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神に仇なす覚悟

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「………神………?」

藪をつついて蛇を出すどころではなく、とんでもないものが引きずり出されてしまう可能性が高い。

その事に怖じ気づかぬ人間などいるはずがない。

それは高瀬とて同じことで。

「………何で一人で余裕な顔してんの?」

表情を変えなかったのはただ一人、龍一だけ。

「今さら何を怖れることがある。俺は既に神殺しだぞ?」
「……あ」

そう言われれば、確かにそうだった。

「いやいやいやいや、でもさぁ!
こっちにも心構えと言うものが……!」

ちょっとくらいあるでしょ、と。

訴えたものの、それにあっさり首を振る龍一。

「ーー無理だな。神の祟りとは常に理不尽極まりないものだ。
関わるものには皆等しく罰が下る」

ーーーーその、罰とは。

「言わずとも既に予想はついているだろう?あの男の腕を思い出せ」

壊死し始めた、肉。
あのままいけば、いずれは全身に壊死が回り、そこに待つのは逃れようのない死ーーー。

ここにいる誰もがその事実に思い当たり、一瞬にして凍りついた。

「いや、それは、不味いでしょ!?一応あれでも中塚先輩の親戚だよ!?」

生き腐れとか洒落にならない。
本気で何とかしなければ。

「な、中塚先輩の親戚がゾンビになるーーーー!!」
「おっ。バイオハザードかぁ。なんか楽しそうだなぁ」
「ゲームじゃないってケンちゃん!!」

現実世界にミラ・ジョモビッチは存在しない。

恐ろしい事態だった。

ひたすら騒ぐ高瀬に水を指したのは、「はぁ…」という部長のため息。

「……あれは危険なウィルス兵器がばら蒔かれた場合の話だろう。
今回の件とは話が別だ」

そもそも感染するとは限らない。
そう言われれば確かにそうで。

ちょっとひと安心。
そう油断するのはまだ早かった。

「甘いな。
神の基準と人の基準は違う。
下手をすれば俺たちだって神罰の対象となる場合もあり得るんだ。
……特に、同じ血族であるその女どもはな」

「………私、ね」
「わ、私も…!?」

覚悟を決めたように瞳を閉じる中塚女史。
対照的に声を震わせるのは矢部先輩だ。

二人が生きながら腐り死ぬーーー。
ダメダメ、それは、絶対に駄目だ!

「よっしゃ!こうなりゃ神でもゾンビでも何でも来い!!返り討ちにしてやるわ!!」

ふんっと腕まくりをし、存在しない筋肉を見せつける高瀬。

「やりますよ!部長!主任!」
「…………え?なんで俺達まで?」
「そりゃ乗り掛かった船的な話ですよ!ケンちゃんと龍一は最早手遅れだし!」

頭からずっぽり関わってしまっているのだ。
今さらイチ抜けた、はあり得ない。

というか高瀬が不退転の決意を決めた時点で道ずれ決定だ。
勿論、それは竜児も。

「まぁ、ここまで来たら逃げ出すつもりはないけど……」

役に立つかな?とぼやく主任。

「大丈夫ですよきっと。お伴は多い方がいいと昔から決まってるんですから」
「…………まさか君の中で俺達は桃太郎の動物レベル?」

雉はなんか嫌だ、雉は。と贅沢な事をブツブツ唱えながらも、気分はすっかり諦めモード。

言えた義理ではないが、気にするべきは多分、そこじゃないはず。

そしてこれから倒しにいくのは鬼ではなく、神だ。

よぉし、気合いをいれて!

「吉備団子の代わりにここは是非ラーメンキャラメルを!!」

「「いらない」」
「……………ですよね」

今さらだけど、どうしようアレ。
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