BL短編

水無月

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兄弟

浮気相手の子

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 ※兄弟のいちゃいちゃです。お兄ちゃんが子どもっぽいです。弟が甘やかしたせいです。最初は兄優勢ですがすぐに逆転します。











「最近次々と値上げしてるじゃんかー」
「……? そう、だね? 値下げしてるものもあるけど」
「一回三万が平均になってきてんだけど、やっぱ皆、金ないのかな?」
「んーごめん。何の話?」

 ソファーに座らず、床でクッションを抱いているラミに、スマホを見せる。
 受け取ったラミは首を傾げた。

「なにこれ?」
「一回五万で買ってくれる人募集ページ」
「は?」

 全く未知の世界のようで、ラミはぽかんとしている。

「何か買うの?」
「いや。手っ取り早く金が欲しいから。身体売ろうかと」

 ラミにぶん殴られた。



 ラミエラ。浮気相手の子という外から見れば最悪の関係ながら、俺たちは兄弟のように接してきた。嫌う理由がないしなー……。美人だし、優しいし。美人だし。
 浮気相手が異国の人で、ブロンドヘアにグレーの瞳。人形のような白い肌。くるくるのくせっ毛を伸ばしていて、本当にお人形さんのよう。
 まあ、しっかりオスなので、俺はいまひっくり返っているわけだが。

「殴らないで! 火花散った! 視界に」
「梅が変なこと言うから。ごめん」

 三回転して倒れた俺の腕を掴んでソファーに座らせてくれる。

「大丈夫? 身体売るなんて……。俺の幻聴だよね?」

 隣に座り、熱を計ってくる。熱にうなされて「身体売る」とか言ったわけじゃないです。

「だって今月ピンチだもん。財布が寂しい」
「は? お小遣いは?」

 浮気相手の子を引き取って育てられるだけの余裕が我が家にはある。高校生にもなってお小遣いを潤沢にもらえるほど。母さんと義母さんも、月に一度会いに来ては小遣いをくれる。すごく優しい女性だ。こんなに大きくなっても頭を撫でてくれる。帰り際、これでもかと親父のケツを蹴って帰るが。

「全部使っちゃって」
「俺の小遣い分けてあげるからさ……。そういうの、やめよ? ね?」

 ぺったりと抱きついてくる。肌がすべすべでめちゃんこ気持ちいい。
 一番気持ちの良いラミの耳たぶをふにふにと触る。

「そう? 悪いね。じゃ、お返しに気持ちいいことしてあげるよ」
「……」

 肩に手を置く。ラミを押し倒そうとしたが突き飛ばされた。

「ふぐっ」

 逆にラミが上に乗っかってくる。
 背中から落ちたブロンドヘアがカーテンのように、梅の顔の横に垂れ下がる。

「気持ちいいことって、こういうの?」
「え、ちょ」

 お、俺がリードするはずだったのに、ちゅっと頬にキスされた。

「なんで俺が下なんだよ」
「梅の方が体重重いじゃん」

 そんな理由⁉

「やーだ。やーだー。俺が上じゃなきゃやーだー」
「子どもみたい」

 駄々をこねると苦笑されたが上から退いてくれた。自由になった梅はラミに抱きつく。

「ふふん。俺が上ねー」
「はいはい」

 細い身体を目一杯抱きしめる。いい香りがする。髪質に合わないからって、一人だけ違うシャンプーを使ってるからかな。
 ラミの首筋に鼻先を押しつける。

「ちょっと。くすぐったい」
「あー……いいじゃん」

 すぅっと背中をなぞると、ビクッとラミの背筋が伸びる。

「んん。今の、俺もやって良い?」
「え? なんで?」
「梅の可愛い声も聞きたい」
「えー? 俺が虐めたいのに!」
「あのー。きみたち?」

 梅とラミは一人用のソファーに目を向ける。
 コーヒー片手に新聞を読んでいた親父が、激烈気まずそうに咳払いしている。

「どうした?」
「そういうのは、部屋でふたりでしなさい」

 ……親父がいたことを忘れてた。
 梅は手のひらを上に向けて出す。

「小遣いくれたら部屋行ってやるよ」
「こんな脅しをされる日が来るとは……」







 ついでに「身体売るとかやめようね」と、スマホを没収された。優しい口調ながら有無を言わせず取り上げられる。

「駄目か。新たなことにチャレンジしようと思ったのに」
「こんなに褒められない『新たなチャレンジ』があったなんて」

 ラミは自分の部屋かのようにベッドに腰掛け、俺に手招きする。梅はすっ飛んでいく。

「ぎゅっ」

 ラミの可愛い悲鳴と共に、ふたりしてベッドに倒れ込んだ。
 そのまま唇を押し当てる。

「んっ……」

 吸盤のようにラミに吸いつき、満足して顔を離す。

「美味しい」
「はい。交代」

 ラミが俺を掴んだまま転がるので、きれいに上下が反転する。

「俺が、上が良いって言ったのに!」
「はいはい。黙ろうね」
「~~~っ」

 顔に似合わず男前な方法で口を塞がれる。
 気持ちいいと浸っていると、舌で唇をノックされた。
 ラミの胸板を押し返す。

「おや? やらないの?」
「俺が! 上だってば」
「やけに上にこだわるね。何かあった?」

 あぐらをかいた梅は頬を膨らまして分かりやすく拗ねる。

「だって!」
「うん」
「……ラミが可愛いから。俺が触りたい。今日は俺」

 にやけ顔で目を逸らしながら言うと、ラミから表情が消える。
 頭部の髪を掴まれたかと思うと、ぐっとラミにキスされた。

「っ」
「はい。今のは梅が悪い」

 ぼふんっと押し倒される。

「悪いって何が⁉ 顔?」
「顔? ……梅は普通くらいじゃない?」

 ハーフ美人に「普通」の評価をいただきました。

「それってかなりイケメンってこと⁉」
「冗談だよ。梅は可愛いよ」
「……」

 イケメンの方が良かった。
 喜びの表情から一転。下唇を噛んで微妙な顔をする梅に小さく吹き出し、手首を手錠で固定する。

「えっ⁉」

 なんで俺の部屋に? 手錠が? 置いた覚えも買った記憶もない。
 目を白黒させる梅の耳に、唇を近づける。

「梅って誘ってくるくせに暴れるから、こっそり手錠を置いといたの」
「勝手に俺の部屋に……何してくれてんの? 親父に言いつけてやる!」
「その手錠。父さんにもらったんだけどね」
「……」

 味方がいなかった。
 万歳の姿勢で身体を捻ってみるも、手錠は外れそうにない。

「え? これじゃあ俺、逃げられないじゃん」
「そうだね」

 冷や汗が流れる。

「……取って?」
「俺の気が済んだら取るよ」

 ラミは上機嫌で俺の服を捲り上げる。ストールはするっと抜き取られた。

「家の中なのにおしゃれだね、梅は」

 渋い親父と美人ハーフに挟まれてっからね。

「せめて服だけでも! 家でもおしゃれにしとかないと! 家族だと思われなくなっちゃう!」

 じたばたと自由な足を動かす。腰の辺りに座っているラミの身体が揺れただけで退かすことは叶わなかった。

「……そういう心配は、俺がするものじゃないの?」

 あきれ顔で、首筋に舌を這わせる。

「んう」
「舐められるのは、好きじゃない?」
「え? ラミは大好き」
「……」

 なんで煽ってくるかなー?
 胸に手を置き、こしょこしょと優しく爪で引っ掻く。
 梅の身体はビクンと大きくのけ反った。

「ぶはっ! へはひゃははははは」
「可愛い笑顔」
「へはひひひひひひひひ」
「……」

 可愛いけど、色気が無いな。
 口を塞いでおこう。

「んぐぐぐぐぐぐぐっ」

 純日本人を思わせる瞳に涙が滲む。
 顔を横に動かそうとするが、がっちり顎を掴まれる。

「んん! んうっ! っんう」

 ラミの指はくにくにと乳首を虐め、その度にビクッビクッと大きな反応を見せる。

「んっ、いったん、やめ! ンッ!」
「ここ弱いよね」

 指の腹でふにっと押され、ガチャンとオモチャの手錠が音を立てた。

「ふわああぁ……」

 ようやく口を解放された。
 二人の間に、一瞬銀の糸が伸びる。
 ラミはぺろりと上唇を舐めた。

「どう? 自由を奪われた状態でヤられるの」
「……気持ち良いけど、ラミじゃなかったらと思うと、その」
「怖い? じゃあ、もう変なサイトに行かないようにね?」
「……」

 ぶすっとしているが梅は基本素直なので大丈夫だろう。

「分かったよ。だからほら」
「ん?」
「手錠。外して」

 ガチャガチャ鳴らし、外してアピールしてくる。
 ラミは呆れたように肩をすくめた。

「外すわけないじゃん」

 せっかく捕まえたのに。

「え? いやあのえっと」
「誘ってきたのは梅でしょ?」
「それは! 俺がラミに……」

 ハンカチを丸めると、喋っている途中の梅の口に押し込んだ。

「ぐっ」
「父さん一階だけど、聞こえるかもしれないし。ね?」

 優しくほほ笑んでくれるが、梅はもうぷるぷると震えていた。

「怖くなっちゃった? かわいい……」

 めちゃくちゃくすぐられた。






「もうやめへ……」

 ハンカチを取ってもらえたのは頭がぼうっとしてきた頃だ。

「あはは。ハンカチぐしょぐしょだね」

 何を思ったのか、そのハンカチとキスをする。何をしていても絵になる彼に、梅は寂しそうに唸る。

「ラミ。俺はここだけど?」
「ん?」
「俺の口はここですけど?」
「んぐっ……」

 ラミが吹き出している。
 口元を隠し、肩を揺らして笑う。

「笑わさないでよ」
「ハンカチに浮気してるからだろ」
「はいはい。もー。可愛いな」

 口をタコにしてくる梅に愛しさが込み上げ、ハンカチを横に置いて口づけする。

「……っふ」

 まだ呼吸が整っていないのか、するりと舌が入り込んだ。

「ん、ふう……」
「鼻で呼吸すると良いよ」

 ぬち、くちゃと水音が響く。その度に梅の頬が染まっていく。

「っぁ……うぅ」
「発情してきちゃった?」
「……っ、ど直球に聞くなよ」
「じゃあ興奮してきた?」
「『じゃあ』って何⁉ ラミ。お前その顔で、そんなこと言うからほどほどに引かれるんだろ」
「顔しか見ずに寄ってくる人たちとか、どうでもいいんだよ」

 髪を耳にかけると、梅がドキッとした表情を見せてくれる。いじめたいなぁ。

「俺も……顔しか見てないけど」

 青ざめる梅に苦笑する。
 貧弱で、あだ名が「かかし」だった時から態度が変わってないんだよね。

「俺は梅のこと好きだよ」
「お、俺も。だから早く。焦らさないで」
「どうしてほしい? ちゃんと口にしてよ」
「……」

 顔が引きつり、目が泳ぐ。

「は、恥ずかしくて言えない」
「すんなり言う時もあるのに」
「あれは! 気分が乗ってて」

 よし。いじめるか。

「はい。言ってくれるまで遊ぼっか」
「ひうっ! んん」

 少し後ろに下がり、太ももを上から下に撫でる。足は拘束していないので、ズボンを脱がせない。
 布の上からなので少し強めに人差し指で引っ掻く。

「ん、やだ! さ、触って……」
「どこを?」
「……~~~いじわる」

 内ももを揉んだり、下腹を指でくるくるなぞる。特に下腹は触っただけで魚のように跳ねた。

「そこやだ!」
「そっか。盛り上がってきちゃったね」

 爪先で、股間をツンツンとつつく。ぶわっと梅の身体が熱を発する。

「んっ。もっと……そこ、触って」

 わずかに舌を出し、股間を突き出すように身体を揺らしてくる。

「そこって?」
「んん~! いじわる! ラミのいじわる! いじめっ子!」

 そんなこと言われたら余計に虐めたくなるって、分かんないかな。
 きゅっと乳首を摘む。

「ああっ!」
「可愛い声出しちゃって」
「そこじゃなっ! そこじゃなくて……ッ! あ、あ!」
「んん。可愛い」

 左右の人差し指で、両方の胸をこね回す。

「胸、やめて! ッあ! もう苦し……あ、ラミ! んあ、そこ!」
「なぁに?」
「下……触って。早く」
「舌?」

 口を開けてはあはあと呼吸していると、ラミの細い指が口内に入ってきた。

「んう」

 いや、違! ちがうちがうって!

「ここかな~? 梅の気持ちいいとこ」
「あがっ……」

 ラミのきれいな指に歯型を残すわけにもいかず、震える顎を叱咤して口を開けた状態を維持する。

「ふあ……やら。ッ」
「自分で言っておいて」

 逃げる赤い舌を追いかけて摘み、ふにふにと揉んで遊ぶ。

「はが、う、あが」
「かーわいい。あ、唾液はごっくんしないでね」

 もう片方の手の指も差し込まれ、口を閉じられないようにされる。

「ッか、あ……あみ……」

 あみ? 一瞬女の名前かと思って殺意が湧いたけど、俺の名前を呼んだんだ、よね?

「そうだよね?」
「ん、んぐ! あが、お、ぁあ」

 必死に頷こうとしているが、口を押えられているので動かせずに困っている。そんな顔も可愛い。
 かき混ぜていると唾液が溜まってくる。

「……」

 口内に水があると話せないよね。
 目で「指をどけて」と訴えてくるが知らんぷりする。

「あーあ。指がびしょ濡れだよ」
「っ、……!」

 苦しそうに身体を揺らす。下半身が疼いて仕方ないのだろう。手が使えないため、たまに膝でぐりぐりしているし。

「……」
「そんなに見つめられると。仕方ない、かな」

 指を引き抜くと、ごくんと嚥下する。

「おぼれるかと、おもっただろ……」
「俺に?」
「……いいから、早く。触って」
「オモチャとか、使ってみる?」

 少し迷ったようだが、梅は首を横に振った。

「ラミがいい」
「そう?」
「オモチャも、気持ち良いけど。ラミに触ってもらった方が……」

 すごく小さな声で「興奮する」と言われた。父親が一階にいなかったら理性が爆発していたかもしれない。

「ん。いいよ。ズボン脱がすけど。俺を蹴らないでね」
「じっとしてる」

 梅の方がお兄ちゃんなんだけど、頭を撫でたくなる。
 下着ごとズボンを下げた。

「濡れてる。舐めてあげようか?」
「洗ってないから、やめて」

 においがして俺はいいんだけど。梅が嫌ならやめよう。

「触るよ?」
「うん。お願い……」

 とろっと蜜を零す先端を、触れるか触れないかの力で撫でる。

「っ、だめ! もっと強く触って」
「優しくしてあげないと」
「ん、ん。は、あ。んう。もどかしいって……!」

 尻を浮かして股間を手に擦りつけてきて、可愛いな。

「イクときは教えてね?」
「……な、んで?」

 ラミは答えず、ふいっと手を離してしまう。そのままベッドからも降りるんじゃないかと焦った梅は声を大にする。

「わ、分かった! 恥ずかしいけど。ちゃんと言うからっ」
「そう?」

 ラミの手がソレを握る。

「ああっ!」

 ぞくぞくと快感が背中を走る。握られただけなのに、軽くイったかもしれない。イクときは言うって言ったのに。

「……っは、あ、あ。ご、ごめん」
「ふふっ。いいよ」

 ラミに優しい笑みにホッとする。
 さらっと前髪をかき上げられた。

「?」
「でも、あとでお仕置きね?」
「え、そ……アアッ。あ、ん、うあああっ」

 強く上下に扱かれ、腰が跳ねた。ガチャガチャと喧しく手錠が音を奏でる。

「あ、ああ。そ、急に、アッ。あ、―――……ああ、ック、い、イきそ……ああっ!」

 視界が一瞬白に染まった。



「……ぁ。らみ……?」

 ぼやんとした頭で目を開けると、ラミが身体を拭いてくれていた。

「あ、起きた?」
「……ねて、たの? 俺」
「タオル濡らして戻ってくる間だから、二分くらいじゃない?」

 いつもどのくらい寝ていたか聞いてくるので、先に言っておく。

「そっか……。はあ」
「疲れた?」

 頬を撫でてくれるが、イったばかりなので反応してしまう。

「あっ……。いまは、触らないで」
「感度高まってるんだよね。……」

 グレーの瞳が、ピンと立った乳首を見下ろす。

「ちょ! 今はマジやめて。さすがに蹴っ飛ばすよ」
「蹴っ飛ばされてもいいから、舐めていい?」
「やだ、だめだって。手錠取って」
「……」

 腕を組んで悩んだが、結局手錠を外した。
 梅はのろのろと腕を胸の前に持ってくる。

「ふう。ありがと」
「手首いたい?」

 手首を押さえながら、梅が上体を起こす。

「大丈夫。その……き」
「ん?」

 首を傾げると、梅はさっと顔を逸らした。

「き、気持ち良かった……。ありがと」
「……」

 もしかして理性の強度を試されてる? 障子紙くらいの強度しかないのに、やめてほしい。

「いつになったらイった直後の身体、触らせてくれるの?」
「えっ⁉ ……え? そ、え? ……来年?」
「マジ? 楽しみにしてる!」

 ラミが両腕挙げて喜んでいる。盛大に口が滑ったかも知れない。まあいいや。ラミなら。

「その代わり、そっと触ってよ。いきなり強く触ったら、怒るから」
「うん」

 顔を見合わせると、どちらともなくキスをした。














「ところで、お仕置きって何するの? 痛いのはヤダよ?」
「冷蔵庫のプリン、俺がもらう」
「⁉」

 二つとも持って行かれ、追いかけっこが始まった。




【おしまい】
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