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ブラック企業に勤める社畜OLが異世界トリップして騎士の妻になるそうです
練れば練るほどクセになる
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「お帰りなさい、リュート様」
「ん。ただいま」
頬に唇を寄せ、ほんの少し口づけられる。
元はといえば、今日アイリーンがこの領主館へやってきたのも主であるリュートが不在だったからというのが大きい。
要するに、監視する人間がおらずみはるが仕事をしすぎないようにとの配慮でアイリーンの存在が歓迎されていたのだ。
「みなさんの様子はどうでした?」
「概ね良好。仕組みが合わなくなってる様子はないな」
みはるの決して多くはない知識の中から、なんとななると踏んで広めたいくつかの農業改革。
二毛作を取り入れたのは1年半ほど前からで、もうすでに成果は上がっている。
将来的には生産数は倍近くになるだろう。
これまでここで引いていた水路を整備させ、水田を整える。
そして、小麦が主食であるこの国の食糧事情から、年の半分は小麦を、残りの半分は大豆に似た豆を植えることにした。
米の栽培ができればそれに越したことはなかったのだが、残念ながらそれらしき農産物は未だに見つかっていない。
大豆に似た豆は、枝豆のようにそのまま食べてもよし、ひよこ豆のように粉にしてパンケーキのようなものを焼くこともできると使い勝手はまぁまあで、栄養価も高かった。
惜しむらくは豆腐の作り方を覚えていなかったことだが、まぁいまさら悔やんでも仕方ない。
「みはるのおかげで、飢えるものは随分減った」
「それはよかったです」
この国に来て思ったこと。
それは、飢えに怯える人間の存在があまりにも身近にあるということだ。
これまで、日本のTVでアフリカや南米の貧困する様子をみても、正直イマイチピンと来てはいなかった。
彼らを飢餓から救うために募金をと募るCMは目にしていたが、自ら率先して彼らを救うために行動をしようという気にはなれなかった。
見知らぬ場所で死んだ見知らぬ外国人。
その死を心から本気で痛むことのできる人間が果たしてどれくらいいるだろうか。
勿論NPOや赤十字の活動を馬鹿にしているわけではないが、自分にはそれはできないと思うだけのこと。
ぶっちゃけ、見知らぬ外国の飢えた子供より、自国の孤児院の充足だ。
日本にだって、満足に食べられずに死んでいく子供はいる。
虐待されて、大人になれずに死んでいくものも多い。
どちらが不幸か、そんなもの比べるべくもないのかもしれない
だが、飽食の時代と言われ、多くの食料が毎日廃棄されていたあの日本で、「飢えて死ぬ」その意味は一体何なのだろうと、時々考えてしまう。
リュートの仕事を手伝い始めてまず真っ先に感じたことは、国レベルでの大規模な農地整理が全く行われていないという事実。
水田にしても、田畑に水を引くのは個人の役割で、それこそ好き勝手に自分の田に水を引き入れてしまっている。
おかげで水が多すぎて根腐れをする田もあれば、逆に水が少なく過ぎてかれて行く田もある。
それではどう考えても効率が悪すぎる。
そこでみはるが考えたのが、昔で言う小作人の制度だ。
一度農地をすべて領のものとして接収し、農業用地としての整地、水源の整備などを行った上でその土地をもう一度貸し与え、そこで農業をさせるというもの。
接収といえば聞こえは悪いが、要は国(この場合は領主)が、農地の整備資金を先払いで払う代わりに、土地代として日々少しずつお金を返せというだけの話だ。
初めは戸惑っていたものも、農地の整備により飛躍的に農産物の生産量が増えればすぐに納得した。
元から多くの土地をもっていたものは土地を奪われるのではないかと警戒していたようだが、勿論初めに土地を多く持っていたものにはそれだけ多くの接収金が支払われるし、その分ほかのものよりも多くの土地を借り受けることができる。
勿論、生涯賃料を払い続けろというわけではなく、ある一定度の額を払えばその土地を自分のものにできるという制度もある。
頑張れば頑張るだけ報われる、というのが本来の民主主義の基本だ。
絶対王政を敷いているこの世界では、あまり馴染みのない考え方なのかもしれないが。
「後は食べられる生垣、だったか?それも街での整備が始められた」
「お!さすがですね。何かあった時の備えは大切ですから」
山形のお殿様、上杉鷹山がかつて行った政策。
飢餓に備えて、町中に食べられる植物を植えておこうという実に合理的な食糧難への対策だ。
現代日本でも、嵐や大雨によって一時的に農作物が不作に陥ることは少なくない。
日本のような国による救済策など存在しない上、冬にはけっこうな寒波に襲われるこの領地では、ちょっとした悪天候による不作が飢餓に繋がらないとは限らないのだ。
何があっても決して飢えない事。それが一番の安心につながる。
まぁ、真面目なことばかり話してはいけても、結局は全て聞きかじりだ。
間違っていることもあれば、この世界では合わない仕組みもあるだろう。
それを調整して、実際に運用を進めることができているのは全て領主であるリュートの尽力によるものだ。
最近では、別の領地からこちらの領地に移住を始めるものもチラホラと現れ始めたほどである。
それはそれで問題だな、とリュートも苦笑していたが。
今日のリュートの仕事は、その土地の視察である。
朝から留守にしていたため、お昼過ぎにアイリーンがやってきて、小一時間ほどで帰っていった。
それ以外はほとんど一人の時間である。
「少し、疲れてるんじゃないか?私がいない間に、また頑張り過ぎてはいないだろうな?」
「大丈夫ですよ!元気もりもりです!リュート様こそ、お疲れ様でした。
私じゃ、馬に乗って遠出するだけで一苦労ですからね。尊敬します」
最初の頃、わがままを言って一緒に視察についていったことがあったが、あまりの尻の痛みに一度でギブアップした。
ただでさえ馬に乗り慣れないみはるに、野生馬での移動は相当キツイ。
それでもリュートは、「なんなら自分の膝の上に乗ればいい」といって一緒に行くことを勧めてくれたが、さすがにそれは断った。
―――あれ?よく考えるとその頃から妙にリュート様って、距離感が近かったような…。
普通、膝に乗れとか、言うか…?
当時は何も考えてはいなかったが、冷静になって見ると、ちょくちょくおかしな言動は見られた気がする。
酷い時には、仕事に疲れソファーで眠ってしまった後、気づくとリュートの腕が頭の後ろにあった、なんてことも。
なぜ腕枕!?と焦るみはるに対し、リュートは全く動揺することもなく、ただなぜか当然のように片手で書類を捌いていた。
ここ最近では、寝落ちして気がついた時にはリュートの膝の上に頭が乗せられていたこともある。
さすがに土下座案件かと思ったが、なぜかいい笑顔で「まだ眠っていればいい」と微笑まれた。
「いい人だ!神だ!」と思っていたが、あれは彼のみはるへの好意の成せる技だったのか…。
「今日の夕食は、煮込み料理ですよ!料理人が帰ったあとは私がじっくり煮込みました!」
ついでに匂いにつられて味見もしたが、非常に美味でした。
「そうか、楽しみだな」
「ええ、自信作です!」
―――料理人の。
心の中でそう付け加えるが、そんなことなど百も承知で話に乗ってくれるリュートは本当に優しい。
自分でも料理ができればいいが、それは非常に難しい。
なにしろ文明の機器になれきった人間である。
動物を直接さばいたこともなければ、オーブンや電子レンジ、ガスレンジとった家電を使わない調理というものの経験も全くない。
敷いてあげれば子供の頃に行ったキャンプファイヤーでの飯ごう炊飯だろうが、あの時作ったのは例に漏れずカレーライスだ。
ここにきて日本のカレールーの偉大さに気づかされたみはるには、スープ一つ満足に作れる自信がない。
せいぜい、料理人が作り置きしてくれたものを温め直し、魔女のごとくグツグツと煮込み続ける位だ。
ねるねるねーるね、と唱えながら鍋を混ぜ混ぜしていたのを見られた時には焦った。
「何を遊んでるんだ?」と笑われるだけですんだが、調子に乗って「イヒヒヒ!」なんて笑ってるところを見られた日には魔女狩りされる。
「夕食の時、ちょっとお話したいことがあるんですけど、いいですか?」
「みはるの話ならいつでも」
話しながら彼の外套を脱がせ、クローゼットにかける。
「湯浴みの準備、しときますね」
「ありがとう」
―――おかえりなさいのキスに、食事と風呂の用意。
二人っきりで囲む食卓は、いつからだった?
みはるが保護された当初、確かに何人かの使用人が泊まり込みで働いていたはずだった。
それが一人また一人問なくなり、夜には完全に二人きりになったのはいつのことだったろう。
もちろん、みはる一人でこの館の管理を完全に出来るはずなどなく、今も使用人たちの出入りはあるが、食事や湯浴みの用意、ベットメイクなどまでほとんどお膳立てされた状態で、後はリュートのを世話するだけ
みはる自身は人に世話をされることには抵抗があったため、保護者であるリュートのために身の回りの世話をすること位は当たり前のように受け入れていたが…。
これはもしや、使用人達が気をきかせた状態、だったのではないか。
おおぅ。
外堀はすでに早くからコンクリートで流し固められていたようだ。
「ミハル」
「はい?」
「まだ、一緒に湯浴みをするには早いかな?」
「――――――――!!!!」
「…冗談だよ」
あながち冗談ではなかったふうなリュートの流し目にクリーンヒットを打たれ、みはるが悶える。
そうだ。結婚するということはすなわち、「ご飯にする?お風呂にする?それともあ♥た♥し♥」な日々をリアルに送るということ。
ヤバイ。みはるが学理と膝から崩れ落ちる。
早くから気づいていたが、リュートはロールキャベツだ。
草食に見せかけた肉食であることは間違いない。
お決まりな選択を迫ったところで「あたし(みはる)」一択でファイナルアンサーになる結末しか見えない!
一旦自室へと戻っていくリュートのその後ろ姿を見ながら、「…よし」と、みはるは心を決めた。
―――リュート様。私は、あなたと家族になりたいんです。
あなたの事を、知らなければならない。
『 モウケッシテ、テバナシハシナイ。タイセツナ…… 』
「ん。ただいま」
頬に唇を寄せ、ほんの少し口づけられる。
元はといえば、今日アイリーンがこの領主館へやってきたのも主であるリュートが不在だったからというのが大きい。
要するに、監視する人間がおらずみはるが仕事をしすぎないようにとの配慮でアイリーンの存在が歓迎されていたのだ。
「みなさんの様子はどうでした?」
「概ね良好。仕組みが合わなくなってる様子はないな」
みはるの決して多くはない知識の中から、なんとななると踏んで広めたいくつかの農業改革。
二毛作を取り入れたのは1年半ほど前からで、もうすでに成果は上がっている。
将来的には生産数は倍近くになるだろう。
これまでここで引いていた水路を整備させ、水田を整える。
そして、小麦が主食であるこの国の食糧事情から、年の半分は小麦を、残りの半分は大豆に似た豆を植えることにした。
米の栽培ができればそれに越したことはなかったのだが、残念ながらそれらしき農産物は未だに見つかっていない。
大豆に似た豆は、枝豆のようにそのまま食べてもよし、ひよこ豆のように粉にしてパンケーキのようなものを焼くこともできると使い勝手はまぁまあで、栄養価も高かった。
惜しむらくは豆腐の作り方を覚えていなかったことだが、まぁいまさら悔やんでも仕方ない。
「みはるのおかげで、飢えるものは随分減った」
「それはよかったです」
この国に来て思ったこと。
それは、飢えに怯える人間の存在があまりにも身近にあるということだ。
これまで、日本のTVでアフリカや南米の貧困する様子をみても、正直イマイチピンと来てはいなかった。
彼らを飢餓から救うために募金をと募るCMは目にしていたが、自ら率先して彼らを救うために行動をしようという気にはなれなかった。
見知らぬ場所で死んだ見知らぬ外国人。
その死を心から本気で痛むことのできる人間が果たしてどれくらいいるだろうか。
勿論NPOや赤十字の活動を馬鹿にしているわけではないが、自分にはそれはできないと思うだけのこと。
ぶっちゃけ、見知らぬ外国の飢えた子供より、自国の孤児院の充足だ。
日本にだって、満足に食べられずに死んでいく子供はいる。
虐待されて、大人になれずに死んでいくものも多い。
どちらが不幸か、そんなもの比べるべくもないのかもしれない
だが、飽食の時代と言われ、多くの食料が毎日廃棄されていたあの日本で、「飢えて死ぬ」その意味は一体何なのだろうと、時々考えてしまう。
リュートの仕事を手伝い始めてまず真っ先に感じたことは、国レベルでの大規模な農地整理が全く行われていないという事実。
水田にしても、田畑に水を引くのは個人の役割で、それこそ好き勝手に自分の田に水を引き入れてしまっている。
おかげで水が多すぎて根腐れをする田もあれば、逆に水が少なく過ぎてかれて行く田もある。
それではどう考えても効率が悪すぎる。
そこでみはるが考えたのが、昔で言う小作人の制度だ。
一度農地をすべて領のものとして接収し、農業用地としての整地、水源の整備などを行った上でその土地をもう一度貸し与え、そこで農業をさせるというもの。
接収といえば聞こえは悪いが、要は国(この場合は領主)が、農地の整備資金を先払いで払う代わりに、土地代として日々少しずつお金を返せというだけの話だ。
初めは戸惑っていたものも、農地の整備により飛躍的に農産物の生産量が増えればすぐに納得した。
元から多くの土地をもっていたものは土地を奪われるのではないかと警戒していたようだが、勿論初めに土地を多く持っていたものにはそれだけ多くの接収金が支払われるし、その分ほかのものよりも多くの土地を借り受けることができる。
勿論、生涯賃料を払い続けろというわけではなく、ある一定度の額を払えばその土地を自分のものにできるという制度もある。
頑張れば頑張るだけ報われる、というのが本来の民主主義の基本だ。
絶対王政を敷いているこの世界では、あまり馴染みのない考え方なのかもしれないが。
「後は食べられる生垣、だったか?それも街での整備が始められた」
「お!さすがですね。何かあった時の備えは大切ですから」
山形のお殿様、上杉鷹山がかつて行った政策。
飢餓に備えて、町中に食べられる植物を植えておこうという実に合理的な食糧難への対策だ。
現代日本でも、嵐や大雨によって一時的に農作物が不作に陥ることは少なくない。
日本のような国による救済策など存在しない上、冬にはけっこうな寒波に襲われるこの領地では、ちょっとした悪天候による不作が飢餓に繋がらないとは限らないのだ。
何があっても決して飢えない事。それが一番の安心につながる。
まぁ、真面目なことばかり話してはいけても、結局は全て聞きかじりだ。
間違っていることもあれば、この世界では合わない仕組みもあるだろう。
それを調整して、実際に運用を進めることができているのは全て領主であるリュートの尽力によるものだ。
最近では、別の領地からこちらの領地に移住を始めるものもチラホラと現れ始めたほどである。
それはそれで問題だな、とリュートも苦笑していたが。
今日のリュートの仕事は、その土地の視察である。
朝から留守にしていたため、お昼過ぎにアイリーンがやってきて、小一時間ほどで帰っていった。
それ以外はほとんど一人の時間である。
「少し、疲れてるんじゃないか?私がいない間に、また頑張り過ぎてはいないだろうな?」
「大丈夫ですよ!元気もりもりです!リュート様こそ、お疲れ様でした。
私じゃ、馬に乗って遠出するだけで一苦労ですからね。尊敬します」
最初の頃、わがままを言って一緒に視察についていったことがあったが、あまりの尻の痛みに一度でギブアップした。
ただでさえ馬に乗り慣れないみはるに、野生馬での移動は相当キツイ。
それでもリュートは、「なんなら自分の膝の上に乗ればいい」といって一緒に行くことを勧めてくれたが、さすがにそれは断った。
―――あれ?よく考えるとその頃から妙にリュート様って、距離感が近かったような…。
普通、膝に乗れとか、言うか…?
当時は何も考えてはいなかったが、冷静になって見ると、ちょくちょくおかしな言動は見られた気がする。
酷い時には、仕事に疲れソファーで眠ってしまった後、気づくとリュートの腕が頭の後ろにあった、なんてことも。
なぜ腕枕!?と焦るみはるに対し、リュートは全く動揺することもなく、ただなぜか当然のように片手で書類を捌いていた。
ここ最近では、寝落ちして気がついた時にはリュートの膝の上に頭が乗せられていたこともある。
さすがに土下座案件かと思ったが、なぜかいい笑顔で「まだ眠っていればいい」と微笑まれた。
「いい人だ!神だ!」と思っていたが、あれは彼のみはるへの好意の成せる技だったのか…。
「今日の夕食は、煮込み料理ですよ!料理人が帰ったあとは私がじっくり煮込みました!」
ついでに匂いにつられて味見もしたが、非常に美味でした。
「そうか、楽しみだな」
「ええ、自信作です!」
―――料理人の。
心の中でそう付け加えるが、そんなことなど百も承知で話に乗ってくれるリュートは本当に優しい。
自分でも料理ができればいいが、それは非常に難しい。
なにしろ文明の機器になれきった人間である。
動物を直接さばいたこともなければ、オーブンや電子レンジ、ガスレンジとった家電を使わない調理というものの経験も全くない。
敷いてあげれば子供の頃に行ったキャンプファイヤーでの飯ごう炊飯だろうが、あの時作ったのは例に漏れずカレーライスだ。
ここにきて日本のカレールーの偉大さに気づかされたみはるには、スープ一つ満足に作れる自信がない。
せいぜい、料理人が作り置きしてくれたものを温め直し、魔女のごとくグツグツと煮込み続ける位だ。
ねるねるねーるね、と唱えながら鍋を混ぜ混ぜしていたのを見られた時には焦った。
「何を遊んでるんだ?」と笑われるだけですんだが、調子に乗って「イヒヒヒ!」なんて笑ってるところを見られた日には魔女狩りされる。
「夕食の時、ちょっとお話したいことがあるんですけど、いいですか?」
「みはるの話ならいつでも」
話しながら彼の外套を脱がせ、クローゼットにかける。
「湯浴みの準備、しときますね」
「ありがとう」
―――おかえりなさいのキスに、食事と風呂の用意。
二人っきりで囲む食卓は、いつからだった?
みはるが保護された当初、確かに何人かの使用人が泊まり込みで働いていたはずだった。
それが一人また一人問なくなり、夜には完全に二人きりになったのはいつのことだったろう。
もちろん、みはる一人でこの館の管理を完全に出来るはずなどなく、今も使用人たちの出入りはあるが、食事や湯浴みの用意、ベットメイクなどまでほとんどお膳立てされた状態で、後はリュートのを世話するだけ
みはる自身は人に世話をされることには抵抗があったため、保護者であるリュートのために身の回りの世話をすること位は当たり前のように受け入れていたが…。
これはもしや、使用人達が気をきかせた状態、だったのではないか。
おおぅ。
外堀はすでに早くからコンクリートで流し固められていたようだ。
「ミハル」
「はい?」
「まだ、一緒に湯浴みをするには早いかな?」
「――――――――!!!!」
「…冗談だよ」
あながち冗談ではなかったふうなリュートの流し目にクリーンヒットを打たれ、みはるが悶える。
そうだ。結婚するということはすなわち、「ご飯にする?お風呂にする?それともあ♥た♥し♥」な日々をリアルに送るということ。
ヤバイ。みはるが学理と膝から崩れ落ちる。
早くから気づいていたが、リュートはロールキャベツだ。
草食に見せかけた肉食であることは間違いない。
お決まりな選択を迫ったところで「あたし(みはる)」一択でファイナルアンサーになる結末しか見えない!
一旦自室へと戻っていくリュートのその後ろ姿を見ながら、「…よし」と、みはるは心を決めた。
―――リュート様。私は、あなたと家族になりたいんです。
あなたの事を、知らなければならない。
『 モウケッシテ、テバナシハシナイ。タイセツナ…… 』
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