恋せよ乙女のオカマウェイ!!

隆駆

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性別が行方不明になりました

幼馴染と合鍵

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「死ね太一!」
「…おい!」
自宅に帰ってくるなり、なぜか今のソファで家族同然に過ごしていた幼馴染に即効で制裁を加えた。
「あんたいつからここにいんの?ってか今何時だと思ってんのよ」
「ついさっきだよ。どうせ朝練で5時には起きるし、お前がそろそろ帰ってくる頃かと思って…」
時計を見れば、時刻は深夜4時。
両親ですらまだ眠っている時間だ。
なぜやつが入ってこれたのか。それは簡単、合鍵を所持しているからだ。
二人が幼い頃、互いに忙しい両親の事もあり、どちらかが忙しい時にはどちらかの家で面倒を見てもらえるよう、互いに合鍵を交換し合っていたのだ。
つまり明日夢も彼の自宅の合鍵を持っている。
さすがにこの歳になってそうそう使用することもないし、太一に彼女ができたら返そうとは思っているのだが。
「一応心配してやったのになんだよ…」
「偉そうに言うな。だったら今度は太一が女装すればいい」
元はといえば貴子は彼の叔母だ。
「絶対嫌」
「そういうあんたの代わりに店に出てやった優しい幼馴染に労りは?」
「………」
一応、人身御供に差し出した罪悪感はあったようだ。
「元はといえば貴子さんが私に目をつけたのは、太一、あんたがお店に協力してあげないからじゃない」
「…協力って、オカマバーだぞ!?」
「そのオカマバーを経営してるのはあんたの叔母だ」
もはや太一はぐうの音も出ない。
「…店で何かあったのか?」
それでも心配していたのは本当らしく、様子がおかしいことをひと目で見抜く。
「まぁ…色々?」
「色々って…おい!何があったんだよ」
そりゃ、色々だ。
「あ、いいこともあったよ。理想の男性像がお客で来店した」
「はぁ?」
「ガタイがよくて身長も高いお金持ちそうなイケメン。スーツは海外製のオーダーと見た」
「うさんくせぇ…」
「ついでに会社社長」
「……」
―――ぐうの音も出なくなったな。
「昔からのお客さんみたいだけどね…」
「どうせ。オカマバーに通うような客、まともな性癖してないに決まってるぜ」
「その言葉貴子さんにいいつけてやろうか」
「……俺が言いすぎた」
「よろしい」
鷹揚にうなづく明日夢に、「だけどよ」と太一は続ける。
「明日夢お前、目を付けられたりしてないだろうな?」
「はぁ?」
「オカマバーに通うくらいだ、ホモなんだろ、そいつ」
おいおい。
「決め付けるのはいくらなんでも乱暴でしょ。貴子さんは彼にその気はないっていってたし」
「どうだか。隠してるだけなんじゃねぇの」
は、っと鼻で笑う。
一体何がそんなに気に食わないのかわからないが、どうにも不機嫌な様子だ。
「ストーカーにでもなられたらどうすんだよ。お前、女だし、相手が逆上して刃物でも持ち出してきたら…」
「ちょっと、勝手に犯罪者にしたてあげないで!第一、刃物持ち出されたくらいでビビるタチしてないことくらいあんたも知ってるでしょうが」
なにしろ同じ道場に通って十年来だ。
正直、太一よりも明日夢の方が腕は上である。
「それでもお前、女だろ。…顔に傷でも作ったらどうすんだよ。嫁の貰い手がなくなるぞ」
「…それって、心配してくれてるわけ?」
実はツンデレか。
「あ、当たり前だろ…!?ただでさえお前みたいな男女、誰も嫁にもらってやくれないってのに、傷まで出来たらもう俺が貰ってやるしか…」
「あっそ。あんたにもらって貰わなくても結講です~。これでもアプローチしてくる男の人くらい別にいるし」
「誰だよそれ!!」
「ナイショ」
ヤクザの若頭とオカマバーのNo1だとは口が裂けても言えない。
…まぁ、冗談だとは思うが。
「というかもうさっさと帰った帰った!合鍵もいい加減返しなさいよ!お互いいい歳なんだから…」
私も返すから、と置きっ放しになっている合鍵を太一に差し出すが、太一は受け取らない。
「別にいいよ…。今更お前に見られて困るもんなんかねぇし…。お前もそうだろ」
「男と女を一緒にすな。こっちには男に見られたくないものくらいあるわ!」
「ちっ…」
「いつまでもあんたと一緒に遊んでた子供じゃないの」
胸を張って言ったセリフに、ぼそぼそとした返答が聞こえる。
「…子供じゃないってんなら、少しくらいこっちの気持ちに気づけよ…」
「なんかいった?」
「別に…」
はぁ、と深くため息を吐く太一。
最近良くそんな顔を見ている気もするが、遅れてきた思春期だろうか。
「お前、今日大学は?」
「あるわけ無いでしょ。この時間に帰ってきて」
「…就活はどうなってる?」
「一応明後日面接の予定だけど…って、なんであんたにそんなこと言わなきゃいけないわけ」
「別にいいだろ、幼馴染なんだから…」
「まぁ、隠す理由はないけど…」
なんだか妙にしつこいのが気に障るだけだ。
「そっちは?うまくいってんの」
「…まぁまぁ。地元の会社でうまく潜り込めそうな場所は見つけた」
その言葉にあれと思う。
「あんた、こっちに残るの?」
てっきり出ていくとばかり思っていたが。
「…だからそれも誰のせいだと…」
「ん?」
「…なんでもない。お袋にもさんざん釘刺されてるしな…」
「おばさんが?」
意外とムスコンだったのだろうか。
息子が家を離れるのが寂しかったのかもしれない。
「…お前から目を離すとすぐに別の男に持ってかれるぞって脅されたんだよ…」
「はい?もっと大きな声で言ってくれる?」
あまりに小声でつぶやかれたせいで全然聞こえなかった。
「誰が言うかよ、こんなこと!」
「今度は声がでかい…。ってか、大きな声で言えないような話なの?」
そこでぐっと押し黙った太一は、無言のままに明日夢に背を向ける。
「はいはい、ご帰宅ね。せめてお休みくらいいってけば?」
「………」
愛想がない、と肩をすくめる。
「あ、合鍵!」
返してげ、と声をかけた時には、太一は既に玄関に向かったあとだった。
まぁ、いつでも返せるしいいかと気を取り直し、ようやく自宅のソファで一息つく。
「本当に…いろいろあったな、今日は」
興奮で忘れていたが、いい加減眠気もやってきている。
ソファで豪快に大の字になってあくびをすれば、本格的に眠気がやってきた。

―――やばい、このまま寝そう。

思ったときには、既にまぶたは重く、足はもう一歩も動きそうにはなかった。


「疲れた」
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