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お年玉企画~部長とおせちの甘い罠⑧~
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「しっかしよく似てるね?そうしているとまるで年の離れた姉妹みたいだ。
ほ~らおいで、怖くないよ、チチチッ」
そういいながら片手に持った皿から一口分のケ―キを取り分け、ピーちゃんへの餌付けを試みる主任。
そのピーちゃんにひしっとしがみつかれつつ、自分の分のケーキを堪能していた高瀬は、冷静に一言。
「残念ながら主任、ガッツリ警戒されてます」
「じゃあ高瀬君でいいよ。ほら、あ~ん」
「あむ」
あっさりと鞍替えし、半ば条件反射のように口を開けた高瀬へとケーキを押し込み、「どう?美味しい?」と尋ねる。
「あむあむうまうま」
「……及川君」
眉間に皺を寄せた部長が明らかに何かを言いたげな表情。
うんうん、皆まで言わずともわかります。
「部長、次はそのチョコレートケーキがいいです」
「……これまでの会話を全て忘れたのか?君は」
そういいつつ、ちゃんと取り分けたケーキを口へ運ぼうとしてくれる部長。
あーん禁止令的なものは、部長の中で一体どう言う扱いになったのか。
主任にやらせるくらいなら自分もやる、という妙にやけっぱちな雰囲気を漂わせつつ高瀬への餌付けを行おうとする部長だったが、そのフォークに食いついたのは、高瀬ではなくなぜかーーーーーー。
『ピィ!』
「満足そうな顔してるね。食い意地が張ってるところも高瀬君に似てるよ」
もごもごと頬袋を膨らませた、ピーちゃん。
主任からの餌付けを断った割に、部長からはOKなのか。
「もしかしてあれじゃない?高瀬君をご主人様と思っているから、率先して毒見的な」
「自分がピーちゃんに嫌われている可能性はなんとしても排除したいんですね、主任」
残念ですが、チョコレートケーキが気に入ったらしいピーちゃんは、部長の膝にそそくさと座り、次の一口を早速おねだりしている模様です。
「………懐かれてるね」
「間違いなく」
珍しくちょっと拗ねたような顔の主任に、高瀬が笑う。
何とも言えない真面目な顔で膝の上の幼女にケーキを与える部長の姿もなかなか見ものだ。
「なんかそうしていると擬似紫の上計画って感じで何とも言えず背徳的だよな」
「?なんですかそれ」
紫の上計画?
「源氏物語に出てくるだろ?将来絶対美人になるであろう気に入った幼女を攫ってきて好みの年頃になるまで育てるというーーーーー」
「変態ですか」
「そこは男の夢でしょ」
力説されても困ります主任。
というか、ピーちゃんはあれ以上育たないと思うし。
「そもそもなんであの姿なんですかね?
一番初めはカラスだったから、あの黒い着物みたいなのを着ている理由はなんとなくわかるんですけど…」
なぜ幼女?しかもチビ高瀬に。
「まぁ、単純に力不足かーーーー。
これは俺の予想だけど、もしかしてより人の庇護欲をそそるべく、弱々しい姿に変化してるんじゃないか?
顔が高瀬君に似ている理由は、それこそ親に似たって奴なんだろうけど」
「親」
確かにそう言われると、作ったのは間違いなく高瀬自身。
ハムちゃんやアレクくんのように元々存在する生き物ではなく、ただの紙に高瀬の力を注いで生まれたのがピーちゃんだ。
……ということはつまり、他のどの子よりも一番、高瀬の影響を強く受けるのもある意味当然で。
「必然ってやつなんですかね」
「じゃないの?」
「でもまだ成長する可能性もあるってことですよね…」
あの時注いだだけの力では幼女にしかなれないのでは、という可能性も十分あると考え、一度ちらりとピーちゃんを見る。
だが。
「………幸せそうな顔してるね」
「………なんかこのままでも別にいいやって気になってきました」
笑顔の幼女の破壊力は、なかなかのものでした。
「ま、なっちゃったものはなっちゃったとしてさ。
そういえば谷崎のワンコはどこに行ったんだ?姿が見えないけど」
「そういえば……」
ここにきてからまだ、アレク君の姿を見ていない。
「気配は感じるので、そばにいるとは思うんですけど……?」
あれ、と首を傾げたその時。
部長の膝に乗っていたピーちゃんがぴょんと立ち上がるとくるりと部長の背後にまわり、ちょうど部長の影に当たるであろう部分によいしょ、と手を突っ込みーーーーー。
「「手を、突っ込み???」」
あれ、ピーちゃんの手が床にめり込んでいるように見えるのは目の錯覚?錯覚ですか。
いや、気のせいじゃない。主任も同じ様に目を見張っている。
そして突っ込んだ手をヒョイっと持ち上げた時、そこにいたのは。
情けない顔をした、一匹の子犬。
……ん?
「ーーーーーーーーーえ?もしかして、それがアレク君ってこと!?」
こくこくこく、ぎゅっ。
うんうんと頷き、大事にそうにそれを抱きしめるピーちゃん。
「ぷっ………あははははははははあ!!!!」
「ちょ、笑ってる場合じゃないですよ主任!?」
腹を抱え、床を叩いて大笑いを始める主任。
「これ、いつからこうなってるんですか、部長!!」
部長が慌てていないところを見ると、多分こうなったのは昨日今日の話ではない。
『くぅ~ん、くぅ~ん』
「あ、アレク君を怒ってるわけじゃないんだよ!?そういうわけじゃないからねっ??」
心配そうにこちらを見つめひと鳴きするアレク君。
幼女と子犬は反則です!!
何がどうしてこうなったか、説明プリーズ!!!!!
ほ~らおいで、怖くないよ、チチチッ」
そういいながら片手に持った皿から一口分のケ―キを取り分け、ピーちゃんへの餌付けを試みる主任。
そのピーちゃんにひしっとしがみつかれつつ、自分の分のケーキを堪能していた高瀬は、冷静に一言。
「残念ながら主任、ガッツリ警戒されてます」
「じゃあ高瀬君でいいよ。ほら、あ~ん」
「あむ」
あっさりと鞍替えし、半ば条件反射のように口を開けた高瀬へとケーキを押し込み、「どう?美味しい?」と尋ねる。
「あむあむうまうま」
「……及川君」
眉間に皺を寄せた部長が明らかに何かを言いたげな表情。
うんうん、皆まで言わずともわかります。
「部長、次はそのチョコレートケーキがいいです」
「……これまでの会話を全て忘れたのか?君は」
そういいつつ、ちゃんと取り分けたケーキを口へ運ぼうとしてくれる部長。
あーん禁止令的なものは、部長の中で一体どう言う扱いになったのか。
主任にやらせるくらいなら自分もやる、という妙にやけっぱちな雰囲気を漂わせつつ高瀬への餌付けを行おうとする部長だったが、そのフォークに食いついたのは、高瀬ではなくなぜかーーーーーー。
『ピィ!』
「満足そうな顔してるね。食い意地が張ってるところも高瀬君に似てるよ」
もごもごと頬袋を膨らませた、ピーちゃん。
主任からの餌付けを断った割に、部長からはOKなのか。
「もしかしてあれじゃない?高瀬君をご主人様と思っているから、率先して毒見的な」
「自分がピーちゃんに嫌われている可能性はなんとしても排除したいんですね、主任」
残念ですが、チョコレートケーキが気に入ったらしいピーちゃんは、部長の膝にそそくさと座り、次の一口を早速おねだりしている模様です。
「………懐かれてるね」
「間違いなく」
珍しくちょっと拗ねたような顔の主任に、高瀬が笑う。
何とも言えない真面目な顔で膝の上の幼女にケーキを与える部長の姿もなかなか見ものだ。
「なんかそうしていると擬似紫の上計画って感じで何とも言えず背徳的だよな」
「?なんですかそれ」
紫の上計画?
「源氏物語に出てくるだろ?将来絶対美人になるであろう気に入った幼女を攫ってきて好みの年頃になるまで育てるというーーーーー」
「変態ですか」
「そこは男の夢でしょ」
力説されても困ります主任。
というか、ピーちゃんはあれ以上育たないと思うし。
「そもそもなんであの姿なんですかね?
一番初めはカラスだったから、あの黒い着物みたいなのを着ている理由はなんとなくわかるんですけど…」
なぜ幼女?しかもチビ高瀬に。
「まぁ、単純に力不足かーーーー。
これは俺の予想だけど、もしかしてより人の庇護欲をそそるべく、弱々しい姿に変化してるんじゃないか?
顔が高瀬君に似ている理由は、それこそ親に似たって奴なんだろうけど」
「親」
確かにそう言われると、作ったのは間違いなく高瀬自身。
ハムちゃんやアレクくんのように元々存在する生き物ではなく、ただの紙に高瀬の力を注いで生まれたのがピーちゃんだ。
……ということはつまり、他のどの子よりも一番、高瀬の影響を強く受けるのもある意味当然で。
「必然ってやつなんですかね」
「じゃないの?」
「でもまだ成長する可能性もあるってことですよね…」
あの時注いだだけの力では幼女にしかなれないのでは、という可能性も十分あると考え、一度ちらりとピーちゃんを見る。
だが。
「………幸せそうな顔してるね」
「………なんかこのままでも別にいいやって気になってきました」
笑顔の幼女の破壊力は、なかなかのものでした。
「ま、なっちゃったものはなっちゃったとしてさ。
そういえば谷崎のワンコはどこに行ったんだ?姿が見えないけど」
「そういえば……」
ここにきてからまだ、アレク君の姿を見ていない。
「気配は感じるので、そばにいるとは思うんですけど……?」
あれ、と首を傾げたその時。
部長の膝に乗っていたピーちゃんがぴょんと立ち上がるとくるりと部長の背後にまわり、ちょうど部長の影に当たるであろう部分によいしょ、と手を突っ込みーーーーー。
「「手を、突っ込み???」」
あれ、ピーちゃんの手が床にめり込んでいるように見えるのは目の錯覚?錯覚ですか。
いや、気のせいじゃない。主任も同じ様に目を見張っている。
そして突っ込んだ手をヒョイっと持ち上げた時、そこにいたのは。
情けない顔をした、一匹の子犬。
……ん?
「ーーーーーーーーーえ?もしかして、それがアレク君ってこと!?」
こくこくこく、ぎゅっ。
うんうんと頷き、大事にそうにそれを抱きしめるピーちゃん。
「ぷっ………あははははははははあ!!!!」
「ちょ、笑ってる場合じゃないですよ主任!?」
腹を抱え、床を叩いて大笑いを始める主任。
「これ、いつからこうなってるんですか、部長!!」
部長が慌てていないところを見ると、多分こうなったのは昨日今日の話ではない。
『くぅ~ん、くぅ~ん』
「あ、アレク君を怒ってるわけじゃないんだよ!?そういうわけじゃないからねっ??」
心配そうにこちらを見つめひと鳴きするアレク君。
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