ、今聞きます?それ」
「さっきはてっきり君が亡くなったと思ったからな…。幽霊は自分の好きな姿を取れるものだろう?」
「いやーまぁ…。そうとも限りませんけど…」
「そうなのか?」
「まぁ…」
言っておくが、高瀬だって別に好きでこの姿でいるわけではない。
「こっちにもいろいろあるんですよ…。っていうか部長こそ。こんな時間に何してるんですか。
今はお化けがかっぽかっぽする時間ですよ?幽霊にとっちゃチャンスタイムですよ?」
何がチャンスって、とり憑くチャンスだ。
「あの後、抱えていた商談の一つがまとまりそうだと連絡が入ってな。さっきまで社に戻ってもう一度資料の見直しを行っていたんだ」
「お疲れ様でした~~~」
真面目なその返答に、へへ~と平伏する。
「ってことは、部長の家ってこのへんなんですか」
「いや・・・・」
あれ、もしかして。
「その顔は………乗り過ごしました?」
そういえば、この少し先に駅の終着地点があったはずだ。
時間的に見て、すでに終電もなく、このあたりにはタクシーも走ってはいない。
「やらかしましたね」
「うるさい」
疲れていたんだ、と視線を逸らす部長は、ちょっと可愛い。
「駅から歩いてきたんですか?」
「ほかに方法がなかったからな…。もう少し歩けば24時間営業している店があると聞いたんだが…」
「部長が漫喫…。ププッ」
この先の繁華街で24時間営業と言えば、漫画喫茶しかない。
「笑うな。仕方がない」
「そうですねぇ、仕方ありませんねぇ…」
口にしながら、寒そうに体をコートで包む部長に、さすがに同情心が湧いた、
「あのですね、部長…」
「なんだ?」
「そこの繁華街に、24時間営業してる便利屋がいるって知ってます?」
「…何?」
「ほかに仕事が入っていなければ、タクシー代と大して変わらない金額で家まで送ってくれますよ」
「本当か!」
「携帯番号も知ってますけど、電話します?」
「当然だろう…番号は?」
早速スマホを取り出し、高瀬が口にしたNoを打ち込む。
通話はすぐに繋がったようだ。
「もしもし・・・・?夜分すまないが、電車に乗り遅れてしまって。自宅までの送迎をお願いできると聞いたんだが…」
その隙に、高瀬はそぉっとハム太郎とほかに2匹を回収し、逃亡を謀る。
「ほら、帰るよ…」
小声で2匹を呼び、部長のそばをうろちょろしていたハム太郎もなんとか呼び戻すと、スカートのポケットに押し込めた。
部長はどうやら上手く話がまとまりそうで、一安心といった顔をしている。
便利屋からここまでは車なら10分程度だ。すぐに迎えに来てくれるだろう。
「よかったですね、部長」
小声でそっと囁いて、高瀬は公園を後にした。
恩を売ったのだから、今日のことはとりあえずなかったことにしてもらおう。
それでチャラということで、と勝手に思っていたのだが・・・。
――――その日の出社後。
「及川君。昨日のあれはどうなっているのか説明してもらっていなかったんだが…」
「チャラになってなかった!!」
・・・・しっかり追求されました。
「…え、聞くとこそこですか」
シラを切り通そうと思ったものの、どこか見当違いな部長の言葉につい突っ込んでしまった。
「?その姿のことか?」
「普通そうだと思いますけど」
というか一番に気になるところだと思うのだが、そうでもないらしい。
「君のそれは幽体離脱か?」
「まぁ、そんなところで…」
あっさりとカンパされ、素直に返事をする。
そこでようやくほっとしたように部長が吐息を吐いた。
「よかった…。てっきり今日の帰りに君が事故にでもあって亡くなったのかと……」
っておい。
「勝手に殺さないでくださいよっ!」
「そんな姿で現れる君が悪いんだろう…。まったく、焦ったじゃないか…」
「あれで焦ってたんですね…」
姿のことまで気が回らなかった、というのがどうやら正解らしい。
案の定、今更になってそちらが気になったらしい。
「ところで、何だ、君のその姿は」
「…あ、今聞きます?それ」
「さっきはてっきり君が亡くなったと思ったからな…。幽霊は自分の好きな姿を取れるものだろう?」
「いやーまぁ…。そうとも限りませんけど…」
「そうなのか?」
「まぁ…」
言っておくが、高瀬だって別に好きでこの姿でいるわけではない。
「こっちにもいろいろあるんですよ…。っていうか部長こそ。こんな時間に何してるんですか。
今はお化けがかっぽかっぽする時間ですよ?幽霊にとっちゃチャンスタイムですよ?」
何がチャンスって、とり憑くチャンスだ。
「あの後、抱えていた商談の一つがまとまりそうだと連絡が入ってな。さっきまで社に戻ってもう一度資料の見直しを行っていたんだ」
「お疲れ様でした~~~」
真面目なその返答に、へへ~と平伏する。
「ってことは、部長の家ってこのへんなんですか」
「いや・・・・」
あれ、もしかして。
「その顔は………乗り過ごしました?」
そういえば、この少し先に駅の終着地点があったはずだ。
時間的に見て、すでに終電もなく、このあたりにはタクシーも走ってはいない。
「やらかしましたね」
「うるさい」
疲れていたんだ、と視線を逸らす部長は、ちょっと可愛い。
「駅から歩いてきたんですか?」
「ほかに方法がなかったからな…。もう少し歩けば24時間営業している店があると聞いたんだが…」
「部長が漫喫…。ププッ」
この先の繁華街で24時間営業と言えば、漫画喫茶しかない。
「笑うな。仕方がない」
「そうですねぇ、仕方ありませんねぇ…」
口にしながら、寒そうに体をコートで包む部長に、さすがに同情心が湧いた、
「あのですね、部長…」
「なんだ?」
「そこの繁華街に、24時間営業してる便利屋がいるって知ってます?」
「…何?」
「ほかに仕事が入っていなければ、タクシー代と大して変わらない金額で家まで送ってくれますよ」
「本当か!」
「携帯番号も知ってますけど、電話します?」
「当然だろう…番号は?」
早速スマホを取り出し、高瀬が口にしたNoを打ち込む。
通話はすぐに繋がったようだ。
「もしもし・・・・?夜分すまないが、電車に乗り遅れてしまって。自宅までの送迎をお願いできると聞いたんだが…」
その隙に、高瀬はそぉっとハム太郎とほかに2匹を回収し、逃亡を謀る。
「ほら、帰るよ…」
小声で2匹を呼び、部長のそばをうろちょろしていたハム太郎もなんとか呼び戻すと、スカートのポケットに押し込めた。
部長はどうやら上手く話がまとまりそうで、一安心といった顔をしている。
便利屋からここまでは車なら10分程度だ。すぐに迎えに来てくれるだろう。
「よかったですね、部長」
小声でそっと囁いて、高瀬は公園を後にした。
恩を売ったのだから、今日のことはとりあえずなかったことにしてもらおう。
それでチャラということで、と勝手に思っていたのだが・・・。
――――その日の出社後。
「及川君。昨日のあれはどうなっているのか説明してもらっていなかったんだが…」
「チャラになってなかった!!」
・・・・しっかり追求されました。
0
お気に入りに追加
967
あなたにおすすめの小説
3年振りに帰ってきた地元で幼馴染が女の子とエッチしていた
ねんごろ
恋愛
3年ぶりに帰ってきた地元は、何かが違っていた。
俺が変わったのか……
地元が変わったのか……
主人公は倒錯した日常を過ごすことになる。
※他Web小説サイトで連載していた作品です
お兄ちゃんが私にぐいぐいエッチな事を迫って来て困るんですけど!?
さいとう みさき
恋愛
私は琴吹(ことぶき)、高校生一年生。
私には再婚して血の繋がらない 二つ年上の兄がいる。
見た目は、まあ正直、好みなんだけど……
「好きな人が出来た! すまんが琴吹、練習台になってくれ!!」
そう言ってお兄ちゃんは私に協力を要請するのだけど、何処で仕入れた知識だかエッチな事ばかりしてこようとする。
「お兄ちゃんのばかぁっ! 女の子にいきなりそんな事しちゃダメだってばッ!!」
はぁ、見た目は好みなのにこのバカ兄は目的の為に偏った知識で女の子に接して来ようとする。
こんなんじゃ絶対にフラれる!
仕方ない、この私がお兄ちゃんを教育してやろーじゃないの!
実はお兄ちゃん好きな義妹が奮闘する物語です。
俺のセフレが義妹になった。そのあと毎日めちゃくちゃシた。
ねんごろ
恋愛
主人公のセフレがどういうわけか義妹になって家にやってきた。
その日を境に彼らの関係性はより深く親密になっていって……
毎日にエロがある、そんな時間を二人は過ごしていく。
※他サイトで連載していた作品です
冤罪で自殺未遂にまで追いやられた俺が、潔白だと皆が気付くまで
一本橋
恋愛
ある日、密かに想いを寄せていた相手が痴漢にあった。
その犯人は俺だったらしい。
見覚えのない疑惑をかけられ、必死に否定するが周りからの反応は冷たいものだった。
罵倒する者、蔑む者、中には憎悪をたぎらせる者さえいた。
噂はすぐに広まり、あろうことかネットにまで晒されてしまった。
その矛先は家族にまで向き、次第にメチャクチャになっていく。
慕ってくれていた妹すらからも拒絶され、人生に絶望した俺は、自ずと歩道橋へ引き寄せられるのだった──
隣の席の女の子がエッチだったのでおっぱい揉んでみたら発情されました
ねんごろ
恋愛
隣の女の子がエッチすぎて、思わず授業中に胸を揉んでしまったら……
という、とんでもないお話を書きました。
ぜひ読んでください。
王太子の子を孕まされてました
杏仁豆腐
恋愛
遊び人の王太子に無理やり犯され『私の子を孕んでくれ』と言われ……。しかし王太子には既に婚約者が……侍女だった私がその後執拗な虐めを受けるので、仕返しをしたいと思っています。
※不定期更新予定です。一話完結型です。苛め、暴力表現、性描写の表現がありますのでR指定しました。宜しくお願い致します。ノリノリの場合は大量更新したいなと思っております。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる