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プロローグ
隠れヲタクの最期の願いは世界共通
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―――死ぬ。
これは死んだ。
駅の階段を登る途中。
くらりと貧血を起こし、ふらついたのが運の尽き。
重力に従って、まっすぐ落ちていく瞬間、私―――苑崎みはるの脳裏をよぎったのは、走馬灯でも両親の顔でもなく、一週間前、ハイになってオトナ買いした趣味の品々。
高校を卒業して、入社した会社は新卒者だろうと容赦なくこき使うブラック企業。
一ヶ月ほぼ休みなしなんてこともザラ、年末年始は家に帰った記憶がない。
問題の日は夜中まで続いた残業を終え、終電を逃しタクシーで帰宅。(幸い残業代はきちんとついているためお金には困らない)
普段であればそのまま泥のように眠って朝を迎えるところだが―――昨日の私は、どうかしていたのだ。
きっと、帰宅前に一気飲みしたバカ高い栄養剤が疲れた体を一時的に麻痺させ、いわゆるハイ状態にしていたに違いない。
帰宅と同時にパソコンを開き、ネット通販で買いまくった。
そう―――いわゆる、オタクと言われる類の小説やら漫画やらDVDやらを、だ。
一度買い始めると正直もう止まらなかった。時間がなくこれまで買いに行けなかったあれやこれや、また店頭で買うには恥ずかしかった18禁乙女ゲーなどを怒涛のように買いまくり、気づけばも朝。
ちゅんちゅんという雀の鳴く声にようやくはっと我に帰った時には時既に遅く…。
すべての商品をコンビニ受け取りにしていたため、商品到着時には文字通り山のような荷物を抱えて帰宅する羽目となった。
それも残業明けの夜中にである。
しかも荷物はそれひとつだけではなく、連日のように馬鹿でかいダンボールを受け取りにやってくるくたびれたOLは、さぞかし怪しく写っただろう。
そうして、ヲタクな代物に埋め尽くされた自室。
開封する時間すらなく、こうなったら親族の葬式をでっち上げてでも何とかして有給をねじ込んでやるぞと心に決めて出社した、その夜。
つまり、今である。
電車はもうまじか、つまり相当な距離を既に登ってしまったところでの、背面からの階段落ち。
笑ってしまうくらいの死亡フラグだ。
死ぬかも知れない。
そう思ったとき頭に浮かんだのが例のブツ。
――今ここで死んだらあれはどうなる?
独身一人暮らしOLの部屋に山積みにされたダンボール。
私の死後、部屋を訪れた人間は、確実にその一つ一つを開封して行くだろう。
そして、すべてのダンボールが開けられた時。
―――死んだ。
見られたら本当にもう死ぬ。例え生きてても社会的に死ぬ。
できれば中身を見ずにどこかに売り払ってくれたらと願うしかないが、やはりせっかく買ったのに一度も開けられなかったというのが今更ながら非常に悔しい。
せめて開封したかった。そして気になっていた漫画の続きを最後まで読みたかった。
―――あぁ、惜しいな。
「有給、もっと早くにとればよかった」
そのつぶやきを最後に、私の意識は飛んだ。
これは死んだ。
駅の階段を登る途中。
くらりと貧血を起こし、ふらついたのが運の尽き。
重力に従って、まっすぐ落ちていく瞬間、私―――苑崎みはるの脳裏をよぎったのは、走馬灯でも両親の顔でもなく、一週間前、ハイになってオトナ買いした趣味の品々。
高校を卒業して、入社した会社は新卒者だろうと容赦なくこき使うブラック企業。
一ヶ月ほぼ休みなしなんてこともザラ、年末年始は家に帰った記憶がない。
問題の日は夜中まで続いた残業を終え、終電を逃しタクシーで帰宅。(幸い残業代はきちんとついているためお金には困らない)
普段であればそのまま泥のように眠って朝を迎えるところだが―――昨日の私は、どうかしていたのだ。
きっと、帰宅前に一気飲みしたバカ高い栄養剤が疲れた体を一時的に麻痺させ、いわゆるハイ状態にしていたに違いない。
帰宅と同時にパソコンを開き、ネット通販で買いまくった。
そう―――いわゆる、オタクと言われる類の小説やら漫画やらDVDやらを、だ。
一度買い始めると正直もう止まらなかった。時間がなくこれまで買いに行けなかったあれやこれや、また店頭で買うには恥ずかしかった18禁乙女ゲーなどを怒涛のように買いまくり、気づけばも朝。
ちゅんちゅんという雀の鳴く声にようやくはっと我に帰った時には時既に遅く…。
すべての商品をコンビニ受け取りにしていたため、商品到着時には文字通り山のような荷物を抱えて帰宅する羽目となった。
それも残業明けの夜中にである。
しかも荷物はそれひとつだけではなく、連日のように馬鹿でかいダンボールを受け取りにやってくるくたびれたOLは、さぞかし怪しく写っただろう。
そうして、ヲタクな代物に埋め尽くされた自室。
開封する時間すらなく、こうなったら親族の葬式をでっち上げてでも何とかして有給をねじ込んでやるぞと心に決めて出社した、その夜。
つまり、今である。
電車はもうまじか、つまり相当な距離を既に登ってしまったところでの、背面からの階段落ち。
笑ってしまうくらいの死亡フラグだ。
死ぬかも知れない。
そう思ったとき頭に浮かんだのが例のブツ。
――今ここで死んだらあれはどうなる?
独身一人暮らしOLの部屋に山積みにされたダンボール。
私の死後、部屋を訪れた人間は、確実にその一つ一つを開封して行くだろう。
そして、すべてのダンボールが開けられた時。
―――死んだ。
見られたら本当にもう死ぬ。例え生きてても社会的に死ぬ。
できれば中身を見ずにどこかに売り払ってくれたらと願うしかないが、やはりせっかく買ったのに一度も開けられなかったというのが今更ながら非常に悔しい。
せめて開封したかった。そして気になっていた漫画の続きを最後まで読みたかった。
―――あぁ、惜しいな。
「有給、もっと早くにとればよかった」
そのつぶやきを最後に、私の意識は飛んだ。
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