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兄弟
雪の降る夜 ②
しおりを挟む「トイレか?」
「……」
何も言わないので目を閉じると、アキが覆いかぶさってくる。
「……寝ろよ」
「寝るよ」
唇が重なる。触れるようなキス。嫌ではないが眠いので押しのけようとするが、手首を掴まれ、布団に押し付けられる。
「……眠いんだけど」
「もうちょっと付き合ってよ」
本気を出せば振り払えるとは思うが、小犬が舐めてくるようなものなので力を抜いた。
「あんまりやると、俺が起きれなくなるぞ」
「いいよ。僕が灯油買ってくるし」
あたたかい唇が首筋に押し当てられる。
「ぅ……」
手首を掴んでいた手が離れ、骨盤辺りを撫でる。
「挿れない、よな?」
「そんなに眠い? じゃあ、モミジが何回かイったら終わってあげる」
「一回で良いじゃん」
「うるさいなぁ。好きにさせてよ」
好きにって、俺の身体なんだが。苦情を言う前に口を塞がれた。
なんとなくムカつくのでアキの舌が入らないようにしていたら、やわやわと股間を揉まれる。
「んっ」
「口開けて」
こしょこしょと内ももを引っ掻かれ、ぴくんと腰が跳ねた。
「ふっ……ぅ」
「モミジ?」
「……ぁ」
「いじわるするなら、僕もするよ?」
「分かっ、ア! ちょ……口、ああ」
アキの手がズボンの中に入ってくる。鼠径部を五指で撫でるように掻かれ、より感じてしまう。寝るだけなので下着は履いていない。
「ん、あ。口、開けただろ、ひぅ」
「遅かったね」
子ども体温の手で竿を掴まれる。アキに手が握っていると思うと、一気に熱くなった。その熱はアキにも伝わる。
「うっ、はぁ、ぁ。離して……」
「やだ」
軽く揉まれ、ゾクゾクと背中に快楽が走る。これが眠気を押しのける。
ツゥっと爪先で裏筋をなぞられ、ビクッと片足が上がった。
起き上がろうとしたが、両手で脇腹を思いっきりくすぐられる。
「わひゃははははははははっ! やめ、そこ、はははははははは!」
「じっとしててよ」
「やだやだやだやだ! あはっ、だめ無理いいあはははっははは」
散々笑い転がされぐったりしていると、容赦なく手を後ろで縛られる。
「ああ……ゲホッ! ……結局こうなるのか」
タオルでがっちり。試しに腕を引き抜こうとしてみるが、その度にくすぐり攻撃を受けた。
「あははははは! やめてやめて!」
「なんでじっとできないかなー? モミジは」
「こんな、あはははははははは! 無理、やめ、ひゃあああああ!」
布団の上に倒れ込む。びくびく震える身体を上向かせ、再びズボンの中に手を入れた。
「はあ、疲れた……」
「モミジが無駄に抵抗するから。大の字で寝転んでいればいいのに」
言い返す気力もなく、服もめくり上げられる。
「よく見えないから、電気つけていい?」
「急に明かりつけたら目が死ぬぞ。我慢しなさい」
「ぶう」
胸を舐められ、片手はやわやわと玉を刺激する。俺は胸では感じないのでもぞもぞするだけなのだが、アキが舐めるの好きみたいだしな。
「っぁ。なあ、もうちょっと、やさしくくすぐってくれないか?」
「痛かった? 引っ掻いちゃった?」
「いや、お前はいつも優しいけど、そっちの方が多分、き、気持ち良いと思う……」
なんかすげー恥ずかしくなって顔を逸らす。
ぽかんとしていたアキがにまっと笑う。そんな風に笑っても可愛いので迫力はない。
「分かったよ。今日はそういう気分なんだね。優しくする」
蜜で濡れた手を出し、そのまま脇腹をくすぐってきた。
力の入っていない、優しい手つき。それでもゾクゾクする。
「んふっ……。ん……はあ、あ、ひううっ」
「こういうのがいいの?」
「う、うん」
「気持ちいい?」
「はあ、あっ、ん、きもち、いい……あ、うあ」
「へー? ……僕はとっととイかせたいけど……、びくびくしてるモミジも可愛いね」
こしょこしょとくすぐる手は、胸まで上がってくる。
「あっ、あ、はあ、あ! そこ、あ、あっ、ああ」
「手、痛くない?」
「平気、う、んん。あ、はあ、あっあ」
「うーん。これじゃ、可愛い顔が見えないよ」
ぐっと顔が近づいてくる。俺もほぼ見えない。でも、だからこそ余計に、
「きもち、いい……。んっ、あ」
「そう? まあ、モミジの可愛い声が聞こえるから、いいかな」
アキの指がたまに乳首に触れる。感じないが、不意に当たるとぴくっと揺れてしまう。
「肌すべすべだね」
「アキだって、そうじゃ、あ、んく……ん、うっ、うぁ」
「えーっと、これは鎖骨かな?」
「ああ、そこ、弱いかも。あ、ああ。じんじん、する……」
マッサージするように鎖骨を撫でられる。
快感とは違った、マッサージのような気持ち良さになった。
「あっあ、ぅあ……。ごめん。手が」
下敷きにしている腕が痛くなってきた。アキはすぐに中断し、タオルを解いてくれる。
「……ありがと」
「いいよ。じゃ、じっとしててよ?」
「え? いやもう! 寝よう。眠い!」
「モミジもイかないと眠れないでしょ?」
「おい。アキ」
後ろから抱きつかれ、お腹とズボンの中を触られる。
「もお……。我が儘だな、お前は。ンッ」
こいつの我が儘に付き合っているとなんでも俺がやる羽目になるから、ジャンケンをするようになった。正直、アキがジャンケンクソ雑魚で助かっている。
「掃除、面倒なのに」
「僕がきれいにしといてあげるって」
「アキはそれでいいのか?」
「毎回同じこと言わせないで」
ぐりっと先端を親指で抉られ、一段と高い声が出る。
「……モミジの鳴き声、かーわいい」
「あっ、ばか! そんな、ああ、ぐりぐりしな……あ、ああ、やだっ。あ、あ」
がたがたがたと風が窓を揺らす。雪が降るほどに冷え切っているのに、ふたりには汗がにじんでいる。
アキの指が、モミジの良いところに触れる。
「あっ! あ、ソコ……」
「ここだよね。モミジの好きなところ」
ビクッビクッと肩が跳ね、力が抜けてアキにもたれかかる。
「あ、あ、ああ。そこ。んっ、そ、そこ……あ。もっと」
「ふふっ」
「ああ! ああ、イく……。イきそ……」
ぼうっと頭が重くなってきたタイミングで、ふと、指の動きが止まった。
「……ッ!」
イく寸前だったモミジはガクンと身体を揺らす。薄目を開け振り向くと、アキの口が吊り上がっていた。
「アキ? どうした?」
「モミジさあ、眠いんだよね? この辺で終わっとこっか?」
「あっ」
するっと抜かれそうになるアキの手を掴んで止める。
「お前……。最後までやれよ」
「んー? 眠いんでしょ?」
ああ。面倒臭いアキだ。普段はアホが前面に出ているが、たまにこの一面が顔を出す。
手を払いのけられる。
「アキ。頼むって」
冷や汗が滲む。この状況で放り出されるのはキツイ。
「んー? じゃあ、モミジからキスしてよ」
「……」
「何その目」
弱い脇腹をくすぐられる。
「やだやだやだ! おま、あはははははひゃはは!」
「はーやーくー」
「あああっ、あああやだあああ」
ここでキスしても、次々要求を出されて遊ばれてしまう。酷いときは要求全部飲んだのに、イかせてもらえなかったこともある! こいつの言うことを聞いたら駄目なのだ。
でも――
「いやだって……! そこやだってはははははははは! ひゃめて! ひひははははははは」
「笑ってるモミジがかわいい~」
「あああ、うん、やだあああ。もう、あ、ちょっと……あああ」
疲れてきた。アキの手を掴むが引き剥がす力が出ない。
抵抗できないと知るや、布団に突き飛ばされる。
「あっ」
「へへへ~。おいしそう~」
覆いかぶさってくる。顎を掴まれ、キスされる。
「ふっ……」
弱々しくアキの背中を叩くが、きゅっと股間を掴まれると身体が震えた。
「んあ、あ」
「気持ちいい? あ、イけなくて苦しいのか。顔見えないから分かんないや」
分かってるくせに。こっちはとうに目が慣れて、アキのにやけた笑みが良く見える。
「アキ……」
「なに?」
「ッア! あ、あ。も……ぅ」
股間への刺激に嬌声が上がる。やめさせないといけないのに。でなければ朝までずっと、寸止め状態で遊ばれる。
「アキ。意地悪しないで……。さっきはとっととイかせたいって、言ってたじゃん。イかせ、っあ、アア!」
「えー? モミジのイきたそうにしている顔、好きなんだもん」
「あっぁ、あ、やだ」
「もっと見ていたい」
やっぱ見えてるんじゃないか! と怒鳴る気力もない。ぬるま湯のような快楽をずっと与えられ、頭がぼやけていく。
「あ、そんな……。あ、アキ、アキ」
(かーわいい)
アキが舌なめずりをする。こうなってしまえばもう、モミジは操り人形だ。
僕の言葉によく従ってくれる。
「触りにくいから、足開いて」
「あ、ああ……。うああ」
「そう。いい子」
震えながら、太ももが左右に開く。
ポッケから親指サイズのカプセルを取り出すと、半開きの口に押し込む。
「んあ……っ」
「モミジの好きなローターだよ。しっかり舐めてね」
初心者用のものだが、モミジはこのピンクローターを好む。まあ、あまりどぎついものを見せて引かれるのもやだし。初心者用のものまでしか使わないけど。
「あ、あ……。やら……」
「やだ、じゃないの。濡らさないと入らないでしょ」
これだけ暗いと、ローションを掘り当てる自信ないし。
反り立ってきた先端を摘むと、びくっと可愛く震え、言うとおりにローターに舌を這わせる。
「ん……」
「可愛い」
可愛い光景なのだが、このときローターに嫉妬してしまう。顎を掴んでいる手に力が入りそうになる。
とろとろと蜜が零れ、アキの手を濡らす。
「あらら。期待しちゃったの?」
「あ、うあ。あ」
「期待通り、挿れてあげるね」
歯に気を付けて口内からローターを回収する。
「膝立てて。M字にして? そうそう」
自分が何をこれからされるのか分かっていない、ボヤッとした目がアキの股間を刺激する。
ズボンを脱がし、恥ずかしいところが丸見えになる。
「あ、ああ……」
「いい眺めだね~」
モミジの以外は、見たいとも思わないけど。
先走りを指につけ、穴に指を当てる。
「っぐ」
「痛かったら手を上げてくださいね~。やめないけど」
「アキ……」
ぐちゅ、くちゅ。
水音と苦しそうな声が響く。すぐ気持ち良くしてあげたいけど、解さないと傷つけることになるし。
「ひあっ」
モミジは高い声を出す。指がイイとこに触れたようだ。
「もう一回鳴いて~」
ぐっと押すと、悲鳴に近い声が出る。
「っ。アキ……。ばか……。ばか」
「ごめんごめん。モミジってほら、虐めたくなるし」
ゆぅっくりと指を引き抜く。
「あああ! そんっ、ああ」
「好きでしょ? 抜き差しされるの」
「ああっ……。違っ」
「素直になれないモミジちゃんにローターをプレゼント~」
休憩の暇も与えず、ぬちっとローターを押し込む。
穴が卑猥な玩具を飲み込む光景にぞわぞわする。
「は、あ。はあ。アキ。休憩、させて……」
「やだ。暇なら枕でも抱いてなよ」
自分の枕をぽふっと投げる。
すがりつくようにぎゅっとモミジが枕を抱き締める。あ、駄目だ。なんでこんなことしたんだろう。枕に嫉妬するって分かってたのに。
もちろんモミジに八つ当たりする。僕は悪くない。可愛いことをするモミジが悪いの。
ぐりっと奥までローターを差し込むと、ビクンと跳ねた。
「アキ。やだ……! なんか、あ、こわい」
「大丈夫大丈夫」
中でぐちぐちと指を動かす。
「アッ、あ。ああ! 動かさな……あ、ああ。いや、いやあ」
「ちょっと待ってね。イイとこにちゃんと当たるようにしないと」
「! ひうっ」
「あった」
モミジの足が跳ね上がり頭吹き飛ばされるところだったけど。
危ない。足の間に身体をしっかりねじ込んでおく。
「あれ? スイッチどこだっけ?」
暗いと色々面倒だな。でもいいんだ。暗くしておいた方がモミジは大人しいし。明るいと恥ずかしいのか、そりゃもう暴れるからね。
カチッ。
「あ」
「ーーーッ! ぎゃあああああっ!」
手探りで探していたらボタンを押してしまったようである。しかもマックスのボタンだったのか、モミジから悲鳴が上がった。
「やだあああ! 震えて……止めてええええ!」
「ああ、もう。かわいそうに。いきなりマックスで刺激されちゃって」
他人事のように呟き、暴れるモミジを押さえつける。
「はい。落ち着いて」
「あああああ! 落ち着けるかっ! あああ! 止め、アキ! ああああアアッ」
「うわ。苦しそう」
ここまで振動が強いと、モミジはイけなくなるから。
「やだやだあ!」
首を左右に振る。気持ち良くなさそうなので、弱めてあげた。もうちょっと泣き叫ぶ様を見ていたかったけど。あまりやりすぎると翌朝、窓から突き落とされちゃう。
「はあっ……あっ、はあ。あ、ああ……。とめ、て」
微弱な振動が続いている。
弱とはいえ自身の敏感なところに押し当てられているのだ。腰が跳ねる。
「ああ、取って! 止めて! ああ、あ、当たってる」
ヴヴヴヴヴヴと震える玩具に、ぎゅううっと枕を抱き締めて耐える。
「あ、きもち、いい。んっ。あ。震えて……ぁあ」
「そう? よかった」
アキは笑ってるだけで触ってこない。こんな弱い刺激ではイくことができないって、分かっているのに。
「あ、アキ。イかせて……。もう、辛い、から」
「自分で抜けばよくない?」
「なんでアキがいるのに、ぁ、自分で触らないと駄目なの……」
まあ、自分でヤろうとしても阻止するけど。
カチカチと操作し、振動を強める。
「っあ! ああ。もっと、アキ! もっと!」
「えー? どうしよっかな?」
「ただいまー」
玄関の戸が開く。
「ありゃ。父さん帰ってきちゃったね」
のんきに言いながら、カチッとまた一段強める。
「ちょ! あ、今は、アッ! とめ」
「あんまり声出すと、聞かれちゃうよ?」
親に聞かれるとか死にたくなる。
手で口を塞ぐが、ナカでローターが暴れ続けた。
強くなった振動がイイところを叩き、モミジはぴくんぴくんと震える。
「んん、んンッ」
「やらしい動きしちゃって」
密でぬめる先端をきゅっと握られる。
「っ、や!」
「あはは。可愛い」
「あ、そこ。あ、やっやだ! やだ」
指先で先端を摘んでは引っ張られ、足でアキを蹴ろうとする。
「危ないって」
足首を掴まれ、ぐいっと持ち上げられる。恥ずかしいところがよく見えるような体勢にされ、羞恥から金魚のように口を開け閉めする。
「ローターを飲み込んでヒクついてるのがよく見えるよ」
「やめて。恥ずかし……あ、ああ。そんな、ああ」
とぷとぷと蜜が溢れる。
「あ、アキ。ローターを、あ、止めて。声、我慢できなっ」
「なんか言ったー?」
モミジが好きな先端を弄る。ぬるぬるになったそれは摩擦無く滑り、触っていて楽しい。
「ああ! そん、とこっ。ンッ! ん、んん」
イかせないようにするのも難しい。もっとモミジの身体で経験を積む必要がある。
「アキ? モミジー? 寝たのか?」
部屋のすぐ前で声がする。
ぎょっとしたモミジがなおさら強く口を塞ぐ。
ヴヴヴヴヴヴ……ッ!
「んぅ! んん!」
振動に加え、アキの指が股間を触っているせいで、意識とは裏腹にどうしても声が出てしまう。
(聞かれるって! アキ!)
涙が滲む目で訴えるも、アキは知らん顔だ。
それどころか全体的にぬめったソレをくすぐってくる。
「っはー、あ。あ、ん、んく、んく。や、ん、っく、ああ、あ」
壊れたように身体が跳ねてしまう。乳首もピンと立ち、身体はイく寸前だった。
「アキ? モミジ? 開けるぞ?」
すらっと扉が開く。差し込む廊下の明かりに、モミジはぎゅっと目を閉じた。
「どうしたの?」
部屋から出てきたのは……髪留めをしていないので一瞬迷ってしまったが、アキだった。
眠たそうに目を擦るアキに、父親は呆れたように笑う。
「またモミジの部屋で寝ているのか?」
「いいでしょ? 父さんはまぜてあげなーい」
「なにぃ? 昔は三人で寝てたってのに。こいつぅ」
「や~めてよ」
アキの髪をかき混ぜるように撫で、「風呂入ってくる」と階段を下りて行く。
「……」
アキは笑顔のまま部屋に戻り、扉をしっかり閉めた。
「ふふっ。スリル満点だったね」
布団の上で精を放ち、ぴくぴくと痙攣しているモミジ。
可愛く震えながら、ギロッと睨んでくる。
アキは笑みを消す。
「なに睨んでるの? 助けてあげたのに。そんな態度取るなら、もっと虐めちゃうよ?」
親指がスイッチを押す。
「えっ? や、やだ! もうや……ッああ! や、あああああ! そんな! あああ」
イった直後の身体に刺さる振動。アキは、敷布団をぎゅっと握って耐える背中に跨った。
「あああ! やめて! んぅ、アキ。あ、ああ。お願い……ああはあああっ」
ぐいっと髪を掴むと、首筋にかぷっと歯を当てる。
「あ! やだ。噛まないで……ッツ、~~~っあああああああ、ああ」
ビクンビクンと大きく跳ね、二度目の絶頂を迎える。髪を離すと、ぱたっと倒れこんだ。
「…………ぁ、はあ、はあ。……ん」
「はあ。イかせないで遊ぶつもりだったのに。父さんったら。空気読んで帰ってきてよ」
無茶を言いながらローターをオフにする。機械音が消え、聞こえるのは風と荒い息遣いだけとなった。
「はあ、ん、なあ。あ、重い……よ」
「あ、ごめん」
背中から降りて、タオルでモミジの身体を拭いていく。
「はあ。はあ……アキ。あっ、やさしく、拭いてよ……。んっ」
「注文が多いなぁ」
腹や太ももについた蜜を拭き終わる頃には、小さな寝息が聞こえてきた。
「無防備だな~。なにこの虐めたくなる寝顔」
指で頬をつつく。
「アキ……」
寝言、かな? 自分の夢を見ていると思うと、ドキッとしてしまった。
「僕も寝よう」
布団で横になると思い出す。その前にローターを抜いてあげないと。
「あわわ。寝るとこだった」
そこでふと悪戯心が芽生えた。眠っている状態でローターを動かすと、どんな反応をするんだろう。
(寝ながら喘いでいたらエロイかも……)
一度だけ扉を開けて廊下を確認すると、アキは無情にもスイッチを入れた。
雲の切れ間から太陽が覗く。
風も止んでいい天気だ。
頭にたんこぶを生やしたアキと目元が赤いモミジは、雪かきの最中だった。
このたんこぶは調子に乗っていたら、モミジからプレゼントされたもの。記憶が飛ぶほど痛かった。罰として、雪かきをさせられている。
「僕への罰なのに、モミジまで雪かきしてると罰にならなくない?」
「雪かきは早く終わらすに限るだろ。家潰れっちまうわ」
夜の間にまた強く降ったのか、玄関が開かなくて父親と共に二階の窓から外に出た。
父親も近所の人と挨拶しながらせっせと屋根の雪を下ろしている。危ないので俺たちは玄関周りの雪をどかす。
「はーあ。寝ながらアンアン鳴いてるモミジがエロかったなー」
呟くと雪かき用のシャベルで尻を叩かれた。
「痛いよぉ! 僕は雪じゃないって」
「埋めてやろうかこの野郎」
尻についた雪を払い、モミジに抱きつく。
「おっと」
「へへへ。どうする? 今日も一緒に寝る?」
耳元で囁くと、モミジの耳が赤く染まる。
だが、突き飛ばされることはなかった。
「……まあ、いいけど」
「あ。ローター挿れたまま、雪かきしてみる? あったまるかもよ?」
「馬鹿言うな。働け」
ぽいっと放り投げられた。
【おしまい】
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