神の狗は十字を背負う~ワケあり吸血鬼の災難な日々~

隆駆

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帰還

40話

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「・・・・・・・・・うっ・・・・」

ぐえっというなんともいえない息を吐き、エメラルドは嘆息した。

 「エーメさ~ん。もう準備は済んでますよ~?行かないんですか?」

 朝も早よから余裕なヴァーニスを、じろり、とエメラルドが睨む。

 「・・・・お前、酒が飲めないって嘘だろ・・・」

 「え?飲めませんよ」
 
「・・・・・・・・嘘だな」

すっかり二日酔いで気分が悪い。

 昨日のブランデーは、思ったよりもアルコールが高かったらしい。
しばらくぶりのこの気分の悪さに、よけいにけろっとしているヴァーニスが恨めしい。

 「飲めませんけど、その代わり消化するのも早いんですよ。
ほら、飲めないからよけいに体が毒素として消化してしまうのかもしれませんね」

 「・・・・・・・・卑怯な」
 
「体質ですから」

なおも恨めしげなエメラルドに苦笑し、ちょっと待っててください、と台所へとかけてゆく。

 「はい。 特製スープ。胃がもたれるときにはこれが一番ですよ。
エーメさん、気分が悪いって言って朝食も取らなかったでしょ?軽くでも食べておいたほうがいいと思って、作っておいたんです」

 戻ってきたときに握られていたのは、茶色いスープの入った陶器のカップ。
 初めは突っぱねようとしたが、その暖かな湯気と香りにそのまま手を伸ばす。
エメラルドはそれを受け取り、無言のままに飲み干した。

 「・・・・・・・・あの、さすがに一気飲みはどうかと思いますけど」

いくら丁度いい熱さにしてあったとはいえ、火傷するのではないだろうか。

だがエメラルドは気にすることなく豪快に飲み干し、ほっと一息をはいてから、ようやく一言。

 「熱い」

 「・・・・・・・・・・・火傷しませんでした?」

 恐る恐る聞く。

 「・・・・・・舌がひりひりする」

 「・・・それ、火傷って言うんだと思います」

ヴァーニスは先ほど汲んできてあった水をエメラルドに差し出す。

 「水はいい。 内臓が焼けるようだが、気分は悪くない」

熱さに何もかも飛んでしまった、というところだろうか。
ヴァーニスがほっと息を吐く。
特製ベジタブルスープはどうやら効いたらしい。

 「少し休んでいきます?」

これから乗るのは馬車。
このまま行けば酔うのは確実である。

 「・・・・いや、いい。 遅くなればなるほど、あの馬鹿に何を言われるかわかったものじゃないからな」

実に嫌そうに眉根を寄せ、いささか行儀悪く口をぬぐう。

 「行くぞ、ヴィー」

 「あっ!ちょっと待ってくださいよっエーメさん!!カップを水に冷やしてきますから!」

どうせまたいつ帰ってこられるかわからないのだから、せめて準備くらいはきちんとさせて欲しい。
そういえば、出鼻をくじかれたとばかりにエメラルドにじろりと睨まれた。
それでも、ヴァーニスの言うことは最もだと思ったのだろう。
フンと鼻をならし、「さっさと片付けこい」と偉そうに命ずる。

「はいはい、わかりましたからエーメさんはちょっと休んでてくださいね」

その態度に苛立つわけでもなく、自然なあっさり様子で流したヴァーニスは、ついでとばかり水に濡らしたハンカチーフをエメラルドの額にそっと乗せ。
そのままカップを持つと、牧師館奥のキッチンへとそれらを片付け始める。

「早くしろよ」

照れ隠しとばかりにいいながら、仰向けになり冷たいハンカチーフに手を添えたエメラルドに、キッチンの奥から「はいはい」と軽い返事を返すヴァーニス。
 出発が遅れたのは、エメラルドの二日酔いが原因、カップを洗うことになったのもエメラルドが原因。
どう考えても理不尽な出来事ばかりだというのに、それを大して苦にも思わなくなった自分に苦笑いし、まぁ軽口が叩ける位元気になったならまぁいいかと思う。

(なんだかまだちょっと顔色が悪いけど、二日酔いならそのうち治るだろ)

ついでに二回酔いによく聞く茶をポットに持っていこう。
そう心に決めると、さっさと片付けを終えるべく、一人気合を入れるヴァーニスだった。     
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