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普通の女の子に戻りたい。
美咲からのSOS
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自転車で走り出してすぐ、ポケットから鳴り響いたのは聴き慣れた着信音。
「電話??」
「美咲お嬢さん」と表示されたその画面を見た明日夢は、即座に自転車を降りると適当な路肩に止め、通話ボタンを手早く叩く。
「もしもしお嬢さん?どうしたんですか?」
電話があること自体はそう珍しいことではない。
高津組の組長との会食には美咲も同伴しており、その際に互いに連絡先の交換を行っていたからだ。
『友達なら当然でしょ』と美咲から言い切られて断れなかったというのもあるが、純粋に美咲が可愛かったのもあり、それ以降ラインを使ってちょくちょく互いに連絡を取り合ったりしていた。
昨日の夜も美咲からは『試験頑張って』というラインが来ていたのだが……。
『明日夢!!お願い助けて!!!』
通話ボタンを押した途端聞こえてきた悲痛な叫びは、紛れもなく美咲のもので。
「美咲さん!?何があったんですか!?」
『突然車で拉致されて……!!きゃぁぁぁぁ!!』
「美咲さん!!」
ブツリと切れた電話。
最後の悲鳴が耳の中にずっと谺している。
これからどう動くべきか。
冷静に考えていられたのはごく短い間だけで、すぐさま明日夢は次の行動に移っていた。
手に取ったままだったスマホの着信履歴から一週間ほど前の番号を拾い上げると、ためらいなくそこにコールをかける。
幸いにして、相手はすぐに出た。
おそらくだが、明日夢の携帯番号は既にデータとして入力済みなのだろう。
「曽根さん」
『あなたからの電話なんて嬉しいですね、明日夢さん。ご要件を伺いましょう』
「……まさか、まだ知らないんですか?」
『なんのことでしょう?』
互いにほとんど余計なことを口にしないやり取り。
だが、曽根の声にはいまだ緊張感が見えない。
美咲の件がまだ曽根に伝わっていないということだろうか?
訝しみながらも、先ほどあった電話の内容を伝える明日夢。
その上で、美咲の居場所について心当たりがないかと問いただせば、当たり前のように「お嬢さんの体にはGPSが埋め込まれていますよ」との答えが。
「GPS…!?」
なんでそんなものが、と。
心の声が聞こえたわけではあるまいが、当然のごとく曽根がその答えを説明する。
『もしもの為の処置ですよ。極道の身内というのはそれだけ危険があるということです』
敵対する組織からの報復による拉致や監禁、そんなものを危惧しているということだろう。
そして実際に今、こうして美咲は危険な目にさらされているということになる。
「……わかりました。では、美咲さんの居場所はすぐに把握できるということですね?」
『勿論』
「なら直ぐに居場所を割り出してください。美咲さんが何者かにさらわれた可能性があります」
『――――わかりました、直ぐに探させましょう』
なぜ、とも、誰が、とも口にせず、何一つ取り乱した様子すらなく事務的にそう伝えた曽根。
その冷静さを冷酷と非難することはできない。
慌てたところで何一つ事態が好転しないことは、明日夢とてよくわかっている。
けれども、曽根を責める気持ちが全くないとは言えない。
「曽根さん、あなたは今どこに?」
『車内ですよ。今日は少し外に用事がありまして』
つまり、美咲とは別行動だったということになる。
曽根とて四六時中美咲についていられるわけではないが、曽根さえ美咲と一緒にいてくれれば、という無念は残る。
連れ去られてからどれくらいの時間が経っているのかわからない。
一刻も早く救出しなければ、その生死に関わる事態だってありうる。
苛立つ明日夢に、『美咲さんの居場所がわかりましたよ』と曽根が告げたのはそれから間もなくのことだ。
『協力いただけるなら是非ご一緒に。今からそちらに迎えに行きますよ』と曽根が明日夢の現在地を訪ねてくるが、明日夢が冷静でいられたのはそこまでだった。
「迎えに来る時間があったらさっさと美咲を助けに行け!!!」
今この時も、美咲が助けを求めているというのに、何を悠長にしているのかと。
それは後に曽根から、子供を奪われた手負いの獣のような有様だったと評されるようなとんでもない剣幕で。
「美咲に何かあってみろ。腑抜けたそのタマ、私が切り落としてやるからな……!!」
――――聞いていた他のヤクザが思わず真っ青になるような、あまりに立派すぎる啖呵を切ったのだ。
「電話??」
「美咲お嬢さん」と表示されたその画面を見た明日夢は、即座に自転車を降りると適当な路肩に止め、通話ボタンを手早く叩く。
「もしもしお嬢さん?どうしたんですか?」
電話があること自体はそう珍しいことではない。
高津組の組長との会食には美咲も同伴しており、その際に互いに連絡先の交換を行っていたからだ。
『友達なら当然でしょ』と美咲から言い切られて断れなかったというのもあるが、純粋に美咲が可愛かったのもあり、それ以降ラインを使ってちょくちょく互いに連絡を取り合ったりしていた。
昨日の夜も美咲からは『試験頑張って』というラインが来ていたのだが……。
『明日夢!!お願い助けて!!!』
通話ボタンを押した途端聞こえてきた悲痛な叫びは、紛れもなく美咲のもので。
「美咲さん!?何があったんですか!?」
『突然車で拉致されて……!!きゃぁぁぁぁ!!』
「美咲さん!!」
ブツリと切れた電話。
最後の悲鳴が耳の中にずっと谺している。
これからどう動くべきか。
冷静に考えていられたのはごく短い間だけで、すぐさま明日夢は次の行動に移っていた。
手に取ったままだったスマホの着信履歴から一週間ほど前の番号を拾い上げると、ためらいなくそこにコールをかける。
幸いにして、相手はすぐに出た。
おそらくだが、明日夢の携帯番号は既にデータとして入力済みなのだろう。
「曽根さん」
『あなたからの電話なんて嬉しいですね、明日夢さん。ご要件を伺いましょう』
「……まさか、まだ知らないんですか?」
『なんのことでしょう?』
互いにほとんど余計なことを口にしないやり取り。
だが、曽根の声にはいまだ緊張感が見えない。
美咲の件がまだ曽根に伝わっていないということだろうか?
訝しみながらも、先ほどあった電話の内容を伝える明日夢。
その上で、美咲の居場所について心当たりがないかと問いただせば、当たり前のように「お嬢さんの体にはGPSが埋め込まれていますよ」との答えが。
「GPS…!?」
なんでそんなものが、と。
心の声が聞こえたわけではあるまいが、当然のごとく曽根がその答えを説明する。
『もしもの為の処置ですよ。極道の身内というのはそれだけ危険があるということです』
敵対する組織からの報復による拉致や監禁、そんなものを危惧しているということだろう。
そして実際に今、こうして美咲は危険な目にさらされているということになる。
「……わかりました。では、美咲さんの居場所はすぐに把握できるということですね?」
『勿論』
「なら直ぐに居場所を割り出してください。美咲さんが何者かにさらわれた可能性があります」
『――――わかりました、直ぐに探させましょう』
なぜ、とも、誰が、とも口にせず、何一つ取り乱した様子すらなく事務的にそう伝えた曽根。
その冷静さを冷酷と非難することはできない。
慌てたところで何一つ事態が好転しないことは、明日夢とてよくわかっている。
けれども、曽根を責める気持ちが全くないとは言えない。
「曽根さん、あなたは今どこに?」
『車内ですよ。今日は少し外に用事がありまして』
つまり、美咲とは別行動だったということになる。
曽根とて四六時中美咲についていられるわけではないが、曽根さえ美咲と一緒にいてくれれば、という無念は残る。
連れ去られてからどれくらいの時間が経っているのかわからない。
一刻も早く救出しなければ、その生死に関わる事態だってありうる。
苛立つ明日夢に、『美咲さんの居場所がわかりましたよ』と曽根が告げたのはそれから間もなくのことだ。
『協力いただけるなら是非ご一緒に。今からそちらに迎えに行きますよ』と曽根が明日夢の現在地を訪ねてくるが、明日夢が冷静でいられたのはそこまでだった。
「迎えに来る時間があったらさっさと美咲を助けに行け!!!」
今この時も、美咲が助けを求めているというのに、何を悠長にしているのかと。
それは後に曽根から、子供を奪われた手負いの獣のような有様だったと評されるようなとんでもない剣幕で。
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