BL短編

水無月

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いつの間に二月終わったんだ?

番外編 ニケの宿『不発お花見』

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 ※モブが出てきます。
  『ニケの宿』なので過激描写はありませんが、少しだけ体を触られるシーンがあります。苦手な方はご注意ください。
  平気な方はお花見していってね。















 愛梅が過ぎ、桜の季節。

「梅の見ごろは寒いけれど、桜の開花と共に暖かくなってくる。つまり……」

 満開の桜、白い雲、緑の芝生。

「お花見だね!」

 わあああい。いつもは領主の「桜を愛でる会」に参加していたけれど、今年は違うよ。なんたって同居人っ! がいるからね。ニケ君とフリー君とお花見するから領主のお誘いは断っておかなくちゃ。うふふふ。ウーン、残念ダナァー。領主ノオ花見ニ行ケナイナンテー。

 でも仕方ないね。孫たちを優先してあげなくちゃ。

「……」

 ぴょいんぴょいん跳ねているおじいちゃんの後ろ。自分の座椅子(フリー)に腰掛けてお花見弁当(どうせ僕が作るんだろうな)の中身を考えているニケ。フリーは「キミカゲさんてあんなにテンションあげられるんだな」とほっぺをもちもちしながら眺める。

 疲れてきたので、孫たちをまとめて抱きしめちゃう。

「一緒にお花見行こうね~」

 すりすりと白い髪に頬ずりする。すっかりニケたちの愛情表現(ほっぺすりすり)が移ってきているおじいちゃん。
 しかしこの中に、空気も天気も心の機微も読まない鈍感さんがいる。
 キミカゲの不思議な言動にきょとんと首を傾げた。

「? キミカゲさん。無理せず領主さん? とのお花見行ってきていいですよ?」
「がっ⁉」

 衝撃を受けたキミカゲがカタカタカタと小刻みに震えた。

「い、いや、あの。その」
「? お花見行けなくて残念なんでしょ? 無理しないでください。俺とニケでお花見……」

 おじいちゃんは泣いた。恥も外聞もなくうわああああと。

「ぞ、ぞんなごど言わないでええ! ぢ、ぢが……違うんだようああああん」
「キミカゲさん⁉」
「ったく、お前さんは……」

 こつこつと己の額を叩き、最年少は乙女のように泣いているおじいちゃんをよしよし撫でる。じっと見ていたフリーも真似をする。

「翁。一緒にお花見行きましょうね?」

 顔を上げたキミカゲは眼鏡がズレているし頬も赤いし酷い有り様だった。それでもニケの言葉が嬉しかったのか、瞳が輝く。

「……ひぐっ。ニケ君……ありが」
「ニケ。そんな無理言ったら悪いよ。キミカゲさんは忙しいんでしょ? お花見ならまた来年に……」

 泣いた。邪魔なメガネを外して思いっきり泣いた。余計なことを言った自分が憎くて仕方ない。

「うええええええっ」
「キミカゲさん???」
「はあ~。お前さん。家の前の掃除でもしてろ」

 箒を握らせ尻を蹴って、外に追いやる。

「なんでええええ? ニケえええ?」

 困惑の声を上げながらも雇い主の指示にはしっかりと従う。掃き集めた落ち葉やごみの中に、薄桃色の花びらが混じる。



「そんなわけでニケに追い出されました」
「お前がお馬鹿なのはもう分かったって。これ以上あほエピソード追加しなくていいって」

 掃除を終わらせたフリーが箒を持ったまま向かったのは竜の屋敷。オキン邸。
 目的は先輩。お花見に誘いに来たのだ。
 ここは玄関。「こんにちはー」と声をかけたら先輩が出てきてくれた。
 わくわくしているフリーに、すっかり黒羽織が板につく……ほどではないが馴染んできたリーンは腕を組んで背後を見遣る。

「どうだろうな? ここはいつも黒羽織みんなでお花見しているみたいな感じで、今年もするって言ってたから。俺はそっちに参加しないといけないかもしれん」
「……」
「そんな落ち込む? うん。落ち込むよな。フリーだし」

 地面に両手をついて急に倒れた後輩に慌てることなく頭をつつく。春の陽射しが白い髪に反射して眩しい。

「やだあ! 先輩も一緒じゃなきゃやだ! 持って帰る」
「こら!」

 ぎゅっと細い身体を抱きしめる。見た目に反して力のある手が引き剥がそうとしてきたが、思いのほかすぐに抵抗は止んだ。

「?」

 絶対に殴られるか肘打ちされるか蹴飛ばされるかと思っていたため、「え? なんで?」と顔を上げる。
 上品な濃い青の瞳は懐いてくる近所の大型犬を見るようだった。

「先輩?」
「どうせお前の腕力じゃあな。持って帰るとか無理だって分かってるし」

 へっと鼻で笑われる。

「うっ」

 確かにその通りだけどなんだかムカついた。むっと半眼になる。

「走――」

 手刀の勢いで口を塞がれた。

「ばっ! ここをどこだと思ってんだ。やめろ!」

 ぱちんと音が鳴って痛い。目を×の形にする。

「ふごふごっ」
「まったく。性格の割に危険なやつだってこと忘れるわ……。あと、なに本当に持って帰ろうとしてんだ」

 ぽこんと頭を小突かれ抱きしめていた手を離す。

「だってぇ~。先輩がいなきゃヤダもん」
「子どもか」

 大人と呼んでも差し支えない年齢の青年は、ぷいっと顔を背ける。

「先輩は俺らよりオキンさんたちとお花見したいんですか?」
「お前と花見するくらいなら「どきっ! 本当に桜の木の下に死体は埋まっているのか検証」やるわ」
「俺は死体以下なんすか⁉」

 白目になって叫ぶも冗談だったようで、くすくす笑っておられる。ううん、ラブリー。

「うそうそ。たんぽぽの次くらいに好きだって」
「順位が分からんので喜べないんだけど? うう~。俺は舐め回したいくらい好きなのに」

 ピシャンとオキン邸の扉が閉まった。

「冗談じゃないですかあああ~! ぎゃおおおおん。先輩の顔が見えないよおお」
「怪獣みたいな鳴き声あげんな! 亡霊より怖いわ。塩撒いてやる」
「塩がもったいないからやめろ」

 騒いでいると一人の女性が早足でやってきた。セクシーな口元の黒子に、長い赤い髪。

「ペポラさん」
「ペポラ様!」

 顔を見ようとがらっと扉を開ける。急に空いたので扉にへばりついていたフリーが横に倒れた。

「ああん」

 ペポラは唇の前で指を立てる。

「元気なのはいいが、この時間はちびたちが昼寝しているから騒ぐな」

 リーンはびしっと敬礼する。

「はっ!」

 フリーは涎を垂らして食いつく。

「! お昼寝っ? どこのお部屋でほっぺたちがお昼寝しているんですか? ぜひ触っピ!」

 先輩に尻を蹴られる。
 残念な人を見下ろし、ペポラは冷静に告げる。

「教えるわけないだろう。で、なんの騒ぎだ? 喧嘩は他所でやってよ」
「えーっと」

 言いづらそうにしていると、お手本のように手をあげながらフリーが復活する。こいつ、打撃耐性がついてきたな。

「先輩をお花見に誘いに来ました。先輩をかしてください」

 きりっと表情を引き締めるフリー。先輩はひとまず黙って見守る。

「どこでお花見するんだ?」
「場所決まってないので知りません!」

 ペポラも尻を蹴りたくなった。

「はあ。……じゃあ、お前らもここで一緒に花見をするか? 邸のあっちに桜の木があるから……あー。今のナシ」
「なんでっ?」
「だってお前ら来たらキミカゲ様もついてくるじゃん」

 それのなにがいけないのか。分からないフリーはぶんぶん両腕を振る。腕も長いので扇風機のように風がくる。ちょっと夏の間ずっとそうしててくれないかな。

「キミカゲさんは、残念だけど一緒にお花見できるって言ってましたよ?」
「残念?」

 嬉しいを聞き間違えたんだな、きっと。

「こっちはストレス製造機とお花見したくないんよ。穴場教えてやるからそっち行け」

 背中を押され、門まで運ばれる。

「先輩は~?」
「予定決まってから誘いに来い」

 ずるーっと、そのままくすりばこまで押され続けた。



 教えてもらった穴場はこの近くのはず。手書き地図を頼りにふらふらと歩く。
 桜の知識がなにもない。どんな花かみたこともない。いつものように聞けば良いのだが、自分で調べてみようと思い立った。これって成長じゃない? キミカゲさんもいいことだねって褒めてくれたし。ニケには熱があるのかって言われた。

 そんなわけで下見に来たのだ。てっきりニケもついてきてくれると期待していたのに、ニケは「はじめてのおつかい」に子どもを行かせる親のような表情で見送ってくれた。あれえ? ついてきてよお。

「さみしいよお」

 明るい春の陽射しの下。さっそく心が折れかける。ニケがいない状況での遠出なんて初めてで、ついいつも近くにいてくれるぬくもりを探してしまう。

「ぐすん。帰ったらいっぱいもちもちするもん」

 すれ違うヒトの数が増えてくる。穴場とは言われたがヒトが全くいないわけではないようだ。頭上に満開の桜があるというのに、フリーはほっぺを探すために視線を下に向けていた。そんなことをしているから桜をろくに見たことが無いのだ。などと注意してくれるものはいないため、ひたすら足元を見て歩く。
 公園のような広場に着くと木の下で敷物を広げ、お弁当を食べている者たちで埋まっていた。敷物の隙間は歩けるが、桜の木に近づけない。

 しょうがないのでなるべくヒトのいない場所を探し、木の柵にもたれて遠くからそっと桜を眺める。

「……」

 ピンクだ。長らく白黒の雪山暮らしだったために、鮮やかな世界に目がくらみそうになる。初めて街に下りた時も、怪我でぼーっとしていなければもっと感動していただろう。あんなにたくさんのヒト、たくさんの種族がいて驚いた。
 自分は小さな箱庭にいたんだな。それでもそれを悔み時間を無駄にしたとは思わなかった。魔物と戦いなれていたおかげで、ニケを守れたのだ。あの時間にも価値はあった。まあ、そんなことを言えばまたニケが怒ってしまうので、心の中に仕舞っておく。

 ざあっとまだ冷たい風が吹き、ピンクの花びらが舞う。美しい光景だ。空に舞い上がった花びらはどこへ行くのか。目で追っていると川の水面に落ちていく。

「おお、すごい」

 あるものに気づき、川へ近づく。水面が、桜の花びらで隙なく覆われている。ピンクの絨毯を乗せたかのように。上に座れそうだ。
 咲いている花より浮かんでいる花に興味を持った青年は、長く伸びた雑草を踏んで鬱陶しい虫を払い、川の側でしゃがむ。

 ちゃぷ……。
 冷たい水に手を入れる。何度かかき混ぜ手をあげるとピンクの花びらがたくさんへばりついてきた。

「うわあ。あ、思ったよりさらさらしてる」

 そのうちの一枚を指で擦る。薄いのに花びらは破れる気配がない。自分より頑丈かもしれない。あれ? 俺花びらに負けてる?

 ぱっぱっと手を叩いて花びらを払い、立ち上がる。絶妙に顔に当たる位置で飛んでいるこまかな虫が鬱陶しい。冬の間見かけなかったのに。
 虫と格闘しながら適当にぶらつく。ニケとキミカゲとリーンを連れてきて、四人で食べるのに最適な場所を見つけておかなくては。特にキミカゲは床に直座りより椅子の方が楽そうなので、長椅子(ベンチ)があればいい。

「むうう」

 当然ながら長椅子は埋まっており、空いている椅子は一つもない。ヒトが座っていなくても荷物がどっさり置いてあったり鳥の糞などで汚れてあったりするので、持ち運びできる椅子が必要かもしれない。

(椅子なんてどこに売ってるんだろ?)

 もういっそ俺が椅子になろうか。四つん這いになってその背にニケとキミカゲさんに座ってもらえれば。えへへへへへ。
 想像しただけで涎が出そうになる。
 どれだけ脳内で変なことを考えていようと、口から出さない限り端から見れば普通の人である。お花見しているヒトたちがちらちらと視線を向けてくる。

「おい、あれ」「おお……」「白髪だ」「ありがたや。ありがたや」

 白い髪に白い着物。髪や肩に薄桃色の花びらが引っかかり、雲の上に咲いた桜に目を奪われる。全員が魅了されているわけではないが、信心深い者などは手を合わせていた。じろじろ見られることに慣れているため特に何も思わずに穴場公園を一周してみる。

「うーん。疲れてきたかも」

 桜は美しいがそれだけでは誤魔化せない花粉症の症状が辛い。キミカゲがくれた花粉症を和らげる薬を飲んでなかったらどうなっていたことか。
 獣人は花粉に強いようなので、わざわざ俺のために作ってくれた(無料)。
 ずずっと鼻をすすり、眩しい太陽を見上げる。雲はあるが太陽の遠くにあり陽光を弱めてくれそうにない。

 自分は春の陽気ていどの暑さでも参ってしまうのか。茶屋で一休みしようと目的を切り替えた時だった。

「おう、兄ちゃん。一人かい?」

 肩を叩かれ振り返ると二人組の男が視界に入る。友人でも見つけたような顔で立っているものだから、一瞬自分以外の人に声をかけたのかと勘違いしかけた。
 両名共にお花見に来たとは思えない仕事帰りのような汚れ切った着物姿で、汗のにおいがきつい脂ぎった顔だ。だが髭は男らしくかっこいいと思った。フリーも髭が欲しいけどニケが痛がるかなと思うとなかなか。……それ以前に髭自体が生えてきてくれない。どういうこと? オキンさんみたいなお髭、羨ましいよ。
 髭のことを考えていると、ふたりしてフリーに注目してくる。いや、髪の毛を見ているんだろう。俺の髪の毛はレア物らしいって、覚えたもんね。

「おおおお。その髪、天然ものかよすげー。さすが影都だぜ。田舎じゃお目にかかれないような女に加え、白髪までいるなんて」

 フリーが羨んだ顎髭の男が唸れば、相方もしきりに頷いた。

「瞳が平凡色なのは惜しいが、桜に負けない透明感じゃないか。女だったら危うく惚れてたぜ」

 やはり髪か。笠被ろうと思ったけど、頭に何か乗せてると頭が痛くなるんだよね。まあ、そのおかげで首都にて「帽子被った可愛いニケ」が見れたから満足なんだけども。

「何か御用ですか?」

 髪の毛触らせてほしいだったらどうしよう。ほっぺなら喜んで差し出すけれど、大人に触られても嬉しくない。頭撫でてくれるのは、嫌じゃないけど……。

「いやいや。わりぃな。花びらいっぱいついてっから、取ってやろうと思ってな」
「そんなついてますか?」

 言いながら肩に付いた花びらを払う。思ったより花びら積もっていた。
 花びらがたくさん集まる川でじっとしてたからだね。これで歩いていたのか。見られるわけだ。
 二人組はぱっぱっと花びらを取ってくれる。わあ、いいヒトだなー。
 のほほんと棒立ちでいるとフリーを挟むように前後に分かれる。前はそんなについてないと思うんだけど。
 ぺたぺた。

「……あの」

 なんだか手つきが。最初はぱっぱっと払うような動きだったのに、手のひら全体を使って触られている気がする。
 不快感から身を捩ると腕を掴まれた。

「おおい。動くなよ? ヒトが親切にしてやってんのによ」
「っ、もう、いいよ」
「そう言うなって」

 がしっと尻を掴まれ、鳥肌と同時に毛先までぶわっと立ち上がる。

「なにするの?」
「おおっと」

 腕を振るうも簡単に躱される。すると髭の男が相方の頭を小突いた。

「わりぃわりぃ。こいつ手癖が悪くて。そうだ、お詫びにいいもん見せてやるよ」
「?」

 ふくれっ面のまま男の手のひらを見つめる。何の変哲もない畳まれたハンカチが乗っていた。

「これがなに?」
「いい香りがするんだぜ? 思いっきり吸ってみな」
「はあ……」

 これでいい香りじゃなかったら怒るんだからね?
 ぐっと顔を近づけ大きく息を吸う。ほのかに甘い匂いだが、良い香りというわけでもない。
 もしかして、からかわれてる?

「俺あんまり甘い香りも……」

 ぐらっと頭が揺れた。瞼が急激に重たくなる。

「……え?」
「おらよ」

 甘い香りのするハンカチを、鼻と口を塞ぐように押さえつけられる。

「~~~っ」
「暴れるなって」

 後ろから抱きしめられる。頭がぼやけ、おまけに手足に力が入らない。力強い腕から逃げられなくなる。

「……? ……」

 わけがわからないまま、フリーの意識は闇に沈んだ。



 力が抜けた身体を担いで茂みの中に身を隠す。

「……」
「……誰か、来てるか?」
「いや、誰も」

 きょろきょろ周囲を確認して、茂みの中に完全に引っ込む。その奥には昏睡状態の白髪が。
 信じられないといった思いで顔を見下ろす。

「まじか」
「白髪が護衛も何もつけずにうろついてた、ってのか?」

 神の眷属の生まれ変わりと言う噂があろうと絶対安全ではない。むしろ狙われる確率が高いのだ。最悪ホーングースあたりが飛んでくると覚悟していたのに。
 互いに顔を見合わせる。

「「……」」

 あっさり手に入ってしまった。叫びながら頭を抱える。

「おい! なんだこれは夢か?」
「おおお落ち着け! ジェーン。きっとあれだ。日頃の頑張りを神様が見ていてくれたんだ」

 相方の言葉にハッと顔を上げた。

「そう、だったのか……」

 二人して太陽に手を合わせる。
 護衛に殺されるのを覚悟して挑んだ甲斐があった。白髪ともなれば雑に売っても大金が手に入る。それを元手に成りあがってみせる。いや、一生遊んで暮らすというのも悪くない。
 二人はニヤッと笑う。

「触って確認したが染物じゃねえな」

 束ねている手ぬぐいを外し、さらっと髪を手に取る。

「ああ。おまけに触った反応からして処女ときた。金持ちの変態は喜んで買うだろうぜ」

 目を覚まさない青年の頬を撫でる。肌もきめ細かく手触りもいい。
 暑いのか薬のせいか、息が荒く白い肌が桜色に染まっている。それを見ていると欲が出てきた。

「おい。どうする? ヤっちまうか?」

 目を丸くする。

「勘弁しろよ。処女の方が人気高いし高値がつく。それを捨てるってのか?」
「でも考えてみろよ。この先、二度とこんなチャンスはない。そうだろ?」
「それは……」

 顎髭の男は気が早いのかさっそく青年に跨っていた。

「おいおい。マジでヤんのかよ」
「あたぼーよ。お前、ヤらないのなら見張ってろよ」

 しばし悩んだ相方だったが、ぐっと親指を立てた。

「俺もやる」
「はっは! それでこそ俺の相方だぜ。お前そっち脱がせろよ」

 身につけている安物そうな着物を剥ぎ取っていく。着物も高価なら更に金になったのだがこればかりは仕方がない。

「うひょーっ。見ろよ肌も雪みたいだぜ?」
「きっと大事に保管されていたんだろうなぁ? 羨ましい限りだぜ」

 手のひらではだけた胸元を撫でる。突起に触れると意識のない身体がびくりと震えた。

「おほほっ。感度もいいみたいだな。こりゃ楽しめそうだ」
「じゃあ、さっそく」

 片足を持ち上げて足の付け根に触れる。

「きれいな桜色をしてやがる。使ったことねーんじゃねえかってくらいだ」
「唇もだぜ? このキレイなお口でご奉仕してもらおうか」

 ごそごそと己のブツを取り出そうとする。焦って上手く着物を脱げない。それを見てゲラゲラと笑う。

「おいおい。落ち着けって」
「はっはっはっ。すまんすまん。久しぶりなんでな」

「そりゃ、良かったね」

「ああ。かなりの上玉だしな――んっ?」

 なんだか今、第三者がごく自然に会話に混ざったような……。


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