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あれれ??
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よっしゃ、これで解決だ!と胸を張っていたら、正面の部長がそれはそれは重いため息をはいていた。
何故だ。
目一杯フォローしたはずなのに更に凹んだ!
解せぬ。
助けを求めて主任を見たが、こう言うときは決して助けてくれないのが主任の仕様。
中塚先輩からも生ぬるい視線を送られている。
矢部先輩は一人、「そうですよ部長!及川さんは部下なんですから役に立つのは当然です!」と必死のフォロー中。
援護したいけど、矢部先輩が言えば言うほど凹んでいく部長。
え、私が部下ってそんなに嫌でした?
逆にちょっと心配になった。
そこでなぜか部長の手から主任の手へと荷物のように手渡しされそうになったので、自ら慌てて床へおりる。
「なんだよ高瀬君。ちょっと位俺に抱かせてくれてもいいだろ?」
「主任、その台詞はいろんな意味でアウトです」
中塚女史が冷たい目で見てますよ!
忘れてますが、私は幼女(偽)!
「まぁ、気にすんなよ部長さん。要はあんた、タカ子に気に入られてるって事だからさ」
な?と賢治に問われこくりと頷く高瀬。
「ひとつ忠告するなら、タカ子相手に妙な気遣いは逆効果だぞ?
余計な気をまわしているうちに、下手したら人生そのものからフェードアウトされる。
必要ないならここにいなくてもいいか、ってな」
その忠告に部長が目を見開く。
そしてあたかもその発言に納得したかのような様子で、「忠告、感謝する」と。
「ケンちゃん、その言い方だと私が物凄く薄情ものっぽい」
「大丈夫。おつむが小さいだけだもんな?」
「せめてフォローして!?」
それなんのフォローにもなってないよ!と非難した高瀬だったが、生憎ここに味方はいない。
「賢治。タカ子の脳みそが小さいのは今更でしょう。それを指摘するのは野暮ですよ」
「あ~、それもそうだな。わるかったな、タカ子」
ぽんぽんと頭を撫でられても、全く心は和みません。
むしろ荒みました。
「誰一人としてフォローしてくれないこの惨状……」
相変わらず中塚先輩は生ぬるい視線を送ってきているし、矢部先輩は関わりたくないのが見え見え。
「………おまえ、本当にこんな奴らでいいのか?」
妙に気の毒そうな声で龍一から問いかけられ、高瀬は悩んだ。
「今初めてちょっと心が揺れ動いたかもしれない」
だが、続いての「俺ならお前をもっと適切に扱ってやる」という発言にはやはり首をかしげざるを得ないもので。
「ねぇ竜児。私の適切な扱いって何?」
「僕らほど君の扱いに長けているものはいないと思いますが」
「ほら、可愛い子には旅をさせろっていうだろ?」
な?と、ここでようやくご機嫌を取りにかかるケンちゃん。
「タカ子にとって適切な扱いってのはあれだな。
初めてのお使い」
「………?」
見た目は幼児、頭脳はアラサー。
今更なぜ一人でお使いに出されねばならぬのか悩むところである。
「あれってさ、一見一人で買い物にいってるように見えるし、周りも気づかれないように隠れて尾行しつつ子供を見守ってるだろ。正しくあの感じ」
確かに見たことがあります。
でもちょっと待て。あれってさ。
「バレバレだよね。毎回めっちゃバレバレの尾行してるよね!?」
「いいんだよ、本人が気にしてなきゃ」
カメラを担いでこっそり監視なんて普通に無理。
どんなに周囲があやしもうと、本人さえ気づかなければドントウォーリー。
つまり私の脳みそは幼児レベルと認定されているわけだな。
「及川高瀬は放し飼い厳禁です」
「それ自分で言うのは良くても人に言われるのはどうかと思う」
勝手に取扱説明書とかができていそうな件について物申したいところだ。
と、そこでようやく竜児が部長を見た。
「ーーーーー荷が重いようでしたら、すぐにでも回収させますが」
何を?
もちろんこの場合、それがわからぬ人間などいるはずもなく。
流石にギョッとする主任。
「もともと一時預かりの予定ですからね。気が進まないようでしたら他を探すまでです」
「他……だと?」
自分以外の誰に、彼女を託すつもりだと。
その瞳に明確に浮かんだ怒りの光。
「見守ることすらできぬというのなら引っ込んでいろということですよ。
今更ながらに己の置かれた立場に打ちのめされるなど、過信も良いところです」
手厳しい指摘を放つ竜児に、返す言葉がない。
なるほど彼らは確かに、彼女の扱いをよく知っているのだろう。
適度な距離からその行動を見守り、求められれば何のためらいもなくその手を貸す。
どんな事が起ころうと自分たちならば必ずそれに対処ができると、そう「確信」しているのだ。
だが、自分にはまだその確信がもてない。
彼女が消えてしまわないか
彼女が傷つけられるのではないか
ただ闇雲な懸念に心を揺らすのみ。
無能の分際でと言われれば、まさに返す言葉はない。
それに対して「現世利益」で還元しろといった高瀬の言葉は正しく、おそらく自身に求められている価値とはそれなのだろうと納得をすると同時に、「それだけでは満足できない」と荒ぶる心が無用の牙をむく。
悔しいが、この中で誰よりも無能なのは自身だと、誰より自分がよく知っていた。
何故だ。
目一杯フォローしたはずなのに更に凹んだ!
解せぬ。
助けを求めて主任を見たが、こう言うときは決して助けてくれないのが主任の仕様。
中塚先輩からも生ぬるい視線を送られている。
矢部先輩は一人、「そうですよ部長!及川さんは部下なんですから役に立つのは当然です!」と必死のフォロー中。
援護したいけど、矢部先輩が言えば言うほど凹んでいく部長。
え、私が部下ってそんなに嫌でした?
逆にちょっと心配になった。
そこでなぜか部長の手から主任の手へと荷物のように手渡しされそうになったので、自ら慌てて床へおりる。
「なんだよ高瀬君。ちょっと位俺に抱かせてくれてもいいだろ?」
「主任、その台詞はいろんな意味でアウトです」
中塚女史が冷たい目で見てますよ!
忘れてますが、私は幼女(偽)!
「まぁ、気にすんなよ部長さん。要はあんた、タカ子に気に入られてるって事だからさ」
な?と賢治に問われこくりと頷く高瀬。
「ひとつ忠告するなら、タカ子相手に妙な気遣いは逆効果だぞ?
余計な気をまわしているうちに、下手したら人生そのものからフェードアウトされる。
必要ないならここにいなくてもいいか、ってな」
その忠告に部長が目を見開く。
そしてあたかもその発言に納得したかのような様子で、「忠告、感謝する」と。
「ケンちゃん、その言い方だと私が物凄く薄情ものっぽい」
「大丈夫。おつむが小さいだけだもんな?」
「せめてフォローして!?」
それなんのフォローにもなってないよ!と非難した高瀬だったが、生憎ここに味方はいない。
「賢治。タカ子の脳みそが小さいのは今更でしょう。それを指摘するのは野暮ですよ」
「あ~、それもそうだな。わるかったな、タカ子」
ぽんぽんと頭を撫でられても、全く心は和みません。
むしろ荒みました。
「誰一人としてフォローしてくれないこの惨状……」
相変わらず中塚先輩は生ぬるい視線を送ってきているし、矢部先輩は関わりたくないのが見え見え。
「………おまえ、本当にこんな奴らでいいのか?」
妙に気の毒そうな声で龍一から問いかけられ、高瀬は悩んだ。
「今初めてちょっと心が揺れ動いたかもしれない」
だが、続いての「俺ならお前をもっと適切に扱ってやる」という発言にはやはり首をかしげざるを得ないもので。
「ねぇ竜児。私の適切な扱いって何?」
「僕らほど君の扱いに長けているものはいないと思いますが」
「ほら、可愛い子には旅をさせろっていうだろ?」
な?と、ここでようやくご機嫌を取りにかかるケンちゃん。
「タカ子にとって適切な扱いってのはあれだな。
初めてのお使い」
「………?」
見た目は幼児、頭脳はアラサー。
今更なぜ一人でお使いに出されねばならぬのか悩むところである。
「あれってさ、一見一人で買い物にいってるように見えるし、周りも気づかれないように隠れて尾行しつつ子供を見守ってるだろ。正しくあの感じ」
確かに見たことがあります。
でもちょっと待て。あれってさ。
「バレバレだよね。毎回めっちゃバレバレの尾行してるよね!?」
「いいんだよ、本人が気にしてなきゃ」
カメラを担いでこっそり監視なんて普通に無理。
どんなに周囲があやしもうと、本人さえ気づかなければドントウォーリー。
つまり私の脳みそは幼児レベルと認定されているわけだな。
「及川高瀬は放し飼い厳禁です」
「それ自分で言うのは良くても人に言われるのはどうかと思う」
勝手に取扱説明書とかができていそうな件について物申したいところだ。
と、そこでようやく竜児が部長を見た。
「ーーーーー荷が重いようでしたら、すぐにでも回収させますが」
何を?
もちろんこの場合、それがわからぬ人間などいるはずもなく。
流石にギョッとする主任。
「もともと一時預かりの予定ですからね。気が進まないようでしたら他を探すまでです」
「他……だと?」
自分以外の誰に、彼女を託すつもりだと。
その瞳に明確に浮かんだ怒りの光。
「見守ることすらできぬというのなら引っ込んでいろということですよ。
今更ながらに己の置かれた立場に打ちのめされるなど、過信も良いところです」
手厳しい指摘を放つ竜児に、返す言葉がない。
なるほど彼らは確かに、彼女の扱いをよく知っているのだろう。
適度な距離からその行動を見守り、求められれば何のためらいもなくその手を貸す。
どんな事が起ころうと自分たちならば必ずそれに対処ができると、そう「確信」しているのだ。
だが、自分にはまだその確信がもてない。
彼女が消えてしまわないか
彼女が傷つけられるのではないか
ただ闇雲な懸念に心を揺らすのみ。
無能の分際でと言われれば、まさに返す言葉はない。
それに対して「現世利益」で還元しろといった高瀬の言葉は正しく、おそらく自身に求められている価値とはそれなのだろうと納得をすると同時に、「それだけでは満足できない」と荒ぶる心が無用の牙をむく。
悔しいが、この中で誰よりも無能なのは自身だと、誰より自分がよく知っていた。
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