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なにがどうしてこうなった?そして終局へ
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「ーーーーー可愛い」
土佐犬の頭に小鳥。萌え。
アレク君の頭の上にのっかり、平然と毛づくろいをする小鳥の姿には、先ほどまでの神々しい八咫烏の面影などどこにもなく。
ひたすら愛らしさを追求したようなその素振りは、もはや人為的なあざとさすら感じるレベルだ。
というか、アレク君の頭に乗っかって降りる気配がないあたり、どう考えてもついてくる気満々。
「え~っと。なんかいろいろ聞きたいことはあるけど、とりあえず一緒に来る?」
『ワン!』
『ピヨ!』
当然、と頷く一羽と一匹。
まぁピーちゃんに関しては、作り出したのは高瀬であることだし、親(?)としての責任を感じないのでもないのだが……。
「ねぇぴーちゃん。ちなみに聞くけど龍一の事はいいの?」
『ぴ?』
なんのこと?と、言わんばかりに首をかしげる小鳥。
札に込められた霊力は二人分。
高瀬のものとーーーー龍一のもの。
だから当然、ぴーちゃんにとっては龍一も飼い主同然という扱いになるのかと思いきや、どうやらそういうわけでもないらしい。
無視か。どうやら龍一のことは完全に眼中にないらしい。
「ーーーーーお前が俺の力を完全に上書きした、そういうことだろう」
「ごめん、とりあえずなんかごめん」
憮然とした表情の龍一に、流石にちょっと申し訳なく感じ両手を合わせる。
なむ。
「タカ子、無駄話をしている時間はありませんよ。早くここから移動を」
「わかってる!んじゃ、とりあえずみんな準備はオッケー!?」
『ワン!』
『ピィ!』
『きゅ!』
ーーーーーーん?今、なんか一個返事が多かったような……。
「……ってやっぱりハムちゃんか!また!?」
『きゅ~?』
当然のごとく「え?なに?」といった顔で竜児の肩に乗るハム太郎。
いつの間に帰ってきたのだろう。本当にこの子の行動は謎だ。
「今まで何してたの、ハムちゃん」
『きゅ~~~きゅきゅ?』
「いやわからん。ハムスター言語はマスターしてないし」
とりあえずなにか説明しようとしている気配はわかるのだが、何を言っているのかーーーー。
「まぁいいや、とにかく移動しよう!龍一、後でこっちに連絡!!」
「それは構わんが、番号は?」
「会社宛か竜児宛で!」
どさくさに紛れて連絡先をゲットしようとしているのは見え見え。
そんな安い手にはいくらなんでも引っかかりません。
あ、そういえば美少女へのツテ(オッサンの名刺)をちゃんとしまっとかなきゃ…。
「あ、あと寺尾少年!」
「任せておけ。適当にどこかに放り投げておく」
「放り…………!?ってまぁいいや、この場に置いていくよりはましだろうし」
このままでは放火犯にされかねない。
龍一の良心に期待しよう。
「んじゃ帰るよ!!」
意識を集中し、自分と竜児、そして仲間たちをまとめて包み込むような、そんなイメージを作る。
よし。イケる。
確信した瞬間、最後の心残りとばかりにちらりと視線に過ったのは、燃え盛るプレハブ小屋、未だ群がったままの大勢のカラス。
そして、その場に立つ龍一の姿。
一瞬、『一緒に行けばいいのに』と口にしかけ、竜児の言っていたセリフを思い出し慌てて口を閉ざす。
本来、幽体離脱状態で他人を共に転移させることなど不可能。
それができるのは限られた人間だけの話であり、竜児いわく、その中に龍一は含まれていない。
と、いうことはだ。
下手をすれば竜児までも巻き込んで、盛大に路頭に迷いかねない。
流石にそれはまずい。
それに龍一には、寺尾少年を安全な場所まで運んでもらう役割がある。
「重量オーバー、ってことにしとこう、うん」
「ーーーー俺のことは気にするな、早くいけ」
高瀬の視線がこちらに向いていることに気づき、急げと告げる龍一。
サイレンの音は、確実に近づいてきている。
高瀬も頷き、再び意識を集中する。
あぁ、見えてきた。
自分の戻るべき、その場所が。
恐らく本来であれば、戻るべき場所は本体ーーーつまり自分の肉体が存在しているであろう竜児の部屋なのだろうが、今はそれよりも行きたい場所がある。
「中塚先輩たちがどうなったのか早く確認したい、とりあえず病院へ!!」
「タカ子、待ってください。あなたどこの病院へ入ったのかきちんと聞いていたんですか?場所はーーーー」
「部長を探せば多分なんとかなる!ね、ぶちょーーーじゃなかったアレク君!」
『わう!』
『きゅ~!』
いけるいける!としっぽを振るアレク君に、レッツゴー!と片手を上げるハムちゃん。
その時、不意に視界に光るものはよぎった。
「ん……?ハムちゃん、手に何か持って……」
『きゅ?』
気になる。なんか確実に光った。
だが。
車は急には止まれない。高瀬も急には止まれない。
「今はここから脱出するのが先!!追求はあと!!」
『きゅ!』
「だからなんか光ってるんだってばハムちゃん!!気が散るから今は隠しといて!!」
しかもぴーちゃんがアレク君の頭の上から興味津々でハムちゃんを見つめてるし!!
えっと、食べないよね?鳥ってハムスターは食べないよね!?
「タカ子!」
「わかってる、行くよ!!」
いろいろ気になるけど、とにかくもう今は雑念は捨てた!!いざ行かん!!
「現実世界へログアウト!!」
オカルト世界はもう懲り懲りですっ!!
――――――――――――――
この時。
もう一つ。大切なことを忘れていたことに気づくのは事が済んでから。
『用はもう済んだ』
そう告げた頼我の言葉の意味を知るのは、既になにもかもが手遅れとなった、その後でのことだった。
この事件に隠された、本当の理由。
言い知れぬ後悔とともに高瀬がその事を知るのは、これから。
土佐犬の頭に小鳥。萌え。
アレク君の頭の上にのっかり、平然と毛づくろいをする小鳥の姿には、先ほどまでの神々しい八咫烏の面影などどこにもなく。
ひたすら愛らしさを追求したようなその素振りは、もはや人為的なあざとさすら感じるレベルだ。
というか、アレク君の頭に乗っかって降りる気配がないあたり、どう考えてもついてくる気満々。
「え~っと。なんかいろいろ聞きたいことはあるけど、とりあえず一緒に来る?」
『ワン!』
『ピヨ!』
当然、と頷く一羽と一匹。
まぁピーちゃんに関しては、作り出したのは高瀬であることだし、親(?)としての責任を感じないのでもないのだが……。
「ねぇぴーちゃん。ちなみに聞くけど龍一の事はいいの?」
『ぴ?』
なんのこと?と、言わんばかりに首をかしげる小鳥。
札に込められた霊力は二人分。
高瀬のものとーーーー龍一のもの。
だから当然、ぴーちゃんにとっては龍一も飼い主同然という扱いになるのかと思いきや、どうやらそういうわけでもないらしい。
無視か。どうやら龍一のことは完全に眼中にないらしい。
「ーーーーーお前が俺の力を完全に上書きした、そういうことだろう」
「ごめん、とりあえずなんかごめん」
憮然とした表情の龍一に、流石にちょっと申し訳なく感じ両手を合わせる。
なむ。
「タカ子、無駄話をしている時間はありませんよ。早くここから移動を」
「わかってる!んじゃ、とりあえずみんな準備はオッケー!?」
『ワン!』
『ピィ!』
『きゅ!』
ーーーーーーん?今、なんか一個返事が多かったような……。
「……ってやっぱりハムちゃんか!また!?」
『きゅ~?』
当然のごとく「え?なに?」といった顔で竜児の肩に乗るハム太郎。
いつの間に帰ってきたのだろう。本当にこの子の行動は謎だ。
「今まで何してたの、ハムちゃん」
『きゅ~~~きゅきゅ?』
「いやわからん。ハムスター言語はマスターしてないし」
とりあえずなにか説明しようとしている気配はわかるのだが、何を言っているのかーーーー。
「まぁいいや、とにかく移動しよう!龍一、後でこっちに連絡!!」
「それは構わんが、番号は?」
「会社宛か竜児宛で!」
どさくさに紛れて連絡先をゲットしようとしているのは見え見え。
そんな安い手にはいくらなんでも引っかかりません。
あ、そういえば美少女へのツテ(オッサンの名刺)をちゃんとしまっとかなきゃ…。
「あ、あと寺尾少年!」
「任せておけ。適当にどこかに放り投げておく」
「放り…………!?ってまぁいいや、この場に置いていくよりはましだろうし」
このままでは放火犯にされかねない。
龍一の良心に期待しよう。
「んじゃ帰るよ!!」
意識を集中し、自分と竜児、そして仲間たちをまとめて包み込むような、そんなイメージを作る。
よし。イケる。
確信した瞬間、最後の心残りとばかりにちらりと視線に過ったのは、燃え盛るプレハブ小屋、未だ群がったままの大勢のカラス。
そして、その場に立つ龍一の姿。
一瞬、『一緒に行けばいいのに』と口にしかけ、竜児の言っていたセリフを思い出し慌てて口を閉ざす。
本来、幽体離脱状態で他人を共に転移させることなど不可能。
それができるのは限られた人間だけの話であり、竜児いわく、その中に龍一は含まれていない。
と、いうことはだ。
下手をすれば竜児までも巻き込んで、盛大に路頭に迷いかねない。
流石にそれはまずい。
それに龍一には、寺尾少年を安全な場所まで運んでもらう役割がある。
「重量オーバー、ってことにしとこう、うん」
「ーーーー俺のことは気にするな、早くいけ」
高瀬の視線がこちらに向いていることに気づき、急げと告げる龍一。
サイレンの音は、確実に近づいてきている。
高瀬も頷き、再び意識を集中する。
あぁ、見えてきた。
自分の戻るべき、その場所が。
恐らく本来であれば、戻るべき場所は本体ーーーつまり自分の肉体が存在しているであろう竜児の部屋なのだろうが、今はそれよりも行きたい場所がある。
「中塚先輩たちがどうなったのか早く確認したい、とりあえず病院へ!!」
「タカ子、待ってください。あなたどこの病院へ入ったのかきちんと聞いていたんですか?場所はーーーー」
「部長を探せば多分なんとかなる!ね、ぶちょーーーじゃなかったアレク君!」
『わう!』
『きゅ~!』
いけるいける!としっぽを振るアレク君に、レッツゴー!と片手を上げるハムちゃん。
その時、不意に視界に光るものはよぎった。
「ん……?ハムちゃん、手に何か持って……」
『きゅ?』
気になる。なんか確実に光った。
だが。
車は急には止まれない。高瀬も急には止まれない。
「今はここから脱出するのが先!!追求はあと!!」
『きゅ!』
「だからなんか光ってるんだってばハムちゃん!!気が散るから今は隠しといて!!」
しかもぴーちゃんがアレク君の頭の上から興味津々でハムちゃんを見つめてるし!!
えっと、食べないよね?鳥ってハムスターは食べないよね!?
「タカ子!」
「わかってる、行くよ!!」
いろいろ気になるけど、とにかくもう今は雑念は捨てた!!いざ行かん!!
「現実世界へログアウト!!」
オカルト世界はもう懲り懲りですっ!!
――――――――――――――
この時。
もう一つ。大切なことを忘れていたことに気づくのは事が済んでから。
『用はもう済んだ』
そう告げた頼我の言葉の意味を知るのは、既になにもかもが手遅れとなった、その後でのことだった。
この事件に隠された、本当の理由。
言い知れぬ後悔とともに高瀬がその事を知るのは、これから。
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