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衝撃の真実
「私を連れて逃げてください」
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「リュート………様?」
「ミハル!!」
目覚めればそこは見慣れた天井。
だが、それだけではなくすぐ目の前にはどこか窶れたリュートの顔が。
一日でこのやつれ具合と言うのは少々おかしい。
「あれ………?もしかして私………」
どれくらいの間、眠ってたんですかと。
問いかけるまでもなく答えはすぐにもたらされた。
「今日で三日目だ、嬢ちゃん。
ちょとばかし寝坊が過ぎるんじゃねぇか?」
「セインさん………!!」
リュートに隠れて見えなかったが、どうやらセインも来てくれていたようだ。
寝かせられていた寝台からリュートに支えられて上体を起こせば、身体中がギシギシと軋み思うように動かない。
「セインさんの言う通り、ちょっと寝すぎ………ですね」
苦笑しながらいえば、ぐっとリュートに抱き寄せられた。
「ミハルが目覚めてくれれば、それで十分だ」
「リュート様………………」
「心配した………」
肩を抱く腕に力が入り、もう二度と離すまいとしているように強く抱き締められる。
「ミハル。何か食べたいものはないか?飲み物でもなんでも」
そう言われれば、確かに少し喉が渇いている。
「あの………それではレモーナの果実入りのお水を………」
「わかった。レモーナだな」
あちらの国で言うレモンによく似た柑橘系の果実は、飲み水に絞って提供されることが多い。
レモンよりも遥かに酸味の強いレモーナ入りの水はミハルには刺激が強く、普段あまり好んで口にすることはなかった。
その為今すぐ用意すると立ち上がったリュートは、部屋の隅に黙って腰かけていたセインに視線をむけ、「申し訳ないが………」と、穏便な態度で退出を促す。
夫のいない場で、新婚の妻が別の男と二人きりなど、あまり外聞のいい話ではない。
その事を十分理解しているセインは特に不満を口にするでもなく。
「じゃあまた来るわ。後でな、嬢ちゃん」
そういって片手を上げ、退出を示したのだが。
「あの…………!!ちょっと待ってください!!」
「……ん?」
「ミハル………?」
手を伸ばし、今にも部屋から退室しかけたセインを引き留めたミハルに、流石のリュートも困惑の色が隠せない。
「ミハル?セイン殿にはまた後で来ていただこう。今は君の体を休めるのが先だ」
式で起きた事件についてを聞きたがっているのだろうと予測したリュートかそう宥めるが、ミハルはそれに首をふって譲らない。
「どうしても今。セインさんに話したいことがあるんです」
「俺に……?」
「ええ」
訝しげな態度ながら、ミハルのその言葉になにか引っ掛かるものがあったのか、その場に立ち止まるセイン。
「ミハル。それなら私も一緒に……」
二人きりには出来ないと告げるリュートだったが、ミハルの意思は固かった。
「すみませんリュート様。
これは、どうしてもセインさんだけに聞かせなきゃならない話なんです」
「ミハル…………」
一体何の話があるのか。
問い詰めたいのは山々だったが、真剣なミハルの瞳に根負けし、リュートが一つためいきを吐くと、条件付きで二人きりの会話を許した。
「五分だ。扉の前に誰か人を立てておくから、必ず五分でこの部屋を出てくれ」
それがリュートにとっての最大限の譲歩であることを知るミハルは、「ありがとうございます」と頭を下げ、その提案を飲んだ。
そして後ろ髪引かれながら部屋を出ていったリュートの後ろ姿が窓から見えなくなる頃。
「嬢ちゃん、俺に話ってのはまさか、アディの事か」
察しよくその名を口にしたセインに、みはるは笑う。
その笑みは、セインにありし日の記憶を再びよみがえらせ、あり得ない一つの可能性が頭をよぎる。
自分でも馬鹿な事をしていると。
そう思いながらもセインは、その言葉を口にすることを止めれなかった。
「嬢ちゃん………。お前まさか……。アディ………なのか?」
そんなはずはない。
そんなことはわかっている。
だが、すぐに帰ってくるはずだった否定の言葉はいつになっても返らず。
代わりにみはるが口にしたのは、思いもかけない一言。
「セイン。
………どうか、俺と共に逃げてくれ」
「ミハル!!」
目覚めればそこは見慣れた天井。
だが、それだけではなくすぐ目の前にはどこか窶れたリュートの顔が。
一日でこのやつれ具合と言うのは少々おかしい。
「あれ………?もしかして私………」
どれくらいの間、眠ってたんですかと。
問いかけるまでもなく答えはすぐにもたらされた。
「今日で三日目だ、嬢ちゃん。
ちょとばかし寝坊が過ぎるんじゃねぇか?」
「セインさん………!!」
リュートに隠れて見えなかったが、どうやらセインも来てくれていたようだ。
寝かせられていた寝台からリュートに支えられて上体を起こせば、身体中がギシギシと軋み思うように動かない。
「セインさんの言う通り、ちょっと寝すぎ………ですね」
苦笑しながらいえば、ぐっとリュートに抱き寄せられた。
「ミハルが目覚めてくれれば、それで十分だ」
「リュート様………………」
「心配した………」
肩を抱く腕に力が入り、もう二度と離すまいとしているように強く抱き締められる。
「ミハル。何か食べたいものはないか?飲み物でもなんでも」
そう言われれば、確かに少し喉が渇いている。
「あの………それではレモーナの果実入りのお水を………」
「わかった。レモーナだな」
あちらの国で言うレモンによく似た柑橘系の果実は、飲み水に絞って提供されることが多い。
レモンよりも遥かに酸味の強いレモーナ入りの水はミハルには刺激が強く、普段あまり好んで口にすることはなかった。
その為今すぐ用意すると立ち上がったリュートは、部屋の隅に黙って腰かけていたセインに視線をむけ、「申し訳ないが………」と、穏便な態度で退出を促す。
夫のいない場で、新婚の妻が別の男と二人きりなど、あまり外聞のいい話ではない。
その事を十分理解しているセインは特に不満を口にするでもなく。
「じゃあまた来るわ。後でな、嬢ちゃん」
そういって片手を上げ、退出を示したのだが。
「あの…………!!ちょっと待ってください!!」
「……ん?」
「ミハル………?」
手を伸ばし、今にも部屋から退室しかけたセインを引き留めたミハルに、流石のリュートも困惑の色が隠せない。
「ミハル?セイン殿にはまた後で来ていただこう。今は君の体を休めるのが先だ」
式で起きた事件についてを聞きたがっているのだろうと予測したリュートかそう宥めるが、ミハルはそれに首をふって譲らない。
「どうしても今。セインさんに話したいことがあるんです」
「俺に……?」
「ええ」
訝しげな態度ながら、ミハルのその言葉になにか引っ掛かるものがあったのか、その場に立ち止まるセイン。
「ミハル。それなら私も一緒に……」
二人きりには出来ないと告げるリュートだったが、ミハルの意思は固かった。
「すみませんリュート様。
これは、どうしてもセインさんだけに聞かせなきゃならない話なんです」
「ミハル…………」
一体何の話があるのか。
問い詰めたいのは山々だったが、真剣なミハルの瞳に根負けし、リュートが一つためいきを吐くと、条件付きで二人きりの会話を許した。
「五分だ。扉の前に誰か人を立てておくから、必ず五分でこの部屋を出てくれ」
それがリュートにとっての最大限の譲歩であることを知るミハルは、「ありがとうございます」と頭を下げ、その提案を飲んだ。
そして後ろ髪引かれながら部屋を出ていったリュートの後ろ姿が窓から見えなくなる頃。
「嬢ちゃん、俺に話ってのはまさか、アディの事か」
察しよくその名を口にしたセインに、みはるは笑う。
その笑みは、セインにありし日の記憶を再びよみがえらせ、あり得ない一つの可能性が頭をよぎる。
自分でも馬鹿な事をしていると。
そう思いながらもセインは、その言葉を口にすることを止めれなかった。
「嬢ちゃん………。お前まさか……。アディ………なのか?」
そんなはずはない。
そんなことはわかっている。
だが、すぐに帰ってくるはずだった否定の言葉はいつになっても返らず。
代わりにみはるが口にしたのは、思いもかけない一言。
「セイン。
………どうか、俺と共に逃げてくれ」
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